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マツダ ロードスター S スペシャルパッケージ新車試乗記(第763回)

Mazda Roadster S Special Package

(1.5L 直4・6MT・270万円)

初代デビューから四半世紀。
新型NDは爽快幸福マシンに
進化していた! 

2015年07月03日

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キャラクター&開発コンセプト

先代比で100kg以上の軽量化


新型マツダ ロードスター
(photo:Mazda)

マツダ「ロードスター」(海外名MX-5、米国名MX-5 ミアータ)は、1989年にデビューした小型軽量の2シーター後輪駆動(FR)オープンスポーツ。当時、世界的に絶滅しかかっていた同ジャンルを蘇らせ、多くのフォロアーを産んだエポックメイキングなモデルだ。初代(NA型)、2代目(NB型)、3代目(NC型)を合わせた累計販売台数は、94万台(2014年末時点)に達している。

そして4代目(ND型)となる新型ロードスターが、2015年3月20日に日本で予約受付開始となり、5月21日に発売された。

マツダはこれまで新世代商品として「SKYACTIV(スカイアクティブ)」テクノロジーやデザインテーマ「魂動(こどう)」を採用したCX-5、アテンザ、アクセラ、デミオ、CX-3を市場に投入してきたが、新型ロードスターはその第6弾にあたる。

 

(photo:Mazda)

新型は従来モデル同様に、人とクルマが一体となる「人馬一体」を追求しながら、エンジンやプラットフォームを完全に一新。エンジンはアクセラなどで使われる直噴1.5Lガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」をベースに新開発し、フロントミッドシップに縦置で搭載。ボディについてはアルミ、高張力鋼板、超高張力鋼板の使用比率を先代の58%から71%に高めることなどで、先代モデル比で100kg以上軽量化している。商品コンセプトは「人生を楽しもう - “Joy of the Moment, Joy of life”」。

その他、手動式ながら乗車したまま簡単に開閉できる新開発のソフトトップ(幌)、完成度の高まったインフォテイメントシステム「マツダコネクト」、新開発の6MT(6ATは改良型)なども注目ポイント。

月販目標500台。国内で販売増なるか


初代(NA型)ユーノス ロードスター(1989年)
(photo:Mazda)

国内におけるロードスターの年間販売実績は、1990年の2万5226台が過去最高。以後はフルモデルチェンジ時に巻き返しながらも減少が止まらず、2012年以降は年間1000台を割っている。

一方、今回の新型で掲げられた月販目標は500台(年間に直すと6000台)。そして発売から一ヶ月後の6月21日時点では、累計受注台数がすでに5042台となり、目標通りの年間6000台を上回るのは確実になった。その場合、年間販売台数は、NB型デビュー時の1998年(1万0174台)以降で最高になる。

なお、世界販売は2014年(1~11月)が1万1552台で、そのうち欧州は5658台(49%)、北米は4871台(42%)。日本はわずか5%の568台だった。新型ロードスターによって、市場別の割合がどう変わっていくかも見どころ。

 

写真は2016年からスタートするワンメイクレース「グローバルMX-5カップ」車両。世界統一仕様の“カップカー”で、2Lエンジンを搭載。2015年1月の東京オートサロンにて
【過去の新車試乗記】 【外部リンク】
 

価格帯&グレード展開

ひとまず1.5L、ソフトトップのみで、249万4800円からスタート


ベースグレード「S」の内装。マツダコネクト(ディスプレイやコントローラー)がなく、ダッシュにAM/FMラジオが備わる。オプションでCDプレーヤーも装備可
(photo:Mazda)

北米向けなどは排気量が2Lになるが、今回発売された国内向けはひとまず1.5Lのみ。ミッションはMT(新開発)と6AT(アイシンAW製トルコンタイプの改良型)が用意された。いずれ電動リトラクタブルハードトップの「RHT」も登場すると思われるが、今回はひとまず手動式ソフトトップのみになる。

グレードは以下の3種類。

ベースグレードの「S」は、249万4800円(6MTのみ)。マツダコネクトなどの装備や、トルクセンシング式スーパーLSD、リアスタビライザーなどは持たないが、代わりに990kgという車重とコーナリング時にヒラヒラと姿勢を変化させる軽快なハンドリングを実現したモデル。

