新車試乗記 第395回 トヨタ RAV4 Sport Toyota RAV4 Sport

(2.4リッター・CVT・247万8000円)


日時: 2005年12月10日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    11年間で200万台

    初代RAV4は1994年に3ドアで登場。全長3.7メートル弱のモノコックボディに、2リッターエンジンとフルタイム4WD、専用開発のリアサスを搭載した意欲的なモデルだった。当時ブレーク直後だった木村拓哉のテレビCMも懐かしい。以後、5ドアやFF車などバリエーションを増やしつつ2000年に2代目へ進化。2代目以降は海外が主軸で、11年間の累計生産台数は200万台を越える。今やニッチどころか重要なグローバルモデルだ。

    見えない部分を刷新

    2005年11月14日発売の3代目はスタイリングこそキープコンセプトながら、プラットフォームやパワートレインなど見えない部分を刷新。4WDシステムも従来のセンターデフ付のフルタイム 4WDから電子制御式に変更。エンジンは2.4リッターに格上げ、変速機はCVT(無段変速)となった。新技術ではブレーキ/アクセルに加えて電動パワステを統合制御する「S-VSC+アクティブトルクコントロール4WD協調制御」が挙げられる。

    販売は世界41ヶ国とネッツ店で

    国内の目標台数は月間2000台で、ネッツ店の専売となる。海外では41ヶ国で展開。ライバル車は、ホンダCR-V、日産エクストレイル、三菱アウトランダー、スズキ・エスクード、スバルフォレスター等の国産勢、そしてヒュンダイJM(海外名ツーソン)と数多い。

    価格帯&グレード展開

    FF車なら197万4000円から

    パワートレインは2.4 リッター直4とCVTの1種類。グレードは3種類で「X」(218万4000円)、「G」(237万3000円)、「SPORT」(247万8000 円)。XとGには21万円安でFF車もある。全車オーディオはオプション。急な坂道でのずり落ちを防ぐ機能も備えたS-VSCは、SPORTで標準、Gグレードでは6万3000円のオプション。

    パッケージング&スタイル

    依然、全長は短いが‥‥

    ボディサイズ(カッコ内は先代5ドア比)は全長4335mm(+180)×全幅1815mm(+80) ×全高1685mm(-5)、ホイールベース2560mm(+70)と一気に大型化。とは言え、このクラスでは今でも一番小さな部類だ。最小回転半径も 5.1m(-0.2)と従来より小さい。しかし、試乗したSPORTの全幅は1855mmで、最小回転半径も5.4mに膨らむ。狭い道のすれ違いで気をつかわないと言えば嘘になる。

    ハイラックスサーフ風のスタイルだが、サーフでさえ持たない背面スペアタイヤは都会派らしくない。おかげで、純正ナビ付きのトヨタ車にしては珍しく、リアカメラが付いていない。車格的に実際よりも全長が長く感じられるため、バック時に不安を覚えた。米国ほどではないにしろ、日本でもライトSUVを好む女性は少なくないだろうから、ここは残念だ。なお海外には背面スペアではないモデルもあるという。なぜこれを採用しなかったのか理解に苦しむ。荷室床下収納を強く欲する人がそう多いとも思えないのだが。

    左右独立式のエアコンを採用

    「上下二枚翼」を謳うダッシュボード、斬新なメーター群など、造形は新しいインパネだが、質感は平凡で新鮮味は薄い。オートエアコンはこのクラスでは珍しい左右独立式。助手席グラブボックス(上段)は、ハリアーで使ったバネ仕掛けの開閉式リッドを応用したものだが、押し方に少しコツを要する。4WDのセレクター類が備わらないのは、いわゆる四駆ファンには物足りないかも。スタートボタンはレクサス車やラクティスに続いて、ステアリング左に配置。

    前後スライドやリクライニングが可能

    センタートンネルの無いフラットなフットスペースが広がる後席。平板で黒一色のシートが味気ないが、前後スライド(165mm)やリクライニングなど機能は充実している。

    転がるものはハンモックへ

    背面スペアタイヤなので必然的にドアは横開きに。ハッチゲートも備わらない。荷室のレバーを引けば、後席を遠隔操作で座面ごとチルトダウンできる。ただこのレバーが「ヤワ」な感じで折れそうなのはいただけない(そんなことはないと思うが)。奥行きは最大1570mm。ハンモック式のユーティリティネットはヘルメットやボールなど転がりそうなものを置くのに便利だ。

    基本性能&ドライブフィール

    2.4リッター+7速マニュアルモード付CVT

    試乗した「SPORT」は4WDのみで、235/55R18タイヤを履く。ハリアー等の2.4リッター直4(改良版)とCVTのドライバビリティは悪くないが、スタート時のピックアップはやや敏感。アクセルを強めに踏むと一気に飛び出す感じがある。最高出力はアウトランダーと同じ170馬力で、先代から約 200kg増の1560kgを余裕で引っ張る。ただ、巡航状態では一転して低回転キープで燃費を稼ごうとするなど、ちょっと2面性のあるプログラムだ。7 速マニュアルモード付なのにパドルシフトが無いのは、ラクティスやアウトランダーを知った後では少々物足りない。電動パワステのフィーリングはチェックするのを忘れるくらい自然だ。

