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クライスラー PTクルーザー新車試乗記(第158回)

Chrysler PT Cruiser

 

2001年02月03日

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キャラクター&開発コンセプト

ネオンのレトロ調パイクカー

世界最大の自動車大国であるアメリカで年明け早々、ロサンゼルスショーとデトロイトショーが相次いで開催された。「レトロムーブメント」にのっとったクルマが多く出展されていたことが、アメリカンメーカーの特徴だったわけだが、その先駆となったのが昨年発表されたPTクルーザーだ。

デビューは2000年1月。ホットロッド(アメリカ流のゼロヨン仕様車)を彷彿とさせるデザインと、最新のテクノロジーを駆使した優れた機能性、そして広々とした空間を融合した、ミニバン、SUVとも定義できないまったく新しいセグメントのクルマとして提案された。

日本への正規導入が始まったのは2000年7月。パワートレーンは2リッターエンジン+4ATのみの設定で、ハンドル位置は右。なお、このクルマのベースとなったのは同社の小型セダン、ネオン。日本では全く売れなかったFF車だ。乗車定員は5名となる。

価格帯&グレード展開

見た目も価格も話題性は抜群! 価格は誰もが買えそうな230万円と280万円

日本導入モデルは2グレード構成で、ともにパワートレーンは共通の2リッターエンジン+4ATが搭載される。ハンドル位置は全車、右。標準仕様は「クラシック」、上級グレードは「リミテッド」。価格の安さも魅力のひとつで、前者は230万円、後者は280万円となる。

「リミテッド」にはサンルーフ、クルーズコントロール、16インチ化されたクロームアルミ、本革シート、ダークバックガラス、サイドエアバッグなどが標準装備される。これらの設定は「クラシック」にはなく、50万円を捻出するだけの魅力は十分にある。

ライバルを挙げるのは非常に難しい。とりあえずパイクカー(=市販車ベースのオモシロクルマ-昔の日産のBe-1がその代表)という点では、価格的にもバッティングするニュービートルが本命だろう。

現在(2001年1月末)、日本でも人気絶頂で、プレミアムがつくほど好調な北米需要を受け、半年近く(以上? 一説では8ヶ月とか)の納車待ち。クライスラーはメキシコ工場に加え、グランドチェロキーを生産しているオーストリア工場でも作ろうとしているらしい。ちなみにPTクルーザーは限定販売ではない。念のため。

パッケージング&スタイル

古き佳き栄光のデザインを現代流にリメイク

アジア市場の商売も見据えたPTクルーザーのベースは同社のネオン。しかし、見た目の共通点はまるでなく、ボディは完全にオリジナル。同じ生い立ちのニュービートルが「カワイイ」と思われるのに対して、こちらは「(古くさくて)カッコイイ」といったところ。

直立した大型のグリル、天地の狭いウインドウ、ボリューム感のあるフェンダーなど、いずれも現代の常識を超えたそのデザインは、アメリカで流行ったホットロッドをモチーフにしたもの。とはいえ単なる懐古主義に陥っておらず、現代にも通用する新鮮さも感じさせるのが、PTクルーザーの真骨頂。アメリカ国内だけでなく、世界中からバックオーダーを抱えるほどの人気を集めていることからも、それは理解できるだろう。ウエッジシェイプといってもいいような、前傾したそのデザインバランスは、絶妙だ。

ミニバン寄りのハッチバックスタイルのボディサイズは全長4330mm×全幅1725mm×全高1600mm。イメージするよりもずっとコンパクトで、国産車でいえばトヨタ・ナディアあたり。日本の狭い道路事情でも十分扱いやすいサイズだ。アジア圏で本格的に売ろうという意気込みが感じられれる。