中間グレードの「S スペシャルパッケージ」は、270万円(6MT)/280万8000円(6AT)。マツダコネクト、フルオートエアコン、サイドエアバッグ、トルクセンシング式スーパーLSD、アドバンストキーを標準装備するほか、6MT車はトンネルブレースバーやリアスタビライザーを備える。

 

6ATは先代のアイシンAW製6ATの改良型を採用。ブリッパー機能が追加された
(photo:Mazda)

最上級グレード「S レザーパッケージ」は、303万4800円(6MT)/314万2800円(6AT)。S スペシャルパッケージの内容に加えて、レザーシート、先進安全装備「i-ACTIVSENSE」(ブラインドスポットモニタリング、ハイビーム・コントロールシステム、車線逸脱警報システム、アダプティブ・フロントライティング・システム、リア・クロス・トラフィック・アラート)、スピーカーをヘッドレストに埋め込む「Bose サウンドシステム+9スピーカー」を標準装備する。

アイドリングストップ機能のi-stop(i-ELOOPとセット)は、6AT車に標準装備で、6MT車(ベースグレードを除く)にもオプション(8万6400円)で装備できる。「CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)」はS スペシャルパッケージにオプション(3万2400円)で、同レザーパッケージには標準装備される。

販売主力はS スペシャルパッケージのMT


ベースグレードを除き、4エアバッグが標準装備になった
(photo:Mazda)

マツダによると発売後1ヶ月までの受注構成比は、「S」が9%、「S スペシャルパッケージ」が52%、「S レザーパッケージ」が39%で、MTが全体の74%を占める。全7色あるボディカラーで一番人気はソウルレッドプレミアムメタリック(41%)で、2番目はCX-3でも選べるセラミックメタリック(21%)。顧客層は「40代を中心に、20代から60代以上まで」とのこと。

ちなみに初代ロードスターの新車価格はベース車で170万円だったが、パワステ、パワーウインドウ、オーディオ、アルミホイール等はオプションで、エアコン(マニュアル式)は販売店で装着するディーラーオプションだった。よって実際の販売車両はそれらを“フル装備”したものが多く、今風に8%消費税込みにすると230万~240万円はするクルマだった。この25年間で装備は著しく向上したが、価格は大きくは変わっていない。

 

パッケージング&スタイル

アスリート体型に変身


「アクティブボンネット」の採用で実現された低いボンネットが新型の特徴の一つ

歴代ロードスターの中でNAとNCは癒し系というか可愛い系というか、幼児体型とも言えるスタイリングだったが、新型NDは低いところは低く、張り出すところは張り出し、削ぎ落とすところは削ぎ落としたアスリート体型に変身。ヘッドライト形状も鋭くなり、精悍な印象になった。

おかげで、ぱっと見は先代より大きく立派に見えるが、実のところ全長は先代(後期型)の4010mmから105mmもカットされ、何と初代NAの3970mmを通り越し、3915mmにまで縮まった。昨今、衝突安全対策や歩行者安全対策などでパッケージングが難しくなっているFR車において、全長を短くしたというのがすごい。

そしてロングノーズ・ショートデッキに変身

そのパッケージングについても、ロードスターの“伝統”とは決別したところがある。それはNA、NB、NCに共通していたロングノーズ・ロングデッキとも言えるスタイルから、FRスポーツで典型的なロングノーズ・ショートデッキになったこと。つまりボンネットは長く、キャビンが少し後方に移動し、トランクが短くなった。特にNAは1960年代のロータス エラン風だったが、新型はZ4などの現代FRスポーツに共通するスタイルになった。

 

ホイールベースは2310mm。先代より20mm短くなった

これによりエンジンは15mm後方に移動し、従来モデル以上にフロントミッドシップ化された。また、インテリアの項でも触れるように、前輪とドライバー着座位置が離れたことで、先代の少なくとも右ハンドル車で難のあったペダルレイアウトが完璧に改善されている。

 

うねるようなラインが印象的なリア。初代NAがエラン風なら、新型はエリーゼ風

ソフトトップ前端にはアルミ製ベースが追加され、閉めた時に丸みのある形状になった
 

ボンネットの低さと歩行者保護性能を両立するため火薬式の「アクティブ・ボンネット」を採用
(photo:Mazda)

