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マツダ ロードスター RS RHT新車試乗記(第436回)

Mazda Roadster RS RHT

(2.0L・6MT・270万円)

クーペとロードスター、
二つの走りを一つとする
電動トップ仕様「RHT」に試乗!

2006年10月21日

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キャラクター&開発コンセプト

全天候型「人馬一体」

3代目マツダ・ロードスター(NC型)の登場からちょうど1年。2006年8月に追加されたロードスターのクーペ/カブリオレ、ならぬクーペ/ロードスター版が、今回の「RHT」(パワー・リトラクタブル・ハードトップ)だ。オープンカーとクーペを自由に行き来できる点が最大の魅力だが、同時に軽量コンパクトな電動ルーフにこだわったことで、このタイプで従来は犠牲になりがちだった「スタイル」「軽さ」「積載性」をキープした点も見逃せない。

価格帯&グレード展開

RHTは20万円高の240万~280万円

ソフトトップ車と同様に、RHTも以下の3グレードで展開する。

RHT 標準車 (5MT:240万円、6AT:250万円) ※オーディオレス
RHT RS (6MT:270万円) ※17インチタイヤ+ビルシュタインダンパー、トルセンLSD
RHT VS (6MT:270万円、6AT:280万円) ※サドルタン色レザーインテリア標準
RHTはソフトトップ車の20万円高に過ぎず、つまりオプションのディタッチャブル・ハードトップ(25万6830円 ※取付費込み)を付けるより安い。理由は(言うまでもなく)幌の生産・装着コストと相殺されるからだ。

パッケージング&スタイル

往年のロータスみたい

試乗したのは17インチホイール仕様の「RS」。全長と全幅(3995mm×1720mm)はソフトトップ車と同じだが、全高は10mm高い1255mm。これは電動ルーフ全体がリアサスペンションのストラット部を避けて収まるように、全体に丸みを帯びているからだ。ポコッと盛り上がったルーフ部分は、偶然だとは思うが、往年のロータス・エリートや初代ロータス・エランのクーペ(フィクストヘッドクーペ)を彷彿させる。

40mm高くなったリアデッキ

ルーフの収納スペースを稼ぐため、ハイマウントストップランプが載ったリアデッキカバーは40mmほど盛り上がっており、さらにその盛り上がりが目立たないように、トランクリッドおよび左右リアフェンダーがRHT専用品になっている。おかげでトランクリッド部分の厚みは増しているが、これはこれでよくまとまっている。

乗車感覚はいつものロードスター

インパネ回りはソフトトップ車とほぼ同じ。異なるのはセンターコンソール上部に電動トップのスイッチが追加されたことと、風の巻き込みを防ぐエアロボードがRHT専用の整流板付きになったこと。それとソフトトップ車にあったシート背後のフタ付き小物入れ(リアストレージボックス)がRHTでは省かれているが、元々着座状態では手が届きにくい場所なので、ことさら惜しいものではない。

電動ハードトップ車で最速の12秒!

さて電動トップについてだが、まず作動スピードは文句なし。片手でロックを解除してスイッチを押し続ければ、サイドウインドウが自動で少し下がり、後ろのリアデッキカバーがウィーンと上昇。さらにガコッと樹脂製ルーフとリアウインドウガラスが折り畳まれ、再びリアデッキカバーが閉じる。その間、わずか12秒だ(カタログ値および実測)。

これがどれくらい速いかというと、例えば同じ電動ハードトップのキャデラックXLRは「30秒足らず」(モーターデイズ実測26秒 全自動)、プジョー307CCは約25秒(実測で21~23秒 全自動)、レクサスSC430は25秒(全自動)、メルセデスSLKのバリオルーフは約22秒(全自動)、ダイハツ・コペンでも15秒(実測 ロック手動)かかる。RHTやコペンはロック手動で、その操作時間が含まれない分だけ有利だが、RHTが電動トップ車で「世界最速」というのに偽りはない。

