Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > 日産 プリメーラ

日産 プリメーラ新車試乗記(第160回)

Nissan Primera



2001年02月17日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

これで日産の株価は急上昇? 大ヒットを飛ばした初代の衝撃が甦る

今や記憶からすっかり消え去ってしまったオースター(そんなのあったなぁ)の後継モデルとして'90年にデビューした初代プリメーラは、それまでなかった欧州車テイストの革新的正統派FFセダンとして大成功をおさめた。しかし2代目はキープコンセプトにも関わらず、時代が悪かったのか、それともデザインが悪かったのか、世の流れに追随してワゴンモデルを投入してもパッとしなかった。

今回、3代目となった新型は守り一辺倒だった先代から一転。「一歩先ゆく大人のインテリアジェントセダン&ワゴン」をコンセプトに、ミドルクラスという枠組みを超えたサイズとスタイリングで登場した。見どころは一歩どころか「2歩先ゆく」デザインとインターフェイスの2つ。方向性こそ初代と大きく異なるものの、日本車の革新という点では共通だ。搭載されるエンジンは2リッターと2.5リッター直噴の2種で、共に新型。先代よりもワンランクアップ。乗車定員は5名だ。

価格帯&グレード展開

DVDナビ標準装備、車格はマークIIクラスになっても価格は先代と変わらず

ボディはセダンとワゴンで、ともにグレード展開は同じ3タイプが用意される。セダンは2.5リットル+6段ハイパーCVTの「25X(249.0万円)」、2.0リットル+CVTの「20L(226.0万円)」、そのDVDナビレス仕様の「20C(204.9万円)」。ワゴンは数字の前に「W」が付き、価格はセダンよりも10万円アップ(W20Cは8.1万円アップ)。駆動方式はセダンは全車FFのみを採用しているのに対して、ワゴンは2.0リッターモデルのみ22万円高で4WDが用意され、その場合ミッションはトルコン式4ATとなる。

主力グレードは「20L」。装備はかなり充実しており、7インチモニターのDVDナビまでも標準装備する。価格は先代の2リッターモデルとほぼ同じだから、実質20万円は安くなったという計算だ。さらにボディの拡大を車格のアップと考えれば、さらに割安感が高まる。もっとも新型は先代のような大幅な値引きは期待できないが…。

ライバルはトヨタ・ビスタ、ホンダ・アコード、三菱・ギャラン/レグナム、スバル・レガシィ。ここでもデザインやDVDナビの装備分を考えれば、やはりプリメーラのアドバンテージが光る。なお、取扱い販売店はサティオ系、プリンス・チェリー系のレッドステージ店で、月販目標はゼタンが2000台、ワゴンが3000台。欧州へはこの倍の販売を見込んでいる。2/3は欧州で売ることになり、ライバルは欧州のDセグメントに属するアウディA4、プジョー406などだ。

パッケージング&スタイル

日産がトヨタを抜いた?! 新生日産の勢いを感じる先進的デザイン

まず注目すべきは大胆なスタイリングだろう。これまでの3ボックスセダンの常識を覆すモノフォルムデザインに、鋭く彫り込まれたキャラクターラインが特徴的。空力にこだわったドアミラー、フード下に隠されたウォッシャーノズル、より大径に見えるアルミホイールなど、ディテールにも徹底的にこだわっている。コンセプトカーをそのまま市販化したような、あるいは初期デザイン案を全くいじらずに出したような、とにかくスタイリングの新しさは国産車随一。

セダンにモノフォルムを取り入れたという点ではプリウスと同じだ。しかし、プリウスは企業イメージの宣伝も兼ねた実験的モデル。対してプリメーラは日本、欧州のミドルクラス市場を広く視野に入れた量販モデル。それを考えると新型プリメーラのスタイリングはやはり驚かされる。いかにもルノー資本が入った(ように見える-元々の欧州日産の顔なんだが)顔つきは賛否両論ありそうだが、「日産が変わった」というイメージにはつながったはず。「2歩先いくデザイン」というコピーに異論はない。

日本市場は二の次? 欧州市場を強く意識したボディサイズ

ボディサイズは2回りも大きくなり、セダンで全長4565mm(先代比+135mm)×全幅1760mm(+65mm)×全高1480mm(+80mm)。ワゴンはセダンよりもリヤオーバーハングを110mm延長している。セダン、ワゴンともに全幅が5ナンバー枠を大きく超えているのが特徴で、国産車としては特異なサイズといえる。これは販売の主力拠点を日本ではなくい欧州としているため。同時に日本市場ではブルーバードとの棲み分けが明確になり、レッドステージとしてはブルーステージ専売車となったセフィーロのポジションも埋めることもできた。

