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プジョー RCZ新車試乗記(第612回)

Peugeot RCZ

(1.6リッター直4ターボ・6AT・399万円)

「あっぱれ!」なFFスポーツ、
RCZに乗って、日本車に「 喝 !」

2010年10月17日

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キャラクター&開発コンセプト

308ベースのFF小型クーペ


2007年に発表されたコンセプトカー「308 RCZ」。2007年の東京モーターショーにて

2010年5月に日本での先行予約がスタートし、7月からデリバリーが始まったプジョー「RCZ」は、308ベースのFFスポーツクーペ。当初はコンセプトカー「308 RCZ」として2007年のフランクフルト・モーターショーに登場。プジョーによれば、その反響が予想以上に大きかったため市販化にゴーサインを出した、とされる。

ジャンル的には2+2(4人乗り)の小型FFクーペだが、ほぼコンセプトカーそのままのスタイリングは、スーパースポーツ的なインパクトを放つ。さらに抑揚の激しいアルミ製ボンネットや「ダブルバブル」形状のルーフ&リアウインドウなど、主にデザイン面で見どころの多いモデルとなっている。生産はプジョー車では異例となるオーストリアのマグナ・シュタイア社が担当する。

 

プジョー RCZ (市販バージョン)
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

※過去の参考記事
■新車試乗記>プジョー 3008 グリフ (2010年10月)
■新車試乗記>ホンダ CR-Z (2010年4月)
■新車試乗記>アウディ TT クーペ 2.0 TFSI クワトロ (2008年10月)
■新車試乗記>アウディ TT クーペ 3.2 クワトロ (2006年11月)
■新車試乗記>アウディ TT クーペ 1.8T (2003年1月)

価格帯&グレード展開

6AT・右ハンドル車が399万円。6MT・左ハンドル車が423万円


試乗したのは6ATの標準車。ボディカラーはトルマリンレッド
車両協力:プジョー名東(株式会社ホワイトハウス)

今回日本に導入されたのは、アイシンAW製6AT・右ハンドル仕様(399万円)と6MT・左ハンドル仕様(423万円)の2種類。

エンジンはMINI クーパーSなどでもおなじみの1.6リッター直4・直噴ターボだが、6AT車と6MT車でスペックは大きく異なり、前者は308シリーズや3008と同じ156ps(115kW)と24.5kgm(240Nm)、後者は200ps(147kW)と28.1kgm(275Nm)の高出力バージョンとなる。またタイヤサイズは6AT車が235/45R18、6MT車では235/40R19だ。オーディオやナビは全車オプションとなる。

ボディカラーはペルラネラ・ブラック、マーキュリー・グレー(シルバー)、ハリア・グレー(濃灰)、トゥアケナ・ブルー、トルマリン・レッド(試乗車)、パール・ホワイトの計5色、内装はブラックのナッパレザー仕様が全車標準となり、受注生産でグレージュ・レザーとブルーグレー・レザーが用意される。

 

受注生産でグレージュ・レザーとブルーグレー・レザー(写真)も用意
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

標準仕様のダッシュボードは合成皮革で丁寧にカバーされるが、さらに受注オプションの「インテグラルレザー・パック」仕様では、これがシートと同じナッパレザーとなり、同時にルーフ両脇のアルミ製アーチパネルがサンドベージュ色のサテン仕上げになる。またこれとは別に、スチール製ルーフにカーボン製シートを貼った「カーボンルーフ・パック」仕様も用意される。これらのオプションパック装着車では、6AT車でも19インチタイヤが標準になる。

■RCZ RHD(右ハンドル) 6AT  399万円
【1.6リッター直4 直噴ターボ(156ps、24.5kgm)】
 JC08モード燃費:11.5km/L
  ★今回の試乗車

■RCZ LHD(左ハンドル) 6MT  423万円
【1.6リッター直4 直噴ターボ(200ps、28.1kgm)】
 JC08モード燃費:13.2km/L

欧州にはディーゼルも。さらにディーゼルハイブリッドも登場?


