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トヨタ プリウス G “ツーリング セレクション"新車試乗記(第 562回)

Toyota Prius G “Touring Selection

(1.8リッター直4+モーター・270万円)

パワーとサイズをアップ!
燃費性能もアップ!
「3.0」にバージョンアップした
新型プリウスに試乗!

2009年06月26日

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キャラクター&開発コンセプト

すべての点で先代を上回る3代目

1997年に初代、2003年に2代目が登場し、この2009年5月18日に3代目となったプリウス。過去12年間に世界40ヶ国以上で累計125万台(2009年3月末時点)を販売したハイブリッド車のベストセラーだ。

基本的には先代のコンセプトを受け継ぐ3代目だが、ハイブリッドシステム「THS II」は全体の90%以上が刷新され、ハイ・ローの2段ギアを持つリダクション機構付に進化。排気量は従来の1.5リッターから1.8リッターとなり、またボディサイズも拡大しながら、10・15モード燃費は先代の35.5km/Lを上回る38.0km/Lとなっている。

1ヶ月で18万台を受注

国内販売は初代はトヨタ店のみ、2代目はトヨタ店とトヨペット店のみだったが、新型はトヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店と、要するにトヨタ全チャンネルになった。

生産はトヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)とトヨタ車体(株)の富士松工場(愛知県刈谷市)。いわゆるブリッジ生産(並産)となる。

販売目標は先代後期型で掲げられた月間3500台の約3倍にあたる月間1万台。しかし既報の通り、発売後1ヶ月までの受注はその18倍の約18万台に達したという。まさに「プリウス一人勝ち」と言いたくなる状況にある。

また海外では従来の倍となる80以上の国・地域で順次発売する予定。ちなみに初代の累計販売台数は12万台、2代目(2005年末から中国でも生産)は現時点で110万台を越えており、こうなると3代目は優に300万台を越えそう。

先代プリウスも併売。レクサスにも新型ハイブリッドを投入

なお先代プリウスは主にビジネスユースを想定して装備を簡略化した「プリウスEX」となり、トヨタ店とトヨペット店のみで販売が継続される。価格はホンダ・インサイトと同じ189万円で、こちらは月間2000台が目標。

一方、レクサス店にはこの7月から新型レクサスHS250hが投入される。新型プリウスのレクサス版とも言えるモデルだが、こちらは4ドアセダンで、エンジンは2.4リッター直4となる。こちらは噂では約400万円弱とのこと。

■参考
トヨタ自動車>プレスリリース>3代目プリウス発売(2009年5月18日)
トヨタ自動車>プレスリリース>2代目プリウスを新グレード「EX」として発売(2009年5月18日)
トヨタ自動車>プレスリリース>3代目プリウス受注状況について(2009年6月19日)

■参考(過去の新車試乗記 トヨタ プリウス)
・トヨタ プリウス (1998年1月) ※初代
・トヨタ プリウス (2000年7月) ※初代後期型
・トヨタ プリウス G ツーリング セレクション (2003年10月) ※2代目
・トヨタ プリウス G (2005年12月) ※2代目後期型

価格帯&グレード展開

205万円から、レザー仕様の327万円まで

基本的にはベースグレードの「L」、主力の「S」、装備やオプション設定がそろった「G」の3グレード体制だが、「S」と「G」には215/45R17タイヤ、専用チューンドサスペンション、LEDヘッドライト等を装備した“ツーリングセレクション”、「G」にはレザー内装を追加した“ツーリングセレクション・レザーパッケージ”があり、実質6グレードとなる。

やはりインサイト(189万円~)への対抗もあってか、スタート価格は先代より20万円ほど安いが、主力・上級グレードの価格帯は先代と大差なし。クルマのポテンシャルは大幅に上がっているので実質値下げではある。

■L                  205万円
■S                   220万円
■S “ツーリングセレクション”     245万円
■G                   245万円
■G “ツーリングセレクション”     270万円 ★今週の試乗車
■G “ツーリングセレクション・レザーパッケージ”   327万円

