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トヨタ プリウス α G ツーリングセレクション スカイライトパッケージ新車試乗記(第635回)

Toyota Prius α G Touring Selection Skylight Package

(1.8リッター直4+モーター・330万5000円)

プリウスにプラスαを!
トヨタの新型ハイブリッドに乗って、
クルマとITの未来を問う!

2011年06月17日

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キャラクター&開発コンセプト

2列シートの「v」+3列シートの「+」=「α」


新型プリウスα
(photo:トヨタ自動車)

2011年5月13日に発売された「プリウスα (アルファ)」は、2列シート・5人乗りおよび3列シート・7人乗りの新型ハイブリッド車。すでに1月の米国デトロイトショーでは、2列シートの「プリウス v (ヴイ)」がデビューしており、続く3月のジュネーブショーでは3列シートの「プリウス+(プラス)」が発表されていた。今回発売された「プリウスα」は、それら「v」と「+」を合わせた国内向けモデルだ。なお、当初は4月下旬に発売される予定だったが、実際には今回の震災の影響で5月にずれ込む形となった。

パワートレインは現行の3代目プリウスとほぼ共通だが、ボディサイズは一回り大きく、内外装デザインも異なる。また3列シート車ではトヨタの量産ハイブリッド車では初となるリチウムイオン電池(※1)を車体中央に搭載するなど、多くの部分が専用設計となっている。


(※1:トヨタ車では、プリウス プラグインハイブリッド(現時点では特定利用者向けのリースに限定)ですでに採用。国内向け量産ハイブリッド車では日産フーガハイブリッドに次いで2番目)

日本、北米、欧州でも発売


新型プリウスα
(photo:トヨタ自動車)

生産拠点はプリウスを生産しているトヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)で、販売チャンネルもプリウス同様、トヨタ全店(トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店)。

販売目標は月間3000台だが、当面は震災の影響や受注の集中によって納期はかなり遅れる見込み。発売後一ヶ月の受注は目標の17倍以上となる約5万2000台で、仮に生産が倍増しても年内納車は難しい状況。ちなみにプリウスの月間目標は1万台だったが、初期1ヶ月の受注はその18倍の18万台で、震災前までは月間2万台以上のペースで供給されていた。

なお北米では2011年夏後半に5人乗りのプリウスvが、欧州では2012年中頃に7人乗りのプリウス+が発売される予定。

■過去の参考記事
・モーターデイズ>新車ニュース>トヨタ、新型プリウスαを発売 (2011年5月13日)
・モーターデイズ>新車試乗記>トヨタ プリウス G “ツーリング セレクション" (2009年6月)

■外部リンク
・トヨタ>プレスリース>プリウスα 受注状況について (2011年6月14日)
・トヨタ>プレスリース>トヨタ、新型「プリウス α」を発表(2011年5月13日)
・トヨタ>プレスリース>ジュネーブモーターショーに「Prius +」を出展(2011年3月1日)
・トヨタ>プレスリース>北米国際自動車ショーに「Prius v」を出展(2011年1月11日)

価格帯&グレード展開

5人乗りが235万円~、7人乗りが300万~330万5000円


上級グレードにはLEDヘッドランプ(ロービーム)が標準装備される。写真はロービーム点灯時で、ハイビームは内側のマルチリフレクターが担う

2列シート車は235万~300万円の5グレード。最も安い「S “Lセレクション”」はスチールホイール(16インチ)が標準で、運転席のリフターが省かれる。

3列シート車は、「G」(300万円)と「G “ツーリングセレクション・スカイライトパッケージ”」(330万5000円)の2グレード。最上級グレードの後者には樹脂製のパノラマルーフが標準装備されるが、これは他の主力グレードでも10万5000円で装着できる。

ウィッシュのような3列シート車が主役に思えるプリウスαだが、価格的には2列シート車が選びやすく、実際の初期受注でも2列シート車が全体の約7割を占める。ちなみにプリウスは205万~327万円(レザーシート仕様を除けば270万円まで)、6月16日に発売されたホンダ フィットシャトルのハイブリッド車は181万~233万円だ。

 

(上下イラスト:トヨタ自動車)

【5人乗り】
■S “L セレクション”    235万円
■S              250万円
■S “ツーリングセレクション” 280万円
■G              280万円
■G “ツーリングセレクション” 300万円

 