デザイン面で唯一残念と思うのが、真っ黒な樹脂製バンパーだ。ここはメッキバンパーとして欲しかったところ。ひょっとして「改造する余地」を残したのか。

輸出を見据えた左右対称のインパネデザイン、真面目なパッケージング

絶壁調のインパネも、右ハンドル圏への輸出を見据えた専用デザインとなる。外観に比べればインパクトに欠けるものの、センターコンソールを中心に左右対称にデザインされ、左右どちらのステアリング一でもスタイルを崩すことはない。専用となる4本スポークステアリング、ホワイトメーター、ボディ同色パネル(鉄板風)など、遊び心が随所に散りばめられ、チープながらもスペシャリティなムードがかもし出されている。

ホイールベースは国産小型セダンと同水準の2610mm。また、1725mmという全幅はオーバーフェンダーで稼いだ分だから、室内幅もそれほどゆとりがあるわけでない。しかし、背の高さを生かしアップライトに座るシートのおかげで開放感はあり、乗り降りもしやすい。真ん中にトンネルが貫通しているものの、後席の足元空間は深さがあり、アジア人ならファミリーカーとして十分通用する。

シートアレンジにも真面目に取り組まれているのは、日本ユーザーにとって嬉しいところ。これまでアメ車のミニバンといえば、シートが脱着できるぐらいで芸に欠けていたが、PTクルーザーでは後席が左右35:65分割式で脱着できるほか、前倒し、タンブルホールディングによる格納、さらに助手席の背もたれがテーブルになるなど、国産ミニバン並の柔軟性を発揮する。で、荷室容量は最大340リッター。ここまでやれば、「ネオンのパイクカー」というには忍びない。トヨタ・オーパのようなニュージャンルのクルマといっていいだろう。

大雑把なスイッチ配置など、細かなところで煮詰め不足があるのも確か。特にペダル配置はどうも違和感が残る。右ハンドル化にありがちな中央寄りになっているだけでなく、高い着座姿勢で上から踏む角度になっていない。前方向に押し込む感じで、なんとなくペダルが高い位置にある錯覚を覚えてしまう。慣れで解決するかもしれないが、小柄なひとにとっては少々の疲労感が生まれそうだ。豊富なカップホルダーやフロント2つ、リア一つの12Vソケットなど、使い勝手はいい。

基本性能&ドライブフィール

ミッションはネオンと差別化された4速AT。エンジンはアメ車らしからぬ? 平凡なもの

縦置きのV6エンジンが載ってそうな長いノーズには、直列4気筒、それも2.0リッターエンジンが横置き搭載される。DOHCで、最高出力は140ps/5700rpm、最大トルクは19.2kgm/4150rpm。外観に凄味のあるクルマとしては、スペック的にやや物足りなさを感じる。実際走ってみてもやっぱり物足りない。本国には2.4リッターもあり、こちらの導入も望まれるところ。

組み合わせられるミッションは、ベースのネオンが3速ATに対して、4速ATだ。このごく平凡なスペックに対して、ボディの車重は1460kgと、同クラスの国産車と比べると100~200kgほども重くなっている。そのせいか、10・15モード燃費は国産勢が軒並み10km/Lを軽く超えているのに対して、PTクルーザーは9.6km/Lに止まる。しかしこれはあくまで10・15モードでのハナシ。国産車の多くは公表された数値と実走燃費では大きく差がでるものだが、輸入車って結構、近い数値がでる。

今回、実走燃費は計測できなかったが、恐らく同クラスの国産車とは変わらない燃費性能のはずだろう。いや、オーバードライブのギア比が国産勢に比べて若干高めとなっているので、高速巡航ではPTクルーザーのほうがいいかもしれない。いずれにせよ、アメ車は大食いというのは昔のハナシ。なお、本国では5速MTも用意される。

見た目はホットロッドでも、走りは控えめ。必要十分程度のパワー感

走りは一言で表せば「雑」。なんとなく足回り剛性の低さを感じるドタバタとした乗り心地で、エンジン音はうるさくはないが、回り方がガサガサしている。また、出だしの力強さがなく、どちらかといえば高回転を多用するタイプ。3速と4速のギア比が離れているので、その間のエンジン回転差によるショックも目立つ。なによりマズイなのが、小回りが効かないこと。最小回転半径は6.1m。大型ミニバン並だ。

