新車試乗記 第407回 トヨタ ラッシュ G Toyota Rush G

(1.5L・4AT・4WD・195万3000円)


日時: 2006年03月18日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    企画開発からトヨタが参加

    2006年1月に発売されたダイハツ・ビーゴおよびトヨタ・ラッシュは、それぞれ1997年発売のダイハツ・テリオスと1999年発売のトヨタ・キャミの後継となる小型 SUV。先代はダイハツが開発し、トヨタにはOEM供給というかたちだったが、今回のビーゴ/ラッシュの場合は企画・設計段階からトヨタが参加。生産は引き続きダイハツが行う、というものになった。

    トヨタ最小SUV

    先代より大型化しつつも、全長は4メートル未満、全幅は5ナンバー枠に収めた新型ビーゴ/ラッシュ。供給を受けるトヨタにとっては、ランクル100、プラド、ハイラックスサーフ、ハリアー、RAV4等々があるSUVフルラインナップの中で、最小のSUVとなる。開発コンセプトにある通り、まさに「ベストコンパクトSUV」だ。

    車名のビーゴは英語の「Be」と「Go」、ラッシュは英語の「Rush(勢いよく進む)」が由来。広告コピーはダイハツの方が「ゴツかわいい」(by 堂本剛)、トヨタが「見晴らしのいいコンパクト」(by 哀川翔)となっている。生産はダイハツ車体(株)の大分(中津)工場(大分県中津市)で行われる。国内の販売目標はダイハツが500台、トヨタが1500台だ。立ち上がり1ヵ月の受注はトヨタだけで6000台という。

    また海外市場も侮れず、先代は年間3万5000台を110ヶ国以上で販売したという。内訳は半分近くが南米、1/4がイタリアなど欧州、そのほか東南アジア、中近東、アフリカなどだ。今後も海外向けはすべてダイハツブランド(新型テリオス)で行われる。

    価格帯&グレード展開

    159万6000円~195万3000円

    エンジンは全車ダイハツ製1.5リッター4気筒。変速機は4ATと5MTが、駆動方式には4WDと2WD(後輪駆動)がある。価格はトヨタ版もダイハツ版も大体同じで、159万6000円~195万3000円。

    パッケージング&スタイル

    トヨタ最小SUV

    今回の試乗車はトヨタ・ラッシュだが、外観で違うのは前後のバッジくらい。8種類のボディカラーも全く同じだ。外寸は全長3995mm×全幅1695mm× 全高1690~1740mm。先代からの伸びは全長で+100~200mm、全幅で+140mm、ホイールベースで+160mmと大きい。特に全幅は軽のテリオスキッドとシャシーを掛け持ちしていた先代から大きく飛躍して、5ナンバー幅一杯になった。

    拡大された全幅によってスタイリングは見違えるように良くなった。FR車らしい切り詰めたオーバーハングも印象的だ。サイズ的にもスポーティな雰囲気も、初代RAV4の3ドアバージョンを思わせる。大型化した現行RAV4が取りこぼしそうな市場(日本もその一つだが)をカバーするという役割は大きいはず。

    1220mmから1385mmに拡大した室内幅

    室内空間はパッソなどのリッターカー並みで、要するに十分に広い。室内幅が軽自動車並みの1220mmだった先代に比べて、165mm増の1385mmの室内幅はまさに別モノだ。このクラスの室内幅やヘッドルームは、10mmで居住性の印象が変わるから、この差は大きい。先にパッソ並みと書いたが、エンジンとミッションを縦置きし、床下にドライブシャフトがあることを忘れさせる広さでもある。

    広々した後席と荷室

    前席同様、リッターカー並みに広い後席。センタートンネルは低く、足のつま先が前席の下に入るおかげで、足元スペースも不満がない。天井が高くて見晴らしが良い分、圧迫感は少ないと言える。

    荷室容量は先代より大幅に増えて380リッター。後席を前方にタンブルすると755リッターまで拡大する。自転車をそのまま積めるくらいの荷室高があるので、一般的なハッチバック車より融通が効く。

    基本性能&ドライブフィール

    FRベースの本格4WD

    フロント車軸上に縦置きされるのは、先代後期の1.3リッター「K3-VE」から発展した新開発1.5リッター自然吸気エンジン「3SZ-VE」(109ps、14.4kg-m)。現行の2代目bBの横置きユニットと搭載方向を除いて同じもので、もちろんダイハツ製だ。エンジン外観はDOHCと思えないほどヘッド部分がコンパクトだが、それが縦に搭載されている風景は今やこのクラスの新型車では珍しい。

    低回転トルクは薄めだが

    出だしの加速は今ひとつ、というのが走り出した時の第一印象。車重は4WDの試乗車で1190kg(bBの約100kg増し)と意外に軽量だが、4000回転あたりまでの低回転の力感が今どきの「よく走る」1.3~1.5リッター車に比べて弱いのが理由だ。俊敏な1.5リッターbBと同じ出力表示なのを考えると、駆動系のフリクションや慣性マス、大径タイヤ等の重量、走行抵抗など諸々のせいかなと思う。