【7人乗り】
■G                300万円
■G “ツーリングセレクション・スカイライトパッケージ”  330万5000円
 ※今回の試乗車

パッケージング&スタイル

デザインはプリウス風、サイズはウィッシュ並み

ボディサイズは全長4615mm×全幅1775mm×全高1575mm(樹脂パノラマルーフ装着車は1600mm)。数字的にも見た目的にも、現行プリウスより一回り以上大きい。パッケージング的には寸法や3列シート車もあるという点で、トヨタのウィッシュに近い。

 

ボディカラーは全8色。写真は新色のクリアーストリームメタリック

それでもプリウスファミリーに見えるのは、いかにも空力が良さそうなデザインのせいだろう。丸く尖ったノーズ、ブーメラン型のヘッドライト、トライアングルシルエット(真横から見ると富士山型)、エッジの立ったリアバンパーコーナーなどがそう。ボディパネルの表面を素手で触ってみると空力に対するこだわりが実感できる。

 

3代目プリウス。こちらのCd値は量産車でトップクラスの0.25

ホイールベースはプリウスより80mm長い。Cd値は0.29
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm) 最小回転半径(m)
■ホンダ フィットシャトル ハイブリッド 4410 1695 1540 2500 5.1
■トヨタ 3代目プリウス 4460 1745 1490~1505 2700 5.2~5.5
■トヨタ SAI 4605~4615 1770 1495 2700 5.2~5.6
■トヨタ 2代目WISH 4590 1695~1745 1590~1600 2750 5.2~5.4
■トヨタ プリウス α 4615 1775 1575~1600 2780 5.5~5.8
■トヨタ 2代目エスティマハイブリッド 4800 1820 1760 2950 5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

雰囲気はプリウスっぽいが、実際には別物

ステアリングやセンターメーターのあたりはプリウスっぽいが、インパネ全体はまったくの別物。ダッシュパネルにメタル風のファブリックを張ったり、温度・風量・吹出モードの切替を一括操作できる「ワンダイヤルエアコンディショナーコントロール」をトヨタ車で初採用するなど、α独自の工夫がある。

またインパネシフトやパーキングボタンなどは現行プリウスより使いやすく、メーターも文字が若干煩雑ながら見やすくなっている。デザイン的に攻めたものを、使い勝手優先で少し戻した、といったところか。

 

トヨタ車では意外にも初採用の「ワンダイヤルエアコンディショナーコントロール」

1列目のヒップポイントがプリウスより約30mm高いため、乗車感覚や見晴らしはやはりウィッシュに似ているが、インパネデザインは当然プリウスαの方が未来的。また、質感も普通のプリウスよりプリウスαの方が価格相応にちょっと上に見える。ドリンクホルダーのメッキリングなどが効果的。

7人乗りはリチウムイオン電池を前席アームレスト部に搭載


写真は3列シート車。前席ヒップポイントはプリウス比で30mm高い

3列シート車では大型アームレスト内に駆動用バッテリーを搭載。位置は現行エスティマハイブリッドと同じだが、プリウスαの3列シート車の場合は、バッテリーがニッケル水素ではなく、高性能のリチウムイオンになる。よってアームレスト部に収納スペースはほとんどないが、エスティマハイブリッドほどジャマな感じはない。

 

こちらは5人乗り仕様。アームレスト内は収納スペースになる

なお5人乗り仕様では、ニッケル水素電池が普通のプリウスのように荷室床下に搭載され、アームレストは大型の収納ボックスになっている。トレイも大型になり、小物やカバンなどを置ける。

【2列目】 プリウスより断然広い。前後スライドも可


写真は3列シート車だが、2列目シートの作りは2列シート車と共通

2列目はプリウスより断然広々。ホイールベースがプリウスより80mm増えたことで、7人乗りの1-2列目タンデムディスタンス(前後席間の距離)は、プリウス比で35mm増加。ヒップポイントも80mm上昇し、ヘッドルームも45mm増している。

2列目は左右別々に前後スライド可能で、一番後ろに寄せれば、ちょっとしたリムジン風になる。タクシーやハイヤーにも使えそう。

ポリカーボネイト製ルーフを初採用


トヨタ初の樹脂パノラマルーフ

頭上を見れば、プリウスαの目玉装備である樹脂パノラマルーフ「スカイライト」を通して空が広がる。これはいわゆるポリカーボネイト製で、量産車で最初に採用したのは今の2代目スマートだったと思うが(ベバスト社製)、こちらは三菱エンジニアリングプラスチックスが素材を開発し、豊田自動織機が開発・生産したもの。トヨタ車では初になる。

