キャラクター&開発コンセプト
敢えて5ナンバーサイズ+FRレイアウトでチャレンジ、高級車の濃縮版
'98年5月、”小さな高級車”として誕生したトヨタ・プログレ。5ナンバー枠に収まるコロナ並のサイズに、高級車の要素をギュッと凝縮。しかもこのサイズでは珍しいFRで商品化。「品質・演出・空間・快適さは高級車、でも扱いやすさは大衆車」という高級車の新しい在り方を提示し、新たな市場を掘り起こしたトヨタの意欲作だ。
搭載されるエンジンは3リッターもしくは2.5リッターの直列6気筒。ギアボックスは4速ATのみで、駆動方式はFRのほか、2.5リッターモデルには4WDも用意する。なお、今年4月に実施された一部改良の内容は、装備の充実がメインで、エクステリア、インテリアのデザイン変更は全くない。
価格帯&グレード展開
サイズはコロナ並、価格はクラウン並
価格の変更はない。2.5リッターエンジンを搭載する「NC250」シリーズが310~360万円(4WDを含む)。3.0リッターエンジンを搭載する「NC300」シリーズが350~375万円。同じコンセプトを持つクルマがいまだ登場していないので、ライバルは不在とされる。
ちなみにクラウンのロイヤルシリーズは2.5リッターモデルが310~359.0万円。4WDモデルを除く3.0リッターモデルが378~425万円となっている。
プログレには本革内装が標準装備されているグレードもあるが、その他のグレードでは、主要快適&安全装備についてはクラウンとの差はほとんどなく、価格差も大きく違わない。ボディの大きさ、一見した高級車らしさを考えると、やはりプログレの割高感は否めない。しかしその小ささがプログレの存在価値であり、サイズで高級感を推し量る風潮に待ったをかけたという点では、ベンツのスマート並のインパクトがあるわけで、それを理解できる人には割高ではないはずだ。
パッケージング&スタイル
全長はクラウンより320mmも短いのに、ホイールベースは同じ。改めて広さに感心
まずパッケージングから再検証。全長4.5m、全幅1.7というコロナ並のコンパクトなサイズに抑えたのは、日本の道路事情を考慮したためとされる。さらに日本では年配層を中心に、ユーザーからも5ナンバーに対するニーズがいまだ高い。また広い居住空間の確保にハンデのあるFR駆動を敢えて採用したのは、FRならではの走りの質感が捨てがたかったから、といわれているが、実際にはトヨタ内のFR開発部門の成果を、ラインナップの中で実現させたという側面が強い。
広い居住空間を確保するには制約が厳しいFRながら、プログレはホイールベースを極限まで延長してその壁を克服。2780mmを実現しており、これは後に同じプラットフォームを用いた新型クラウン・ロイヤルシリーズと全く同じ数値。よって室内空間は横方向のゆとりを除いて、クラウン・ロイヤルシリーズとほぼ同じ広さを持つ。後席は足元、頭上空間ともに申し分なく、今回の試乗では改めて感心させられた。しかも短いフードに直6ユニットを縦置きしているのだから、パッケージングの完成度は高く評価していいだろう。
いまだプログレ以上にヘンな顔の高級車は現れず。これも個性と見るべきか
次はエクステリアのデザインについて。典型的な3ボックススタイルの中にも新しい価値を見いだそうと必死だったのか、そんな焦りと迷いが伺える顔つきは、2年経ってもやっぱりヘン。個性的であることは確かだが。極めてシンプルかつ地味なお尻は、ほとんどクラウンコンフォート。顔、お尻ともに「日本車的な高級感」というやつがまるで感じられない。 今回の改良では外観デザインに全く手が入れられていないが、このクルマ、現実的なユーザー層を考えると、金太郎アメと言われてもいいから、いっそセルシオ顔にしたほうが売れるのではないかと思ってしまう。いやそうすればヒットも夢ではないだろう。おそらくトヨタ自身も、「日本人が小さな高級車をイメージするときのルックスとはちょっと違う」という認識があると思うが、それでもあと2年(かそれ以上)このまま売ろうというトヨタの姿勢は、王者の余裕ってやつだろうか。
内装の質感は実にトヨタ製高級車らしいもの。丁寧な造り込みで、まさにクラウン級。昔、お金持ちの家にあった超高級応接シートのようなファブリックの内装地は、見た目こそババ(ジジ)臭いが、手触りは非常に良く、革より好感が持てた。
しかし、インパネあたりのデザインは、グレード名の頭文字に秘められた「NEO CATEGORY」というにはあまりにも古典的。ポップアップのナビはあるものの、新型クラウンよりも古く感じる。センター中央部にかつてのマセラティのような高級なアナログ時計が埋め込まれているなど、外観に比べここは妙に古くさいイメージになっている。
何だか辛口コメントばかりになってしまったが、これも天下のトヨタ作だからのこその”愛のムチ”。他メーカーのクルマなら、むしろ褒めちぎってもいいほどのクオリティや実験性を持っていることは間違いない(他にはこういうコンセプトのクルマはないのだから)。
