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フィアット プント HGTアバルト新車試乗記(第132回)

 

 

2000年07月21日

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キャラクター&開発コンセプト

イタリアンベーシック=イタリアンホットハッチ

フェラーリ、アルファロメオ、ランチアを傘下におさめるイタリア唯一の量産メーカー、フィアット。その同社のボトムレンジを担うコンパクトハッチが、プントだ。先代プントはヨーロッパの街並みではお馴染みのベストセラーカー。基本デザインはジウジアーロが手がけており、コンパクトなボディながら、優れたパッケージングとキュートなスタイルを実現していた。ニュープントは、昨年、創立100周年記念にあわせて発表された意欲作。フィアットがイタリア国内ばかりでなく、欧州のベーシックカー市場で新たに勝負するための戦略車でもある。

価格帯&グレード展開

先代よりも約30万円のプライスダウン

日本仕様として導入されたプントは、1.2リットルエンジン+6速CVTオートマチックが搭載される5ドアの「ELXスピードギア」と、イタリアの名門チューニング工房「アバルト」の名を冠した1.8リットルエンジン+5速MTを搭載する3ドアの「HGTアバルト」の2種。どちらも右ハンドル仕様で乗車定員は5名。

価格はELXスピードギアが157.8万円。アバルトが218.0万円。デュアルエアバッグ、EBD付きABSはもちろんのこと、サイドエアバッグも標準装備でこの価格。プジョー206を筆頭とする欧州コンパクト車と真っ向から競合できる価格になっている。

パッケージング&スタイル

小柄ながら、イタ車らしい目を引くデザイン

先代が丸くキュートだったのに対して、ニュー・プントは直線的でシャープ(なんとなく三菱風? )。バルブ配置に凝ったヘッドライトはロボットっぽく、今でこそ珍しくなくなった縦長のテールランプは、多角形のエッジを持たせることで個性的な造形となっている。あらゆる面に鋭利なナイフで斬りつけたような大胆なラインが入っているので、全方位どこからみてもメリハリがある。最近、曲線基調の有機的なクルマが増えているだけに、プントのハイテクっぽい無機質な感じは非常に新鮮だ。小柄ながら、さすがイタ車と、目を奪われる。デザインだけでも買ってやろうかという気になる。

毒サソリを紋章とするアバルトのボディサイズは全長3820mm×全幅1660mm×全高1480mm、ホイールベース2460mmで、5ドアに対して15mm短い。先代比ではわずかに大きくなっている。エアロパーツや専用アルミホイールなどで武装されており、迫力のある挑戦的なイメージを醸し出している。ただ、ハッチバックに貼られる毒サソリのエンブレムがバッヂでなく、ステッカーというのはちょっと情けない。また、マフラーもエアロパーツの陰に隠れて見えない。かつてのような毒を感じさせるほどではない、といえそう。

過度な演出、アバルトイズムてんこ盛りの内装

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アバルトの内装は青と黒の配色で、随所にチタン調パネルが散りばめられており、かなり賑やかな印象だ。そのほか、スポーツ仕様メーター、アルミ製ペダル、スポーツシート、オリジナルステアリング&シフトノブなどの専用品が満載されており、おかげで室内は毒サソリだらけだ。

一方、スポーツギアのほうは6速マニュアルモードCVTを自慢するかのごとく、シフトが銀色ピカピカ。240km/hまで刻まれたウソっぽいメーターといい、スポーティーさを強調して演出されている。

使い勝手の良さに関しては、ほんの少し前のイタ車では、考えられなかったぐらいに十分な装備がおごられてたいへん良い。オーディオはインパネ最上部で使いやすく、ビルトインタイプのカーナビもつけられそう。収納スペースも豊富で、カードホルダーと2名分のドリンクホルダ(スポーツギアのみ)も付く。先代では手動だったドアミラー調整も電動となっている。しかもドアを閉めてもルームランプが一定時間点灯する、という気配りも。かつてのイタ車乗りを泣かせる便利さだ。

また、いまやイタ車といえども安全性に不満はなく、サイドエアバッグは標準で、後席のヘッドレストはちゃんと人数分備わっている。室内の質感の高さも特筆もので、フィアット車の中ではトップレベルといっても過言ではない。

室内の広さもまずまず。シートポジションは高く、ステアリングとともに上下調整機構が付くので、最適な姿勢はとれる。しかし、ウォークイン機構が備わってないようで、後席へのアクセスは良いとはいえない。