ポリカーボネイトはヘルメットのシールドや防弾シールド、一部のスポーツサングラス等でおなじみの素材で、強度に優れるほか、ガラスに比べて軽量なことがメリット。プリウスαの場合、ガラスより約40%(実質約17kg)軽く出来たという。実際、カタログ値でも装着車は10kgしか重くならない。弱点はコストのほか、傷が付やすいこと、白濁などの劣化だが、傷に関してはハードコート処理で対応し、劣化に関してもほぼ問題ないレベルだという。

 

電動ロールシェイドを閉じた状態
(photo:トヨタ自動車)

ポリカーボネイト製パネル自体は一枚ものだが、車内側にはスチール製のルーフパネルが中央を横切っており、開口部は二つに分割される。これは北米の側面衝突基準に対応するためのようだ。

断熱性能がガラスより高いのも長所の一つだが、電動ロールシェイド(100%遮光)も備えており、前席天井のスイッチで前後同時に開閉できる。また駐車時の室温上昇を防ぐため、ドアロック連動でシェイドを自動的に閉じることもできる。ただし一つのロールで巻き上げるため、前だけや、後ろだけの開閉は出来ない。

外部リンク
■三菱エンジニアリングプラスチックスHP>ニュース>プリウスα樹脂パノラマルーフに採用(2011年5月)
■豊田自動織機HP>ニュース>世界最大の樹脂パノラマルーフを開発(2011年5月)

【3列目】 実用的だが、リアウインドウが間近に迫る


3列目ではパノラマルーフの恩恵はほとんどないが、リアクォーターの小窓が採光に効いている

3列目は2列目よりヒップポイントが45mm高く、居住性はまずまず。太もものサポートは期待できないが、メーカー資料にあるように「サードシートでも170cmの人まで着座可能」。2列目シートの前後スライド位置が真ん中あたりならフットルームは十分だし、圧迫感も少ない。短距離なら十分耐えられる。

 

3列目のアクセスはこんな感じ

一つ気になったのは、ヘッドレストの後ろにリアウインドウが迫ること。これは、そもそも寸法に余裕がないことに加えて、リアウインドウの傾斜が強いからで、被追突時のことを考えると若干の不安がある(プリウスαに限ったことではないが)。北米市場に5人乗りだけ投入される理由はこのあたりかも。

なおエアバッグは計6個(1列目フロント×2、1列目サイド×2、1-3列目カーテンシールド×2)を標準装備。3点式シートベルトは全席に装備される。

荷室容量は200~1035リッター(3列シート車)

トランク容量は3列目シート使用時が200リッターで、3列目を格納した時が505リッター。一方、2列シート車では535リッターになる。2列シート状態であれば、どちらも荷室奥行きはカタログ値で約995mm、最大幅は約1580mmとなり、9.5インチのゴルフバッグを4セットまで積めるとのこと。

 

3列シート車で2-3列目を畳んだ状態(1035リッター)

さらに、2列目の背もたれを40:60分割で前に倒せば、3列シート車では1035リッター、2列シート車では1070リッターに容量を拡大できる。この時の荷室奥行きは約1.9メートルだ。ただこの時の荷室フロアは、全体に少し後ろ下がりになる。

 

容量60リッターの「デッキアンダートレー」

パンク修理キットを搭載するので、スペアタイヤは省略。その代わりに荷室床下には、容量60リッター、深さ345mmの樹脂製ボックスがある(5人乗り仕様には奧にもう一つ容量15リッターの小型ボックスもあり)。樹脂製ボックスは巨大なので、いろいろな使い方ができそうだ。

 

パンク修理キット

大型ボックスの奧にはパンク修理キットが入っているが、オプションで応急用スペアタイヤに変更することも可能(1万0500円)。この場合、樹脂製ボックスは大型から小型(15リッター)に変更される。

基本性能&ドライブフィール

「普通のプリウス」よりも普通


エンジン(99ps、14.5kgm)+モーター(82ps、21.1kgm)は、見た目も中身もプリウスとほぼ同じ。システム出力も同じ136ps

試乗したのは、最上級グレードの“ツーリングセレクション・スカイライトパッケージ”(7人乗り)。

節電のため照明が減らされた駐車場で、プリウスαに近づいてゆくと室内照明がフワッと灯る。レクサスみたいだなあと感心しつつスタートボタンを押し、モーターだけでソロソロと走り出す。