しかし、これだけ欠点があっても不思議と不快感はない。力強くないといっても、日常レベルで使うには必要十分のパワーはあるし、エンジンが滑らかでないといっても、レッドゾーンの6500回転付近まで軽々と回る。外観の魅力に誘われた人にとっては、これで十分満足できるだろう。

意外だったのは、背の高いクルマとしてはコーナリング性能が安定していることだ。ソフトでフワフワしたアメ車独特の乗り心地は完全に影を潜めており、ロールが抑えられている。パワステの中立付近もしっかりしているので、高速コーナーでも不安を抱くことはない。ハンドリングは素直な特性だ。なんでも日本仕様の足回りは、硬めに味付けされた欧州仕様のものだとか。また、キャビンの幅に比べてタイヤが外側に出ているのも、安定感を生み出している(デザイン的にも)原因のひとつでもある。 もうひとつ意外だったのは空力が悪そうなのにも関わらず、風切り音が小さいこと。むしろ高回転まで回したときのエンジン音のほうが目立つほどで、ゆったりとした速度下なら、快適な高速巡航を約束してくれる。

仮にもっと走りの楽しみを望むのなら、エンジンなどをチューニングするのも面白いかも。これぞ真のホットロッドといえるのでは(FFだけど)。

ここがイイ

デザインの勝利。日本のレトロ調小型車ブームを見て研究したのかどうかはわからないが、古いモデルのエッセンスで新車を作る(あるいは復刻する)というのは、デザイン的にクルマより先に行き着いてしまったバイクの世界では、10年ほど前から行われていた手法。いよいよクルマもデザイン的に行き詰まってしまって、復刻の時代に入ったということだろう。代表がこのPTやビートルだ。日本でもトヨタ2000GTなどの名車なら、ほぼそのままのエッセンスで出せば必ずヒットすると思う。

明らかに未来っぽいデザインで突き抜けたクルマ(今度のプリメーラはその代表)も悪くない反面、こうしたレトロ復刻路線も「クルマが楽しい」という点で、とてもいい傾向だ。未来派とレトロ派という2つのデザイン潮流が生まれると、クルマはもっと楽しくなるのだが。

ここがダメ

走りは日本の1500クラス。あまり誉められたものではない。まあ、必要最低限は満たしているので、高速を150km/hでかっ飛んだりしない限り、シティーカーとしてはまずまずなのだが。

パワーウインドウのスイッチがダッシュの一番上にある。左右対称を気にしたためだろうが、慣れないと使いにくいのはもちろん、カーナビがつけられない!

総合評価

単なるパイクでなく、パッケージングがしっかりしていて、たいへん使いやすい小型車であることはすごい。ビートルの対極。シートを全部外せば、荷物もたっぷり載せられるし、ハードなトノカバーを使った荷室のアレンジは、気が利いている。絶対的なサイズが小さいから日本でも(アジア諸国でも)走るのが楽。逆に大型車の多いアメリカでは相当なミニカーのはずで、日本でいえば大ヒットしたスバルビストロ(軽)の感覚なのだろう。

その意味で走りがちょっと物足りないのは当然ではあるが、しかし残念。価格が安いというのも魅力なだけに、4気筒も仕方ないのだろうが、アメ車の4気筒エンジンはその仕上がりにやはり辛いものがある。いずれ三菱の優秀な4気筒が乗ることを期待したい。

クルマの楽しさを久々に感じさせてくれたモデルで、ちょっと欲しいなと誰もが思え、実際買えそうな価格でもある。しかし供給は完璧に追いついていない。特に日本では、廉価版の方の年内納車は難しいようだ。そのくせダイムラー・クライスラーは販売不振でリストラを行っている。このギャップは一体何? グローバル企業を標榜するなら、何とかすべき。せっかく売れるクルマがあるのに。このあたりにもまだ混乱しているダイムラーとクライスラーの現状が現れているのだろう。ネオクラシックデザイン路線がクルマ業界に根付くためにもこのクルマはきちんと売れ、成功を収めてもらいたいのだ。

 

公式サイトhttp://www.chrysler-japan.com/

 
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