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ジープ パトリオット スポーツ新車試乗記(第478回)

Jeep Patriot Sport

(2.4リッター・CVT・4WD・294万円)

あのJeepから
ついにFFベース・CVTの
「シビリアン・ジープ」が
登場した!

2007年09月15日

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キャラクター&開発コンセプト

ついにJeepが手がけたFFベース4WD

2007年8月25日に日本で発売されたパトリオットは、国内に導入された「ジープ」ブランド車としては初のFFベース4WD車。2005年のフランクフルトショーでコンセプトカーを発表した後、2006年から米国で販売をスタートした。

インポーターであるダイムラー・クライスラー日本は「ジープブランド初のコンパクトSUV」とうたうが、正確には同じFFベース4WDの「コンパス(Compass)」が北米では一足早く発売されている。両車はデザインやセッティングが異なり、パトリオットはSUV、コンパスはオンロード志向のクロスオーバー車という位置付けだ。

これらのパワートレーン(2.4リッターエンジン+CVT+電子制御4WD)とシャシーは、すでに合併を解消したダイムラー・クライスラー(1997~2007年)、三菱、ヒュンダイが共同開発したもの。今回のパトリオットとコンパス、そして三菱アウトランダー、クライスラーグループのダッジ・キャリバーなどは、シャシーとパワートレインの基本設計を共有する、もっとも広い意味での兄弟車と言える。

Jeepだが都会派

patriot-02compass.jpg
Jeep Compass

パトリオットの特徴はいかにもJeepに見える外観と、乗用車レベルの快適性、使い勝手、燃費性能、操縦性を備えるところ。また電子制御式4WDとは言え、オフロードにも配慮した走破モードや専用プログラムを備えている。車名の「Patriot」(ペイトリオットと発音されることが多い)は「愛国者」のこと。生産は米国イリノイ州ベルヴィディア(Belvidere)組立工場で行なわれている。

Jeep 公式サイト(本国)http://www.jeep.com/en/

価格帯&グレード展開

「スポーツ」(294万円)と「リミテッド」(329万7000円)

米国にはFFや5MTもあるが、日本向けパトリオットは電子制御フルタイム4WDのCVT車のみ。グレードは「スポーツ」(294万円)、レザーシートや上級のオーディオ装備を与えた「リミテッド」(329万7000円)の2種類。リミテッドには電動ガラスサンルーフ付もある(14万5000円高)。全車右ハンドルで、ダッジ・ナイトロと同じサイドビューカメラも標準装備だ。

スポーツ  294万円 ★試乗車
■リミテッド  329万7000円
■リミテッド(電動サンルーフ付)  340万2000円

パッケージング&スタイル

ルックスはJeep譲り

いかにもJeepらしいゴツいルックスだが、ボディサイズは全長4420mm×全幅1810mm×全高1665mmとコンパクト。全長4.4メートルというと、カローラセダン(アクシオは4410mm)と同じくらいだ。水平基調のボクシーなデザイン、ワイド&ローなスタイル、丸目のヘッドライト、「7スロット」グリル、ボンネット、フェンダー部分のデザインはラングラーや元祖ジープが元ネタで、良い意味でモダナイズされたレトロカー風だ。最近のJeep各モデルが使う「ジープメタリックグリーン」もカッコいい。どこかのメーカーが早速真似そうな色だ。

サイドビューカメラを装備し、例のフェンダーミラーが無いのも重要なポイント。そうでなかったら、このデザインはそうとうスポイルされてしまったはずだ。

精神はチェロキーから受け継ぐ

一方で「カクカクした箱っぽさ」、「ボディ全体の天地の薄さ」、「窓の小ささ」などは、かつてのジープ・チェロキー(XJ型)でも見られたもの。その点でパトリオットは、チェロキーの再来とも言える。XJ型チェロキーは全長4255mm×全幅1765mm×全高1650mmで、若干パトリオットの方が長いが、全幅と全高は限りなく近い。パーソナル用途の都会的なSUVというコンセプトも、大ヒット車チェロキーの精神を受け継いでいる。

Jeepゆえに不問に処す

いかにも樹脂っぽいベージュのインテリアだが、すでに「Jeepな」外観を見た後なので、この安っぽさすら「Jeepらしさ」に見えてしまう。冷静に見れば、いかにも米国製コンパクトカー並みの質感だが、これもJeepの人徳、ならぬブランド徳か。