歴代ロードスターでおなじみのアルミ製フレーム「PPF(パワープラントフレーム)」も新設計された
(photo:Mazda)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
ホンダ S660 (2015~) 3395 1475 1180 2285 4.8
ロータス エリーゼ シリーズ2(2001~) 3800 1720 1130 2300
4代目(ND型)マツダ ロードスター (2015~) 3915 1735 1235 2310 4.7
初代(NA型)ユーノス ロードスター (1989~1998) 3955~3970 1675 1235 2265 4.6
2代目(NB型)マツダ ロードスター(1998~2005) 3955 1680 1235 2265 4.6
3代目(NC型)マツダ ロードスター(2005~2015) 3995~4020 1720 1245~1255 2330 4.6
ホンダ S2000(1999~2009) 4135 1750 1285 2400 5.4
トヨタ 86(2012~)スバル BRZ(2012~) 4240 1775 1300 2570 5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装は新世代マツダ風に一新


試乗車はマツダコネクトを装備したS スペシャルパッケージ

内装のデザインや雰囲気は、思いのほか歴代ロードスターとは異なり、むしろマツダの新世代モデルとの共通性を感じさせるものになった。メーターもロードスター伝統の5眼タイプから、新世代マツダらしい3眼タイプに変更。そしてマツダコネクトのディスプレイとコントローラーも採用されている。

質感は、最近のマツダ車と足並みを揃えて、見違えるように高くなった。ダッシュボードは硬質樹脂だが、指で押せばやんわり凹みそうに見えるほど質感がある。ドアノブ、スイッチ類の見た目、触感、操作感も上々。「マツダコネクト」の操作性は、CX-3のものと同様に完成度が高く、ストレスなく扱える。

366mm径の細身ステアリングに胸キュン


ステアリングチルト(上下調整)と座面角度調整はできるが、テレスコやシートリフターはない

運転操作に関する部分では、最新スポーツカーにしては径が366mmと大きめで、リムが細身のステアリングがいい。握った瞬間、初代NAに純正採用されていたMOMOやナルディのレザーステアリングを思い出して胸がキュンとなる。そして従来の吊り下げ式からオルガン式になったアクセルペダルは、試乗インプレッションでも触れるが、感動的にヒール&トゥがしやすい。

なお、運転席フロアカーペットの形状を見ると分かるように、ドライバーの左足ふくらはぎの下あたりのフロアは、トランスミッションの張り出しで大きく盛り上がっている。ただ、それは足もとを見て初めて気付くことで、運転する限りはまったく気にならない。

 

オルガン式アクセルペダルを新採用。ミッション側が張り出しているが、ほとんど全く気にならない

ヒップポイント(フロアからの高さ)は先代より20mm低くなったようだが、ダッシュやウエストラインも低くなったせいか、相対的に視点とヒップポイントは何となく高く感じられる。これは歴代ロードスターの特徴でもあるが。

シートは金属製のS字バネを廃止し、ネット構造とウレタンパッドで体を支える「S-fit構造」を新採用したもの。ホールド性や座り心地に不満はなかったが、カチッとした剛性感や低めのヒップポイントが好きな人は、フルバケットシートに変えたくなるだろう。ただ、座面の角度をダイアルで調整できるのは良く、乗降性もスポーツカーでは最良の部類に入る。

 

助手席のグラブボックスは廃止。代わりにセンターコンソール後方やシート裏側に小物入れを用意している

コンソール後方には2個分の脱着式ドリンクホルダーも装着可能
 

史上最も簡単・最速の手動ソフトトップ


頭上のレバーをガコッと反転させて、幌をバサッと後ろに跳ね上げれば空が見える

掛け値なしに素晴らしいのは、手動でありながら乗車したまま簡単に開閉できる新開発のソフトトップ(幌)。開ける時は、フロントウインドウ上部のレバーでロックを解除し(自動的にサイドウインドウが少し下がる)、幌をガバっと後ろに跳ね上げ、最後はちょっと手を伸ばして、カチッと音がするまで幌を収納スペースに押し込むだけ。慣れれば10秒もかからない。

新型では特に閉じるのが簡単になった。ヘッドレスト横のレバーを引くと、幌がスプリングの力でポンっと少し浮き上がるようになったからだ。おかげで幌を手前に引き起こす操作が格段に軽くなった。閉じる時は、雨の降り始めなど急を要することが多いので、この工夫はありがたい。