 

新型プリウスのウェルキャブ仕様 (フレンドマチック取付用専用車“タイプIV”)
(Photo:トヨタ自動車)

オプション関係はHDDナビが30万8700円(最上級は標準装備、ベースグレードには設定なし)、レーダークルーズ&プリクラッシュセーフティが14万7000円(Gのみ)。オーディオやアルミホイールは(EXを除いて)全車標準となる。

なお、ウェルキャブ車の一つであるフレンドマチック取付車には、車いすをルーフに自動収納できるトヨタ初の「ウェルキャリー」が用意されている。ルーフボックスの形状がプリウスと相似形になっているのが面白い。

パッケージング&スタイル

すべては空力とパッケージングのため

ボディサイズ(先代比)は全長4460mm(+15)×全幅1745mm(+20)×全高1490mm(同)。ホイールベースは2700mm(同)。数字だけ見るとそれほどサイズアップしたようには見えないが、実際にはかなりボリューム感が増している。ブーメラン型のヘッドライト、複雑な凹凸面のサイドパネル、大径タイヤ、後ろ上がりのウエストラインなどの相乗効果だろうか。先代に比べて「かわいらしさ」は後退したように見えるが、すべては空力や室内空間のため。

 

例えばCd値は0.25と世界トップクラス。ちなみにホンダの初代インサイト(2ドアクーペの方)や新型メルセデス・ベンツ・Eクラスも同じ0.25で並ぶ。さらに先代プリウスが0.26、シビックハイブリッドが0.27、2代目(現行)インサイトが0.28。Cd値は風洞施設によって誤差があるようで、またあくまで前面投影面積に掛ける係数に過ぎないが、空力に不利な4ドアハッチバックボディでこの数値はすごい。ルーフの断面形状は先代プリウス以上にセンター部分が凹んでおり、ドラッグを抑制。ほかにもドアパネル凹面にグリップ式ドアハンドルを埋め込むなど、細部まで「ここまでやるか」というほど凝っている。

 

デザイン一新。ブリッジ型センターコンソールを採用

オーリス/ブレイドのようなブリッジ形状のセンターコンソールが目を引くインテリア。センターメーターは先代と変わらないが、インパネの形状はガラリと変更された。内装に関しても全体にボリューム感が増し、先代のような簡素な雰囲気は無くなっている。

 

ブルーのカーボン調素材があしらわれた電子制御式シフトレバーは、基本的には先代と同じタイプ。操作後は常に左上に戻るもので、右横がN、右上がR(リバース)、右下がD、真下がB(エンジンブレーキ重視)だ。パーキングは右上のボタンとなる。

先代ユーザーなら大丈夫だが、初めてプリウスに乗る人にとってはここが最初にとまどう部分。特にパーキングボタンは小型になって目立たなくなり、誰もが最初は探してしまうはず。一方、パーキング「ブレーキ」の方は相変わらず足踏み式であり、ここだけが古くさく見える。

大幅に多機能化したセンターメーター

センターメーターは大幅に多機能化しており、見たい表示画面はステアリングスイッチで呼び出すことになる。

画面の種類は、歴代プリウスでおなじみの「エネルギーモニター」(写真)、アクセルの踏み方に応じてバーグラフが動くことでエコ運転を促す「ハイブリッドシステムインジケーター」、トリップメーターに連動して区間燃費を棒グラフで表示する「燃費履歴」、時間単位での燃費を棒グラフで表示する「1分間・5分間燃費」など。

 

ステアリングスイッチには感圧式スイッチが仕込まれており、少し押すとどのスイッチに指が触れているかをセンターメーター内に表示する「タッチトレーサーディスプレイ」機能が付いている。これらの工夫によって、先代だと最大16個もあったステアリングスイッチが一気にシンプルになった。