ただし幌車ならもっと速いクルマがある。ポルシェの現行ボクスター(987型)は約12秒(ロック手動)で引き分けだが、BMW・Z4は約10秒(全自動)、そしてホンダS2000は約6秒(ロック手動)と抜群に速い。まあ、しかし10秒前後であればいずれも感覚的には一瞬で、不満はない。

ソフトトップ車より約37kg重いだけ

ルーフの素材は一般的によく使われるアルミではなく、スチールの補強材を樹脂の複合素材でサンドイッチにしたもの。このルーフシステムをマツダと共同で開発したベバスト社(Webasto AG)はドイツに本社があるサンルーフ・メーカー大手。最近ではダイハツ・コペンやボルボC70、VWイオスの電動トップを手掛けている。ちなみにポルシェの可動リアウイングも同社の製品だ。

樹脂製なので天井に内張りを張る必要はなく(つまり天井も硬質樹脂製)ルーフ単体の重量は約15kg、ソフトトップ車との重量差は+約37kg(カタログ値で40kg)に過ぎない。この手の電動ハードトップは電動油圧式が一般的だが、RHTは4つのモーターを使い、ギアで直接ルーフを動かす。シンプルゆえ軽いという、ロードスターにはもってこいのシステムだ。

関連リンク:ベバストジャパン

オープンにしても「減らない」トランク

荷室容量は従来通り150L。・・・と簡単に片付けるわけにはいかない。今までこの手のタイプは例外なく、オープン時にそのラゲッジスペースの大半がルーフに占拠され、使い勝手を大きく損なっていた。もちろん、2シーターのロードスターはルーフも小さいので条件的には有利だが、今後は他メーカーのクーペ・カブリオレも「何とかせねば」というところだろう。

基本性能&ドライブフィール

瞬発力は十分

試乗したRHTはビルシュタインダンパーと17インチタイヤで足を固めた「RS」。左右ストラット頂点とフロントバルクヘッドをV字型に締結したいわゆるストラットタワーバーやトルク感応式LSDを標準装備する硬派グレードだ。

ブリッピングした時のレスポンスは普通だが、走行中のピックアップは低回転から抜群。市販車としては異例なほど1速、2速、3速のギア比が接近しているので、ラリーカーのような忙しさでポンポンとシフトアップを迫られる。パワーウエイトレシオは1140kg/170ps=約6.7kg/ps。確かに5kg/ps台の一線級スポーツカーのような圧倒的速さはないが、日常域のレスポンスこそロードスター最大の魅力。オープンで走るとなぜか胸がワクワクするところは、初代ロードスター以来まったく変わっていない。

爽快なオープン走行が売りのロードスターだが、そうは言っても風がビュービュー後ろから吹き込むのは不快なので、そこはRHT専用のエアロボードでうまくコントロール。まあ、今回は気候的にちょうどいい時期だったので、オープンエアの気持良さが素直に楽しめた。その気になれば150km/hでも安心してオープン走行が可能だ。

RHT専用にボディ剛性をアップ、足回りをチューン

トップ収納スペースの開口部が増したRHTでは、メンバーの板厚を上げ、ガセットを追加するなど入念に補強し、ソフトトップ車と同等の剛性を確保したという。重心が上がった分は、フロントスタビライザーを太く(21→22.2mm)、リアのバネ定数を上げ(15.7Nm→16.7Nm)、ダンパー減衰力を見直すことで対処した。確かにソフトトップ車にハードトップ(だいたい25kgほどか)を装着するとコーナーでグラッと傾く感じが出るが、RHTでは上屋の重さが気になることは皆無。特に今回の「RS」では、ステアリングを切れば間髪を入れずノーズが反応し、絵に描いたようなニュートラルステアで曲がってくれる。

本気で走るならクーペ状態に限る?