充電状態が良好なら、モーターだけでしばらく走ってくれる。念のためEVモードのボタンを押せば、60km/hまでEV走行が可能で、上限速度に達するとピピッとアラームがなってエンジンが掛かる。このあたりは、ニッケル水素電池の2列シート車でも変わらない。

 

メーター内に「EV」の表示が出ていれば、エンジンは始動していない

他の新型ハイブリッド車同様、プリウスαでも発進~約25km/hのEV走行中は、歩行者に音で接近を伝える「車両接近通報装置」が作動する。車内でも窓さえ開ければ、モーターの唸りに似た電子音がかすかに聞こえる。

アクセルを踏み込めば、エンジンとモーターのトルクが威力を発揮し、かなり俊敏に加速する。特にパワーモードでは速い。システム全体の最高出力はプリウスと同じ136psだが、車重が100kgほど増えているため、プリウスαではファイナルを少しローギア方向に振っているという。

 

全体的には現行プリウスをおっとり穏やかにした、という感じ。運転感覚はまったく普通で、ハイブリッド車特有の癖のようなものもなく、初めてハイブリッド車に乗る人でも、たぶんほとんど違和感なく乗れそう。こうなると初代プリウスのようなヘンな運転感覚(特にブレーキにはコツが必要)が愛おしく思えてくるが、当然ながら世の中的には、もはやハイブリッド車は特別なクルマではない、ということなのだろう。

「ばね上制振制御」も採用


“ツーリングセレクション”に標準装備の215/50R17タイヤ。銘柄はトーヨーのプロクセス

普通のプリウスと明らかに違うのが乗り心地。車重が増え、ホイールベースが伸び、足まわりを入念にチューニング、といったことの相乗効果で、明らかに重厚感が増している。遮音材も増量されて、静粛性もなかなか高い。

それらに加えて目新しいのが、駆動用モーターを制御することでピッチングを抑制するという「ばね上制振制御」なるもの。例えば凸路でノーズが持ち上がる際には、モーターの駆動トルクを瞬時に弱めてノーズダイブ方向の力を発生させ、逆に凹路でノーズが沈む時にはモーターの駆動トルクを強めて、フロントリフト方向の力を発生させるという。乗り心地だけでなく、接地性や操舵感も高まるというのがトヨタ側の説明。

実際の効果に関しては、どこまでがシャシー本来の性能で、どこからがばね上制振制御なのか、オンオフスイッチがないので確かめようがないが、現行プリウスに比べて姿勢がフラットに保たれるのは間違いない。

 

コーナーが連続するところでの、おっとりした動きもプリウスと大差なし。曲がらない、ということはないが、思い切りコーナーに飛び込んでも、長いホイールベースの後ろにある後輪は、良くも悪くもまったり素直に付いてくる、といった感じ。そんなわけで一人で乗っている時はちょっと退屈だが、後席のパッセンジャーにとっては快適なクルマだろう。

全体としてはプリウスの硬質なところが丸められ、マイルドになった。ただ同時にプリウスにある軽快さ、非トヨタ車っぽさも薄まっている、という印象も受けた。

【エコモード】アクセルを踏み込まないと遅い


「パワー」「エコ」「EV」の切替スイッチはセンターコンソールにある

エコモードで戸惑うのは、ノーマルモードと同じ感覚でアクセルを踏むと、交通の流れについていけないこと。ジワッと踏んでいては、前を行く軽自動車にあっさり置いてゆかれるし、後続のクルマにも迷惑をかけてしまう。

それを避けるには、意識的にアクセルを踏み込むことになるが、すると今度は「ハイブリッドシステムインジケーター」の針が、容易に赤の「パワー」領域に入ってしまう。それでもエコモードの方がノーマルモードより燃費は良いのだろうが・・・・・・。せっかちな人は、ノーマルモードに入れっぱなしで走ってしまうだろう。

試乗燃費は15.1~24.0km/L。10・15モードは31.0km/L


エコドライブ情報を表示する「ESPO(エコドライブサポートシステム)の画面。情報はG-BOOKセンターに蓄積される。通信は専用DCMのほか、Bluetooth対応携帯電話で可能

