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新車試乗記 第271回 トヨタ ラウム Gパッケージ Toyota Raum

(FF・161.8万円)

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日時: 2003年06月07日

 

キャラクター&開発コンセプト

自動車初の「ユニバーサルデザイン」

初代ラウムは97年登場。ターセル/コルサのシャシーをベースに両側スライドドアとウォークスルー機能を持った初代は、購入ユーザーから高く評価された。2003年5月12日に発売された今回の2代目は、産業デザイン分野でよく使われる「ユニバーサルデザイン」というコンセプトを導入、さらにユーザーフレンドリーなクルマづくりを推し進める。ラウムとはちなみにドイツ語。英語でいうところのroom(部屋、空間)の意。

ユニバーサルデザインとは?

トヨタの資料によると「性差、年齢、障害などの身体的特性に関わらず、多くの人々が快適に使用でき、豊かで充実した体験が得られるモノや場所のデザイン、さらにはサービスの提供」を意味するという。1990年代初めにアメリカで提唱されたのが最初ということだから、比較的新しい言葉だ。エルゴノミクス(人間工学)をさらに推し進めたもの、とも言える。トヨタは今回開発した「ユニバーサルデザイン評価指標」を今後の車両開発に生かしてゆくという。

「マーシー・マーシー・ミー」

そういったことでラウムはウェルキャブ仕様、つまり運転補助装置やリフトアップシート等を備えた特装車にも適しており、そうしたラインナップも充実する。そのほかに「トヨタエコプラスチック」(植物を原料とするプラスチック/アラコの開発)の採用など、リサイクル性の向上にも力を入れる。ちなみに新型ラウムのTVコマーシャルの曲は、マーヴィン・ゲイの「Mercy Mercy Me (The Ecology) 」(71年)。美しい曲だが、内容はタイトルに示される通り、環境汚染を嘆く唄だ。

生産はWiLL サイファやMR-Sなどと同じセントラル自動車(本社:神奈川県相模原市)。販売目標は4,000台/月。扱いはネッツトヨタおよびトヨタビスタ店となる。

価格帯&グレード展開

139.8~186.8万円。お勧めは“Gパッケージ”

エンジンは1種類。グレードはベース車(139.8万円。電動スライドドア等なし)、“Cパッケージ”(149.8万円)、“Gパッケージ”(161.8万円)、スポーティな“Sパッケージ”(169.8万円。)の4種。それぞれ17~18万円アップで4WDがある。

電動スライドドア付きで一番安い“Cパッケージ”もいいが、予算に余裕があればスマートキー(電動スライドドアもこれで開閉可能)、オートエアコン、フレシール加工付きシート(天然タンパク質「セリシン」でポリステル繊維を加工)といった、ラウムならではの装備を持つ“Gパッケージ”がお勧め。

パッケージング&スタイル

先代とほぼ同じボディサイズ

全長4045mm×全幅1690mm×全高1535mmは、先代サイズをほぼ受け継ぐ。コンパクトなボディがユーザーから高く評価されたからだろう。先代のシャシーはターセル/コルサ(のストレッチ版)だったが、新型はヴィッツ(のストレッチ版であるファンカーゴ)ベース。ホイールベース自体はほぼ同じなので、劇的に広くなった、という感じはしない。

助手席タンブルで、リムジンに変身

とは言え、先代で「セルシオ並み」の後席スペースがウリだったラウム。4メートルそこそこのサイズを思えば、今回も車内は驚くほどルーミー。明るいベージュ内装がその印象に拍車をかける。ただし、助手席に平均的男性が座った状態だと、その後席足元はやや窮屈。足先が前席下に入らないからだ。

その代わり、ラウムにはとっておきのワザが。助手席が前方にタンブル(座面が跳ね上がる形で折り畳まれる)するのだ。この状態では、後席の乗員は足を完全に伸ばして座ることが可能。この感覚はセルシオ、センチュリーどころか、リンカーンのリムジン並み。エンジニアはどうしてもこれがやりたかったに違いない。こうするとリアシートへのウォークスルーも簡単になる。またシートバックだけをたたんだ状態だとテーブルになる。

