キャラクター&開発コンセプト
累計380万台の大ベストセラー車
1967年に登場したハイエースは日本をはじめアジア、中近東、オセアニア、アフリカ、中南米など、世界130ヶ国で使用されるグローバルカー。99年発売のレジアスエース(旧ビスタ店向けハイエース)とともに、その絶対的な信頼性、耐久性、実用性が国内外で高い評価を受けてきた。累計販売台数は国内で216万台、世界全体では380万台という大ベストセラー車だ。
15年振りのモデルチェンジ
2004年8月23日発売の新型ハイエースは5代目。フルモデルチェンジは実に15年振りだから、先代はそうとうの長寿モデルだったわけだ。初代ハイエース(67~77年)のモデルライフは約10年、2代目(77~82年)は5年、3代目(82~89年)は7年に過ぎない。
今回のモデルチェンジの主な目的は、15年間で大きく要求レベルが変わった衝突安全性やディーゼルエンジンの環境性能の向上だ。前面衝突時の安全性については、フロント部を強化しながら衝撃吸収構造を持たせ、さらにステアリングとブレーキペダルに後退低減機構を与えてドライバーの損傷リスクを低減。また、運転席エアバッグやABS(ブレーキアシスト付き)も全車に標準装備し、助手席エアバッグも用意した。一方、外観デザインなど、通常の新型車に比べて見た目の変化がほとんどない点も、逆にハイエースならではの特徴と言えるだろう。
新開発2.5ターボディーゼルを採用
エンジンは「自動車NOx・PM法」に適合する2.5リッター・インタークーラー付ターボディーゼルを新採用。先代末期はディーゼル車:ガソリン車の割合が4:6ほどに下がったというが、この新型ディーゼルの投入で5:5あたりまで盛り返せるのでは、とトヨタは予想する。
主な生産拠点はトヨタ車体のいなべ工場。販売目標台数はシリーズ全体で4500台/月。内訳はハイエース(ロング)が3150台/月、レジアスエース(ロング)が950台/月、2005年1月から岐阜車体工業(株)で生産が始まるスーパーロングが400台/月。
価格帯&グレード展開
4ナンバーサイズからスーパーロングまで多種多様
トヨペット店向けのハイエース(バン、ワゴン、コミューター)とネッツ店向けのレジアスエース(バンのみ)があるが、バンに限って言えば、両車はほぼ同じクルマだ。価格はハイエース(バン)/レジアスエース(バン)が170万6250円~298万2000円。
ボディタイプは小型商用車4ナンバーサイズの「ロング、標準幅、標準ルーフ」(全長4695×全幅1695×全高1980mm)から、全長5380mm、全幅1880mm、全高2285mmの「スーパーロング」まで4タイプ。さらにドアの枚数やフロア形状(標準フロアのほか、ホイールハウス分を上げ底にした「ジャストロー」)、ハイルーフ(全高2240mm)など、様々な仕様が用意される。
主力エンジンは2.5ディーゼルと2.0ガソリン
エンジンは2.5リッター・ターボ・ディーゼル(2KD-FTV)とガソリンの直列4気筒2.0リッター(1TR-FE)。さらに、ボディが最も大きい「スーパーロング」用に、ガソリン直列4気筒2.7リッター(2TR-FE)を用意。
パッケージング&スタイル
パッケージングは先代をほぼ踏襲
試乗車はハイエース/レジアスエースで一番小さく、最も一般的な「ロングボディ、標準幅、標準ルーフ、標準フロア」の豪華グレード「スーパーGL」。ドアは自動的に両側スライドドアになる。ボディサイズは全長4695mm×全幅1695mm×全高1980mmと、小型商用車4ナンバー枠いっぱいを使った立方体だ。
運転席がエンジンの真上にあるキャブオーバーのパッケージングは、先代とほぼ同じだ。ホイールベースは2570mmと短いが、駆動系の上にキャビン全体が乗っかる形なので、その数値は室内の広さにほとんど関係ない。
スタイルはキープコンセプト
どこが変わったか分からないほどスタイリングはキープコンセプト。フロントのノーズがクラッシャブルゾーン増大のため少し丸みを帯び、Cd値(空気抵抗係数)は従来の0.4台から0.3台に入ったという。
荷室部分のボディ形状はさらにスクエアになった。また、スライドドアの開口幅が120mm増えて、乗降性や荷物の積み卸しがさらに簡単になった。
クラッシャブルゾーンを増やすために、ラジエイターや補器類をノーズ部分に移動(従来はエンジンと一緒に運転席の真下にあった)。フロントフードを開けて、冷却水やブレーキオイル、ウォッシャー液の点検・補充のメンテナンスができるようになった。写真はガソリンエンジン車だが、ディーゼルターボになるとインタークーラーのコンデンサーがここに配置される。
乗降性は従来通り