先代の途中から採用された電動のRHT(リトラクタブルハードトップ)に魅力を感じる人も、新型の手動ソフトトップの簡単さを知ると「これでもいいか」と思えるはず。トップの前端部にアルミ製のプレートが入ったことで、クローズド時のルーフ形状に丸みがついたのもいい。クローズド時の後方視界も、ソフトトップ車としては悪くない。

 

幌はキャンバス地で質感が高い。リアウインドウは言うまでもなく熱戦入りガラス製

トランク容量は先代の150Lから130Lに縮小されたが、飛行機内に持ち込み可能なキャリーバッグを2つ積めるという。オープナーはナンバープレートの上に隠れている
 

基本性能&ドライブフィール

131ps、車重1トンで爽快に加速


見事にフロントミッドシップ搭載されたエンジン。新型ロードスターのためにアルミ製ヘッドカバーが新設計された

試乗したのは売れ筋の「S スペシャルパッケージ」6MT(270万円)。

シートポジションを合わせ、クラッチを踏み込み、スタートボタンを押すと、予想以上に勇ましい「ブフォォォン!」というサウンド。ポルシェ ボクスターやジャガー Fタイプほどの咆哮ではないが、いかにもスポーツカー。ギアを1速に入れてアクセルを踏み込むと、4気筒エンジンの乾いたサウンドを小気味よく放ちながら爽快に吹け上がり加速する。この瞬間、ほとんどの人が「このクルマ、いいぞ」と思うはず。パワーがなくて一気に吹け上がらない分、爽快な加速感が長く続く。

エンジンはターボでも何でもない、自然吸気の直噴1.5L 直4ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」。プレミアムガソリン指定で圧縮比を13.0とし、96kW(131ps)を7000rpmで、150Nm(15.3kgm)を4800rpmで発揮する。100kWまであともう少しだが、量産の自然吸気エンジンとしてはけっこうハイチューン。

 

車重は先代より100kg以上も軽く、最軽量のS(6MT)で990kgと、重量税でクラスが一つ下の1トン切り。試乗したS スペシャルパッケージは惜しくも1010kgだが、それでも十分軽い。初代NAのカタログ車重は940kgだが、エアコンやオーディオ等を装備した車両は実際には980kgほどあった。それを思うと、新型はさらに装備が増えて、衝突安全性もボディ剛性も上がっての1トンなわけで。

軽量化と言えば、鉄からアルミにするなどの材料置換だが、ロードスターは高級車ではないので、無闇に高価な材料は使えない。しかし先代ではすでにボンネット、トランクリッド、パワープラントフレーム(マツダFR車でおなじみの、ミッションとデフをつなぐフレーム)はアルミ製で、これだけでもあり得ない贅沢ぶりだが、新型ではさらにフロントフェンダー、バンパー強度部材、ロールバー、その下のリア側バルクヘッドもアルミ製になっている。

他にも軽量化ネタは盛りだくさん。何とホイールは先代の5穴から、ハブを軽量化するために4穴のPCD100mmに先祖帰り。サイドウインドウの見えないところには軽量穴が空けられ、シート前後スライダーのレバーは細くされているという。

 

谷のない出力特性とフラットなトルク特性は、最初のひと踏みで体感できる
(photo:Mazda)

おかげでパワーウエイトレシオは、車重1010kgで計算しても7.7kg/psとまずまず。先代(自然吸気2Lで170ps、車重は1100kgほど)の6.5kg/psには及ばないし、実際の速さでも敵わないが、初代NA(1.6Lは120ps、1.8Lは130ps)とは割と近い。ただし全域でレスポンスがよく、トルク特性がフラットなNDの方が明らかに俊敏に走る。

実際、新型の1.5Lエンジンは低回転でもよく粘り、3000rpmからでも爽快に加速してくれる。「レギュラー仕様だったら良かったのに」という気持ちは残るが、レギュラーだとパワー感がぼやけて、この爽快感は出なかったのかもしれない。

6速MTのシフトフィールは百点満点。軽いのにカチッとしていて、ストロークも40mmと短い。赤信号でニュートラルに入れて待っていると、球型のシフトノブが手のひらの中でブルブルと小動物のように震えていて、ほっこりする。リバースは、真下に押して左奥。