    気になったのは足回りで平滑な路面では問題ないが、18インチタイヤのせいかダンパーのせいか、荒れたところでユサユサとした動きが続く。コーナリングも今ひとつしっくり来ない。アウトランダーが225/55R18サイズでまずまずの乗り心地と操縦性を備えていたから、この点でも物足りなさを感じた。

    電子制御4WDを新採用

    SUVとしてのトピックは、従来のセンターデフを備えたフルタイム4WDをやめて、電子制御多板クラッチを使った「アクティブコントロール4WD」を採用したことだろう。電子制御クラッチとリアデフが一体になった構造はアウトランダーのものに似ているが、前後のトルク配分プログラムは、発進時が55:45で、通常走行時は限りなく前輪駆動に近づくという設定だ(現実に100:0になることはまずないとのこと)。アウトランダーの駆動配分(4WDモード)が85:15~40:60だから、両者は微妙に異なる。もっとも、アウトランダーは別に2WDモード(こちらも限りなく100:0に近いところまでいくというもの)が選べるから、結果的には同じような配分と言えるかもしれない

    悪路でステアリング制御を行う

    もう一つ面白いのは、VSC にステアリング制御を加えたS-VSC+アクティブトルクコントロール4WD協調制御だ。オン/オフで、4輪それぞれの駆動力と4輪それぞれのブレーキ、ブレーキによる前後・左右輪の差動制限(LSD効果)、さらにSUVで世界初の電動ステアリングの操舵アシスト(舗装路での体感は難しい)を加えて、操縦安定性や走破性を確保するもの。ここまで各輪の制御が自在にできるとなると、燃費等に不利な従来のフルタイム4WDを使う意味はほとんど無さそうだが、高負荷が連続してかかるような過酷な状況では、センターデフ付の本格クロカンに、今はまだ取って代わるものではないようだ。その意味では理想的な生活四駆で、雪道などでは高い効果を発揮できるはずだ。

    おまけでDACやヒルホルダーも

    さらにS-VSCにセットで付いてくるDAC(ダウンヒル・アシスト・コントロール)はいわゆるランドーローバーなどのHDC(ヒル・ディセント・コントロール)と同様のもので、急な下り坂で車速を約5km/hに抑え、クルマが滑り落ちるのを防ぐ。スイッチを押して、マニュアルモードの1速を選べばスタンバイOKだ。アクセルを踏むといきなりABSが解除されて加速するのでご注意を。また、電子制御ブレーキを使った応用として、坂道発進時にずり落ちるのを防ぐヒルスタート・アシスト・コントロール(いわゆるヒルホルダー機能)も用意される。クリープが弱めのCVT車にとっては日常的にも役に立つものだ。

    安定したコーナリングと高速巡航

    S-VSC+アクティブトルクコントロール4WD協調制御によってコーナリングは絶対的に安定傾向。腰が高いままコーナリングスピード自体は速いという不思議な感覚で、人工的に安定させた姿勢で走らされている感があり、あまり楽しくはない。BMWのX3あたりが走りの仮想敵だったようだが、スピード的には勝っても楽しさの面では勝てているようには思えなかった。高速巡航では逆に絶対的な安定感が素晴らしい。とはいえ、日本ではそう大した速度は出せないから、クルーズコントロール+CVTによる省エネ走行が似合うということになるのだろう。

    ここがイイ

    トヨタ車らしいそつの無い作り。所々に新しさ(ボタンスターターとかデュアルACとか)を加えつつ、必要なものは全てあるという満足感が得られる。もちろんハイテク満載の駆動系は高評価。電動ステアリング及び四輪の駆動をS-VSCとして協調制御するというのは、さすがに素晴らしいテクノロジーの勝利。四駆の未来をきちんと示している。

    ここがダメ

    素晴らしいテクノロジーも、乗って楽しくないのでは意味がない。試乗車固有の問題だったのかもしれないが、ダンピングが甘いようなヤワヤワした動きと、小刻みな振動(これはタイヤのせいか)があり、いわゆるビシッとした足とは言えなかった。このおかげでおそらく高いであろうボディ剛性も感覚的にスポイルされ、「なかなかいい」感を得るに至らなかった。