今回はトータルで160kmを試乗。あくまで参考値ながら試乗時の燃費は、一般道と高速道路をハイペースで走った区間(約90km)が15.1km/L、一般道をノーマルモードで走った区間が22.0km/L、空いた一般道をエコモードで走った区間(約30km)が24.0km/Lだった。渋滞路を走っているとドンドン伸びる、という傾向は、これまでの歴代プリウスと同じ。

モード燃費は2列シート車でも3列シート車でも同じで、10・15モードが31.0km/L、JC08モードが26.2km/L。これに対して現行プリウスはそれぞれ35.5~38.0km/L、30.4~32.6km/Lなので、モード燃費では1割~2割減であり、経験上、条件が同じなら実燃費も似たような差が付くと思われる。

なお、ついでに触れておくと、フィットベースの小型ステーションワゴンであるホンダのシャトル ハイブリッド(5人乗りのみ)の10・15モード燃費は30.0km/Lで、JC08モード燃費は25.0~26.0km/L。プリウスαとはかなり拮抗している。

指定燃料はもちろんレギュラーガソリンで、タンク容量はプリウスと同じ45リッター。高速道路でなら無闇に飛ばさない限り、燃料警告灯が点くまで700~800kmは走り切るはずだ。

ここがイイ

乗り心地、ワゴンであること、空力デザイン

重厚感の増した乗り心地。そしてなによりステーションワゴンであること。国産車で久々のワゴンボディは、輸入車に流れていたワゴン志向のユーザーを呼び戻すはず。「プリウス」ならブランド的にも輸入車に対抗しうる。

よく見ると変な形だが、その空力フェチなデザインは評価すべきでは。欧州車が空力にこだわりつつ、まだ自動車らしい形をしているのと対照的。「新しい乗り物」感があるデザインテイストは、プリウスシリーズの命だと思う。

ここがダメ

17インチ仕様の小回り性能、軽快感のなさ、など

小回りが効かない。最小回転半径は16インチタイヤ(205/60R16)仕様なら5.5メートルと標準的だが、上級グレードの“ツーリングセレクション”(215/50R17)になると、いきなり5.8メートルになる。この差は大きく、例えば普通のプリウスやコンパクトカーのような気持ちでステアリングを一杯に切っても、思ったように曲がらなくて面食らう。

軽快感に欠ける運転感覚。プリウスよりユッタリしているが、何か重いものを引きずっているような感覚も同時にある。アクセルを踏み込めばエンジン主体で俊敏に加速してゆくが、ハイブリッド車らしいモーター感覚は薄れる。

走行モードの切替ボタンがアームレストの上にあり、走行中に操作しにくいこと。また意識して見ない限り、ボタンが視界に入ってこないので、その存在を忘れがちになる。

上級グレードではプリクラッシュセーフティ&レーダークルーズをオプションで選べるが(14万7000円)、これを選ぶにはHDDナビ&スーパーライブサウンドシステム(50万0850円)を装着する必要がある。つまり合わせて64万7850円!の出費。「ナビはPNDやスマートフォンで十分」という人は多いから、プリクラッシュ単独でも選べるようにして欲しいところ。

1575mmの全高は立体駐車場で厳しい。ちなみにシャトルハイブリッドは1540mm。

総合評価

初代プリウスのこと


初代プリウス(1997年)
(photo:トヨタ自動車)

初代プリウスは1997年に登場したが、街を走り始めたのは1998年から。つまりハイブリッド車が巷に登場して以来、早13年と半年が過ぎたことになる。モーターデイズとほぼ同じ年月を重ねてきたわけだ。

プリウス登場の直前、一体どんなクルマが人気だったのか、1997年6月の雑誌をちょいと引っ張り出して、評論家の「ベストバイ」というのを見てみた。今でいうミニバンではイプサム、ワンボックスタイプならタウンエースノア、ステーションワゴンではレガシィ、SUVではテラノ(レグラス含む)、アッパーミドルカーではマークII、ミドルカーではギャラン、コンパクトカーではシビック、クーペではNSX、そして軽自動車ではワゴンR。これらが評論家が推すクルマであった。レガシィとワゴンRというビッグネームを除けば、どのクルマも今や見る影なしという状態。逆にいえば、こんなクルマがおすすめだったところへ突如登場した初代プリウスは、とてつもなく先進的なクルマだったと言える。

 

初代プリウス(1997年)
(photo:トヨタ自動車)