旋回中の、電動パワステのガッチリ感に驚く

これほどワインディングで誰もが「楽しい」と思えるクルマはそうそうない。コーナ-進入時、ブレーキを残しながらステアリングを切ると、フロントが見事なほど素直にインに向く。けっこうクイックだったNC型(特に前期)と違って、366mm径のステアリングやクルマ自体の動きが穏やかなので、緊張感なく切り込んでいけるのがいい。そしてヒール&トゥがものすごくしやすい。「オレ、こんなに巧かったっけ?」と思うほど完璧に決まる。ソールの薄い靴ならさらにベター。

旋回中はステアリングのダイレクト感がグッと上がり、頼もしいほどリニアに反応する。穏やかさとダイレクト感が一緒に味わえる。ステアリングを切り増せば、フロントは正確に反応し、だからといってクイック過ぎるということがない。ちなみに新型ロードスターの電動パワステは、マツダ初のデュアルピニオンタイプで、資料によれば「剛性感の高い操舵特性と路面からのダイレクトなフィードバックを実現」とのこと。そうそう、まさにその通り。

 

後輪は基本的にかなり粘る。初代NAのようにきっかけを与えれば簡単にリアが流れ始める、なんてことは当然なく、NC型前期のようにコーナー途中の段差で横っ飛びすることもない。パワーがないのでリアをアクセル操作で流すのは難しそうだが、それでも全くフラストレーションがない。ドライバーのアクセル、ステアリング、ブレーキという3つの操作に常に生き生きと反応するからだろう。軽く流すだけでも楽しい。

ちなみに前後重量配分は試乗車の場合、車検証数値(530kg+480kg)から換算すると52:48だが、これに乗員が乗ると50:50に近づくはず。それより歴代ロードスターで重要なのは、ヨー慣性モーメントの低減、つまり重量物をなるべくボディの中心に寄せていること。走らせれば、誰もがそれを「なるほど」、もしくは無意識に体感できると思う。

なお、試乗車は「S スペシャルパッケージ」の6MTなので、トルクセンシング式スーパーLSD、リアスタビライザー、トンネルブレース付。ただ、LSDの効きは先代同様に穏やかで、あまり体感できなかった。また、LSDとリアスタビのない「S」の方は、姿勢変化が大きく(バネやダンパー等の設定も異なる)、初代NAのようなヒラヒラ感が味わえるというが、今回は残念ながら試乗していない。

6速トップがオーバードライブになった


ソフトトップのオープンカーは、クローズド時の後方視界が弱点だが、新型ロードスターはリアウインドウが乗員に近いため、死角が意外に気にならない

100km/h巡航時のエンジン回転数は、6速トップで約2500rpm。ちなみにNC型の6MTは、6速トップまでクロースレシオで、高速巡航時に回転が下がらず(前期型でメーター読み約2900rpm、後期型で約2700rpm)、ノイジーで燃費にも不利だったが、新型ではついに6速がオーバードライブ化された。巡航時の燃費はかなり良さそうで、走行車線で淡々と流せば、17.2km/LというJC08モード燃費もリアルに感じられる。

6速の存在を忘れて、うっかり5速で走ってしまいがちなのは先週試乗したS660と同じだが、メーター内のギアインジケーターはそんな時に「5-6」と表示して6速へのシフトアップを要求してくる。また、街中でも「2-3」「3-4」などと、しきりにシフトアップを促してくるが、その通りにシフトアップしているとシフト操作が忙しいし、2000rpm未満の低回転で走ることになる。

 

写真は給油する直前で、燃料計および航続可能距離はゼロ。この後、36L入った

ちなみに最高速は、マツダUKのHPには1.5Lが204km/h、2.0L(160ps仕様)が214km/hとあった。日本仕様は当然180km/h+αでリミッターが作動する。

ただ、快適性については条件付き。風切り音は80~100km/h程度なら許容範囲で、助手席の人と会話や音楽が楽しめるが、速度の上昇と共にそうとう騒がしくなってくる。

また、直進安定性は高いが、速度が上がってくると緊張感もそこはかとなく高まってくる。シャシー性能は非常に高いが、狙いはワインディングベストというか、日本の実用速度域に合わせたという印象。