これぞ未来形! PCユーザーの心をくすぐるブラインドタッチのインターフェイス

外観は凄いけど内装は平凡、というクルマは数多いがプリメーラは違う。むしろ外観よりも内装のほうがインパクトが大きい。カーナビはもちろん、オーディオ、燃費・メンテナンスなどの車両情報、半ドア・ガス欠などの警告情報などの情報網を全て7インチセンターディスプレイに集約。これは奇をてらったものではなく、人とクルマのインターフェイスのありかたを追求した結果。垂直配置が常識だった操作パネルは、水平配置のピアノタッチスイッチとジョイスティックに置き換えられており、その真上に位置する7インチモニターの表示と連携させることによりボタン数を最小限に絞り込まれている。しかもそれぞれのボタンには最大で2階層までの役割しか与えないことによりユーザーの混乱も減らす工夫もなされている。

使い勝手はというと、前例がないだけに最初はめんくらってしまうが、それでもその操作は実に論理的で分かりやすい。やがて画面を見ながら感覚で指先が動く、いわゆるブラインドタッチができるようになる。久々に「トヨタを抜いた!」という感動を抱いてしまった。この独自のインターフェイスは廉価グレード以外のグレードに標準装備されており、今後、日産車のスタンダードになるのだという。

その他、プリメーラにはコンパスリンク、ETC(料金自動収受システム)をオプション設定するなど、ITSに対応した機能が盛り込まれる。しかし、日産は昨年、ITS事業には欠かせない携帯電話会社の株をほとんど手放してしまったばかり。皮肉といえば皮肉だ。また、先進的なインテリアデザインに対して、3連センターメーターがアナログというのはスポーティーな演出なのかもしれないがちょっと浮き気味。

室内空間アップ、荷室容量ダウン

効率の良いパッケージングによって実現した室内空間の広さもプリメーラの魅力のひとつだ。上方を濃色、下方を淡色でまとめた内装色と、ややアップライトなドラポジと相まって開放感、乗降性はハイレベル。特に肩まわりと後席の足下空間の余裕はライバルを大きく凌ぐ。また、シートにはベンツにも採用されているシュクラ社製ランバーサポートを国産車初で採用したのも見逃せないポイントだ。

逆にマイナスポイントは、強い傾斜のAピラーのおかげで、前方の車両感覚がつかめないこと。後方はバックビューモニター(オプション)によってたいへんいい。収納スペースが少ないこと、特に天地の低いドアポケットは中途半端。ラゲッジ容量もボディが大きくなったのにも関わらず先代比-60リッターの420リッターと平凡な値になってしまった(ワゴンは+22リッターの440リッター)。これらはすべてデザインを優先したツケではあるが、さほどデメリットはない。

基本性能&ドライブフィール

サスペンションもエンジンもみんな新型

プラットフォームは基本的にサニー、シルフィなどと共通のM&Sクラスプラットフォームだが、ホイールベースは145mmも長く、トレッドは前が50mm、後ろが75mmもワイド。そのうえ、フロントサスはこのプラットフォームでは初のマルチリンク式で、しかも完全な新設計。リアサスは定評のあるマルチリンクビーム式を改良したものだ。タイヤは2リッターが195/65R15が標準で、2.5リッターが205/60R16が標準装備となる。さらに215/50R17サイズをオプション設定する。

エンジンは直墳2.5リットル「QR25DD」と2リットル「QR20DE」の2種類が4気筒が用意される。2.5リットルはシルフィの直噴「QR20DD」をボアアップさせた新開発で、最高出力/最大トルクは170PS/25.0kgmを発生。2リットルは「QR20DD」の直墳レス仕様と呼べるもので、「エクストレイル」と同じ。最高出力/最大トルクは150PS/20.4kgmを発生する。

組み合わされるミッションは、2.5リットルには初めての設定となるCVT「ハイパーCVT-M6」が、2リットルには「ハイパーCVT」がそれぞれ設定される。またワゴンにのみ設定されている4WDは、2リットル「QR20DE」に従来のトルコンATの組み合わせとなる。

ドライビングの楽しさは薄れてしまったが、高剛性ボディに裏付けた快適性は飛躍的に向上

試乗したのはセダン20L。これまでプリメーラといえば、やや重い操舵感と硬めの乗り心地のドイツ車テイストの走りだったが、新型はそういった伝統的な世界とは異質の走りとなっている。その恒例がパワステの軽さだ。他のクルマとして比べれば決して軽くはないのだが、従来型と比べてしまうと手応えにやや欠けるだけに、既存オーナーにとって違和感を覚えるだろう。ペダル類もずいぶん軽くなっており、微妙な加速加減が把握しにくい。いわゆる「ルーズに運転できる」、というタイプだ。ただしボディは意外に大きいので、狭い駐車場では大型車並の配慮がいる。

走りの質感はずいぶんと向上しており、上級感が高まっている。高剛性ボディに裏付けされたシャキッとしたもので、うねった路面でもボディがフラフラと揺れないフラットな乗り味。先代がドイツ車風なら、新型はフランス車風といったところか(最近の欧州車はどれも似たような足なので、この言い方は本当は正しくないが)。この挙動変化の少なさはハイスピードになるほどに活かされ、ワイドトレッド化と相まって高速コーナーでも安心して走れる。