ルーフラインを変えてヘッドルームを拡大

全高やホイールベースが先代と同じでも、広くなった印象を受けるリアシート。これは先代では前席乗員の真上に頂点があったルーフラインをアーチ状に変更し、頂点を後方に移動させたから。これによりヘッドルームの余裕が確実に増した。また足もとの広さも、前席バックレストの薄型化などによって若干増えているようだ。

シート形状はやや平板だが、座面長は十分にあり、座り心地は悪くない。また乗降時に頭がルーフに当たらないのはホンダの現行インサイトより優れる。

 

唯一気になるのは、そんな新型プリウスでも身長170センチを越えたあたりからルーフに頭がつかえてしまうこと。室内が広々しているので圧迫感はないが、リクライニング角度は固定だし、そもそもルースな姿勢だと収まりが悪いので、大柄な男性の4人乗車はつらいかも。まあ、しかし絶対室内寸法とCd値0.25、そしてプリウスらしいデザインを両立するとなると、これが最適解か。

ソーラーパネルで駐車中も換気


(photo:トヨタ自動車)

試乗車には無かったが、新しい装備で面白いのがソーラーパネルで発電して室内換気を行う「ソーラーベンチレーションシステム」だ。これはその昔、マツダが1990年代にセンティア等で採用したもので、最近ではアウディのA8にも設定されているが、トヨタでは意外にも初採用。いずれも炎天下の駐車中に室内の換気を行ない、温度上昇を抑えるというものだ。

プリウスの場合、換気システムをオンにした状態で日射量などの条件が揃えば、自動的にシステムが稼働する。目安としては、外気温30度Cで室内温度80度Cの場合、室内温度を20度Cほど下げられるという。換気には通常の空調ブロアを使用し、もちろん外気導入となる。

さらに電動エアコンを車外からスマートキーで動かし、もう15度Cほど室温を下げられる「リモートエアコンシステム」(世界初)も備わる。作動時間は3分間だ。この2つにより、室温を最大35度C程度下げられるという。

トランク増量。パンク修理キットも選択可能に

ぱっと見た目は先代と似たようなトランク形状だが、荷室容量はトノカバー無しの状態で約30リッター増の446リッター。9.5インチのゴルフバッグが先代の2個から3個積めるようになったという。

 

荷室高が限られるので自転車のようなモノは積みにくいが、フロアボードを外せばもう少し高さを稼ぐことができる。床面がほぼフラットになるなど、拡張性もまずまずだ。使わないトノカバーを床下に収納できる工夫も継承されている。

 

床下の樹脂トレーを外した先には、応急スペアタイヤと工具が収まる(オプションでパンク修理キットへの変更も可能)。奧に見えるのは従来より小型化されたハイブリッドシステム用ニッケル水素電池だ。通常の鉛バッテリーは、荷室右側の下に収まる。

基本性能&ドライブフィール

ハイブリッドの基本的な仕組みは従来通り

試乗したのは専用チューンドサスペンションと17インチタイヤ、LEDヘッドライトを装備した「G」の“ツーリングセレクション”。トヨタの広報車は、最上級グレードのフルオプション車が多いが、今回の車両には話題のソーラーパネル付ムーンルーフ(21万円)は未装着。実はこのオプション、専用サスペンションを備えた“ツーリングセレクション”では選択できないから。このソーラーパネルを装着すると車重が30kgほど増加するので、せっかく仕上げたハンドリングへの影響を嫌ったのかも。

歴代プリウスのハイブリッドシステムは周知の通り、シリーズ・パラレル式と呼ばれるもの。新型の仕組みも基本的には従来通りで、簡単に言えばエンジンを止め、モーターのみでも走行できるのが特徴だ。もちろん新型にもEVモード(車速約40km/h以下で、数100メートルから約2km程度)が備わる。

エンジンとモーター、いずれのパワーも2~3割増

エンジンは先代の1.5リッター「1NZ-FXE」(77ps、11.7kgm)から、1.8リッター「2ZR-FXE」(99ps、14.5kgm)に変更。排気量で2割、馬力で3割、トルクで2割4分増となっている。