前輪駆動ベースだから、ドライビングポジションは「ちょっと目線の高い乗用車」風。天井も十分に高く、視界も悪くないなど、グローバルカーらしいソツのないパッケージングになっている。当然トランスミッションの張り出しもないが、右ハンドル化の影響か、これで十分と開発陣が思ったのか、運転席座面は一番下にしても高めで、小柄な女性はアクセルペダルに足が届きにくいかも。とはいえ、さすがに先日試乗したダッジ・ナイトロほどではない。

i-Podホルダーや撥水シート地も

面白いのがセンターコンソールのアームレストの一部を反転させると現れるi-Pod&携帯ホルダー。そこに置いたまま曲名を確認したり、携帯ナビ画面に目をやったりするには位置が後ろ過ぎるが、試みとしては面白い。

上級グレードはレザーだが、「スポーツ」のシート地は防汚(撥水)、防臭、静電気防止機能のある米国特許品の「Yes Essentials」素材。近年クライスラー・グループが布シートに多く採用しているものだ。

サイドビューカメラや衝突安全装備も完備

ナイトロ同様、助手席ドアには、左前の死角をカバーするサイドビューカメラが備わる。悪路でもクルマから降りずに左前輪の位置が確認できるため、「オフロード走行にも役に立ちます」と日本のクライスラー・グループを率いるクリストファー・エリス副社長が自慢する装備。エリス副社長はアイダホ州出身で、高校生の時からジープ乗りだったという。このモニターは日本で開発したとのこと。

前席にはサイドエアバッグ、フォースリミッター付プリテンショナーシートベルトを標準装備。こうした安全装備はいまだ国産車が負けている部分だ。

広さ、安全装備ともに問題なし

リクライニング機能付のリアシートは、クッション形状こそやや平板ながら、座面が高くて椅子のようにしっかり座れるし、広さは十分。センターコンソールが出っ張っているが、ちょっとした足の置き場があって中央席にもそれなりに座ることができる。安全装備については、カーテンシールドエアバッグと3人分の3点式シートベルトを完備。これが国産車で当たり前になるのは、数年先か。

樹脂製ボードを供えた荷室

後席の背もたれをパタンと倒し、助手席の背もたれも倒すと、だだっ広いフラットな床が広がる荷室。フロアボードはバコッと外して丸洗いできる樹脂素材で、いかにもジープらしく機能的だ。下手に質感を高めず、「傷がついてもいいじゃん」というもの。床下にテンパータイヤが納まる。カーゴルームランプは充電・脱着式で、外すと懐中電灯としても使用できる。

なお「リミテッド」のリアゲートには、スイング機構が付いた2スピーカーが付く。これはダッジ・キャリバーの上級グレードと同じもので、リアゲートを開けてスピーカーユニットを90度反転させると、アウトドアでのPAとして使える。

基本性能&ドライブフィール

パワートレインはグローバル

エンジンは前述の通り、ダイムラー・クライスラー時代に共同開発された2.4リッター直4の通称「ワールドエンジン」。変速機は燃費に有利なCVT(無段変速機)、駆動方式は電子制御式フルタイム4WDだ。基本設計レベルで、このパワートレーン一式は三菱アウトランダーやデリカD:5のものと同じと考えていいだろう。2359ccの排気量や170psの最高出力もまったく同じだが、トルク数値は若干異なリ、指定ガソリンもパトリオットはハイオクとなる。

良くも悪くも、今風CVTの走り

走りの印象は、簡単に言えばいわゆるCVT車らしいもの。アクセルを踏み込めばエンジン回転を上げて加速し、アクセルを緩めれば低回転を維持して燃費を維持する。100km/h巡航時のエンジン回転数は約2000回転だ。加速感は、車重1530kgに対して170psという割には重々しく、パトリオットより100kgほど車重の重い三菱アウトランダーの方が軽快に走った印象がある。逆にパトリオットはジープらしくどっしりしている、とも言える。

ザラザラしたCVTノイズも気にならないとは言えないが、そもそも「Jeep」であって、高級セダンではない。舗装路でのSUVの走りは「何と比べるか」「どのレベルを求めるか」という基準の置き方が微妙だが、少なくともラングラーのような伝統的パートタイム4WD車と比べれば、その直進安定性や操縦性は完全に乗用車のそれで、高速走行もストレスなくこなせる。