    例えばオーバーステア時にカウンター方向へ電動パワステをアシストするというS-VSCも、そこまでの動きは確認できず、ただただニュートラル気味に(SUVとしてはずいぶん高い速度で)コーナリングできるだけという印象。SUVなのだからそれで十分とはいえ、感覚的に剛性感の高かったアウトランダーやエスクードあたりと比べると、ちょっと物足りないのは確か。また、CVTのプログラムは燃費と発進加速を両立させるため、2800回転あたりからドンとパワーが出る。ターボみたいな2段加速となっているのだ。リニアな加速感を好む人にはどうにも気になるところ。

    リアカメラの設定が販売店オプションですら用意されないことも残念。トヨタ車では珍しい。背面スペアタイヤはRAV4にはもう不要ではないか。海外に投入予定のスペアタイヤレス車はランフラットを使うらしく、そこが国内市場ではネックのようだが‥‥。サイドカメラもないから、無粋なミラーがボンネット上に立っているのもいただけない。

    ヒルスタートアシストやDACを備えたVSCは、主力のGグレードではオプションで6万3000円。オプションだと選ばない人が多いように思う。ステアリング制御なしでもいいから、こういう安全系の装置は全車標準にすべき。

    総合評価

    一時期、パジェロミニなどライトクロカンがもてはやされたころ、そのオーナーの多くは女性だった。曰く、小さいのに「ぶつかっても頑丈そう」「シートが高いので乗り降りしやすい」「ボディの四隅が見やすくて運転が楽」「角張ったスタイルが素敵」。これはきっと海外の女性が現在のRAV4に対して持っている感覚だろう。ところが日本市場では新型RAV4にこの感覚は当てはまらない。「どのクルマも今や衝突安全性は高いし」「乗り降りはどのクルマでもたいして気にならないし」「ボディが大きめになって運転には気を使いそうだし」「よくある四駆のデザインだし」となる。このあたりが月販目標2000台という数字に表れているのだろう。日本ではライトとは言いづらいSUVになってしまったのだ。女性人気が盛り上がることはあまり考えられない。

    とはいえ、走りは確かに素晴らしくなっている。いわゆる四駆とは思えないコーナリングのスポーティさは、まさに最新のSUV。高速巡航も快適だし、オンからオフまで快走できて、快適でユーティリティー面も不足無し。S-VSC+アクティブトルクコントロール4WD協調制御により、オンロードでもオフロードでもひたすら安全なわけで、雪の降る地方でこの機動性は必需品だろう。試乗車はやや固い足だったが、ノーマルの足なら快適なはず。エンジンは2.4リッターもあるのだから、このボディサイズならパワーに不足はない。それでいて燃費も悪くないわけだ。つまり日本では「ライト」とは言えない分、男性ユーザー向けの商品になってきている。

    モーターデイズはトヨタに偏向していると思われがちだが、先週のアウトランダーに続いてこのクルマに乗ってみると、モーターデイズとしては明らかにアウトランダーの方が好ましい。アウトランダーはビシッとしているというか、ボディ剛性感がちゃんと伝わる作りになっている。アウトランダーはアルミの屋根、上下2段分割リアハッチなど作り込みの部分も意欲的で、背水の陣でなりふりかまわず高品質を追ったという雰囲気だが、RAV4の場合は、余裕で作られた雰囲気がある。

    もちろん全てが一新されているのはRAV4も同じだが、意欲的な取り組みといった部分がもっともっと盛り込まれてもよかったと思う。駆動系以外はキープコンセプト。走りだけではなく、SUVゆえの何かもっと斬新なものが欲しいのだ。このクラスは欧米では女性の足的なクルマゆえスタンダードな作りとなるのかもしれないが、日本においてはかなりマニアックな乗り物。マニアックな気持ちを満足させるもの、あるいは遊びの世界を広げる雰囲気作りが欲しい。そういった部分が増えると、海外では生産を含めて難しい局面も出てくる。新型RAV4では相反する「普通」と「マニアック」という二つの要素の折り合いがうまくついていないように感じてしまった。

    試乗車スペック
    トヨタ RAV4 Sport
    (2.4リッター・CVT・247万8000円)

    ●形式:DBA-ACA31W●全長4335mm×全幅1855mm×全高1685mm●ホイールベース:2560mm●車重(車検証記載値): 1560kg(F:920+R:640)●エンジン型式:2AZ-FE●2362cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●170ps(125kW) /6000rpm、22.8kgm (224Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60L●10・15モード燃費:12.6km/L●駆動方式:電子制御4WD●タイヤ:235/55R18(BRIDGESTONE DUELER H/T 687)●試乗車価格:298万9350円(含むオプション:チルト&スライド電動ムーンルーフ 9万4500円、コンライト<ライト自動点灯・消灯システム> &クルーズコントロール 3万2550円、スマートエントリー&スタートシステム 4万6200円、サイド&カーテンシールド 6万3000円、エアバッグHDDナビゲーション&RAV4ライブサウンドシステム 27万5100円)●試乗距離:250km ●試乗日:2005年12月

    公式サイト http://toyota.jp/rav4/index.html

     
       
       
       
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