またモーターは68psから82psにパワーアップ。モーターを小型化したため、トルク数値は40.8kgmから21.1kgmにダウンしているが、モーターの高回転化(とそれを可能にするリダクションギアの追加)によって馬力は約2割増となっている。

システム出力は136psだが、トヨタは「2.4リッター車並みの動力性能」とうたっているので、トータルでのトルクは23~24kgmあたりだろうか。車重は主力グレードで1350kg、試乗車で1390kgだ。

もはやプレミアムカー

走り出して気付くのが、操縦性がすっかり「クルマ」らしくなったこと。ステアリング、アクセル、ブレーキなどの手応えがすっかり普通に、というか下手な同クラスの純ガソリン車よりしっかりし、もはやプレミアムカーといった感じ。静粛性も高まり、乗り心地も良くなり、重厚感すら漂わせる。

例えば静粛性は、先代ではエンジンが掛かったことが何となく分かったもので、先代の試乗記では、「アクセルを踏み込んでエンジンが掛かった時は、ブォーンと20世紀の音が聞こえてくる」と書いたほど。一方、新型ではアクセルをかなり深く踏み込まない限り、始動の瞬間はまず分からない。

一方で、やはりハッチバック車ゆえ、リアシートに座ると荷室からのノイズ侵入が気になるところ。特に問題となるレベルではないが、特に静かというわけでもない。個人的には遮音・吸音材を追加して無音走行感を高めたいところ。

しっとり感すらある乗り心地

乗り心地の良さにも正直驚いた。初代プリウスはフランス車のような柔らかさで、2代目は一転して少し硬めの乗り心地になったが、新型は操縦安定性の良さも含めて、かなりしっとりした乗り心地になった。ロードノイズもよく抑えられており、その意味でもまさにプレミアムカーという感じ。

なお、先代のタイヤは標準仕様で185/65R15、“ツーリングセレクション”でも195/55R16だったが、今回試乗した新型の“ツーリングセレクション”は215/45R17という立派なサイズを履く。銘柄はミシュランのプライマシーHP(フランス生産品)で、乗り心地の良さはこのタイヤとツーリングセレクション専用サスペンションに負うところが大きいかもしれない。

「クルマらしくなった」というのはハンドリングについてもそうだが、ワインディング等へ行くと、やはりそこにはプリウス独特の世界がある。基本的には電動ステアリングと協調制御する「S-VSC」(全車標準)によって徹底的に安定サイドで走らせるもの。コーナー侵入時にブレーキアシストが過敏に介入したのには最初びっくりしたが、ポテンシャルそのものは非常に高い。先代プリウスもこの点はハイレベルだったが、少なくとも乗り心地等を含めた全体としてのレベルアップは著しいと思われる。

試乗燃費は高速主体で17.8km/L

肝心の燃費だが、今回はまず高速道路(東海北陸道)をメインに約500kmを試乗。燃費運転は特に心がけない走りで、約17.5km/Lとなった。なお先代の後期型で、これに割と近いパターンで中央高速を900km走った時の結果はというと約15km/L。いずれもプリウスにとっては最悪の条件だが、そこでもきっちり燃費アップしているのは偉いというか、ホッとしたところ。

ちょっと極端な試乗になってしまったので、さらに一般道で燃費をチェック。都市部では23~25km/L程度を維持する一方、郊外の空いた道路(つまり車速が上がる=エンジン稼働時間が増える)では21~23km/L程度で推移。総じて渋滞路では燃費が伸び、郊外で伸び悩むのは歴代プリウスに共通する傾向だが、新型ではその傾向が一層強まっているという印象を受けた。結果、約560kmに及ぶ試乗燃費は17.8km/L。なお試乗はほとんど燃費重視の「エコモード」で行った。

なお10・15モード燃費は、ベースグレードの「L」で38.0km/L。試乗した上級グレードの場合は35.5km/Lだ。先代はベースグレードの「S」で35.5km/L、「G」で33.0km/L、“ツーリングセレクション”で30.0km/Lだったから、おおむね1割程度は向上したと見ていいだろう。