プジョー RCZ HYbrid4 コンセプト
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

欧州ではこれ以外に、156ps版の6MT仕様があるほか、2リッター直4ターボディーゼル(163ps、34.7kgm)の「2.0 HDi FAP」(6MT)がある。ディーゼルが人気の欧州では、これが販売の主力なのかも。なお、FAPとは「Le Filtre a Particules」=DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)付のこと。

また欧州では来る2011年に、世界初の市販ディーゼルハイブリッドとなる「3008 HYbrid4」が発売される予定だが、このパワートレインをそのままRCZに移植した「RCZ HYbrid4」の登場も、3008ハイブリッドの成功いかんではあり得る、と言われている。これは前述のディーゼルターボで前輪を駆動し、モーター(37ps)で後輪を駆動することで、トータルで200psの4WD車となる。

パッケージング&スタイル

FFながら、スタイルはスーパースポーツ


フェンダー部まで覆うボンネットはアルミ製。歩行者衝突時にクラッシャブルゾーンを確保するアクティブボンネット(火薬式)も採用する

言うまでもないが、RCZは惚れ惚れするほどカッコいいクルマだ。ボディサイズ(308ハッチバック比)は、全長4290mm(-25)×全幅1845mm(+25)×全高1360mm(-155)で、ベースとなった308ハッチバックと全高以外は大差なし。ホイールベースも同じ2610mmだ。

それでもボディ幅はポルシェのボクスター/ケイマン(1800mm)や普通の911(1810mm)はおろか、911のターボボディ(1850mm)に迫るほどワイド。また308と大きく異なるのがトレッド値で、フロントは1575mm(+55)、リアは1595mm(+95)と、超ワイドトレッドになっている。

 

FFとは思えないサイドビュー。ホイールベースはランボルギーニ・ガヤルド並みの2610mmもある

また車高が数値以上に低く見えるのも、RCZの特徴だ。1360mmという全高は、実はアウディTTやホンダCR-Zあたりと大差ないが、RCZは全長やホイールベースが長いほか、ボンネットやトランクリッドが低く、さらにグラスエリアも薄く見えるため、1200mm台のような低さに見える。

 

後ろ姿は「ハードトップ付のボクスター」風だが、非日常性はそれを上回り、ダブルバブル形状のリアウインドウもかなり目立つ

そして全体の印象を決めているのが、メリハリがあって、なおかつ均整のとれたスタイリングだ。左右フェンダーを盛り上げつつ、短くまとめたフロントセクションから始まり、中央部はアルミ製パネルを貼ったアーチと「ダブルバブルルーフ」を戴いた小さなキャビンで引き締められ、後半では再びボコッと盛り上がったリアフェンダー、そしてV12でもミッドマウントできそうな長いリアデッキが伸びる。

 
  
  全長 全幅 全高 ホイールベース 車重
プジョー RCZ 4290mm 1845mm 1360mm 2610mm 1350kg(6MT/6AT)
2代目アウディ TT 2.0TFSI (2010年) 4190mm 1840mm 1390mm 2465mm 1340kg(6-DCT)
初代アウディ TT 1.8T 4060mm 1765mm 1340mm 2425mm 1300kg(5MT/6AT)
ホンダ CR-Z 4080mm 1740mm 1395mm 2435mm 1130kg(6MT)
1160kg(CVT)
 

ミッドシップ風のキャブフォワード。名車への各種オマージュ?あり


プジョー 908HDi-FAP (2007年 東京モーターショー)

RCZがこのクラスの小型FFクーペとして特異なのは、アウディTTやケイマンのようなファストバックスタイルではなく、CR-Zのようなウエッジシェイプでもなく、ミッドシップ車のような「キャブフォワード・ロングデッキ」としたところだろう。エリーゼやアウディR8、ケイマンあたりと同ジャンルのクルマに見えてしまうのは、そのせいだ。