試乗燃費は11.7~12.6km/L。実用燃費は歴代ロードスターで最良

今回はトータルで約380kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を走った区間(約90km)が11.7km/L。また、一般道を元気に走った区間(約30km)が12.5km/L。主に高速道路を走った区間(約90km)が12.6km/Lだった。今回は誘惑に負けてついついエンジンを回してしまったが、燃費運転に徹すればもっといい数字が出たはず。少なくとも、歴代ロードスターの中で最も燃費がいいのは間違いない。

JC08モード燃費は、6MTが17.2km/L(i-stop装着車は18.8km/L)、6AT(i-stop標準装備)が18.6km/L。アイドリング中のエンジン音が静かなので、6MTの場合はi-stopなしでもいいかなと思った。

指定燃料は上でも触れたようにハイオク。タンク容量はNA前期(1.6L)が45L、NA後期(1.8L)とNBが48L、NCが50Lと、だんだん増えていたが、新型では一気に40Lに減った。燃費がいいので、それでも従来モデルと同等の航続距離が得られる、という判断だろう。

ちなみに今回は満タンから350kmを無給油で走行。最後は高速走行中に燃料警告灯がつき、気がついたら残り航続距離が0kmになっていた。少しヒヤヒヤしながらガソリンスタンドに駆け込んだが、36L入れたところで満タンに。つまり、あと4L残っていたわけだ。とは言え最近はガソリンスタンド過疎地もあるので、給油はくれぐれもお早めに。

 

ここがイイ

ライバル不在の軽量オープンスポーツであること。簡単操作の手動ソフトトップ

「人生を楽しもう」という商品コンセプトの通り、見て楽しく、乗って楽しく、所有すれば間違いなく楽しいクルマ。もっと高性能なオープンスポーツカーは山ほどあるが、新型ロードスターは価格がそれらの半分以下でありながら、それらの高性能・高価格スポーツカーでは得られない持て余さないパワー、軽やかな走り、気負わず毎日でも乗れる日常性を備えている。大きく、重く、ハイパワー化しなかったがゆえに、ライバル不在の世界に誇るライトウエイトスポーツカーになった。

 

手動ながら簡単に開け閉めできるソフトトップも本当に素晴らしい。慣れれば下手な電動より速く開け閉めできるし、壊れる心配もない。しかも閉める時に、より簡単に操作できるようにレバーを引くと折り畳まれた幌がバネで少し浮き上がるところなど、オープンカー乗りの気持ちと使い方を理解した工夫が施されている。この幌一つだけとっても、オープンスポーツというものを肌身で知った上で開発していることが分かる。

ここがダメ

オープン感覚が若干薄まったこと。非スカイアクティブの6AT

フロントウインドウが心なしか頭の方に伸びてくる感覚が強まり、過去のロードスターよりオープン感覚が若干薄れた感じがすること。NAからNCまで、ロードスターはフロントウインドウが昔のオープンカーのようにちょっと遠いところにあって、屋根を開けた時に開けっぴろげというか、空が広い感じがあった。それはおそらく今回、パッケージングを全面的に変更したことによる「微妙な変化」の一つだろう。

個人差はあるが、意外にドライビングポジションが決まらないこと。ポジションを合わせようとすると、背もたれ角度(リクライナー)のノッチが粗くて、いまいちベストが決まらない。そして、ほんの少しステアリングを手前に寄せたくなるが、テレスコがないので出来ない。

 

(photo:Mazda)

今回試乗できなかったAT車のトランスミッションは、先代から搭載されているアイシンAW製トルコン6ATの改良版。新型ロードスターは、FR専用の「SKYACTIV-G 1.5」エンジン、「SKYACTIV-MT」、「SKYACTIV-シャシー」、「SKYACTIV-ボディ」で構成されているが、6ATだけはSKYACTIVとは付かない。やはりここは新開発のATか、DCTか、セミATか、いずれにしてもMTに遜色ない走りが楽しめる2ペダル車があるとよかった。誰もが楽しめるスポーツカーを目指す以上、当然そうなるべきだろう。マツダのことだから、おそらくいずれ、と期待したい。

