キャラクター&開発コンセプト
カローラ第3のモデル。ヴィッツのステップアップモデルとして欧州戦略を狙う
ズバリ、カローラの5ドアハッチバック(以下5ドアHB)がこれ。NCV(ニュー・センチュリー・バリュー)をキーワードに昨年フルチェンジされたカローラのコンポーネンツを流用し、ワゴン版のフィルダーに劣らない使い勝手の良さと、取りまわしの楽なコンパクトボディを併せ持つ。過去にラインアップから外されたカローラFX以来久々のハッチバックモデル復活というわけである。また、今回、試乗したカローラ・ランクスの他に、販売店が異なるだけの双子車アレックスも同時に発売となった。
ところで何で今さらハッチバックなの? という疑問を抱く人も少なくないはず。実はアレックス/ランクスは、日本市場よりもハッチバックの本場、欧州市場が主戦場。兼ねてからトヨタは欧州戦略を推し進めているわけだが、ヴィッツからのステップアップとして、ゴルフやアストラといったビッグネームが揃うメインカテゴリー市場で一気に攻勢をかけるつもりなのだろう。5ドアHB拡販に対してトヨタは本気なのである。
価格帯&グレード展開
シビックを意識した価格設定は139.8~195.8万円、フィルダーよりたった4万円安
エンジンラインアップは1.5リットルと1.8リットルの2タイプで、駆動レイアウトは1.5リットルにはFFと4WD、1.8リットルにはFFのみの設定となる。またトランスミッションは、1.5リットルには4ATのみ、1.8リットルには6MTと4ATが用意される。
カローラランクスのグレードは、カローラフィールダーのグレード名を踏襲しており、1.5リッターモデルは「X」(139.8万円)がベースとなり、オートエアコンや木目調パネルなどを追加した「X-Gエディション(149.8万円)」が、さらにエアロパーツをプラスした「Xエアロツアラーエディション(154.8万円)」の計3グレード。1.8リッターモデルは「Z(MT 183.4万円/AT 189.8万円)」とそのエアロバージョンの「Zエアロツアラー(189.8万円/195.8万円)」の2タイプ。
価格はフィールダーよりも4万円しか安くない。その意味ではフィールダーの方が割安か? また、ライバルのシビックと1.5リッターモデル同士で比較すると、価格自体は5万円ほど高い設定となる(装備は考慮しないとすると)。なお、カローラランクスはカローラ店、アレックスは独立車種としてネッツ店で扱われる。
パッケージング&スタイル
短いけど、やっぱりシビックに似てるヨーロピアンデザイン
フロントセクションはグリルを除いてはカローラと全く同じ。Bピラーから後方がハッチバックに作り替えられている。そのボディサイズは全長4175mm×全幅1695mm×全高1470mmで、ホイールベースは2600mm。全長が短くなっている以外、カローラと同じ値。どことなくミニバンムードを醸し出す最大のライバル、シビックと比較すると、全長は100mm、ホイールベースは80mm短く、全高は25mm低い。ミニバン的と言うより典型的な5ドアHBスタイルだ。
しかし、リアだけを変えたクルマとしては、全体に全く違和感がないのも確か。リヤが短いためグッと軽快な感じで、ヴィッツの兄貴分という印象を受ける。なんでもランクスのデザインは、カローラの開発時から盛り込まれていたらしく、塊感のあるリアセクションはEPOC(トヨタの欧州デザイン拠点)によるものだとか(ただし、手がけたデザインナーは日本人)。それにしてもシビックに似ていると思うのだが。
カローラランクスとアレックス、ココが違う
カローラランクスには、カローラと共通のシンボルマークをスポーティーなハニカムメッシュグリル上部に冠し、同様にアレックスはALLEXの頭文字Aをモチーフにした新たなマークがボディー同色の横バーグリルと一体化させ上質感を狙ったデザインとしている。この他では、ドアハンドルとリアガーニッシュは、カローラランクスがボディー色、アレックスはメッキ処理され、微妙に違った印象に仕上がっている。男性向けランクス、女性向けアレックスという位置づけだ。
居住空間、質感、シートアレンジなど全てカローラフィルダーと同じ
ラゲッジを除くパッケージはもちろんカローラと共通で、インパネからドア内張、シートに至るまで、キャビンの眺めも全く同じ。クラスを超えたといわれるカローラのあのハイクオリティもそのまま受け継がれる。スポーティーグレードの「Z」にはセンターコンソール部にメタル調パネルが装着され、シートはサポート性の高い専用のものに変更される。なかなかスポーティーなムードで、異様なまでのクオリティの高さは、国産車はもとより欧州車のライバル勢にとっても驚異となるだろう。
居住空間の広さという点では、全長、全高、ホイールベースで大きく上回っているシビックと比較すると、さすがに劣る。ウォークスルーもできない。しかし乗り降りしやすいヒップポイントや左右座席間などが計算されつくされているだけあって、実用上は全く不満はない。また、ラゲッジも天地の高さこそシビックに劣るものの、装備では負けてない。
例えばリアシートのリクライニング機構が、シビックは最上級グレードのみ標準設定なのに対して、アレックスは全グレード標準装備。その他、助手席の背もたれがテーブルになる仕掛け、リアアームレストのカップホルダー、ラゲッジのアンダーボックスと4カ所のフックは、ランクスにあってシビックにないアイテム。空間のシビック、芸のランクス、といったところか。
基本性能&ドライブフィール
トヨタご自慢のスポーティーエンジン搭載。タイヤはあのメーカー