 

これは2007年に発表されたコンセプトカー「308 RCZ」。市販バージョンとはリアバンパーとマフラーエンドの処理が違うくらい

なお、デザインはプジョー社内のようだが、XXX風と言えるデザイン処理がいろいろあるのも、RCZの面白いところ。例えばフェンダーと一体のクラムシェル型ボンネットは、イタリアンデザインっぽいし(アルファGTV/スパイダー、アルファSZ、ついでにホンダ・ビートも)、前後フェンダーまわりはVWカルマン・ギア風、ダブルバブルルーフはもちろんザガート風、サイドウインドウ下部のキックアップはボルボP1800シリーズのキャラクターライン風だ。

インテリア&ラゲッジスペース

レザーのしっとり感が全体のキー


試乗車は6AT・右ハンドル仕様。パドルシフトは付かないが、シフトレバーによるマニュアル操作はしやすい

エキゾチックカーようなエクステリアに対して、インテリアはオーソドクス。乗車ポジションこそスポーツカー的だが、全体から受ける印象は308や3008にも通じる上質感を重視したものだ。

308や3008では、ダッシュボード中央に空調吹き出し口が3連で並ぶが、RCZでは真ん中の吹き出し口をアナログ時計に変更。さらにダッシュボード全体を、「プジョー・テクノ・ポップ」と呼ばれる自社開発の人工皮革で包む。またさらに「インテグラル・レザー」仕様では、ここが本革(シートと同じナッパレザー)となる。いずれにしても、初代アウディTTにおける内装の肝が本アルミのメタル感だったとすれば、RCZのそれはレザーのしっとり感だ。

 

メーター類と同じレタリングのクロック。こういうデザインがフランス車はなぜか巧い

一見狭そうな室内も、実際には室内高が十分あり、頭上に圧迫感を覚えることはない。ヒップポイントは308より45mm低いとのことだが、前方視界と側方視界は共に良好で、リアウインドウからの後方視界も意外に悪くない。スポーツカーとして考えると、視界は360度かなり効く方だと思う。これは主に、前後のバルクヘッドが低いからだ。

電動レザーシートを標準装備


ステアリングはもちろん、チルト・テレスコ付。全車4エアバッグ(前席フロント&サイド)を標準装備する

ナッパレザーを張った電動シートは、全車標準。前後スライド、リクライニング角度、座面の高さが電動で調整できるほか、ステアリングも当然チルト・テレスコ付なので、ドライビングポジションはおおむね決めやすい。またペダルオフセットもほとんどない。ただし、座面の角度、あるいは座面の前側(膝に近い方)の高さは、単独で調整できないので、人によっては膝裏のサポートに少し物足りなさを感じる可能性がある。

また乗車時に頭がルーフにつかえやすいのは、致し方ないところ。この点はエリーゼほど大変ではなく、初代アウディTTよりちょっとマシ、といったところか。これはそのうち慣れるものではある。

後席は「+2」だが、見た目よりは実用的


背もたれの作りが良い+2のリアシート。もちろん荷物置きとしても便利だ

一見2シーター・ミッドシップみたいなRCZだが、キャビン後部にはエンジンの代わりに? 2人掛けシートが備わる。当然ながらここは、ポルシェ911やアウディTT、あるいはホンダCR-Zなどと同様、いわゆる「+2(プラスツー)」というヤツで、大人が座るには耐えないもの。実際に座ってみると、首から上は完全にダブルバブルのリアウインドウにつかえてしまうし、直射日光の直撃も受ける。

また乗降性にも特に配慮はない。前席の背もたれはレバー操作で前に倒せるが、その後は電動スライドのスイッチを押し続けて、前席を前に動かすしかなく、またそうしても間口は大して広くならない。乗り降りはけっこう大変だ。

 

