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新車試乗記 第52回 スバル プレオ Subaru Pleo

 

日時: 1998年12月04日

 

キャラクター&開発コンセプト

セダンのヴィヴィオの後継となるトールボーイワゴン

従来の軽セダン・ヴィヴィオに代わる、トールボーイワゴン型の軽自動車として登場したのがプレオだ。コンセプトは「軽自動車の概念を超える高品質・高密度コンパクトワゴン」。ライバルの多くがミニバンルックボディを打ち出しているが、プレオは日常でも扱いやすく走りも犠牲にならないコンパクトなワゴンを追求していることが特徴だ。とはいえ、一見、他車と同様のミニバンにも見える。このあたりはちょっと微妙なところ。

スバルにとって新規格ボディはこのタイプのみとなるが、開発を1タイプに絞った分、スバルの全勢力が注ぎ込まれているといっても過言ではないだろう。

実際、プレオは新しく登場した軽自動車勢の中で、最も技術力主導の傾向を強く打ち出し、スバルらしい骨太の主張がうかがえる。見てくれよりかなり「内容の濃い」クルマに仕上がっているのは確かだ。ボディタイプはリアにハッチゲートを備えた5ドアで、4ドア、3ドアは設定されない。

価格帯&グレード展開

プレオ一本で勝負するだけにバン仕様の設定もあり、価格帯は69.8~136.9万円

プレオ一本で勝負するだけに、あらゆるニーズに応えた幅広いバリエーション展開となって、ミニバン系では珍しい商用車までをラインナップ。エンジンはNA、SOHCとDOHCの2つのスーパーチャージャーユニット、そして今回新開発された売れ筋と予想されるマイルドチャージユニットの全4タイプ。5MT他、廉価グレードをのぞいて全てに全面的に改良されたi-CVTが用意される。グレードはバンも含め11タイプあり、価格はバンが69.8~89.3万円。ワゴンが86.5~136.9万円となる。

パッケージング&スタイル

ミニバンではなく、あくまでワゴンを追求。長いボンネットには訳がある

まず、パッケージングを煮詰め、その上でボディを被せたというプレオの外観は、内に秘めた安全性や走行性能などの機能の高さを、デザインで表現することをテーマに開発されてたという。例えば一見バランスを悪くしているように見える長いボンネットフードも、ボディ前端が確実に把握できるためのものであり、実質的な運転のしやすさにつながるもの。また、ミニバン系に犠牲になりがちな後方視界にも配慮し、リアウインドウの下端も下げている。ボディサイズは全高がライバルよりもやや低く(といってもルーフレールのため立体駐車場には入らない)、凹型にプレスされたフードパネル、6ライトのレガシィ風グリーンハウスとで他のミニバン風軽とはひと味違った、独特のムードを造り出している。さらに試乗車のRSおよびRMにはエアロパーツが装備され、押しの強さを打ち出すことにも成功している。アルミホイールもしっかりと今風にデザインされたもの。

クオリティが向上した個性的インパネ、細かな配慮に欠ける装備群

インテリアは基本的に、ミニバンの主流となるコラムAT、足踏み式パーキングブレーキ(RSは一般的なレバー式パーキングブレーキ)を採用し、左右ウォークスルーを可能としたものとなる。インパネは運転席、中央、助手席を3分割させたデザインが特徴で、ナビのビルトインを前提にオーディオスペースが最上部に配置される。上下2段に分けたグローブボックスは、上部のリッドが水平に開き、ランチトレイとしても使える優れモノだ。荷室と後席の間には傘入れスペースも用意されている。グレードによっては運転席と助手席の間にシート地と同じ素材で覆ったセンターボックスを置いて、ベンチシート風にアレンジしている点も目新しい。後席もパノラマシート(左右独立で4段階後方にスライドしながら最大100mm持ち上がる機構・子供のシートベルト調整対策)と呼ばれる凝った機構を採用する。こうした数々のギミック? ともいえる装備が与えられながらも、カップホルダーや小物収納スペースが少なめというのが残念。こういった小さな配慮こそ軽ユーザーに喜ばれると思うのだが。また、ハザードスイッチが未だにステアリングコラムの上にあるのもマイナスポイント。さほどコストがかからないと思われるのでマイチェン時には、ぜひとも改善を望みたい。

ヴィヴィオとは比べものにならない広い居住性だが、ライバルと比べると平均レベル

RSのシートは、メッシュタイプの生地を使い、さらっとした肌触りで、色使いも好感の持てるもの。クッションやシートバックに張りがあり、サポート性も上々だ。もう少し座面高が高くなれば、見晴らしや乗降性が良くなると思う。なお、後席と荷室スペースはミニバン系としては平均レベル。

基本性能&ドライブフィール

受賞もうなずけるメカニズムはメカフリークにとって垂涎の的

エンジンラインナップは全4タイプ。全て4気筒で45馬力のNA、58馬力のマイルドチャージ、64馬力のSOHCスーパーチャージャー、同じく64馬力のDOHCスーパーチャージャーユニットだ。新設定されたマイルドチャージとは、常時低回転域から軽い過給を行うことで低・中速域のトルクを向上させたもの。NA並の素直な特性と余裕の走りが魅力だ。