ここがイイ

「クルマ」として、「ハイテクカー」として確実に進化した

2割以上のパワーアップを果たし、快適性も静粛性も増し、車重も増えて、タイヤサイズも立派になったというのに、燃費をしっかり上げてきたこと。確かに飛ばしてしまうと期待ほど伸びないという印象はあるが、市街地での燃費は素晴らしく、その意味でも進化は実感できる。

またS-VSC(全車標準)、14万7000円という低価格で設定されたプリクラッシュ&レーダークルーズコントロール、ソーラーパネル付きムーンルーフによる室内換気システム、そしてリモコンによるインバーターエアコンの車外操作といったあたりで、いよいよハイブリッドとハイテクが大衆車クラスで合体したことは、クルマの未来を明るくしている。

「クルマ」としての欠点がほとんどなくなり、いい意味で「普通の(すごく良くできた)クルマ」になったこと。内装なども高級ではないが、そういった割り切りがハイテクカーらしい質感を実現している。木目調パネルなどをつける余地を許さなかったデザインワークは潔い。高級車ではないが、高級車から乗り替えても納得できる。

 

楕円小径ステアリングは賛否両論あるようだが、少なくとも小回りがやたら効くように感じられたのはこのステアリングのせいだろう。試乗車は17インチ仕様で最小回転半径が標準車より大きめの5.5メートルだったが、感覚的には5メートルくらいに思えた。エクストラウインドウによって後方視界も意外に良く、コンパクトカーとして気楽に乗り回せそう。

ここがダメ

発展途上の操作系&モニター系

先代ではインパネシフトだったシフトレバーが新型ではセンターコンソール配置になったこと。本来はメルセデス・ベンツ Sクラスのようなコラム式電子制御レバーか、ジャガーのようなセレクターにした方が良かった部分で、ここは少し退化したような印象を受ける。

燃費グラフやエネルギーモニターなど、詰め込みすぎの感がある煩雑なメーター。平均燃費やトリップメーターなどの数字も、もう少し大きく表示して欲しい。また例のタッチトレーサーディスプレイ付のステアリングスイッチによって、エアコンの温度を調整できるのはいいが、その結果として表れる肝心の設定温度がセンターメーターではなく、別の液晶モニターに表示されるのは不便。開発者は重々承知の件だろうが、これはセンターメーター内に表示すべきだった。

パーキングブレーキが相変わらず足踏み式であること。この価格帯でそこまで言うか、と怒られそうだが、操作系全体のハイテク感の中で、ここだけ旧態然とした印象なのは否めない。また、バックミラーに映る後方視界で、リアウインドウを上下に分ける枠が水平に走るのも先代以来当たり前になってはいるが、やはりいいとはいえない。

 

ちょっと可愛らしさのなくなったエクステリアデザイン。そして安っぽい青みがかったハイブリッド車用トヨタバッジ。せめてレクサスのハイブリッド車みたいな、透明感のあるのがいい。

プリウス独自のファン・トゥー・ドライブはあるが、古典的な意味での運転の面白さは希薄。曖昧でメリハリのないスロットルレスポンス、限界域で何となくドライバーの介在する領域が狭く思えるハンドリングなどは、好みが分かれるところ。この点では純ガソリン車でもエコを打ち出すVWゴルフの対極にある。

また、おそらく都市部に生きる人なら燃費は期待通りか期待以上だと思うが、高速走行が多い人など普段の常用速度が高い人は、思ったほどではない、と感じるかもしれない。

総合評価

要するに「流行りもの」

豊田新社長就任への祝砲のように売れまくっているプリウスだが、その出来の良さはもはや誰もが認めざるを得ないだろう。モデルチェンジしてもたいして代わり映えのしないガソリン車を尻目に、チェンジするごとに進化を分かりやすく示すハイブリッド車は、やはり消費者に訴求しやすい。例えば同時期にフルモデルチェンジしたウィッシュが代わり映えしないガソリン車の最たる例で、あれだけの大ベストセラー車なのに新型ではたいした特徴を打ち出せず、すっかり影が薄くなっている。ガソリン車はこのままでは本当にヤバイ。