とはいえ、とりあえず乗り込んでみれば、足もとのスペースはあり(前席を少し前に出せば)、横座りすれば意外とリラックスできる。他の2+2車より、背もたれの当たりが優しいせいだろうか。なので、頭がつかえない小学生くらいまでの子供で、なおかつ頭上からの日差しを遮ってあげれば、意外と実用になるかも。

なお、こんな後席にも3点式シートベルトやチャイルドシートISO FIXアンカーはもちろん、シートベルト装着センサー&アラームが備わる。

トランクは308譲りの大容量

トランクは奧に深く、容量は小型クーペとしては水準を上回る321リッター。308ハッチバック(348リッター)や最近のVWゴルフ(350リッター)にそう見劣りしない。さらに、後席の背もたれを倒してトランクスルーすることも可能で、最大容量は639リッターになる。

 

もちろんRCZは固定されたリアウインドウを持つリアルクーペなので、あまり大きなものは積めないが、ゴルフバッグの2個やそこらはもちろん、スポーツ自転車も前後輪を外せば何とか積めるだろう。

なお、説明書を読むまで分からなかったが、トランクリッドはナンバー上部の感圧スイッチを押せば、ポンと開く。

 

床下にはスペアタイヤが入りそうな空間に、発泡スチロール製の床下収納スペースを配置。そこに電動コンプレッサー付のパンク修理キットと牽引用のアタッチメントを収めている。ベースが308だけに、積載性はかなり優秀だ。またこれだけスペースがあれば、ハイブリッド化も何とか出来そう。

基本性能&ドライブフィール

ガシッとしたボディ。3008とは異なるパワー感


308/3008と基本的に同じ、6AT車の1.6リッター直噴ターボエンジン

試乗したのは6ATの右ハンドル仕様。エキゾチックな姿にワクワクしつつ走り出せば、まずはミドルクラス級スポーツカーに共通する、車体全体のガシッとした剛性感が伝わってくる。もちろん低速では路面の不整を拾い、ゴツゴツとボディ全体が揺すられて、最初は「おおっ」とも思うが、おそらくブッシュや初期ストロークでうまく逃がしているのだろう、フランス車らしいマイルドな乗り味を寸止めでキープする。1350kgという車重相応の重厚感も、良い方向に働いている。

6AT車のパワートレインは、マイナーアップデートされた2010年モデルの308シリーズと共通で、1.6リッター直4の直噴ターボ。念のため毎回書くが、ツインスクロール式の「シングル」ターボだ。最大出力156ps/6000rpm、最大トルク24.5kgm/1400-3500rpm という数値は、308シリーズや3008と全く同じで、組み合わされるのも同じアイシンAW製の6ATとなる。

ところがその特性は、不思議なことに3008とは少なからず異なる。事前の予想では、3008より車重が200kg近く軽いため、かなりパワフルに違いない、と思っていたのだが、実際にはギアリングが異なるせいか、エンジンマネージメントが異なるせいか、3008で感じたような鷹揚なフラットトルク感はなく、むしろアクセルを踏んでしばらく経ってから、ドドドドドッと加速し始める感が強い。

 

また変速プログラムはアクセルの踏み方によって、燃費重視のおっとり変速型から、低めギア維持&素速いキックダウン型まで、かなりワイドに変化する一方、フランス車特有のなかなかシフトアップしない傾向(エンジン回転を高めに保つ傾向)は3008以上に強く感じられる。

そうは言っても、一般道を普通に流す限りは特に不満もなく、そのルックスを含めて「スポーツカーを転がす」楽しさが味わえる。最小回転半径は5.4メートルで、小回りもまずまず効くし、先にも触れたように、視界は360度良好なので、狭い道でも変に気を使うことはない。ただし最低地上高は120mmで、特にフロントバンパー前端が低めなので、路面に大きな段差やギャップがある時は、スピードを抑えた方が無難だろう。