実用上、十分な操縦安定性

国産の最新SUV並みにスポーティな操縦性とは言わないが、パトリオットはSUVとしては軽量で、重心も低く、タイヤも一般的な215/60R17のコンチネンタル・プレミアムコンタクト2を履く(アウトランダーでさえM+SのブリジストンDUELERだった)。ゆえにワインディングで不安なく走れるのは確かで、一般的な速度では何ら問題ない。なにしろ見た目はジープでも、フロントはストラット、リアはマルチリンクの独立サスというまったく今風の(そして上記の三菱車と同じ)構造だ。

悪路走破性について

オフロードは試せていないが、資料で分かる範囲で走破性を推測してみると、まず走破アングルは、アプローチアングルが21.0度、ブレークオーバーアングルが20.0度、ディパーチャーアングルが33.0度で、最低地上高は205mm。数字を見る限り、アプローチアングル、つまりフロントバンパー下のクリアランスが少ないが、これはバンパー裏にラジエイターなどの補器類や衝突対策用メンバーがあってこれ以上ボディを削れなかったことや、総合的に見て「これで十分」という判断かもしれない。

4WDシステム「フリーダム ドライブI」のセンターデフは、ロック機能を備えた「電磁センターカップリング(ECC)」を備えている。これはセンターコンソールの「4×4ロック」スイッチで作動するが、おそらくこれは三菱アウトランダー/D:5の「4WDロックモード」と同様のもの。つまり正確には通常のオートモードより後輪へのトルク配分を高めるモードで、資料にも「最大で約60%」を後輪に伝達する、とある。この最大60%という数字は、やはりアウトランダーと同じだ。

ESPはジープらしくユニークで、オフロード走行用に3つのモードを備えている。1つめは通常の制御(トラクションコントロールおよびブレーキ制御)で、いわゆる舗装路からオフロードまで活躍するもの。横転抑制機能も備わる。2つめの「パーシャルオン・モード」は、TC(トラクションコントロール)オフモード。要するにホイールスピンしながらでもタイヤを駆動させて、トラクションを稼ぐためのものだろう(トヨタ車の「TRCオフ」スイッチがそう)。3つめはESPそのもののオフ。おそらくタイヤ空転時や横滑り時の介入を防ぎ、プロモーションビデオにあるようなダイナミックな走りを可能にするものだろう。

ところで、ジープ車は市販前に必ずカリフォルニアにあるテストコース「ルビコントレイル」を走破できなければならない、という話は有名だが、このパトリオットはそこを走破できたのだろうか。そんなことを気にするのはマニアだけかもしれないが。

ジープとしては画期的な経済性

今回は約160kmを試乗。10・15モード燃費はちょうど10.0km/Lだが、プレミアムガソリンを約3000円分(22L)消費し、参考燃費は約8km/Lとなった。ちなみにアウトランダーの10・15モード燃費は11.6km/L、トヨタRAV4は12.6km/Lだが、経験上これらも同じような走り方では10km/Lを少なからず割ってしまう。ちなみに(日本向けの)ジープは今まで、排気量4リッター前後のラングラーやチェロキー、それ以上のグランドチェロキーしかなかったから、ジープとしては画期的といっていいほど経済的なのは確かだ。

ここがイイ

ジープそのもの、という印象のスタイリングなのに、走りや燃費という点ではおおむね日本車みたいなこと。サマータイヤだし、乗り心地はいいし、燃費はそこそこだし、室内も静かな部類だ。値段は同クラスの国産SUVより多少高めだが、安全装備も充実しているし、デザインが気に入って、それだけで買ってしまったとしても悔いはないはず。ダイムラー・クライスラーグループ時代のいい部分が結集してできたという印象だ。

フェンダーに例のミラーがないこと。日本市場でこの手のクルマを売るということがどういうことかを(いうまでもなくスタイリングが最も大事ということ)、インポーターが分かっている。右ハンドルのみというのも日本市場がよく分かっているし、右ハンドル化による足下の狭さもほとんどない。これなら日本でも道具としてガンガン使えそう。それでいてこのキャラクターが何よりいい。伝統のスタイリングという点では、このクルマもまたミニ、ビートルなどに通じる「復古」系のクルマということになる。

ここがダメ

マニュアルモードの変速はタイムラグなしにスパスパ決まるが、やはり左右操作は、直感的にはよろしくないように思う。ここはダイムラー・クライスラーグループ共通の部分だ。