乗り込む時に面食らうのが、相変わらずAピラーのアシストグリップをつかまないと、運転席/助手席に座れないこと。老人や子供は手助けが必要だが、慣れるとこれが結構ラクだったりする。座面の高さは先代と変わらない。開発スタッフに「もう少し乗降性を良くするため、着座位置を低くしようとは思わなかったのですか」と聞くと、「これ以上低くしても天井が無駄に高くなるだけなので」と説明があった。
シートクッションの薄っぺらさも相変わらずだが、今回試乗した限りでは腰が痛くなることもなく、不満は感じなかった。ダメなシートは短時間でも耐えられないものだ。
インパネシフトを採用
従来は運転席横にあったレバー式パーキングブレーキは、新型になって手で操作するステッキ式パーキングブレーキに変更された。掛けるのも解除も手で操作する。
新型になって目立つ変化の一つがインパネ。フロアシフトからインパネシフトになるなど一気に近代化した。一部グレードにあるマニュアルも、インパネシフトになる。内蔵式のドリンクホルダーはインパネ中央に配置。写真の「スーパーGL」はオプティトロンメーターやタコメーターを備える豪華仕様。ナビはオプションだが、G-BOOKなど高度な機能は付いていない。
FFミニバンと比べて段違いで広い荷室
荷室の広さは圧倒的。「ハイエースってこんなに広かったっけ?」と思うほど、新型の荷室はだだっ広い。ボディ上部の絞り込みが減って、ルーフ幅が先代より80mm増えたせいか。A4コピー用紙箱なら12箱分(先代比約4.4%)多く積めるようになったという。
写真の「スーパーGL」の場合、最大荷室長3000mm、荷室幅1520mm、荷室高1320mm。積載量は1000kg(5名乗車時は850kg)まで可能。これのスーパーロング、ハイルーフ仕様なら荷室長3540mm、荷室幅1730mm、荷室高1635mmで、大型バイクの2台積みも楽勝だ。
基本性能&ドライブフィール
抜群の取り回し性能は健在
試乗した「スーパーGL」は2.0リッターガソリン(133ps、18.6kgm)の4速AT。ハイエース/レジアスエースの中で最も乗用に近いグレードだ。ハイエースの優れた点の一つが、その抜群の取り回しで、主力のロングボディなら最小回転半径は5.0メートルに過ぎない。さらに、ハイエース特有(というか、キャブオーバー車特有)の、ノーズを奥まで突っ込んでから一気にステアリングを切って曲がるという技を使えば、都心の路地裏から畦道まで、切り返しなしで走れてしまう。そのあたりは新型でも健在だ。
劇的に進化したシャシー
少しスピードを上げると、シャシーの進化の度合いがすぐに分かる。しっかりしたステアリングフィール、良い乗り心地、ロードノイズの静かさなど、15年貯め込んだ進化の跡は明らか。荒れた路面でボディがガタガタしたり、段差でドシャンと弾むようなことはなくなった。リアサスペンションはもちろん板バネだが、乗った感じはまったくそれっぽくない。
あまりに普通に走ってしまうので、いつものワインディングも走ってみたが、ここでも予想以上にしっかり走る。これだけ重心が高くて着座位置も高いと、少しロールするだけでかなり怖いが、新型は予想以上にロールが少なく、ピッチングも小さい。うねった路面や急なハンドル操作によって安定を失うこともなかった。さすがにある程度のスピードからのフル制動ではリアタイヤがムズムズするが、操縦安定性はそうとう高くなった。
ガソリンとディーゼルのどっち?
ドライブフィールは、ディーゼルかガソリンかで大きく異なる。発表時にチョイ乗りした2.5ディーゼルターボ(109ps、26.5kgm)はアクセルを踏み込んだ瞬間、例のグォオオーンというディーゼルの音とともに力強く加速。「これぞハイエース!」と言いたくなるほど、エンジンフィールは昔のハイエースそのもの。
一方、2.0ガソリンは少し線が細く、フル積載で高速道路の上り坂という状況では少し辛いかも。エンジン音のボリューム自体は、ディーゼルとどっこいどっこい。回さなくても走る分、騒音面ではディーゼルが有利かもしれない。当然、燃料コストや燃費はディーゼルに分があるので、走行距離が多い人はディーゼルを選びたくなるだろう。
高速巡航もかなり快適に
ハイエースはその使われ方から言って、高速道路で何時間も走り続けることが多いはず。そうした状況でもディーゼルターボは強いが、今回のガソリン車は空荷のこともあって150km/h巡航ぐらいはまったくストレスなくこなす。エンジン音と風切り音は大きいが、ロードノイズは小さく、乗り心地も良い。先代だとステアリングフィールも直進性も心許なく、心拍数が上がりっぱなしだったが、新型では緊張感なく走ることが出来る。もちろん、いざという時の緊急回避は苦手なので、それなりにマージンを残して走る必要はある。
ここがイイ
5ナンバーサイズってこんなに広かったんだ、と改めて実感できる、すさまじいまでの荷室の広さ。標準ルーフでも荷室長3000㎜、荷室高1335㎜、荷室幅は最大で1545㎜。これぞいつもながらのハイエース。さらに両側スライドドアの開口部が広がって、便利さが一層増した。運転席の快適さ、居住性の良さを優先して中途半端な広さを売り物にするミニバンに慣れた目には、実に新鮮。