街乗りではルーフを上げても下げても、それほど剛性感に差はない。ただ、ワインディングを走らせた時は、クーペ状態とオープン状態で予想していた以上の差が出た。カチッとした走りのクーペ状態に対して、オープン状態はボディの震えや不安定な動きが出やすく(もしくは感じやすく)、逆に言えばそれだけクーペ時の剛性(感)が高いとも言える。本気で走るならクーペ状態に限ると感じたが、巷にはオープン状態の方が重心が低く、より自然という意見もあるようだ。

静粛性については、オープンカーに着脱式ハードトップを付けた場合、音がこもったり、ゴトゴト音が出たりする場合があり、同じことは電動トップ車でも起こりえる。RHTにもこもり音があるのは確かで、スペシャリティクーペのような静かさは期待できない。ただし、クルマが跳ねそうなほどストレスが掛かる場面でも、割と平穏にクリアしてしまうところは、やはり高いボディ剛性のおかげだろう。クローズド状態でリアからデフノイズらしきものが聞こえることもあるが、窓を開けただけでも消えてしまう程度のかすかな音で、試乗しているうちにアタリが付いたのか段々気にならなくなった。

ここがイイ

サンルーフ感覚で気楽に開けられる電動トップ。思い立ったらオープン、そしてそのオープン感が先代より強く、開放感が十分に味わえること。また、わずか20万円の価格アップは、ソフトトップの存続が危うくなるのではと思うほど安い。トランクがちゃんと使える点も素晴らしい。

本物のクーペにそう見劣りしない、クーペ時のボディ剛性。硬派なクーペと享楽的なオープンが一つなっていること。買うならRHTがいい、と思う人は多いだろう。

RHTならではの個性が出たスタイル。賛否両論あると思うが、リアスタイルなどRHTの方が「新しい」感じがしていい。

ここがダメ

よく出来た電動ルーフだが、一つだけ難を言うなら、RHTは走りながらの開閉操作ができない。マニュアル車の場合はギアがニュートラル、AT車の場合はPかNレンジで、時速3km/h以下が条件だ。理想はポルシェの最新オープンモデルのように50km/h以下なら走行中も可能というものだが、せめてSC430やMINIコンバーチブルのように微低速が許されれば信号待ちの間でも「決断」しやすい。技術的には可能なのだろうが、安全マージンを取ったのだろう。

ソフトトップ車でも感じたことだが、この3代目になってヒップポイントは良くも悪くも圧倒的に低くなった。「スポーツカーは低くなくっちゃ」という硬派には吉報だろうが、小柄な人にとっては視点が低くなり過ぎる。これが理由で購入を断念する女性はきっと少なくないはずだ。多少コストは掛かっても、座面の高さは調節できるようにすべきだろう。

あまりのニュートラルステアで、限界が高すぎるコーナリング性能。たまたま同じ日に試乗した素のポルシェ・ケイマン(5MT)の方がアンダーが強く、結果としてずっとコントローラブルだったのはショックですらあった。

100km/h時のエンジン回転数が6速トップでおおよそ2900回転も回ってしまう。これだけパワーがあれば、6速は思い切ってオーバードライブにし、せめて2500回転くらいまで下げてもよかったのではないか。高速安定性は十分だが、路面が荒れてくると修正舵が必要になるのは、コーナリングマシンに特化した「RS」ゆえの傾向か。

ハイオク仕様なのがちょっと痛い。クルマの性格から言って、パワーは多少落ちてもレギュラーの方が喜ばれるはずだ。初代ロードスターだってレギュラーだったし。

総合評価

昨年乗ったVSの試乗記では、電動トップがあればオープンカーとして文句なしと書いたが、ついにそれが実現してしまったことは、とにかくうれしい限り。しかもハードトップゆえ、露天駐車も問題ない全天候型であり、ボディ剛性の確保にも有利、スタイリングもほぼ不満なしと、これ以上文句を言えばバチが当たるというものだ。しかしあえて少し文句を言うとすれば、今回6MTのRSに乗ったことで、さらなる高望みが出てきてしまったことだろう。