このころのガソリン価格はリッター105円前後。現在の145円前後と比べると4割近く安いし、環境問題も今ほどはヒステリックではなかった。だから、そんな時期にプリウスを開発・発表したトヨタの先見性はやはりすごいし、同社がその後、世界一へ向かう原動力になったと思われる。1989年の初代セルシオで世界に並ぶクルマ作りができることを証明したトヨタが、それから10年を待たずして世界をリードするクルマを生み出したのだ。

それでもこの初代プリウスは売れなかった。環境性能やパッケージングを愚直に追求したコンセプトは、相変わらず大きくて立派なクルマを求めていた当時の消費者の心には響かなかった。初代には車格感がなかったのだ。あまりに急進的な商品だったことは間違いなく、初代に関していえば、まさにマニアックなクルマ以外の何ものでもなかっただろう。また、それと同時に「売れば売るほど赤字」という高コストカーでもあった。また初代の前期モデルは電池に問題を抱え、メーカーが交換と永久保証をせざるを得なくなったことは、トヨタにとってはおそらく苦々しい思い出となっているだろう。

今やハイブリッド車に人気が集中


2代目プリウス(2003年)
(photo:トヨタ自動車)

しかし2代目プリウスは、初代の潔いコンセプトに反して、サイズは少し大きくなり、見た目も一気にカッコよくなった。時代はいよいよエコヒステリーの様相を呈しており、それにともなって日本で、そして北米で大ヒットすることになった。その後の躍進は、よく知られる通り。やがて日本で一番売れるクルマに踊り出て、もはやクルマに関心のない人でも新車購入ともなれば、ひとまずプリウスを検討するところまでになった。かつてはマニアックだったクルマが、15年後には安全牌のメジャーな大衆車に出世?したわけだ。当然北米市場でも強力なトヨタのイメージリーダーになった。

そして今年2月にはトヨタが世界中で販売したハイブリッド車の累計台数が300万台を突破した。もちろんハイブリッド車は他のメーカーも作っているが、この分野でトヨタが世界を完全にリードすることになったのは、初代プリウスの開発時に様々な特許関係を押さえてしまったからだろう。独占的にハイブリッド車を作ってきたことで、トヨタのイメージは向上し、世界一のメーカーとなった。

しかし逆にいえば世界の他メーカーからは競合するハイブリッド車がほとんど登場せず(ホンダは頑張っているが)、エコカーの分野においてトヨタとハイブリッド車が主導権を握れなかった側面は否めない。世界のメーカーが自由にハイブリッド車を作れたら、今のクルマ社会はずいぶん変わっただろう。逆にいえば、それゆえにフォルクスワーゲンなどではガソリン車のダウンサイジング(過給器の装着による排気量の縮小)が進み、多くのガソリン車でトヨタよりはっきりと優位性を持ってしまった。トヨタ自身も、好調なハイブリッド車に比べて、ガソリン車の販売は芳しくはない。プリウスをはじめとするハイブリッド人気に一極集中している現状だ。

クルマにおけるIT化の出遅れ

そんな中で登場したαは、プリウスブランドの世界戦略車と言っていいだろう。初代プリウスのボディサイズは小さく、2代目、3代目でも北米では決して大きくはない。αのサイズで、やっと世界に通用する普通の小型車サイズとなり、ステーションワゴンになったことで、より万能なクルマとなった。日本では一般的な立駐にも入らないから、ちょっと大き過ぎるように思えるが、大きなクルマに抵抗がなくなってきた日本人には、そう苦にならないようだ。αは北米でさらにハイブリッド車が売れるための戦略車であり、日本では3列シートという需要に応えるための戦略車だ。サイズが大きくても燃費がいいし、乗り心地もいい。車格も高まった。クルマとしては、ひとまず言うことなし。エコカーバンザイ、ハイブリッドバンザイ、そして次に続くプラグインハイブリッドバンザイである。

しかし、と思う。1997年からの13年間で、ITの世界は激変したのだが、クルマはほとんど変わっていない。初代プリウスがデビューした頃は、グーグルもまだ認知されていなかった。モバイル通信環境など今思えば石器時代のようなもの。そういえば、あの頃はMP3といったデジタルオーディオもまだなかった。そんな時代に、今とほとんど変わらない機構を持って登場した初代プリウスは、まさに21世紀へGO!(215万円という価格の由来)というべき、最先端商品だった。それとαは何が違うかと言えば、基本的にはリチウムイオン電池がついに載ったということぐらいではないか。