ディーラーも売りやすいクルマを売る方が楽なので、現在のようなハイブリッド一辺倒となってしまっているし、消費者としてもどうせ買うならこういう「新しいクルマ」ということになり、あまりに偏ってしまっている。さらにこの異常なまでの売れ方を見てしまうと、クルマの善し悪しが評価されているというよりも要するに「流行りもの」ということだと思う。

 

というのもプリウスはけして安いクルマではない。よく言われることだが、年間1万kmも走らない人は、同クラスのクルマでその価格の差額を回収することは難しい。乗りつぶすつもりの人は、プリウスを買わない方がいい。経済性(ともちろん環境性も)を考えれば、もっと安いクルマはあるはずだ。その意味でも現状のプリウスは流行りものだといえるだろう。

もちろん、いずれ下取りに出すのであればこの人気は大きなメリットとなる。購入価格が高くても、下取り価格が高く維持されるので、購入時の出費もある程度は取り戻せる。さらに強力な減税。ベーシックグレードでもなんだかんだで25万円ほど安いから、これは強力だ。車歴13年超の乗り替えの場合はさらに10万円。とはいえ、これらは我々の貴重な税金が投入されているわけなので、客観的にみれば不公平感は否めない。本来は輸入車などを含めてすべてに減税措置がなされるべきで、政府のトヨタびいき、プリウスびいきが現在の大人気を呼び込んだともいえそうだ。

トヨタ全車がハイブリッドになってもかまわない

プリウスびいきといえば、あくまで噂だが、車歴13年超の買い替え促進という現在の補助金制度に関しては、初代プリウスの廃車を阻止するためだった、という話がある。ドイツのように車歴9年あたりに設定するのが景気対策的にはいいに決まっているのだが、日本が13年にしたのは現在車歴12年の初代プリウスがあるから・・・・・・という話。まだまだ元気な初代プリウスを廃車するのは忍びない、あるいはプリウスの廃車処理には問題が・・・・・・など、まあそんな感じで何かありそうな話だ。もしそうであれば、プリウス一台に自動車業界すべてが引っかき回されていることになる、またトヨタにしても他の車種が売れないという問題に加えて、プリウスの全チャンネル販売によって、販売店対策面でも微妙な揺らぎが出てきそうだ。さらに価格を引き下げたことで利幅が小さくなったというのも問題だろう。一見は就任祝砲の売れ行きだが、これをもって豊田社長の先行きを楽観視することは難しい。

そうはいってもトヨタとしてはますますハイブリッド攻勢を強めていくしかなさそうだ。要はこのパワートレインを使ったクルマをどんどん作ればいい。プリウスというクルマは燃費に特化する義務を負った車種だが、様々なジャンルのクルマにこのハイブリッドパワートレインを使い、バリエーションを増やしていけばトヨタ的には悪いことはない。パワートレインの差(動力性能やエンジン特性など)に、消費者は重きを置いていない。新車を買う人が、走りで車種を決める割合は今やごく少ない。よって様々なタイプのクルマがハイブリッドになってしまっても、販売的には何ら問題はない。先週も書いたが、ハイブリッドのコンバーチブルだってありだと思う。つまり仮にトヨタのパワートレーンが全車ハイブリッドとなっても、消費者としてはもはやいっこうにかまわないだろうと思う。

「走り」よりも、「ハイテク家電化」

そのかわり今回のプリウスに装着されているS-VSC(全車標準)や低価格化されたプリクラッシュセーフティシステム、あるいはソーラー換気システムなどのハイテクをどんどん標準装備化して欲しいもの。車外からリモコンでスイッチを入れ、蓄えた電気を使ってエアコンを回し、乗車時に快適な室内温度を作っておくなんてことは、21世紀の今、すべてのクルマでできて当たり前のことだと思う。クルマが白物家電化したから売れなくなった、とはよく言われることだが、それなら白物家電としてさらに優れた性能を持つことが、売るために必要とされる要件ではないかと思うのだ。