高速巡航フルスロットル走りもずいぶん平和で、ワインディングでも驚くほどの追従性をみせる操縦安定性の向上は、さすが15年ぶりのフルチェンジだけある。乗り心地も当たりが柔らかく、快適と言えるレベル。また、変にノーズを伸ばさずにスタイリングと室内スペースをキープしたまま、衝突安全性を高めたのもフルチェンジゆえのメリットだろう。
ここがダメ
助手席シートをいっぱいに下げると、後席エアコンの吹き出し部分がふくらんでおり、頭上のクリアランスがない。大柄な人はもちろんのこと、小柄な人でもヘルメットをかぶるとこれはちょっと厳しいだろう。
2.0リッター・ガソリンエンジンはどうにもトルク不足で魅力が薄い。しかもその割にエンジンがうるさい。アクセルベタ踏みにしないようにするための安全弁か? などと意地悪く考えてしまう。環境に優しくない、旧ハイエースの強力なディーゼルターボが懐かしい。といって、環境を考えなくてはならない「事業者」としては、ディーゼルを選ぶのは辛い。
いわゆるビジネスカーであるなら、サクシードにあるような物が置ける引き出しテーブルとか、書類を整理して置けるスペースとか、様々なビジネスユーティリティーをさらに工夫して欲しかった。安い方のグレードにはサイドにパソコンを置けるセンターコンソールがあるのだが、上級グレードではCDボックスになってしまう。運転席でノートパソコンを開けるテーブル(これは弁当を食べるときにも重宝)とかは必需品だと思うのだが。そのあたりの進化がほとんど見られないのはなぜだろう。
総合評価
中古車雑誌の情報で最も引き合いが多いのは、実はハイエース。程度のいい中古ハイエースは飛ぶように(それなりに高価で)売れている。昔からサーファー御用達だし、バイク系、マリン系、スカイ系レジャーではハイエースに勝るクルマはない。日産ホーミー(キャラバン)やマツダのボンゴ、三菱デリカなどと比べても、その人気は圧倒的だ。巷に溢れるミニバンには出来ない芸当が打てる「ワンボックス」の代表車が、より現代的に「キープコンセプト」でリニューアルされたことは大きく評価したい。変にミニバンぽくならなかったのが何よりうれしいのだ。
積載性や車両サイズなど、必要な案件をクリアするには、これ以外の寸法はあり得ないという究極のパッケージングは、ほとんど伝統芸の領域。ミニバンの室内が、なんと狭く見えることか。当然ながら荷物優先で、乗員には限られたスペースしか与えられていないし、乗り込むのも一苦労だ。その高いアイポイントはまさにトラック。ステアリングはあんまり寝ていないが、踏み降ろすようなペダル類、スティックタイプのサイドブレーキなど、サイドウォークスルー可能の、今までどおりの乗車ができるのがこれまたうれしい。
ディーゼルターボがラインナップにあるのもいい。ヒステリックにディーゼルを非難することは、RVのディーゼル車がここまで減ってきた現在、もういいでしょ、と言う感じだ。ディーゼル車の全否定は、クルマに乗ること自体を全否定することにつながりそうでイヤな感じ。試乗車のガソリンエンジンは間違いなくトルク不足。ラインナップの2.5リッター・インタークーラーターボはNOx・PM法、平成15年排ガス規制適合。やっぱりワンボックスはディーゼルでなきゃ(とはいえ、早期にハイエース・ハイブリッドの導入を熱望!)。
試乗車スペック
トヨタ レジアス エース スーパーGL
(2.0リッター・4AT・245万7000円)
●形式:CBF-TRH-200V-SRPEK●全長4695mm×全幅1695mm×全高1980mm●ホイールベース:2570mm●車重(車検証記載値):1770kg(F:1060+R:710)●乗車定員:2/5名●エンジン型式:1TR-FE●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・縦置●133ps(98kW)/5600rpm、18.6kgm (182Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/70L●10・15モード燃費:9.1km/L●駆動方式:後輪駆動(キャブオーバー型FR)●タイヤ:195/80R15(BRIDGESTONE RD613)●価格:245万7000円(試乗車:267万2000円 ※オプション:ナビ(バックガイドモニター付)&オーディオ 16万5000円、クリアランスソナー 3万7000円、助手席エアバッグ 1万6000円、リアサイドガラス(固定式) ▲1万3000円、アクセサリーコンセント(AC100V) 1万円)●試乗距離:約150km
レジアスエース公式サイトhttp://toyota.jp/regiusace/
ハイエース公式サイトhttp://toyota.jp/hiace/