ワインディングでは完璧なオン・ザ・レール


サスペンションはフロントがストラット、リアがトーションビームと一般的

ある程度想像はしていたが、操縦安定性は実際かなりハイレベル。スーパースポーツ並みの超ワイドトレッド、ロングホイールベース、低重心、235/45R18の大径コンチスポーツコンタクト3といった要素が集まった結果、そのハンドリングは完璧なオン・ザ・レールだ。前輪が向いた方向に平然と曲がり、前輪を戻せば平然と戻る。その結果、コーナー手前でもほとんど減速する必要はなく、高い速度を保ったままクリアできる。

またハイスピードから、アクセルオフ、ブレーキング、操舵を同時に行っても、RCZは前後・左右の姿勢変化が小さく、前輪はもちろん、後輪もベタッと路面を捉えて離さない。前後重量配分は一般的な数値の64:36だが、もっと後ろ寄りな感じすら受ける。あるいはスポーツカー的な操縦性という点で言えば、必要以上にホイールベースが長い、という感じは確かにある。

またトルコン6ATで、なおかつパワーウエイトレシオ:8.65kg/psという動力性能では、この安定した車体を振り回すような走りは、ちょっと難しい。いわゆるエンジンパワーよりシャシーの勝ったクルマで、それもシャシー側の圧勝という感じ。

抜群の高速スタビリティと快適性


100km/h巡航時のエンジン回転数は6速トップで約2100回転

一方、高速道路では、スーパーカー的なディメンションが直進安定性に絶大な威力を発揮する。大抵のスポーツモデルでもアクセルを戻しつつ入る高速コーナーに、RCZはスピードを殺さず、盤石の安心感を持って入って行けるし、レーンチェンジや緊急回避もまったく不安なく行える。

また後輪荷重の少ない軽量FF車やFR車の場合、高速域になると空力バランスのせいでリアの接地感がどんどん薄まってしまうものだが、RCZの場合は、リアの接地感が不思議なくらい変わらない。これはディメンションに加えて、電動スポイラーを含めた空力処理が大きいようにも思う。

 

トランクリッド後端からは車速感応式の電動スポイラーが2段階で立ち上がる(85km/h以上で半開、155km/h以上で全開)。手動操作も可能

そして、いかにも空気抵抗が小さそうなボディは、車高の低いスポーツカーならではの、路面の上を滑るような疾走感を味合わせてくれる。風きり音も、Cピラー付近で若干サワサワといったざわめきが高まるくらいで、非常に静かだ。おまけにロードノイズも「ロードノイズって何?」と言うほど聞こえない。リアホイールハウスには、吸音材がしっかり張られている。日本では非日常的な速度域の話になるが、FF車としては抜群の安定感、フラット感、静粛性が味わえるクルマだ。

なお、メーカー発表値の最高速は、試乗した6AT仕様で212km/hで、実感でも大体それくらいかな、という感触だった。これが200ps版の6MT仕様では、一気に235km/hへと跳ね上がる。ちなみに初代アウディTT 1.8T(6AT、180ps)の最高速は225km/h、2代目TT 2.0TFSI(6速DCT、200ps)は240km/hだから、順当に馬力相応だ。0-100km/h加速は、156ps・6AT仕様が8.4秒、200ps・6MT仕様が7.5秒とある。

試乗燃費は9.5km/L以上をキープ

試乗燃費は、ほぼいつも通り一般道と高速の混じった区間(約90km)で9.5km/L。比較的空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間で10.6km/L。高速道路を80~120km/hで流した区間(約30km)では確実に12km/h以上をキープした。JC08モード燃費も11.5km/Lと良好で、特に高速道路をハイペースで走った時の燃費はかなりいいと思う。

ここがイイ

価格不明のスタイリング、抜群の高速安定性、優れた燃費、実用性

言うまでもなくスタイリング。スーパーカーか、エキゾチックカーか、というそのカタチは、久々の「個性的な」フランス車だ。同じフランス車では、ルノーにもかつて、アルピーヌ V6ターボとか、カッコ良くも変な、もとい個性的なカタチのスポーツカーがあったものだが、フランス人はこういうの、好きなのかも。