好み次第だが、デザインにもう少し可愛らしい感じがあっても良かった気がする。また、全体にロングノーズ・ショートデッキとなったことで、過去のロードスターにあったリアがシュッと長い感じがなくなってしまったのも、パッケージングのためとはいえ少し残念。

総合評価

製造業にとっての、希望の星

♫エブリデイ・イズ・ア・ワインディングロード♫ と歌ってたのはシェリル・クロウ。歌詞の内容は単純な人生讃歌ではないようだし、ワインディングロードを走る歌でもないが、このクルマに乗っていると、ついついこの歌を口ずさみたくなる。本文で書いてきたとおり、そして多くの人びとが絶賛しているとおり、新しいロードスターは「乗れば一瞬でわかる」素晴らしいスポーツカーだ。ワインディングロードが楽しいこのクルマ、日本のクルマ好きにとっての誇りであり、そして日本の自動車産業の、いや日本の製造業にとっての、希望の星でもある。こんなクルマが作れるマツダという、そうは大きくない会社の爪の垢を、今の情けない製造系大企業(どことは言わないが)に煎じて飲ませたい、と皮肉の一つも言いたくなる。

初代NAが出てから約25年の間、マツダという会社の浮き沈みはかなりのものだった。最近でこそ素晴らしい躍進を見せているが、一時期はかなりヤバイというところまでいったわけで、それでもロードスターの火だけは灯し続けてきた。希望の光としてのロードスターの存在、それが今のマツダの姿を産んだ原動力の一つだろう。

 

また、マツダがおもしろいのはカリスマ経営者の会社ではないことだ。企業経営というものは、民主的ではなく「独裁」こそが一番効率がいい。国家は独裁じゃない方がいいけれど、企業は独裁カリスマ経営者が引っ張ったほうが、だいたいうまくいく。そしてユニークかつ素晴らしいクルマを作るにも独裁的な会社運営が必要だと思う。よく言えばトップの英断、悪く言えばトップの暴走がないと、特にマーケティング全盛の昨今はユニークなクルマを作ることなど無理だろう。

しかしマツダは独裁ではなく「全社一丸」でそれをやれているという稀有な例だ。どん底からの復活ゆえ、社員が一丸となって、まじめにクルマづくりに取り組んでいる。その象徴こそがロードスターだ。このクルマがあるから、どんなときも社員が誇りを持てた。そう考えると、極端に言えばロードスターというクルマは売れるかどうかより、理想的なモノ作りで仕上げることにこそ意義がある。そうやって理想的なスポーツカーとして誕生したのが、今回のNDロードスターというわけだ。いいクルマなのは当然だろう。

スタイリングに物申す

ということなのだが、ではこのクルマを手放しで褒めるかというと、個人的にはちょっといくつか思うところはある。ひとつはスタイリングだ。カッコいいじゃないか、なにか文句あるのか、という声が聞こえてきそうだが、ボンネットに峰があって、ロングノーズ・ショートデッキで、というスタイリングは、どうにも典型的すぎて面白みに欠けないだろうか。明らかにロータス エランをモチーフとした初代から続く、現代のFR車としてはちょっと変なスタイリングにあった個性が、新型には感じられなくなり、模範的にカッコいいクルマになったことは、なんだかちょっとおもしろくない。

むろんそれゆえ乗員の位置が後退し、先代で不満としたペダル配置もすっかりよくなった。しかしオープン時における頭上の開放感は「FRオープンスポーツでは一般的な程度」になってしまった。歴代ロードスターの開放感は格別だったのだが。オープンカーを買うとき、個人的に一番気にするのはここ。走りを求めるのであれば、クローズドボディの方がいい。オープンでありながら走りを求めたせめぎあいの結果が、この開放感ということだろう。

“スカイアクティブなAT”も欲しい

また、試乗していないから軽々には言えないが、やはり“スカイアクティブなAT”も欲しいところ。もはやMTの時代でないことは明らか。趣味のスポーツカーはMTじゃなくちゃ、というのは分かるが、今はAT(2ペダル)が全てにおいてデフォルトの世の中になった。今やポルシェ 911だってPDKが圧倒的に主力になり、MTはマニア向けになっているわけで、このクルマもマニア向けのMTがやはりいい、と言って済ませるのはちょっとつらいと思う。日常的に乗れるこのクルマに、MTに匹敵するほど楽しいATがあれば、日本でも月500台と言わず売れるはずだ。