乗り降りで感動できる「パノラマオープンドア」

新型の最大の特徴である「パノラマオープンドア」がその効果をさらに高める。このセンターピラーのない左側ドア(トヨタは側突安全性をアピールするため「センターピラー内蔵ドア」と呼ぶ)によって、後席の乗り降りは感動的なくらいスムーズ。特に「足入れ」が楽だ。サイドシルはほとんど無きに等しく、足がひっかかる心配はほとんどない。乗降性に関しては前席もすごく楽。ドアヒンジを4.5度前傾させたことで、顔をぶつけやすいドア上方の開き方を大きくしたほか、やはりサイドシルが低いのがいい。

電波時計もさりげなく装備

分度器を3つ並べたようなメーターも見やすい。警告灯の絵文字には「バッテリー」「オイル」といった日本語表記付き。極め付きは「販売店に連絡」という表示。国産車に今までなかったのが不思議な、当たり前の配慮だろう。タコメーター下のデジタル時計は、時間合わせの必要ない「電波時計」。資料には何も書いていないが、クルマでは初めて見た。品質感の高い空調パネルの操作も分かりやすい。

ユニバーサルの難しさ

気になったのはシートアレンジにコツが必要なこと。特に助手席タンブルは安全性やダッシュボードにシートがぶつからないことを考慮したせいか、ちゃんと手順を踏まないと畳めない。方法はシート本体に明記されるが、人間はめんどくさいことを端折りたがるものだ。説明など無視して、まずは一生懸命押したり引いたりしてしまう。

また、試乗車が装備していたタッチパネル式のG-BOOK対応DVDナビ&オーディオシステムの使い勝手が、ややユニバーサルとは言いがたかった。

基本性能&ドライブフィール

呼吸するがごとく

全車エンジンはカローラやbBでおなじみの1.5リッターエンジン「1NZ-FE」(109ps、14.4kgm)。1160kgと少し重いボディを、期待以上に軽快に走らせる。加速時はそれなりにエンジン音がうるさいが、走りっぷりには街乗りから高速までほぼ不満ない。「よく走るなあ」というのが正直な感想だ。

乗降性に配慮して縦350mm、横370mmの直径を持つ楕円ステアリング(国産車初)も知らなければ気付かない程度で、違和感はまったくない。パワステの操作感もごく自然で、小回りも当たり前に効く。ジグザグゲート式のATシフトレバーも操作し易い(ほとんどDのままで事足りるが、いつものごとくマニュアル操作がしやすいパターンなので、その気になれば楽しめる)。もともと操作系の完成度は行き着くところまでいった感のトヨタ車だけに、それをさらにリファインしたラウムの運転はオーバーに言えば呼吸をするのと同じくらい造作ない。

15インチ版はやや固めの乗り心地

標準は175/65R14だが、試乗車はメーカーオプションの185/55R15(ヨコハマ ADVAN A-043)という扁平タイヤ。合わせてバネやダンパー、ブッシュも専用チューン。そのせいか試乗車の乗り心地はやや固め。ロードノイズも路面によって、やや気になる瞬間があった。クルマの性格を考えると、14インチ仕様が合っているかもしれない。試乗車はバックドアの立て付けが甘いのか、舗装の荒れた場所では音を立てることがあった。

その反面、この15インチ仕様の走行安定性は高い。試乗車はオプションのVSC & TRC(8万円)が装着されていたが、いつものワインディングをハイペースで走っても作動を示す警告音はほとんど鳴らなかった。だからといってタイヤのグリップだけに頼った不自然さはない。安定感は1クラス上のカローラに近い感じがした。

往復600kmを難なくこなす

今回は高速道路を一気に600kmほど走ったが、直進性もまったく問題なく、疲労はほとんどなかった。パワステの重みがちょうど良く、ヒョコヒョコ、チョロチョロ、といった小型車的な動きはほとんどない。固めの足はこういう時にも生きるようだ。