ガソリン車だって、つぶやいていい

1999年当時、トヨタはcrayonという名で、通信を使ったEVのカーシェアリング実験システムを完成させていた。仕組みはほとんど日産リーフのものと同じ。あの時代にそういったもののコンセプトはほとんど出来ていたのだ。しかしクルマを取り巻くモバイルシステムは、プリウスが大衆化していったようには大衆化しなかった。ハイブリッドカーは普及しまくったが、インテリジェントカーは見る影もない。

トヨタはやっと今年になって、マイクロソフトやセールスフォースとの提携を強め、トヨタフレンドとしてクルマのネット化、インテリジェント化を進めようとしている。しかしなぜその分野で出遅れたかを今はどう考えているのだろうか。初代プリウスが出た頃にあった仕組みが、どうして今、現実の物となっていないのだろうか。

端的にいえば、クルマがつぶやく、たったそれだけのことに、なぜそう時間がかかるのだろうか。クルマにおけるIT化の出遅れは、今後の日本車の世界に暗い影を投げかけることは間違いない。だって大衆は、燃費以外のクルマの性能など、もはや求めていないのだから。それはプリウスが証明してきたことではないのか。

 

スマートハウス、スマートカー、カーシェアリング、つまりはスマートグリッド、最近はメッシュなどと呼ばれる世界で、クルマが今後、情報端末の一つとなっていくのは間違いない。そこを初代プリウスように切り開いていくことができれば、たぶん世界一のメーカーで在り続けられるだろう。感動は13年も前に味わった。新しいαにもはや感動はない。であれば、これが売れているうちに、早くクルマのインテリジェント化を実現して、驚かせて欲しいのだ。

トヨタにそれができなければ、スマホのように、液晶テレビのように、クルマもアジアに食われてしまうだろう。ここまで良くなると燃費など1、2km/L伸びたとて、消費者はもはや何とも思わない。それよりハイブリッド車ほど燃費が良くなくても、スマホがつながるクルマができたら、それを買うのではないか。EVが充電を促すため、自ら「つぶやく」のは確かに凄いが、ガソリン車がガソリン切れをつぶやいても構わないと思う。つまりハイブリッド車やEVだけがつぶやくのではなく、ガソリン車だってつぶやいていい。つぶやけるガソリン車が安ければ、大衆はそちらを買うだろう。

 

つまりは一刻も早く、つぶやくクルマを市場に出すことが重要だ。そのパートナーがマイクロソフトやセールスフォースということに一抹の不安がある。メイド・イン・ジャパンじゃダメなんですか。これまでやって来たことをベースに、日本人の叡智を振り絞る時じゃないんですか。パナソニックのメイドイン神戸パソコンで原稿を書きながら、そうつぶやかずにいられなかった。

試乗車スペック
トヨタ プリウス α G ツーリングセレクション スカイライトパッケージ
(1.8リッター直4+モーター・330万5000円)

●初年度登録:2011年4月●形式:DAA-ZVW40W-AWXGB(L)
●全長4615mm×全幅1775mm×全高1600mm
●ホイールベース:2780mm ●最小回転半径:5.8m
●車重(車検証記載値):1500kg(910+590) ※HDDナビ装着につき+10kg
●乗車定員:7名

●エンジン型式:2ZR-FXE
●排気量・エンジン種類:1797cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:80.5×88.3mm ●圧縮比:13.0
●最高出力:99ps(73kW)/5200rpm
●最大トルク:14.5kgm (142Nm)/4000rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L

●モーター形式:5JM ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
●定格電圧:-V
●最高出力:82ps(60kW)/-rpm
●最大トルク:21.1kgm(207Nm)/-rpm
●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:136ps(-kW)/-rpm
●システム最大トルク:-kgm(-Nm)/-rpm
●10・15モード燃費:31.0km/L
●JC08モード燃費:26.2km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 トーションビーム+コイル
●タイヤ:215/50R17 (Toyo Proxes R35)

●試乗車価格:400万7450円 ※装着オプション:プリクラッシュセーフティシステム&レーダークルーズコントロール 14万7000円、HDDナビゲーションシステム・地デジTV・ETC 50万0850円、G-BOOK mX Pro専用DCM+盗難防止システム 5万4600円
●ボディカラー:クリアーストームメタリック

●試乗距離:約180km ●試乗日:2011年6月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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