VSの方は走りに関しては、そのラグジュアリーさゆえに少し不満があったのだが、RSの方はなるほどこれは楽しいという走りを実現している。ただ、それゆえパワー感はやや物足りなさがあるし、あまりに良く曲がる運動性は走りにクセというか、深みがなく、また一種の「ワル」さも感じられないだけに物足りなさが残る。アクセルを踏んだ時のさらなるトルク感、圧倒的にスムーズなエンジン、素直すぎない運動性などが、このクラスでは難しいとわかっていても、欲しくなってくるのだ。

クルマは基本的に理想や性能を求めるのではなく、マーケティングとコスト計算で作られ、それにブランド力(や知名度)といった付加価値をつけて、価格が決められる。ロードスターというクルマも3代目ともなれば、これくらいの価格、これくらいのブランド力というあたりですでに折り合いがつけられ、相応のアイデンティティを考えながらクルマ作りがなされただろう。そうしてできあがったロードスターは、ブランドで売って高コストでも利益が出る幾多のスポーツモデルと異なり、大衆車的スタンスで世界水準のスポーツモデルになったわけだ。贅沢品としてのスポーツカーではなく、手の届くスーパーカーの道を選んだがゆえに、このあたりで、ということになる。それはそれで素晴らしいことだ。

しかしこうしてRSに乗ってみると、「もうちょっと上」が欲しくなってくる。それはロードスターというクルマの本質を変えてしまうことにもなりかねないのだが。またAT車とMT車を乗り比べて、MT車で一気に評価がよくなるというのも、最近のクルマとしてはどうなのだろうか。昨今の市場を鑑みると、AT+電動ハードトップこそ、理想の組み合わせだと思う。もし現在でもAT車が昨年の試乗印象のままだとすると、この理想型となっても今ひとつ評価が下がる。これはとても残念だ。

それにしても世界全体では年間5万台とは言え、国内向けが年間5000台足らずのクルマでRHTを実現させたマツダには喝采を送りたいところ。こうなるとミッドシップオープンを作っている某巨大メーカーにもぜひ次期モデルを投入してもらいたいところだが、それはマツダのようながんばっているメーカーを苦しめるだけなので、安易に希望しない方がいいのかもしれない。ロードスターは今やクルマ好きの(もしかするとそれは中高年の)希望の星(スター)なのだから。

ところで本日(06年10月21日)付けの中日新聞朝刊で、警視庁が「クルマの制限速度見直し検討」に入ると報じられた。1963年以来の速度規制を、クルマや道路状況の著しい安全性向上によって見直そうというものだ。3年をかけて検討し、国民アンケートも活用したいということなので、期待したい。度々この試乗記でも書いてきたことだが、やっと現実に即した動きが出てきたことは大歓迎だ。「速度引き上げを望む国民の声もある」(同庁)というコメントはウチのことか、と思いたいところだが、実際はメーカーからの声だろう(メーカーも国民だから)。メーカーが実際に作っている商品(180㎞/h出るカローラとか)と法規制の乖離があまりに広がって、今後問題になりかねないからだ。同時にレーダークルーズなどの実用性を考えると、現在の法規制ではあまりに対応が難しいからだろう。150㎞/hでもオープンクルージングが可能なロードスターを合法的に走らせることのできる時代が、もしかしたら本当に来るかもしれないというのは、クルマ好きにとってこの上ない「朗報」であり、「生きる望み」だ。


試乗車スペック
マツダ ロードスター RS RHT
(2.0L・6MT・270万円)

●形式:CBA-NCEC●全長3995mm×全幅1720mm×全高1255mm●ホイールベース:2330mm●車重(車検証記載値):1140kg (F:580+R:560)●乗車定員:2名●エンジン型式:LF-VE●1998cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・縦置●170ps (125kW)/6700rpm、19.3kg-m (189Nm)/5000rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L●10・15モード燃費:13.0 km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:205/45R17(MICHELIN Pilot Preceda)●試乗車価格:274万2000円(含むオプション:Bose サウンドシステム <7スピーカー、AM/FMラジオ/MP3対応6連奏CDチェンジャー 4万2000円> ) ●試乗距離:約200km●試乗日:2006年10月 ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイト http://www.roadster.mazda.co.jp/

 
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