快適性については、エンジン音がもう少し静かなら、と思うくらい。それでも120km/h以上で後部座席の人と普通に会話できる。その日は某高級セダン(次週掲載予定)の試乗会への往復。法定速度で走る限りにおいて、ラウムとその高級車が快適性においてほとんど差がないのにあらためて驚いた。価格差はほとんど10倍近いが…。これはその高級車がよくないというより、ラウムが(というか現代の小型車のレベルが)すごいと考えるべきだろう。

100km/h巡航は約2500回転と低め。最高速はメーター読みで170km/h弱まで伸びた。参考までに、高速道路の追い越し車線を流れに乗って走った燃費は約14km/L。大人しく走ればもう少し伸びると思われる。

ここがイイ

ユニバーサルデザイン。これをコンセプトにしてクルマを作ったこと自体、評価に値すると思う。そして助手席側ピラーレス構造と電動リアスライドドアという組み合わせ。ピラーレスを活かすため観音開きでなくスライドドアにしたことで確実に使いやすくなり、後席の人にも優しいクルマになった。しかもスライドゆえ電動化もできた。福祉車両では電動で外へせり出す助手席や回転式の後席もある。今後の高齢化社会を考えると、さすがトヨタというしかない。

スマートキーやG-BOOKが採用されていることも高評価。

ここがダメ

なし。希望としては運転席側もピラーレスにして欲しい。そうすれば電動車いすに乗ったまま運転席へ自動セット(イメージとしてはTVのサンダーバード)なんてことも可能になるだろう。それこそ究極の福祉車両ではないだろうか。老人になって足腰が立たなくなったら電動車いすに乗って近所を移動し、そのままクルマに乗り込んでドライブに出かけるという生活がしたいのだが。

総合評価

使いやすさはいうまでもなく、走りの性能も(ちょっとハードに走っても)まったく不満がない。安全装備も現時点ではほぼ完璧だろう。サイズも、燃費も、もちろん対環境性も何も文句のつけようがない。人がクルマに求めるもの、つまり、走る、曲がる、止まるという基本性能、居住性、経済性、安全性、心地よさ、使い勝手、積載性、これらすべてよし。まさに現在の日本での「道具としてのクルマ」ベストチョイス。いまやクルマに道具以上のものを求める時代は終わった、という考えに同調する人はこれに乗るべき。そうした人の絶対数はけして少なくないはずだ。

先代もそうだったが、これほど味気ないデザインのクルマもない。どこも悪くないが、どこもよくもない。そしてまったくカッコよくない。しかしそれこそがこのクルマの生きる道だろう。クルマに求められてきたカッコよさやステイタス、ブランド性を徹底的に排除し、日常的な使い勝手のみを徹底的に追求したクルマがラウムだ。ユニバーサルデザインコンセプトが唯一のブランド力といえるが、これはいずれ何にでも取り入れられるからすぐに専売特許ではなくなるだろう。高級車でなく、RVでもなく、軽でもなく、まして「カローラ」でもない。記号性が一切排除されている。つまりこのラウムは、今までにない「ただ空気のように存在するクルマ」という意味で、まさに革命的。しかもこの空気は、かなりおいしいのだ。

試乗車スペック
トヨタラウム"Gパッケージ”
(FF・161.8万円)

●形式:UA-NCZ20-AHPXK●全長4045mm×全幅1690mm×全高1535mm●ホイールベース:2500mm●車重(車検証記載値):1160kg(F:680+R:480)●エンジン型式:1NZ-FE●1496cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●109ps(80kW)/6000rpm、14.4kgm (141Nm)/4200rpm●10・15モード燃費:16.2km/L●駆動方式:FF●タイヤ:185/55R15(ヨコハマ ADVAN A-043)●価格:161.8万円(試乗車:210.7万円 オプション:G-BOOK対応ナビ&オーディオ 29.5万円、15インチアルミ&タイヤ 6万円、VSC&TRC 8万円、HID&LED 5.4万円)

公式サイト
http://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/raum/index.html

 
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