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ランドローバー レンジローバー新車試乗記(第229回)

Landrover Range Rover

2002年07月19日

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キャラクター&開発コンセプト

高級SUVのパイオニアだった初代レンジ

1970年にデビューしたレンジローバーは、高いオフロード性能と快適性で「レジャービークルとしてのクロカン4駆」、今で言うSUVの先駆けとして、また当時の他の四駆にない高級感とブランド力を示すことで、オフロードのロールズロイスとして成功した。その性能は言うまでもないが、英国貴族のカントリー文化と一体となったステータス性やブランドイメージこそ、このクルマを語る上でもっとも無視できない部分といえるだろう。

3代目もほとんど形を変えず。ただし中身は劇的進化

2002年7月6日から日本で発売された新型レンジローバーは3代目。なんと'70年のデビュー以来、モデルチェンジされたのはたったの2回。というのも初代が24年間もモデルチェンジしなかったからだ(生産は26年間)。それに比べれば8年の寿命に留まった2代目は短命だったと言える。

新型の外観はキープコンセプト。特徴的なライトを除けば、ほとんど変わらない。だが、もちろん中も外もすべて新設計だ。特に中身は完全に「構造改革」。例えば'60年代のGM製エンジンを起源に持つV8・OHVエンジンはゴミ箱行き。最新のBMW製エンジンを得て一気に近代化した。また、シャーシはついにモノコックへ。サスペンションも4輪独立となった。

ローバーグループ→BMW→フォード

ランドローバー社は以前、ローバーグループ共々'94年からBMW傘下にあったが、巨大な経営負担に音を上げたBMWがフォードに売却('00年)。新型レンジにBMWエンジンが納まるのは、つまりそういうわけだ。現在、ランドローバーは同じ英国ブランドたるジャガーやアストンマーチンなどとともにPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)を形成する。

価格帯&グレード展開

装備別に3グレード。エンジンはV8ガソリン1種類

新型レンジの日本仕様はV型8気筒ガソリンのみ。海外で設定のあるBMW製3リッター直6ディーゼルは用意されない。5速ATしかないのは世界共通である。

グレードは3つ。上から「Vogue」(985万円)、「HSE」(875万円)、「SE」(795万円)。「Vogue」は、'80年代にファッション誌「ヴォーグ」が小道具としてレンジを取り上げたことから誕生した最上級グレード。「Vogue」だけにサンルーフやバイ・キセノン・ヘッドライトなどの装備が付く。中でも19インチ大径アルミが迫力。

それより110万円安い「HSE」も革シート、ナビを装備するが、19インチアルミやサンルーフなどは持たない。さらに80万円安い廉価版(と呼ぶのはおこがましいが)の「SE」はナビ無しのファブリック仕様となる。

ライバルはいわば兄弟関係とも言えるX5。設計は古いがゲレンデバーゲン。さらに来年にも発売が噂されるポルシェ初のSUV、カイエンだ。

パッケージング&スタイル

変わったのはライトだけ? 完璧キープコンセプト

'64年の登場から'97年までの33年間、基本デザインの変更なしに1線級の性能を維持したポルシェ911。これに匹敵するのが'70年登場から2代目登場まで24年間変わらなかったレンジローバーだ。そういう意味では「オフロードのポルシェ911」か。

初代の丸目ヘッドライト、2代目の角目に続いて、新しい3代目では丸と角を融合。この未来的デザインのランプユニットこそ、見た目の上で新型レンジが新型らしく見えるポイント。またフロントフェンダーに新設された鮫のエラ状のルーバーも目新しい。

逆に言えば、これを除くすべてが、伝統的モチーフの反復だ。左右に峰が盛り上がり、エンジンベイに被さる形状のボンネット。ブラックアウトされたピラーで浮いたように見える「フローティング・ルーフ」。そして上下2分割のリアゲート(下側はピクニックテーブルとして使用可。なんと英国的!)。実際、ライト部分だけカモフラージュした新型のテスト風景の写真を見て、一瞬旧型のカタログかと勘違いしてしまったほど。

このクラスのメインユーザーは基本的にコンサバティブ。そういったマーケティングにのっとったデザインだ。レンジローバーのブランドイメージを堅持するという意味で、正しいアップ・トゥー・デートと言えるだろう。このあたりもポルシェ911的な部分だ。

実物はかなりの迫力、そして未来的

とはいえ、実際に見た印象は意外なほど未来的。SF映画に出てきそうなハイテク装甲車もしくは惑星探検車という感じだ。

存在感も相当。小山のようなボディは全長4,950×全幅1,955×全高1,865mm。ホイールベースは2,880mm。2列シートのSUVとして、あらゆる基準をもってしても最も巨大な部類。先代比で、235mm長く、65mm幅広く、55mm背が高く、140mmホイールベースが伸びた。主力市場である北米を重視する以上、サイズアップに躊躇する理由はないのだろう。荷室はシェルフまでで535リッターを確保。