基本性能&ドライブフィール

元気な走りも1.8ならさにあらん、といったところ

プントに用意されるパワートレーンは2つ。スピードギアには1.2リッター直4が搭載され、スペックは最高出力80PS/5000rpm。11.6kgm/4000rpm。ギアボックスは6速マニュアルモードつきCVT。これスバル製。日欧合作のパワートレーンだ。

一方、アバルトのほうは一気に排気量がグッと増え、バルケッタと同じ1.8リッター直4DOHCが搭載され、スペックは130PS/6300rpm、16.7kgm/4300rpm。これに5速MTが組み合わせられる。どうしてベーシックグレードが6速で、スポーツグレードが5速なのかといいたくなるが、片や電気的な疑似ミッション、片や実メカミッションであり、これは致し方ないところか。

また、電動によってパワステの操舵力をセンターパネルの「CITY」スイッチで、任意で2段階で選べるのも新しい装備の一つだ。これをONにすると手応えのあった操舵感がスカスカに軽くなる。車庫入れの時に重宝する、というパンフレットに記載されていたが、ノーマルモードでも苦になるほど重くはないし、街中で使うには明らかに軽すぎる。

アバルトの走りは、高回転を維持して走るという小型イタ車のイメージからはちょっと外れている。見た目の印象よりも重い1100kgという車重でも、回転に関係なく余裕あるトルク感が得られる。これは可変バルブタイミング機構の採用というよりも、単に排気量の大きさによるところが大きい。さすがにフロントヘビーになりアンダーステアは強くなるが、安定志向の立派なタイヤを履いているから腰砕けになることはない。常に安心してハンドルを切ることができる。また、走り全体の質を大きく左右する剛性感は大幅に向上しており、硬い乗り心地であってもドイツ車とは違い、しなりで受け流す柔軟さを持ち合わせている。過激さはあまり感じず、いたって平和な走りだ。

その余裕ある走りと引き替えに、本来持っていたはずの小型イタ車ならではの理屈抜きの楽しさは、若干スポイルされている。イタリアンホットハッチ的な過激さはなく、加速感も1.8リッターならこんなものというレベル。シートポジションの高さは大きなロールを感じさせるし、排気音はうるさい。アバルトという名から創造される昔のジャジャ馬的な面影はみじんも残っていないのだ。

しかし、アバルトという冠がなければ、それなりに高い評価は与えられる。パワーはこのボディを振り回すには十二分だし、トルクがたっぷりとしているのでルーズなシフトで走ることも可能。もちろん高速走行も日本車ならリミッターが効くあたりまで問題なし。直進性も悪くない。乗り心地は固すぎないし、デートカーとしても使えるアバルトというあたりが現代的だ。さされると痛いが、毒は致死量にはいたらない、そんな毒サソリといったところか。

ここがイイ

トレンドを意識しながらも、独特のデザインに仕上げるセンスはさすが。ハッチバックボディなど、もはや独自デザインの余地などないと思ってきたが、最近は各社、見事に個性を発揮してくるのはたいしたもの。ヴィッツのような独自性はないが、個性と古典的なカッコ良さをこのサイズで発揮できているというのは偉いものだ。

ここがダメ

アバルトのイメージを持って乗ると、裏切られたように感じる。アバルトという名に思い入れの激しい人ほどそう感じるはずで、このネーミングにはちょっと「売らんかな」を感じてしまう。またシートポジションは足の長い人向き。小柄な日本女性などではシートを目一杯前に出さなくてはならないだろう。右ハンドル化により、例のごとくペダルが左にオフセットされ、ペダル間も狭い。ヒールアンドトゥではなく、足裏の真ん中アンドトゥになります。

総合評価

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プントは5ドアのCVTが本来の姿だろう。アバルトというのは日本での知名度の高さをうまく利用した、プントのPR戦略のためのモデルのよう。とはいえ、走ればそんなに否定的になるほど悪くない。何よりエンジンには例のアルファ系にも通じる元気の良さと回転の気持ちよさがあり、5速を使ってその気で走れば、イタリアンホットハッチとして10点満点の8点くらいは付けらる。2点の不足は過激さがないこと。とはいえ、もはやイタ車といえども過激を期待してはいけないご時世なのだろう。

ところで、気になるのがデリバリーの遅れ。右ハンドルしかないということは、英国仕様を引っ張ってくるわけだが、その数はそうとう少ない模様。アルファ156もそうだったが、出たばかりで欲しい思う時に、なかなか納車されないというのは残念至極。特に5ドアが不足気味らしいので、かえってアバルトの方が手に入れやすいようだ。

 

公式サイトhttp://www.fiat-auto.co.jp/

 
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