なお、今回の改良では従来用意されていたウォールナット製本木目に加えて、高級家具などに使用されるサペリマホガニー製本木目が加わっている(ウォールナットパッケージ仕様を除く)。この他、標準仕様の内装を、従来のアイボリーに加え、ブラックのファブリック表皮もオプションで新設定。また、ナビシステムはDVD化されている。
基本性能&ドライブフィール
搭載されるエンジンは後にクラウンにも搭載された直列6気筒の3リッターと2.5リッターの2タイプ。最高出力/最大トルクは前者が214馬力/30.0kgmで、クラウンより出力のみが5馬力マイナス。後者は200馬力/26.0kgmで、こちらはクラウンと全く同じ(2WDは25.5kgmとなり0.5kgmマイナスとなる)。
組み合わせられるギアボックスは4速ATで、クラウンとはファイナル比が異なる。なお、クラウンには5速ATが用意されているが、そのユニットは3リッターのD-4のみ。今回の2つのエンジンに限っては同じ4速ATとなっている。
今回試乗したのはデビュー当時のラインナップにはなかった2.5リッターの4WDモデル「i-FOUR」だ。この4WDシステムは、センターデフ+湿式多板クラッチを用いたもので、電子制御というのがミソ。通常は前輪30:後輪70という駆動力配分で、路面状況に応じて前輪50:後輪50までの間で駆動力を最適制御するというものだ。クラウンの4WDシステムと全く同じもので、FRモデルとの価格差も同じ35万円となっている。
安全性は高まったがFRの面白味をなくしてしまった4WDシステムとハイテク装備
前回、試乗したときは3リッターのFRだったからか、好感の持てるパワフルで軽快な印象があったが、今回はそれとはだいぶん異なる。アイドリングからのスタートは若干重々しく(言い換えれば重厚)、パワフルといった印象もない。かなり重めに味付けされたパワステも、確かに滑らかで高級感はあるのだが、意図的に重めにした感じでやや違和感を伴う。
静粛性に関しては、さすがにデビュー当時謳い文句としていただけあって、高回転をガシガシ使わない限り、とにかく静か。100km/hあたりになるとわずかに騒々しくなるも、超高速域でもそれ以上には騒がしくならず、また運転中は緊張感とも無縁だ。しかし、乗り心地は、気にするとお尻に常に微妙な振動を感じ、パーフェクトな快適さとは言い難い。これは前席に座ったときに、唯一に気になった部分だ。対して後席はそんな振動もなく極めて快適。前席よりも静かで、前述したように足元も余裕があり、後席を2人乗りと割り切れば充分すぎるほど快適。輸入車も含め同サイズのクルマで、ここまで快適なクルマも少ないだろう。
ハンドリングは4WDゆえの常に安定したもので、さらにTRCやVSCが効きまくるので、FRの挙動が全て抑えられている。非常にコントロールしやすく、安全だということだけは確かだが、全くおもしろくもなんともないというのも確か。クルマの性格としてはこれで正解ではあるが。
ここがイイ
”小さな高級車”というコンセプトは大賛成。そのハードの完成度も高く、特に広い居住空間を確保したパッケージングはお見事。トヨタクオリティの内外装はさすがに大きな不満はなく、ポップアップするカーナビも大変見やすい。カタログの「この心地よさをお伝えするには、実際にお座りいただくのが一番かもしれません」はけして誇大コピーではないと思う。
ここがダメ
ちょっとくどいが、フロントグリルまわりのデザイン。今回の改良では全く手が加えられなかったということは好評ということ? いや、やはりクルマの顔を替えるという大胆なことは、やはりそう簡単にはできないということだろう。立派で高そう、誰にでも思わせてこそ日本の高級車なのではないだろうか。フロントをセルシオライクとし、リアにガーニッシュをつけるだけで2割は増販すると思う。
総合評価
「大きいからこそ高級車。だから大金を払うんだ」というヒエラルキーが根付いている(それはトヨタ自身が最も顕著)日本の高級車市場に果敢に挑んだトヨタの姿勢は、非常に高く評価できる。登場後にクラウンやセド/グロといった伝統ある高級車がフルモデルチェンジしたという辛い背景がありながら、需要は堅調。実際、月販2000台をコンスタントにマークしている。「高級車は欲しいが、今のクラウンではちょっと大きすぎる」という、シルバー層を中心とした小さな高級車を望んでいる層が存在していることを実証したのだ。
しかし、若い人(といっても40代くらい)にはあまりうけていないのも確か。試乗したイエローパールマイカのボディカラー車などは、かなり派手で、ちょっと斬新なムードの小さな高級車を見事に体現している。この色でスポーツサスのiRバージョンあたりは、若い人にもウケるかなり尖ったクルマだと思うが、それがあること自体、なかなか知られていない。プログレは街で見かける限り、シルバー世代の地味グルマになってしまっているのが、ちょっと惜しい。
また試乗中、四駆の必要性は一切感じなかった。だから雪の多い地方以外必要ない、と断定するのは簡単だが、VSCなどと同様、四駆も安全マージンのひとつと考えると、別段、目くじらをたてて否定することもないだろう。高級車の要件として、より安全な四駆というのは有りだと思う。
公式サイトhttp://toyota.jp/