ちなみに先代Vogueで2160kgだった重量は、新型になって2,500kg(Vogue)と大幅に増加。ボンネットやフロントフェンダー、ドアを完全アルミ化して軽量化に努めてはいるものの、ほとんど焼け石に水だったようだ。

クルーザーのキャビンをイメージした室内

室内デザインは革新的。目新しいのは無垢のような素材感やパネルというより「柱(フレーム)」感を強調したウッド。高級オーディオや外洋ヨット、高級家具を参考にしたというもので、ウッディなそのムードはクルマのインテリアとしてはかなり新鮮。いわゆる「木目パネル」とは違う、こうした使い方は他にあまり例がないが、かなりオシャレで趣味がいい感じだ。他メーカーが追従するのは時間の問題かも。

ちなみに室内トリムは2種類のウッドもしくは「ファウンドリー(鋳物)」と呼ばれるメタル仕上げの3種類から、シートは7色から選択出来る。

計器類はつや消しのメッキで縁取られ、レタリングもクラシカル。DVDナビのモニター位置もセンターコンソール上部というベストの位置をキープ。見やすい。インテリアに難を言えば、メタル調メッキを安易に使い過ぎと言えなくもない。しかし木と革、端正な水平基調といった特徴を継承しつつ、高級でスポーティかつハイテク感あるデザインであるのは確かだ。とても気に入った。

基本性能&ドライブフィール

BMWエンジンで飛躍的に近代化

富士裾野にあるホテルのファサードに並んだ新型レンジ。ダーク系ペイントばかり10台近くずらりと列をなした景色は、かなりミリタリーな迫力。見ようによっては象の一群が水場に集まってるようにも見えるが。

試乗したのは「Vogue」(985万円)。19インチアルミ、電動サンルーフなどが付いた最上級グレードである。

エンジンはすでにこのクラスでベストの呼び声高いBMW製4.4リッターV8(286ps/5,400rpm、44.9kgm/3,600rpm)。基本的にX5の中間グレード「4.4i」に搭載されるものと同じで、パワー、トルク数値もまったく同じ。ただし、渡河時に水の侵入を防ぐためインテーク入り口を高くするのなど本格オフロード対応の「レンジローバー仕様」となる。

先代4.6リッターV8・OHVエンジン(218ps/4,700rpm、40.8kgm/2,600rpm)から68psもアップしたことで、車重が340kgも増えたにも関わらず、最高速は旧型の196km/hから、208km/hに。さらに10・15モードも5.0km/Lから5.7km/Lに大幅アップ。このBMW製エンジンがたいへん優れた性能を持つのは間違いない。が、裏を返せば先代エンジンがいかに古めかしかったか、ということでもある。

ハイ/ロー切り替え付ATは5速化

ZF製5速ATは、レンジローバーであるからして当然ハイ/ローの変速機を持つ。いずれもステップトロニック(とBMW流に呼ぶ)モードでマニュアル操作が可能。さらにレンジらしいのは、ローレンジのギア比の低さ。1速1,000rpmの速度は3.89km/hと、ほとんど歩く速度。ちなみに新型はハイ/ロー切り替えが走行中にも行える。センターデフは先代のビスカスからトルセンに変更されている。

BMWエンジンによる軽快な走り

さて、よじ登るように運転席に乗り込み、「新しい乗り物感」一杯のコックピットに収まって走り出すと、すぐに緊張感は失せる。BMWエンジンはシュンシュンと軽く回り、2.5トンのボディを滑らかに加速させる。同じエンジンを積んだX5 4.4iより320kgも重く、パワー・ウェイト・レシオは8.74kg/psに過ぎない。だから「速い」というような加速ではないが、かと言って非力な印象もない。

一方で、低速トルク「感」にはやや物足りなさを覚えるのは事実だ。BMWらしく高回転でパワーを出す印象が強く、レンジのようなヘビー級を動かすにはもう少し低回転からトルキーなフィーリングが欲しい。日本に導入されないディーゼル仕様の方に、そういう役割が割り振られているのかもしれない。

電子制御エアサスによる乗り心地には、もちろん何の問題もない。なにせ2.5トン。バネ上荷重は十分だ。日本の路上でこれだけ重量のある乗り物に乗る機会は普通、バスかトラックか、結婚式場のリムジンくらいしかないだろう。5速トップの100km/h時回転数は1,500rpmと驚くほど低い。よってエンジン音は小さいが、超大径オールテレインタイヤによるロードノイズはそれなりにある。