    ただ、しばらく乗っているとそれにも徐々に慣れ、クルマなりの加速で不満なく乗れるようになる。アクセルを踏み込めば素早くキックダウンして4000回転以上に回転を持ち上げ、ちゃんと加速もしてくれる。FFコンパクトカーで言えば、リッターカーくらいの動力性能という感じだ。

    目線が高いことを除けば、運転感覚は普通のコンパクトカーと大差ないというのが率直なところで、エンジンが「縦か横か」の区別はかなり微妙。「気のせいだ」と言われても仕方ない程度に、FRベース車らしい重量バランスの良さは感じる。

    乗り心地よく、小回り抜群

    試乗したローダウンサス仕様(オプション)に限って言えば、ピッチングや突き上げはほとんどなく、乗り心地は悪くない。いつものワインディングでも強いアンダーステアと舵角がついた時の走行抵抗で、挙動が乱れるようなところまで到達しそうにない。タイヤはルックス重視の215/65R16という巨大なもの。 VSCもTRCも乾燥路ではまず働かない。

    これほどの大径タイヤながら、エンジン縦置きゆえ前輪切れ角を確保し、最小回転半径を4.9メートルに抑えた点は、駐車場でぐるっと回るだけでも分かる長所だ。4.9メートルというと、まあ普通のコンパクトカー並みだが、体感的にはもっと小さく感じられる。今回は撮影のため名古屋某所の狭い路地を走り回ったが、そうする気になったのも小回りが効くラッシュだったからだ。

    本格フルタイム4WDシステムと電子制御系あれこれ

    今回は舗装路のみの試乗で、悪路での性能は専門誌を参照していただきたい。しかし、ラッシュ/ビーゴの肝は、やはりメカニカルセンターデフ(デフロック機構付き)を備えたフルタイム4WDシステム、ビルトインラダーフレーム構造、リアデフの「ダイレクトトラクションLSD」(VSCとの同時装着は不可)といったヘビーデューティなメカニズムにある。デフロックについては、走行中でもオン/オフが可能で、オンだと(表示のセンターデフ部分に×印が出るが、これがロック状態)、明らかにフリクション感が増し、コーナリング時にはタイトコーナーブレーキング現象が出て「効いてる」感じがする(という表現は本末転倒だが)。

    また、4WD車にはVSCやTRC、4WDのAT車にはDAC(ダウンヒル・アシスト・コントロール)とHSAC(ヒル・スタート・アシスト・コントロール。坂道発進のずり下がり防止)が選択できる。DACは現行RAV4と同様のもの。ギアをローンレンジもしくはバックに入れた状態でDACスイッチをオンにし、急坂でブレーキを放せば、車速を5km/hに保ったまま、ゆっくり下っていく。雪が積もった急な下り道で、エンブレだけでは十分に減速できず、フットブレーキでは車輪がロックして滑り落ちる可能性がある、でも下らなければ家に帰れない、という状況で、頼みの綱となる装置だ。アクセルを踏めば解除されて、加速してしまうのもRAV4と同様。

    ここがイイ

    このサイズでやれそうなことはほとんどやり尽くしてあること。居住性から積載性まで、およそ不満がない。もちろん小回りが効くのが最大の良さ。本格オフロード車だけに、都会の凸凹(縁石など)で腹を打つことがないのもいい。つまり、けっこうルーズに乗れるという点で、日常の足にベスト。

    ヒルスタートアシストコントロール、VSCなど制御系のハイテクやG-BOOKアルファの採用。新しいクルマを買う意味は、今やこうしたハイテク装備にある。シートヒーターが選べるのもうれしい。リアスペアタイヤが後方視界を妨げないのもいい。

    ここがダメ

    走行抵抗を感じる、ちょっとザラついた走行感覚。もうちょっとパワーが欲しくなるし、オンロードの走りの面白さなるものは、ほとんど無い。また、ステアリング位置がやや遠く、テスコピック(前後調整)が欲しくなる。

    車格の割にちょっと高価。といって、2WD仕様で「背の高いヴィッツ」的に使うだけでは、このクルマ本来の意味が無くなってしまう。助手席側フェンダーに突き出たミラーは見づらく、あまり意味がない。モニターカメラに替えるべきでは。

    総合評価

    今シーズンは雪が多かった。デイズのある名古屋では例年めったに雪が積もることはなく、スキーにでも行かない限り、四駆だとか、スタッドレスタイヤとかの恩恵にあずかる機会は多くない。それでも今シーズンは雪が数回積もったし、長野や福井など冬場にちょっとした遠出をした折に、四駆であれば安心感はかなり違うと実感した。日本の半分くらいの地域では、冬場に雪を意識するという。そんな地域では四駆が生活の足として必需品だろう。特にこういうコンパクトな本格四駆は、女性にはとても便利なクルマだと思う。雪国のヴィッツだ。

    雪同様に、オフロードの多い地域もまだまだ日本には多い。私道や林道を通らなくてはならないことだってあるだろう。乗用車タイプの四駆ではなく、こうしたSUVタイプの四駆はやはり頼もしい。また、このタイプならオフロードコースでの四駆遊びも楽しい。そういった場所ではジムニーのような軽量四駆が圧倒的な強さをみせるのだが、ラッシュのコンパクトさはジムニー並みなので、かなり楽しめそうだ。マニュアルシフトが用意されているのも、さすが分かっているところ。