またこのカタチによって、あるいはスーパーカー的なボディサイズによって、一体いくらのクルマか分からなくなっていること。1.6リッターで400万円のクルマとは、誰が言い当てられようか。インテリアについても、ダッシュボードをステッチ入りの人工皮革(もしくは本革)で覆うなど、オーソドックスな高級感があり、変にアルミ風やチタン風の斬新なものにして失敗していないのがいい。

抜群の高速安定性、静粛性の高さ、高速走行時の燃費。いや高速に限らず、元気に走りまわってこの燃費は立派。そしてそのルックスからは想像できない高い実用性。特にAT車なら毎日気楽に乗りまわせます。

相変わらず、プジョー・シトロエン車のディレクショナル・ヘッドライト(いわゆるAFS)は、光軸の振りが大きく、夜道を走っていて便利で、楽しい。

ここがダメ

街乗りでピリッとしない6AT車。パドルシフトの不備など

ダメというほどではないが、少なくとも6AT車の場合、街乗りではピリッとしたところがなく、高速道路を走らない人にとっては、ルックスだけのスポーツカー、となってしまう危惧がないでもない。まあ欧州では6MTが当たり前だろうから、クルマとしての真の評価はMTですべきかも。右ハンドル・AT車は、日本など軟弱市場向けのサービスカーかもしれない。

シフトレバーによるマニュアル操作がしやすいので、大きな不満は感じなかったが、やはりこの期に及んで、パドルシフトがないのは残念。シート座面の角度も、手動でもいいから微調整できた方がいい。

ヒルホルダー付(主にESP装着車)のクルマによく見られるが、坂道発進ではヒルホルダーが割としっかり掛かるため、傾斜の強い場所での車庫入れなどでは、アクセルを離した後、クリープで動き出すまでにややタイムラグがあり、少し慣れが要る。

総合評価

売れるものこそ、人々が求めているもの?

最近は政治に限らず、ポピュリズムとでも言うべき、大衆迎合的傾向が様々な分野で広がっていると感じる。売れるものこそが人々が求めているもの、人々が求めているものこそ売れるもの、それこそが正義、という考え方だ。例えばコンビニに行くと、そこで売られているものは、たとえ看板(チェーン)が異なる店であっても、あまり差はない。コンビニとしては、効率よく売れる商品を置かないと商売にならないから、致し方ないのだろう。カップ麺など、時々独自なものは登場するけれど、そこで売られるのは主に話題性で、商品そのものはすぐに無くなってしまう、という感が強い。コンビニに行っても、なんだか昔ほど面白くない、と感じる昨今なのだが、皆さんはいかがだろう。

それから、例えばテレビ番組などでも、視聴率が取れる(大衆が求めている)ということで、似たような番組が作られることになり、結局どこのチャンネルでも同じような番組しか放映していない事が多い。さらに、数字の取れそうな似た番組を同じ時間帯にぶつけあったりするから、ニュースの時間は、どのチャンネルもニュースばっかりだし、バラエティの時間もそればかり。制作から編成まで、違うことをやって負けるより、似たようなものでマアマアの数字が取れればいいという、事なかれ主義に陥っているように思える。結果として、テレビってつまらない、と思う人が増えているのは確かで、業界そのものが衰退しつつあるようにも見える。

今の世の中を反映している

こうした大衆迎合的な傾向は、その原因を経済状況に求めることもできる。景気がよければ、金を使っていろいろ冒険もできるが、悪いと手堅く儲けるしかないので、安全パイの商品を作り、売れそうなやり方で確実に売ろうとする。まあ日本社会の不況感はバブル崩壊以降ずっと続いているから、こうなるのも仕方ないのかもしれない。何しろ、バリバリ働いているだろう世代(20代後半から30代)の多くは、景気の良い世界を知らないのだから、堅実なのも致し方ない、とは思う。そんなわけで日本社会の閉塞感はさらに強まっていることを否めない。