今回試乗したのは、最上級グレードとなるRS。4気筒ユニットにスーパーチャージャー、新開発i-CVTに加えて7速マニュアルモードまで与えられている。見ようによっては過剰なくらいのメカニズムは、ちょっと悪ノリっぽい気もするが、賞が採れるほど業界受けするのも納得できる内容といえるだろう。

従来の悪癖を解消、リッターカー以上のトルク感に溢れる加速と鋭いレスポンス

従来の無段変速機CVTからグレードアップした電子制御付きのi-CVTは、トルコンが追加されクリープも加わった。これまでの電磁クラッチ式は発進時や停止時のギクシャクした動きが気になったが、この悪癖が見事に改善されているのが特徴だ。

アクセルを踏んだ瞬間から過給が始まり、1リッターいや1.3リッターぐらいの排気量かと思えるほどトルクに溢れた加速をみせる。レスポンスが非常に鋭く、再びアクセルをグイッと踏んでやれば、たちまち5000回転以上まで吹き上げ、CVTの違和感も無しに、息継ぐことなく法定速度の80km/hに達する。ただパワー的には満足度は高いものの、気になるはアイドリング時の振動とCVT特有の高周波音。この辺りはもう少しがんばって欲しかったところ。また、ブレーキの利きがいまいちで、強くペダルを踏むことを強いられた。

乗り心地はやや硬めだが、不快なほどではない。操舵感には手応えがあって、安っぽさはまったく感じられない。荒れた路面ではキックバックがステアリングに若干伝わるが、挙動を乱すほどではないから不安感にはつながらない。

まるでゲーム感覚、市街地でもフルに活躍できる7速マニュアルモード

7速スポーツシフトは、道路状況と乗り手の好みに応じてATモードとMTモードを使い分けすることができる。シフトはステアリングスポークに設けられたスイッチで行う。MTモードで思いっきり引っ張ると7000回転ぐらいで自動的にシフトアップし、停止すると1速に自動的にシフトダウンする。シフトチェンジのタイムラグはほとんどなく、ダイレクトで小気味のいいものだ。また、普通車に採用されたマニュアルモードだと、せいぜい2速か3速でしか楽しめないが、プレオは市街地などの一般道でも2~7速までフルに利用できるというのが嬉しい。これはまるでゲーセン感覚。走りを楽しむと言うよりは「面白がる」という印象だ。ただ問題はスイッチの位置。ステアリングを扱いやすい位置でグリップすると、スイッチが扱いにくい位置に来る。ポルシェなど他車では感じなかったことで、これは要改善だろう。とはいえ、スタイルとは裏腹の軽快なスポーツ走行が楽しめるのが、賞獲得の理由なのでは(評論家諸氏はきっとこういうクルマが好きなはず)。

軽の法定最高速度での巡航エンジン回転数は、MTモードで7速にすると2400回転程という軽にあるまじき超低回転となる。CVTの変速比が全面的に見直されたメリットだ。100km/h巡航はもちろん朝飯前。最高速は140km/hのメータを振り切りそうになるが、その時点でもエンジンは余裕たっぷり。常に耳障りだった騒音は、思いの他それ以上にうるさくならず、まずまずの快適なクルージングが望める。そのかわり風切り音は大きめだ。

ここがイイ

軽としては完全に一皮むけた。普通車並とはいわないが、軽の極みに上ったと言ってもいい。RSに乗っている限り、軽であることは忘れていられる。動力性能、走る楽しさ、室内の広さ、カーナビの位置など、スバル360発売以来40年にして、軽自動車の最終的な姿が表れたといえそう。

ここがダメ

スタイルはやっぱりいまいち中途半端な印象。これでMCCスマートみたいなスタイルだったら世界に売れるはず。当然ルーフレールはいらない(RSには元々ない。情報によるとルーフレールレス車が設定される模様)。また技術的に見ればプレオの価格帯は安いのかも知れないが、ライバル車と比較すると絶対的な価格帯の高さは否めない。販売面を考えたとき、この先、スタイルと価格で苦戦を強いられなければいいのだが。

総合評価

COTYの方の特別賞を獲得したホンダZは、試乗した印象では小型車に近かったが、プレオは感覚的には軽の上級車という感じ。Zは上級車種しかない専用設計だからいくらでも新しいクルマにできたが、商用車まであるプレオは、ベーシックなところから造り込まなくてはならず、その意味ではこの完成度なら立派なもの。ただ、RSに乗っていると、軽って何だろうと思えてしまう。維持費が安い上、高速道路もかなり割り引かれる軽だが、乗っている限りもう小型車と何も変わらない。カタログを見ても環境面への主張があまりにも少なく、RSにいたっては使用ガソリンにハイオクを指定している。燃費は16.6km/リットルなので、経済性を全く無視しているわけではないが。

つまり、そろそろ軽ではなく、真のシティコミューターの出現が期待される。MCCスマートのような未来型ルックスで、プレオの性能があったら、これは迷わず「買い」でしょう。そこで提案。ボディはダイハツミゼットのバンの方をワイドバージョン化したイメージ、シートはフロント1座、リア2座の3シーターでAクラスのように取り外し可能、エンジン・ミッションなどハード面はプレオRSそのもの、価格は120万円前後。こんなクルマがプレオ・ビストロという名で登場したら、来年のイヤーカーになるのでは。

  ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/pleo/

 
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