    しかし現実には、そういった使い勝手は日本ではなく、海外でこそ望まれるものだ(輸出予定は国内の 1.5倍に当たる月3000台)。欧州をはじめ、世界の各地でこの手のクルマが待望されているのは理解できるところ。先代テリオスの2005年の輸出台数は、ベネズエラの年1万6000台を筆頭に、イタリア8900台、マレーシア5100台、トルコ3200台、スーダン1800台の順。このサイズと価格、本格四駆でトヨタクォリティなのだから、世界の人々に重宝されていることは想像に難くない。

    とはいえ、日本国内ではコンクリートジャングルを走る機会が多いだろうから、はたしてこのクルマが必要か、という点では?が残る。トヨタ車ゆえ、快適でないはずはなく、視点が高いドライビングポジションは最近でもやはり新鮮な感じがするし、ごつい四駆ながら小さめでかわいいルックスは最近では他に類を見ないだけに、確かに魅力はある。しかし、これほどの性能のために上昇した価格は現実的ではないと思う。

    その昔、ジムニープラスやパジェロミニなどが人気だったころ、女性が意外にこういうミニ四駆を好むのには驚いたが、それは今も変わらない。一般に女性はミニバンタイプよりSUVタイプの方が好きなようだ。それでもラッシュにあまり注目が集まらないのは、やはりそのポジションが日本において中途半端だからだろう。先代には軽があったわけで、そこまで小さければジムニーのように日本でもそれなりの地位を確保できると思うが、このサイズと価格は微妙なところだ。

    海外では逆にとてもいい立ち位置を確保できる。日本よりオフロード性能の必要性はグッと高まるし、乗ればランクル並みにとても快適で、ランクルより圧倒的に安く、ランクル並みの性能を持っている。実用車としてこれほど重宝されるクルマは他にそうないはずだ。日本国内で海外のような生活環境の人、あるいは意図的にそういう環境を好む人に、ラッシュはおすすめ。しかし都会では費用対効果が悪すぎだ。

    ラッシュはカムリ同様、世界のトヨタ(の子会社ダイハツ)が海外向けに作ったクルマの一部を日本でも売った、というクルマだ。輸入車に近いコンセプトゆえ、トヨタ・ダイハツを合わせて月間2000台にすぎない販売目標も納得できる。好きな人だけ買ってくださいという商品と言える。

    最近、豊田市のトヨタ会館に行ったら、日本では売っていないタイ製ハイラックスのダブルキャブ(ディーゼル)が展示してあり、これがなかなかかっこいい。実際、来場者の人気も高いようだ。これなんかも、もしガソリン車があればラッシュ程度は売れるクルマだろう。あえてガソリン車を作るまでもないから出さないだけ。ラッシュはガソリン車だから、国内でも売り出したわけだ。

    だいたいラッシュクラスのクルマにそれほど投資をするメーカーはあまりないと思われる。その意味では、ラッシュはかなりニッチで貴重なエンスーなクルマだ。国内では売れもしないエンスー車を出してしまえることが、国際的なフルラインアップのトヨタゆえのおもしろいところ。こうなるとアメリカンV8トラックのタンドラとか、巨大ミニバンのシエナなんてのも日本で売り出してもらいたいものだが、まあ左ハンドルを右に改造してまではやらないだろう。日本が国際的に数少ない右ハンドル市場ということで、エンスー的にはけっこう損をしていると思う。左ハンドルだったら変なトヨタ車がもっと売り出されて、とても楽しいことになると思うのだが。

    参考:
    トヨタ・タイランド>HILUX VIGO(タイ語)

    試乗車スペック
    トヨタ ラッシュ G
    (1.5L・4AT・4WD・195万3000円)

    ●形式:CBA-J210E-GQPF●全長3995mm×全幅1695mm×全高1725mm●ホイールベース:2580mm●車重(車検証記載値): 1190kg(F:660+530)●乗車定員:5名●エンジン型式:3SZ-VE●1495cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・縦置●109ps (80kW)/6000rpm、14.4kg-m (141Nm)/4400rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/50L●10・15モード燃費: 14.0km/L●駆動方式:フルタイム4WD●タイヤ:215/65R16(ブリヂストン DUELLER H/T 687)●試乗車価格:253万5750円(含むオプション:VSC&TRC+HSAC&DAC制御 9万9750円、ローダウンサスペンション+ディスチャージドプロジェクター式ヘッドランプ 4万7250円、カラーサイドマッドガード 2万1000円、ルーフレール 2万1000円、リアフォグランプ+シートヒーター 2万1000円、SRSサイド(運転席・助手席)&カーテンシールドエアバッグ 9万2400円、HDDナビゲーションシステム 26万2500円、寒冷地仕様 1万7850円)●試乗距離:120km ●試乗日:2006年2月

    公式サイト (RUSH) http://toyota.jp/rush/index.html

     
       
       
       
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