オフロードでも優雅に

今回、富士裾野で行われた試乗会では、オフロード走行用の特設コースが用意された。森の中を巡る1周10分ほどのコースで分かったのは、レンジローバー伝統の見切りの良さ。ボディサイズはかなりデカイが、立木に囲まれた狭い林間コースでも持てあまさない。左右が切り立ったボンネットが、ネコの髭のような役目を果たしている。まあ、あらかじめ通れることを保証された特設コースだから走れるだけで、このサイズの(この価格の)オフロード車で、手つかずのオフロードに入っていく勇気はちょっとないが。

ローレンジ1速を使って、人が散歩するような速度で走行できるのもオフロードで決定的な力となる。地形感知機能付き(!)エアサスはオフロードでは自動的にソフト設定となり車高をアップ。パワーをじわりと地面に伝えながらラフロードに分け入って行く感覚は、このクルマならでは。ディスカバリーやフリーランダーでおなじみのHDC(ヒル・ディセント・コントロール)のスイッチを入れれば、急な下り坂も特別なテクニックなしにトロトロと安全かつ確実に下っていくことができる。大きな穴ぼこがあっても、じわりと地面をつかんでいく安心感は格別だ。

レンジローバーはあくまでもゆっくり、そしてジェントルにオフロードを行く。先代モデルのカタログにあった「トレッド・ライトリー(そっと歩く)」というコンセプトは、大きく、重く、豪華になった新型にも脈々と引き継がれているようだ。

ここがイイ

ヨットに乗っているかのごときインテリアは、多くの人の心を動かすはず。考えてみればPGAの他ブランドであるジャガーもボルボも木と革のインテリアが売り物。プレミアムとしてお金を払う部分としては、インテリアはもっともわかりやすいとフォードはまず考えたのだろう。

DVDナビの位置もたいへんよい。こうした新技術への対応はフルチェンジの大きな意味だ。

乗車時に車高を下げられるため乗り降りしやすくなる。「ホテルにも乗り付けられる四駆」がレンジローバーのうたい文句だったと思うが、小柄な人でも乗り降りしやすいのはありがたい。

ここがダメ

さすがにこのクラスになると、特にダメ出しすべき点は少ない。強いて言うなら肝心のインテリア素材に「超」高級感が感じられないこと。マスプロカーとしては致し方ないとは思うが、ため息の出るような高級感はない。特に合成樹脂類の質感は日本車(トヨタ車)の方が高いように感じてしまう。

総合評価

国産車で対抗できるのはランクルの100だろう。4.7リッターのシグナスが525万円だからアラブの国々へ行けば、どっちを買おうか迷うに違いない。その場合、優雅さでレンジローバー、信頼感でランクルということになるのだろうか。命をかけて? 砂漠の真ん中へ乗り出すとして、どっちを選ぶかというとやっぱりランクル。しかしガレージに入れておくならレンジだろう。街乗りもレンジ、デートもレンジ、そしてリムジンのセカンドカーならやっぱりレンジなのである。

それは日本でも同じで、お金持ち(想定ユーザーは年収2000万円以上)がこのクルマを買う場合は、完全にセカンドカーとして。レンジをファーストカーとして乗ろうというのはビンボー人の考えであって、あくまでメルセデスのセカンドカー(あるいはサードカー)であり、災害時の緊急避難用ウェポンなのだ。オフロードの走破性はそういう時(災害時)に発揮できればいいわけで、その意味では誰もがATまかせのまま、とうていクルマでは走れるとは思えないオフロードを軽く走りきれる新型レンジローバーのポテンシャルは、このクルマの性格にふさわしい。

レンジのオーナーになっても一度もオフロードへ出たことがない人は多いはず。幸い今回は試乗車でオフロードを試乗でき、そのポテンシャルの高さを確認できたが、災害時にアタフタしないためにも、オーナーは一度安全なオフロードで試乗しておくべきだろう。全くオフロードを走ったことのない人にとって、このクルマのポテンシャルはその想像をはるかに超えているからだ。宝の持ち腐れにならないためにも、オフロード性能とその走り方はぜひ確認&練習しておく必要がある。

7月はじめの発売時にはすでに150台の予約が入っているらしい。で、年内には450台の販売を予定しているとか。一台900万円として、すでに13億5000万円の売上。年内に40億5000万円の売上だ。こうした1000万円クラスの高級車は、幸いにも退職金を手にした定年退職者によく売れるらしい。よく働いた自分への褒美として、まだ若さが残っているうちに一度買ってみようということのようだ。

こうしたお金のある熟年、高齢者の消費だけが唯一日本の経済を救う方法だと思う。どんどん買ってもらいたいものだ。そして数年後には中古車(それも程度の良い)になるはずなので、ビンボーな若者はそれを待とう。

とはいえ、お金持ちのセカンドカー需要もかなり大きいことは確か。ありがちな締めで申し訳ないが、ここまでどん底になった不況日本でも、お金はあるところにはあるものだとつくづく思う。

公式サイト http://www.landrover.co.jp/

 
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