インパネなど室内の安っぽさはまあ許せる範囲だが、それにしてもエアコンのルーバーはフニャッとしていて、100円均一商品的なヤワさ。雑に扱うと折れてしまいそう。

装着に関しては手放しでほめたいサイドカメラだが、運転中にも表示されているため、ふと注視してしまうと、一瞬脇見運転をしてしまう。サイドミラーより画面に目が行きがちなのだ。ON/OFFスイッチはあるが、速度が上がったら自動的に消える方がいいだろう。

総合評価

ジープというブランドはやはり軍用車両のイメージが強い。かつて日本人にとっては進駐軍の車両であり、強くカッコいいアメリカの象徴でもあった。三菱ジープが自衛隊車両だったこともあり、若い人も現代のジープにミリタリーなイメージを重ねることは多分そう違和感がないと思う。パトリオットに乗ると、運転席からの視界は少し上下方向が狭くて、戦車ののぞき窓的な印象があるし、パトリオットというネーミング自体、同名ミサイルとの関連性も感じられて米軍車両を想起させられる。独自のボディカラーもこれは軍用色に通じるものだろう。このクルマにそのまま米軍兵士が乗っていても、まったく違和感はない。

そんなパトリオットがなかなかカッコいいSUVであるのは、つまりそのカッコ良さが兵器に通じるものだからではないか。いい悪いは別にして、兵器が好きな男の子は多い。拳銃から戦車、戦闘機までなぜか心ひかれるものだが、パトリオットの強みは、そんな兵器的なムードをそこはかとなく持っていることだろう。兵器の美しさは機能美ゆえ、パトリオットも美しくさえ見えるし、兵器的であるがゆえにラグジュアリーな高級感とは無縁でいられる。内装の質感は日本車だったら酷評されるはずだが、この実にプラスチッキーな室内も機能美?として許されるわけだ。

兵器は国の威信をかけて本来自国開発されるわけだが、パトリオットの場合は多国籍軍というか、様々な同盟国の技術力を集めて作られている。三菱やヒュンダイを加えたダイムラー・クライスラーグループの蜜月時代に開発が進んだことで、見事な国際戦略車ができあがったわけだ。純粋な米国製ではこうはならなかったと思うし、多国籍車ゆえに信頼性も高そうだ。ダイムラー・クライスラーが解体された今後は、もうこういうクルマは出てこないだろう。

 

ジープブランドがこの軍用テイストをアイデンティティとして守り続ければ、今後もまず堅い商売ができるだろう。ジープはブランドイメージを日本で最も確立しているクライスラー車であり、パトリオットはヒット間違いなしだと思う。もちろん毎月何万台も売れるヒットではないが、サイズも手頃で価格も安いから、アメ車としてはちょっとしたヒットになりそうだ。同じ傘下のダッジブランドのような「モロにアメリカン」ではなく、全体としては日本車的なごく当たり前のクルマで、それでいてジープというブランドで乗るクルマなのだから。

ハマーのヒットもそうだが、軍用車というテイストはSUVにはけっこう重要なポイントかもしれない。トヨタもメガクルーザーのデザインテイストでもうちょっと小さめのSUVを作れば、大ヒット間違いなしと思うのだが、それはさすがにまずいか?

試乗車スペック
ジープ パトリオット スポーツ
(2.4リッター・CVT・294万円)

●初年度登録:2007年8月●形式:ABA-MK74
●全長4420mm×全幅1810mm×全高1665mm
●ホイールベース:2635mm ●最小回転半径:5.4m
●車重(車検証記載値):1530kg(880+650) ●乗車定員:5名
●エンジン型式:B ● 2359cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置
●170 ps(125 kW)/ 6000rpm、22.4 kg-m (220 Nm)/ 4500 rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/51 L
●10・15モード燃費:10.0 km/L ●駆動方式:電子制御フルタイム4WD
●サスペンション形式:前ストラット/後:マルチリンク
●タイヤ:215/60R17( Continental ContiPremiumContact 2 )
●試乗車価格:294万円( 含むオプション:- )●試乗距離:160 km ●試乗日:2007年8月
●車両協力:中京・愛知クライスラー株式会社

Jeep Japan>パトリオットhttp://www.jeep-japan.com/patriot/index.html

 
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