メカニズムもカローラと共通で、新しい技術は投入されていない。エンジンは1.5リッターと1.8リッターの2本立て。ギアボックスは1.5リッターが4速AT、1.8リッターが6速MT、もしくはスポーツステアマチック付4速ATが組み合わせられる。つまり1.5リッターモデルは実用指向、1.8リッターモデルはスポーツ指向と考えていい。
足回りはカローラと基本的に同じものだが、チューニングは異なる。特に1.8リッターモデルはスポーツ指向を主張するにあたり、1.5リッターモデルとは明確なスポーツチューンが施されている。さらに注目すべきはタイヤだ。F1に参戦するトヨタは、ミシュランからタイヤを供給されるわけだが、ランクスの1.8リッター用タイヤは195/6015サイズのミシュランとの共同開発品。なかなかイキである。
硬質かつ上質な乗り心地と軽いフットワークが印象的
試乗したのはホットバージョン「Z」の4速ATモデル。まずは搭載されるエンジンをもう一度おさらいしてみよう。1.8リットルエンジン「2ZZ-GE」は、カローラフィールダーの「Zエアロツアラー」に搭載されているものとまったく同じもの。その最大の特徴は、可変バルブタイミング機構に加え、リフト量も変化させる「VVTL-i」だ。バルブタイミングを変化させる機構はいまや常識だが、リフト量も変化させるエンジンとなると、これはまさにホンダの「i-VTEC」と同じ。そのスペックも最高出力190馬力/7600rpm、最大トルク18.4kgm/rpmと、旧型シビック・タイプRに肉薄。車重こそタイプRより80kg重い1150kgになるが、それでもフィルダーと比べれば20~30kg軽い。カローラシリーズのなかでは最速を誇ることは間違いない。
実際、走ってみても、パッと見ではおとなしそうな外観を裏切る、かなりの実力の持ち主だということが感じ取れる。特に軽快なフットワークはカローラファミリーとは一線を画すもの。フィルダーとの車重は最大でわずか30kgしか軽くないのだが、明らかにリア回りが軽くなった印象を実感できる。恐らくこれは、フィルダーがワゴンという性格上、フル積載を想定してとした足回りのセッティングからくる差なのだろう。
過大なスタビリティを必要としないだけあって、ノーズがスムーズに反応する。アンダーステアもごくわずか。ロールの量は少な目で、電動パワステも手応えあるもの。すべてにおいてスポーティーな味付けが施されている。それでいて段差による突き上げがマイルドで、カローラ同様の快適性を両立している。このあたりの絶妙かつ無難なセッティングはトヨタが最も得意とするところだ。
加速のほうも期待を裏切らない。なんてたってパワーウエイトレシオはアルテッツァRS200をも凌ぐ6.05kg/PS! スポーティーユニットとしては十二分の力強さを発揮する。スポーツモードは完全固定型(勝手にシフトダウン、アップしないタイプ)。低速トルクは十分。最もパワーの盛り上がりが実感できるのは4000~7000回転あたり。カローラとは思えないキビキビとした走りが印象的だ。ただ、その域をすぎると回転は鈍くならないものの、パワーそのものの伸びは鈍くなる。扱いやすい反面、面白味に欠ける。エンジン音も一応それらしい太い音でも、うるさいだけで完結してしまっている。それとアクセルペダルの微妙なコントロールもできるようにしたいところ。パワーがあるゆえに、いきなり加速するとギクシャクしてしまう。そういった細かい詰めが足らない。全体としては「ホットハッチ」というよりは「プレミアムハッチ」といったキャラクターといえそうだ。
ここがイイ
カローラシリーズらしい、高級感に満ちたインテリア。同じクラスでも一クラス上の出来というのがニューセンチュリーバリューの意味だという。ここまでやられると、企業間格差は開く一方だ。ゴルフなど欧州のライバルも品質感の向上を目指しているが、雰囲気は別として、品質感ならランクスが完全に上。
ここがダメ
その品質感の高いインテリアもカローラシリーズ共通のため、スポーティカーには似合わない。メタリックパネルもなんだか。シートは悪くないのだが、室内がオヤジのカローラと同じでは若者にはウケないような気も。センターメーターでもないし、シビックの革新性に比べると、いかにも保守的。トヨタはクラウンやカローラという伝統ブランドに関しては、モデルチェンジしても見事に「守り」に入る。
総合評価
走りは安定志向ゆえ、ハイパワーながら安心してとばせる。もちろん、欧州で売られるため、高速ではアウトバーン走行速度にも耐えるスタビリティがある。室内も広く、快適で、品質感は異様に高い。5ドアという合理的なボディを蘇らせたことも評価していいだろう。ただこのクルマにはいつものトヨタらしい革新性が見受けられない。
スタイルもフロントグリルまわりのボテッとした重さはセダン同様だし、リアに回ってもグッとくるラインは見受けられない。レビンに代わるスポーツモデルを標榜するのであれば、もう少しスマートさが欲しかった。
ミシュランはトヨタのF1参戦を聞き、即決でトヨタと提携してのF1復帰を決めたのだという。ミシュランというフランスの国民的メーカーのタイヤでF1が勝てれば、フランス及び欧州でトヨタの株(人気)はグッと上がるはずだし、ミシュランにとってもトヨタなら、まずいずれは勝つだろうという読みがあり、結果ブランドイメージのアップにつながると考えているようだ。
この両者の最初のお仕事がランクス・アレックスのタイヤだ。スポーツモデルのタイヤを共同開発したことで、両者の関係はグッと親密化している。ただ、このランクスを買う層に対し、そのあたりのねらいが効果的に効くには、まだしばらく時間がかかるだろう。とはいえ2年後のマイチェン時には、状況は大きく変わっているはずだ。真価はきっとその時発揮される。
公式サイトhttp://toyota.jp