新型NDでロードスターは一般の目には明らかにかっこよく見えるクルマになった。今までロードスターに興味がなかった人をも振り向かせるものが、NDにはある。それは初代NA登場時のインパクトにも近い。NAと言えば、アタマに浮かんでくるのは発売当時に会った、真っ赤なNAに乗った若いモデルの姿だ。何かの取材で呼んだモデルが、さっそうと乗り付けてきたのが真っ赤なユーノス ロードスター。もちろんそれは「あたしのクルマ」だった。世はバブルで、それはそれはカッコ良かった。真っ赤なオープンカーに乗っていたあのモデルも、たぶん今はもう40代半ば。そろそろ子供の手も離れてきているはずだから、NDを見て、またロードスターに乗りたいなと考えるかもしれない。であれば、やっぱりATが欲しい。

どんなシーンでも使えるオシャレなスポーツカー


ユーノス ロードスター(1989年)
(photo:Mazda)

NAは確かにスポーツカーだったが、オシャレな印象が強いクルマでもあった。当時でもゴリゴリのスポーツカー乗りは、もっと硬派なクルマ、あるいはもっとパワフルなクルマを求めたものだ。デビューした当初のNAは、手が届く価格で、女子でも乗れる、まさにライトなオープンカーだった。しかし、だんだんとFRのスポーツカーというものがなくなっていく中で、硬派なクルマ好きのためのクルマへと立ち位置を変えていった。中古車が流通し始めたことで、より手軽に買えるようになり、もともとそう高くないクルマがさらに買いやすくなって、多くのスポーツカー好きに愛好されるクルマ、言い方は悪いがプアマンズスポーツカーとなった。そうしたクルマ好きを支えてきたのが、ロードスターというクルマの存在意義だった。

今回もこれだけの性能と楽しさを持つスポーツカーが、新車でも300万円程度で手に入るのは本当にすごいこと。今や貴重なオープン走行の楽しさを味わえ、乗り心地がよく、荷物が載り、ホンダS660とは違って日常使いができる。小旅行からサーキットまで、どんなシーンでも使えるオシャレなスポーツカーはそうはない。

 

そして同じような輸入車を買おうとすると倍はするが、ロードスターはその気になれば多くの人の手が届く価格を実現している。2代目NBの試乗記で「お金に余裕があればぜひ買うべき。セカンドカーとしてならこんなに経済的で楽しいクルマはない。壊れることなく趣味で乗れるクルマはそう多くないが、ロードスターなら大丈夫。200万円で買って10年乗れば、月2万円だ」と書いたが、200万円を300万円にして、月3万円にすれば今でも通じる。いやこのクルマなら10年以上乗る人も多いだろうから、本当に月2万円で15年間、人生を楽しめる。個人的にもここ数年オープンモデルに乗っているが、オープンカーで人生を楽しめることは体験的に保証したい。その訳は…、まあ乗ればわかる、乗らなきゃわからない、のだ。♫エブリデイ・イズ・ア・ワインディングロード♫

 

試乗車スペック
マツダ ロードスター S スペシャルパッケージ
(1.5L 直4・6MT・270万円)

●初年度登録:2015年5月 ●形式:DBA-ND5RC
●全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mm
●ホイールベース:2310mm
●最低地上高:140mm ●最小回転半径:4.7m
●車重(車検証記載値):1010kg(530+480)
●乗車定員:2名

●エンジン型式:P5-VPR【RS】
●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・縦置
●ボア×ストローク:74.5×85.8mm
●圧縮比:13.0
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●最高出力:96kW(131ps)/7000rpm
●最大トルク:150Nm (15.3kgm)/4800rpm
●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/40L

●トランスミッション:6MT
●JC08モード燃費:17.2km/L(6MT)※18.6km/L(6AT)

●駆動方式:FR(フロントエンジン・後輪駆動)
●サスペンション形式(前):ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):マルチリンク+コイルスプリング
●タイヤ:195/50R16(Yokohama Advan Sport)

●試乗車価格(概算):273万2400円 ※オプション:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ) 3万2400円
●ボディカラー:セラミックメタリック

●試乗距離:約380km ●試乗日:2015年6月
●車両協力:東海マツダ販売株式会社

 
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東海マツダ販売株式会社

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