キャラクター&開発コンセプト
世界ヒットモデル、初代のコンセプトを継承しながらも、ジャンルを越えたスモールSUVを目指す
'94年にデビューするや、それまでのヘビーデューティなクロカン四駆のイメージに代わって、都会でも気軽に乗れるライトクロカンの市場を確立したのがRAV4だ。当初3ドアのみだったボディバリエーションも、後にロングホイールベース化した5ドアを追加。これによって新しいタイプのファミリーカーとして、生活のあらゆるシーンで使える一台として幅広い層に認知されるようになり、多くの後発類似モデルを生み出す引き金となった。
こうしたRAV4の功績は、日本だけでなく、アメリカでも大きな人気を獲得したことで、直近の販売台数のみをとってみれば、日本よりもアメリカおよび海外の方が需要は高い。そのためか、新型の初披露の場となったのは、今年3月に開催されたジュネーブショー。アメリカ市場を重視した2代目となるRAV4は、スペシャリティなルックスを磨くとともに、ひとまわり大きく成長。旧来よりワンクラス上の存在感、品質感、居住空間、快適性を実現しての登場となった。
搭載されるエンジンはこれまでの2リットルエンジンを新世代直噴「D-4」に変更。よりライトな都会仕様として1.8リッターの2駆モデルもラインナップする。ボディタイプは3ドアと5ドアの2タイプが同時リリースされ、乗車定員は3ドアが4名、5ドアが5名となる。
価格帯&グレード展開
価格帯は159.0~236.8万円。FFのベース車は価格据置、4WDは値下げ
ボディは5ドアと3ドアで、それぞれに1.8リッターと2.0リッターの2つのエンジンが用意される。ただし、1.8リッターはFF、2リッターは4WDのみに限定される。
グレード展開は「Xグレード」をベースに「エアロスポーツ」と「ワイドスポーツ」の、計3タイプ。また、「Xグレード」には10万円アップでオートエアコンやフォグランプといった上級装備がセット装備される「Gパッケージ」も選ぶことができる。「エアロパッケージ」はその名の通り、「X・Gパッケージ」にエアロを装備したもの。「ワイドスポーツ」は「X・Gパッケージ」加えて、オーバーフェンダーと極太タイヤが装着され、全幅が+50mmとなる。旧型に設定されていたソフトトップは廃止され、EVカーは引き続き旧型が生産されるという。
なお、RAV4には、語尾に「L」と「J」が付くが、これは取り扱いディーラーの違い。「L」がカローラ店で、「J」がネッツ店となる。外観の主な違いはフロントグリルぐらいで、他はまったく同じ。
価格は3ドアが159.0~222.8万円。これに14万円加えると5ドアが購入できる。旧型と同じ仕様で比較すると、実質的に値下げで、中でも「ワイドスポーツ」は旧型のGスポーツに比べて8万円も安くなっている。
ライバルは三菱パジェロイオ、ホンダCR-V、スズキ・エスクード。価格のアドバンテージではCR-Vが引き続き優位にたつが、商品力を加味すれば、RAV4が現在、最もお買い得。なお、ライバルでライトクロカン市場を牛耳るパジェロイオも近いうちにマイチェンが実施される模様だ。
パッケージング&スタイル
もうチョロQなんて言わせません! マッチョ&3ナンバー
ボディサイズは3、5ドア両モデルとも一回り拡大化され、全車種3ナンバーとなった。5ドア標準車で全長4145mm×全幅1735mm×全高1690mm。3ドア標準車が全長3750mm×全幅1735mm×全高1680mm。また、ホイールベースはいずれも80mm延長され、2490mmと2280mmとなった。