そして最近の日本車こそ、まさにこの日本社会を象徴しているのではないか。RCZのムダなカッコよさは、日本のマーケティングからは絶対に出てこない類のものだと思う。日本人は真面目だからとか、ラテン系は弾けてるから、という問題ではなく、今の世の中を反映してしまっている、ということではないか。

 

日本だって、1989年以降の10年間には、結構楽しいクルマを作ってきている。トヨタですらが2000年頃までは、今思えばなんじゃこりゃ、というほど画期的なデザインやコンセプトのクルマを作っていた(それが売れなかったのがいけないのだが)。

今や日本車はマーケティング主導の、そこそこ売れるクルマや、海外市場メインのクルマばかり。これはおもしろいなあとか、これは考えたね、いう提案型のクルマは、本当になくなってしまった(でもデザイン的にはジュークやCR-Zは、結構がんばってると思うけど)。

メーカーが作りたくて作っている


プジョー 308 RCZ コンセプト (2007年)

欧州の景気がいいとも聞かないけれど、それでもフランスでは、こんなクルマが作られている。デザインコンシャスなクルマを作ろうとする意欲に関しては、欧州と日本のメーカーとの間に、かなりの温度差があるのではないか。シトロエンにはDSシリーズがあるし、ドイツのVWですらがシロッコというカッコ勝負のクルマを出している。もちろん日本と違って、それなりのニーズがあるからだとは思うが、マーケティング主導ではなく、メーカー(の一部の人かもしれない)が作りたくて作っている感が、とても好ましく感じられる。エンスーな人々のような欧州車崇拝感覚は持ちあわせていないつもりだが、ここに来て、崇拝したくなってしまうのは否めない。

それは、日本車、なんだかな、という感覚の裏返しでもあるから、日本メーカーには本当に頑張ってもらいたいと思う。日本の社会がこうだから仕方ない、ではなく、そこを突き抜けるほどの頑張りに期待したい。それは現場だけでなく、経営の頑張りこそ重要なのではないか、と弱小企業ながら、会社経営をしている身ゆえ思うのだ。とにかくクルマ好きとしては今、輸入車に目を向けざるを得ない。輸入車も販売は苦戦しているが、せっかくの輸入車を日本車みたいにアピールするのではなく、輸入車独自の社会性をアピールすることで、もう少し売れるのでは、と思う。

 

道具としてのつまらない日本車 vs. もはや十分な信頼性を確保した「面白い」輸入車 という過激なキャンペーンを張って、一般の人の目をもっと輸入車に向けさせるべきだろう。おりしもこの土日、名古屋では「オールブランド輸入車フェア」が開催されている。昨年は名古屋モーターショーの中でこうしたショーが開催されたが、今年は愛知県輸入自動車販売店協会が独自で運営している。輸入車との出会いの機会が増えることは喜ばしい。ちなみに今回試乗したRCZの実車もここに展示されている。「つまらない大人になりたくない」なら、輸入車に乗ろう。

試乗車スペック
プジョー RCZ
(1.6リッター直4ターボ・6AT・399万円)

●初年度登録:2010年7月●形式:ABA-T7R5F02
●全長4290mm×全幅1845mm×全高1360mm
●ホイールベース:2610mm ●最小回転半径:5.4
●車重(車検証記載値):1350kg( 870+480 ) ●乗車定員:4名
●エンジン型式:5F02 ● 1598cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置
●ボア×ストローク:77.0×85.8mm ●圧縮比:10.5
●156ps(115kW)/6000rpm、24.5kgm (240Nm)/1400-3500rpm
●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L
●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:11.5km/L
●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム
●タイヤ:235/45R18( Continental SportContact 3 )
●試乗車価格:-円 ( 含むオプション:- -円 )
●ボディカラー:トルマリンレッド
●試乗距離:200km ●試乗日:2010年10月
●車両協力:プジョー名東(株式会社ホワイトハウス)

 
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