新型プリウスの最もいいところは、そうした白物家電化が一歩進んだところにあるだろう。実際のところ新型も、デイズが所有する初代の後期型(2000年式・走行距離約10万km)のプリウスと比べて、確かに燃費はより良くなったが、クルマとしてみる限り、その魅力に大きな差はない。人気がなかった初代プリウスを今発売したら、案外売れるのでは、とすら思うほど。サイズは5ナンバー枠だし、後席の頭上は広いし、走行性能も燃費もすでに十分だ。そのため当方としては9年落ちのこのクルマ、廃車して買い替えるなんて考えることもできない。

でもCD式のカーナビとか、カセットデッキ! とかいった部分や、S-VSCが無いとか、もちろんソーラー換気やプリクラッシュセーフティなども無いわけで、そのあたりが新型との大きな差。「プリウスこそハイテク満載にすべき」と過去の試乗記でも書いたが、今回それがかなりの部分で実現しており、その点は素直に素晴らしいといえる。

一方でシフトレバーがセンターコンソール配置になったり、パーキングブレーキを足で踏まなくてはならなかったり、ナビが当たり前のタッチ操作だったり(ブリッジ型のセンターコンソールはレクサスRXのようなリモートタッチを置くのにもってこいの形状なのだが・・・・・・)、通信ナビや通信サービスのめざましい進化がなかったり、ETCが標準装備でなかったり、100V電源が標準でなかったり、12Vソケットも妙に使いにくい奥まった位置にあったり、オーディオにUSB端子がなかったり、何より「ゴミ箱」がなかったりと、絶賛するにはまだまだ距離がある。

 

軽を除けば、今や日本で一番売れているクルマに躍り出たプリウスゆえ、もっともっと標準装備状態でハイテク&便利家電になっていてもらいたいもの。プリウスの場合はコスト面が最大の課題だとは思うし、まもなく登場するレクサスHS250hやトヨタSAIとの差別化というのもわかるが、大衆車であるプリウスでこそ、やって欲しかったものだ。カーガイの豊田社長がレースに出るのはクルマ好きとして頼もしく感じる部分だが、彼が走りオタクでないことを祈る。走り(はもちろん大切だがそれ)よりもハイテク家電化、それこそが日本車の生きる道だと信じるからだ。ガズー事業を立ち上げたという豊田社長には、そこの舵取りを期待したい。

試乗車スペック
トヨタ プリウス G “ツーリング セレクション"
(1.8リッター直4+モーター・270万円)

●初年度登録:2009年4月 ●形式:DAA-ZVW30-AHXGB(T)
●全長4460mm×全幅1745mm×全高1490mm
●ホイールベース:2700mm
●最小回転半径:5.5m ※215/45R17タイヤ装着車 標準仕様は5.2m
●車重(車検証記載値):1390kg( 840+550 )●乗車定員:5名

●エンジン型式:2ZR-FXE
●1797cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:80.5×88.3mm ●圧縮比:13.0
●99ps(73kW)/ 5200rpm、14.5kgm (142Nm)/ 4000rpm
●カム駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L

●モーター形式:3JM
● 82ps(60kW)、21.1kgm(207Nm)
●バッテリー:ニッケル水素電池

●システム出力:136ps
●10・15モード燃費:35.5km/L ●JC08モード燃費:30.4km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム
●タイヤ:前 215/45R17 (Michelin Primacy HP)
●試乗車価格:316万6200円( 含むオプション:プリクラッシュセーフティシステム 14万7000円、HDDナビゲーションシステム+インテリジェントパーキングアシスト+タッチトレーサーディスプレイ 30万8700円、ETCユニット 1万500円 )
●試乗距離:約550km ●試乗日:2009年6月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社 問い合わせ:0800-700-7700

 
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