デザインテーマは“スタイリッシュ&ラギッド”(ラギッドとは「頑健な」というような意味…らしい)。全体のイメージは前代のチョロQ的かわいさからシャープで力強いものへと変化、メリハリの効いた筋肉隆々の力強いフォルムを作り出している。ボディサイドのえぐれたようなキャラクターラインが特徴だ。また、新型では旧モデルと反対に5ドアボディから開発が進められたおかげで、5ドアのバランスが、格段に良くなっている。このデザインを担当したのは、セリカと同じくCALTY(カリフォルニアに拠点を置くトヨタ直系のデザインセンター)。一方、3ドアはトヨタ社内案で、どちらも見所のあるデザイン。気になる取り回しも、3ドアは従来型と同じく5.0mで、5ドアは0.1m小さくなって5.3mと、これまた優秀。でもオーバーフェンダーが装着される「ワイドスポーツ」は、全幅が先代パジェロのワイドと同じ1785mmまでに広がるわけで、ここまで大きくなると、狭い道ではどうしても気を使ってしまうのも確か。車両の左側側面の死角も大きくなっている。フェンダーに補助ミラーが付いたことが、その証拠。
ワンランク上の余裕とジャンルを越えた機能を実現。高効率&高機能パッケージ
Aピラーの付け根を100mm前方に移したため、室内はボィの拡大分よりも広くなったことが実感できるもの。特にホイールベース80mm延長分の恩恵を最も授かっているのが後席の足下空間。5ドアはもちろんのこと、3ドアでもフル4シーターとして十分通用する広さを誇っている。さらに150mmロングスライド機構、タンブル機構に加え、左右別々で脱着も可能。結構軽い。荷室は最大で500リッター(5ドア)とラージクラスワゴン顔負けの大容量を確保する(荷室の地上高は低くて使いやすい)。目新しい機能としてはトノカバーが2段階に高さ調節できること。これだけのアレンジと広さをもってすれば、レジャーシーンで何も不自由することはないはず。また、地面からのシート高は従来型と同じままなので、乗り降りもスムーズにできる。パッケージングには死角なしといえるだろう。
インパネは操作性、視認性を第一におきながらも、従来型以上にポップなデザインとなり、質感は飛躍的に向上。インパネの素材は新開発のしっとりとしたもの。センターメーターではないが、特徴的なインパネセンターのメタリック調6角センターパネルの4箇所には剥き出しビスを配し、メカニカルなイメージを醸し出すなど、遊び心も忘れていない。装備も脱着式サンルーフが電動化され、アクセサリーソケットも2つ用意されるようになった。収納スペースも豊富で多彩。アメリカンサイズでもしっかりと収納できるカップホルダーやサングラスホルダーなど、まさに世界基準(アメリカ仕様?)の気配りを見せる。先代より質感はグンとアップしてこれまた死角なし。
というわけで、もはや新型RAV4には死角なしか! と思われたが、惜しくも肝心かなめのシートの座り心地が今一歩。見た目はサポート性良さそうで、ステアリング、シートともに上下機構は備わっているのだが、座面、背もたれに腰がなくて、どうもどうもシックリこない(注:編集部・水野の場合はシックリきた。人によって感じ方は違うようだ。ご確認を)。
基本性能&ドライブフィール
2リッターエンジン世代交代。新開発の「D-4」が主力エンジン
エンジン・ラインナップは直4の2リッターと1.8リッターの2本立て。旧型には2種類の2リッターエンジンが用意されていたが、今回の2リッターはそのどちらとも違い、新開発のD-4が搭載される。4WDモデルのみの設定で、スペックは152馬力/20.4kgmで、旧型(180馬力エンジンを除く)よりパワー、トルクともに10%以上向上しながらも、燃費は10.4km/Lから14.0km/Lと平成22年燃費基準もクリア。一方、4WDよりも130~140kg軽くなるFFモデルは、1.8リッター専用となり、スペックは125馬力/16.4kgm、燃費は14.4km/Lとなる。なお、ギアボックスは1.8リッターは4ATのみ、2リッターモデルは4ATもしくは5MTが組み合わせられる。
足回りは前がストラット、後ろがダブルウォッシュボーンと、型式こそ旧型を踏襲するが、細部にわたり全て改良が施されたもの。4WDシステムはMT、ATともに、センターデフにビスカスカップリングを採用したフルタイム式となり、旧型のMTにあったセンターデフロックスイッチはインパネから消えている。本格的なクロカン走行をきっぱりと諦めたわけだが、これまでのユーザーの使用状況を考えれば、これは正当だろう。