特筆すべきは静粛性の高さだ。旧世代エンジンSR型を搭載していた先代とは全くレベルが違う。今回のQR型はバランサーシステムの採用もあって6気筒に迫るスムーズさ、滑らかさを実現しており、加えてCd値0.30という優れた空力と徹底した遮音対策のおかげで室内は極めて静か。これは開発陣も自負しており、高級車のレベルといっても過言ではない。したがって高速走行もたいへん快適だ。

加速は決して力強くはないが、大柄で鈍そうなボディからしてみれば軽快だ。実用域から高速走行までストレスの走りを提供してくれる。また、先代よりもわずか30kgしか重くなっていない軽量ボディと、CVTの組み合わせによって燃費も良好。2.5リッターモデルは直噴の特性を活かして、2リッターモデルと同じ13.0km/lを達成していることも見逃せない。CVT特有のガサついたフィーリングも皆無。加減速のリニアさも改善されており、もはやCVTという違和感はほぼない。ただスポーティに走ろうとするとDレンジではやや非力感がある。やはりM6があった方が楽しめるだろう。2リッターに設定がないのが残念なところ。

ここがイイ

久々に絶賛型日産車の登場だ。デザインの独自性、クルマのIT化を見越したインパネ、乗り心地を重視した走りなど、ちょっとこだわりのあるでも買える日産車がついに出た。ゴーン社長、中村デザイン本部長が絶対的な決定権を持って開発をバックアップした結果。こういうクルマが作れるということは、ルノーとの提携は悪くなかったということだろう。トヨタが欧州進出に苦しんでいる時期(F1もそのためにやるのだから)に、ルノーである日産が欧州市場を先に押さえるというのはありかもしれない。

内装の作り方がまた凝っている。内張は一体整形で、もはや新車にも「ビニール」はかからない(破る楽しみはない)。ドア内張の造形がウーハーの役目をしてサウンド面でも効果が出ている。音がいいのだ。

リアビューモニタがオプションにあるのは朗報。こうなるとスラントしたノーズでもあり、フロントビューモニタも欲しい。さらに鼻先を出すとブラインドコーナーの先が見えるカメラも。ようは全方向にモニタカメラがあると安全ということだ。

そして、最もいいのはインパネの集中コントロールスイッチ。センターのジョイスティックを動かしながら、左手で各キーをブラインドタッチできるというコンセプトはたいへん素晴らしい。やっとクルマが20世紀の操作系から解放されつつあるという意味では画期的なことだろう。人によってはもはやクラッチペダルというものの存在を知らないように、これからもっと操作系は変わっていっていいだろう。車両情報(オイル交換時期など)が案内されるのも、大変便利。

ここがダメ

ところがそのコントロールスイッチに慣れるのにはしばらくかかりそう。少なくとも数時間の試乗ではブラインドタッチはムリ。まして初めて乗った人は何もできない(笑)! クルマは基本的に個人に売る物だからまあかまわないが、パソコンを使えない、携帯電話が使いこなせないという人に続いて、クルマの操作がわからないという人が増えるかも。個人間のIT能力格差はここにも出そう。

また、せっかくの大型ディスプレーゆえ、パソコンやiモード携帯電話の外部モニターとして使えるようにして欲しかった。これは日産としては十分考えている部分のようだが、ブルートゥースなど今後の新技術への対応(長期に使われるクルマの場合、デジタルの急激な進化への対処方法がまだ未定・クルマに組み込んでしまうとバージョンアップは難しい)、通信会社のシステムの差異(というより企業系列問題・日産はTuka)でまだまだ実現はできそうもない。

もう一つだけ。デザイン的にみるとセンターアナログメーターはまだ許せるものの、ステアリングのデザインだけはどうにもダサい。ルノーぽいともいえるが。

総合評価

昨年1年、溜まりに溜まっていたマグマが爆発した、という感じだ。ここまで革新的なクルマが出せるなら日産は大丈夫だろう。しかしルノーからの社長、いすゞからのデザイン部長と外部から来た人間によっていいものが表に出されるというのは、不快な感覚を持つ人も少なくないはず。が、これこそが今後の企業の生き残り策というか、国際化ということだ。もはや自社とか日本とかの枠にとらわれている場合ではないということを、自動車業界が日本社会に教えてくれている、ととらえるべき。

しかしここまで革新的なクルマだと、保守的な人はついていけない、というか「普通の人に売れるのか、このクルマ」という危惧はある。実際、このクルマのフォローとして、超保守的なブルーバードシルフィーが用意されているわけで、プリメーラは欧州で稼ぎ、日本では新生日産の象徴という位置づけとなるだろう。

CVTは変速ショックがないだけに電気モーター的なフィーリングを生み出す。21世紀的なボディ、インテリアだが、エンジンだけが20世紀のまま。しかしそれもCVTにより、かなり未来的(電気モーター的)なフィーリングになっている。このクルマはプリウスに次ぐ21世紀マイカーだ。象徴に終わらず大ヒットになることを願う。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

最近の試乗記一覧