本質である軽快な走りをさらに熟成。快適性は上級サルーンに迫る
試乗したのは2リッターエンジン(4WD)を搭載した5ドアの4AT車。エンジンの吹け上がり自体は軽いが、スポーツタイプエンジンの軽快さはない。低回転域では直噴の良さを感じさせる豊かなトルクを発揮し、フラットな加速ぶりは非常に扱いやすいもの。上り坂での発進でも不足を感じることはない。150km/hの高速巡航は軽くこなすが、その領域でのパワー感は今一歩。まあ、これ以上求めること自体が間違っているが。パワステは重からず、軽からず。万人ユースの味付けだ。
6年の進化ぶりが最も伺えるのが乗り心地だ。タイヤが大きいとバネ下重量が重くなり、それが乗り心地に悪影響を及ぼすものなのだが、新型RAV4は、それが全くない。基本的にはマイルド。多少段差をコツコツ拾うようになったものの、不快なカドがなく、バタバタとした旧型の乗り心地よりグッと落ち着いた印象になっている。これはボディ剛性の強化、ホイールベースの延長が主な要因として挙げられるわけだが、足回りの絶妙なセッティングも忘れてはならないところ。例えば、車速や操舵スピードに応じたロールはするのだが、ある程度までいくと、それ以上深くならず、サスのしっかりした仕事ぶりがはっきりと分かる。また、オールシーズンタイヤを履いている割には、粘りがあり、途端に腰砕けになることもない。ワイドになった分以上の安定感を出している。
後方排気のエンジンとしては静粛性も優れており、高回転まで使ってもノイズの上昇は少ない。高速巡航も大変静か。これまでセダンしか乗ったことのない人が乗っても、あらゆる面で違和感を持つことはまずないはずだ。ただ、ワゴンボディというのは後方からのこもり音がどうしても大きくなりがちで、RAV4もこの例に漏れず。巡航時で、これが最も気になった点だ。
ここがイイ
全てにおいて6年の歳月を感じさせる飛躍的な質の向上。一クラス上のクルマみたいな快適性はたいしたもの。パッケージングもすばらしい。またメータークラスターセンターにタコメーターを置いて(径は小さいが)浮き出るようなデザインとし、さらに珍しいクリーム色でまとめたこともイイ。センスのいいメーター周りになっている。内装質感の向上も著しいし、さらっとしたメッシュ風のシート生地もいい。
ここがダメ
インパクトという点で、初代を越えることができなかったこと。特に3ドアのスタイルは、先代の方がジャパニーズオリジナルを感じさせて秀逸。新型の「良くあるクロカン的なスタイル」はイマイチ。おそらく主市場のアメリカ人好みの形だと思うが、日本では?
総合評価
今回のポイントは3ドア、5ドアを同時に開発し、北米市場を重点に開発されたこと。これによって5ナンバー枠という制約から解放され、デザインの自由度が高まり、室内の狭さも克服された。個人的なデザインの好みは別として、近くで見るとなかなかかっこいいデザインではあるので、ぜひ現車をごらん頂きたい。また、走りがより乗用車志向になったことも評価できる点だ。
しかし、世界を驚かせた初代のインパクトはない。また先代の大ヒットとなった源である5ナンバーサイズもキープして欲しかったところ。もちろん、6年もたてば自動車を取り巻く状況も日本人の意識も変わってくるから、別に5ナンバーにこだわる必要はないとしても、このサイズは日本ではコンパクトSUVではないでしょう。スタイル的にもアメリカ人好みで、旧型のオモチャ然としてオリジナリティ溢れたチョロQルックとは大きく隔たりがあるため、国内での乗り換え需要には結びつかないように思う。
新型はセリカ同様アメ車的色彩が強い。小ハリアー的な要素もあるし。日本向けライトクロカンの本質からは脱線してしまった感がある。まぁ、それがトヨタの狙いといえば、それまでなのだが…。センターメーターでもないし、先鋭的な印象の最近の新型トヨタ車としては珍しい、欧米市場向きのどちらかといえば保守的な部分を保った乗用SUVが、ニューRAV4の本質だろう。
公式サイトhttp://toyota.jp/