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メルセデス・ベンツ S300h新車試乗記(第775回)

Mercedes-Benz S300h

(2.2L 直4ターボディーゼル+モーター・7速AT・998万円~)

1000万円で買える最良の選択?
メルセデスの旗艦が
ディーゼルハイブリッドで登場!

2015年12月11日

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キャラクター&開発コンセプト

国内初のディーゼルハイブリッド車


メルセデス・ベンツ S300h

メルセデス・ベンツのフラッグシップセダン「Sクラス」。その現行モデルである6代目「W222型」は2013年から発売されているが、今回試乗したのは2015年8月27日に日本で発売された「S300h」。2.2L直4ディーゼルターボエンジン(最高出力204ps、最大トルク500Nm)に、電気モーター(27ps、250Nm)を組み合わせた、クリーンディーゼルのハイブリッド車だ。乗用車としては国内初のディーゼルハイブリッド車になる。

 

発進は主にモーターで行い、通常はディーゼルエンジンで走ることで、高い静粛性、パワー、燃費性能を両立した、というのがS300hの売り。JC08モード燃費は19.5~20.7km/Lで、このクラスのセダンとしては群を抜く数値を実現している。もちろん、エコカー減税の100%免税対象。

「ハイブリッド」から「h」へ


2.2L 直4 BlueTEC ディーゼルターボエンジン

なお、Sクラスには、3.5L V6ガソリンエンジンのハイブリッド車「Sハイブリッド(欧州名S400ハイブリッド)もあったが、S300hの投入に伴い、そちらの日本名も、末尾に「h」が付く「S400h」に改称された。

また、3.0L V6ツインターボエンジンのプラグインハイブリッド車(PHEV)である「S550プラグインハイブリッド」(2014年11月発売)の方は、車名末尾に「e」が付く「S550e」に改称されている。つまりハイブリッド車なら「h」、PHEVなら「e」、純ディーゼルエンジン車なら「d」という、シンプルなルールになった。

・外部リンク
メルセデス・ベンツ日本>ニュースリリース>「S 300 h」を追加(2015年8月27日、PDFファイル)

 

価格帯&グレード展開

Sクラスのエントリーモデル


メルセデス・ベンツ S300h エクスクルーシブ

S300hの998万円から、AMGの3000万円台まで、ラインナップが超幅広いSクラスにあって、S300hはエントリーモデルという立ち位置。ただし標準車だけでなく、快適装備を豊富に備えた「S300h エクスクルーシブ」やロングホイールベース版の「S300h long」も含めて考えると、ガソリンハイブリッドのS400hとの価格差はそれほど大きくない。慣れ親しんだガソリンを取るか、トルクフルで経済的なディーゼルを取るか、お好みでどうぞ、という設定。

 

メルセデス・ベンツ S300h long

なお、S550eは前述の通り、3.0L V6ガソリンツインターボのPHEVだが、そこから上は全て純エンジン車で、S550は4.7LのV8ツインターボ、S63は5.5LのV8ツインターボ、S600やS65は6.0L V12ツインターボになる。

2015年11月現在、Sクラス(セダン)のラインナップは以下の通り。

・S300h / 同 Exclusive / 同 long
 998万円 / 1270万円 / 1340万円
・S400h / 同 Exclusive
 1112万円 / 1330万円
・S550e long 1622万円
・S550 long  1622万円
・S600 long  2295万円
・Mercedes-AMG S63 long 2458万円
・Mercedes-AMG S63 4MATIC long 2458万円
・Mercedes-AMG S65 long 3264万円
・Mercedes-Maybach S550 2200万円
・Mercedes-Maybach S550 4MATIC 2200万円
・Mercedes-Maybach S600 2600万円

 

パッケージング&スタイル

大きいけれど、スマートに見える


写真(試乗車)はAMGライン装着車。AMGスタイリングパッケージや19インチホイールを装備する

その堂々たるサイズは、まさにSクラスならでは。試乗車は標準ホイールベース車だが、全長は5mを優に超え、全幅は1.9m、ホイールベースは3mを越える。さらに「long」ともなると、ホイールベースは130mm伸びて3165mmになる。

しかし実車を前にすると、いい意味でそれほど大きく見えない、というのが現行Sクラスのいいところ。どことなくスポーティで、控えめな印象すら受ける。スリーポインテッドスターが中央にドンと配置されるグリルではなく、昔ながらの格子グリルが上品で、いい感じ。また、最小回転半径は標準車で5.5m、longでも5.7mしかないのが、さすがメルセデス。小回りは本当に得意だ。

 

なお、約500個に及ぶという内外装のライト(外装に最大186個、内装に約300個)は、すべてLED化され、いわゆるフルLEDになった。しかも無駄な消費電力を抑えるため、状況によって光量を低減する機能も付いているという。高級車でも、いや高級車だからこそ、電気の無駄遣いはクールじゃない、ということか。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
メルセデス・ベンツ Cクラス(2014~) 4690~4715 1810 1435 2840 5.1
トヨタ クラウン (2012~) 4895 1800 1450~1460 2850 5.2
レクサス LS600h/600hL (2007~) 5090~5210 1875 1465~1475 2970~3090 5.7~5.9
BMW 7シリーズ (2015~) 5110~5250 1900 1480~1485 3070~3210 5.8~6.0
ジャガー XJ(2010~) 5135~5260 1900 1455 3030~3155 5.8~6.0
メルセデス・ベンツ S 300h/300h long (2015~) 5120~5280 1900~1915 1495 3035~3165 5.5~5.7
メルセデス・マイバッハ Sクラス(2015~) 5460 1900 1495 3365 6.0~6.1
 

インテリア&ラゲッジスペース

豪華で緻密、装備も満載


メーターとダッシュに12.3インチ大型TFTカラーインストゥルメントパネルをダブルで採用。

ある意味、エクステリアより迫力を感じてしまうのがインパネ。運転席正面とダッシュセンターに、堂々と配置された2つの巨大な液晶ディスプレイ、そこかしこに張り巡らされたウッドパネルなどに圧倒される。二昔ほど前のSクラスには、内装にやや大ざっぱな印象があったが、現行モデルの作りは緻密かつ機能的で、ハイテク・豪華装備も満載。試乗車の価格は約1150万円だが、もっと高そうに見える。

なお、内装のLEDによる間接照明「アンビエントライト」は、赤、青、紫など、7色から選ぶことができる。

 

おなじみの電子制御式シフト「ダイレクトセレクト」。慣れてしまえば安全で便利

COMANDコントローラーも熟成されてきた。上面にはタッチパッドも備える(使う必要はほとんどないが)
 

S300hの後席は3人掛け。longならより豪華な「ショーファーパッケージ」(こちらも3人掛け)も選択可

フル電動シートは調整範囲、ホールド性など申し分なし
 

荷室容量は490L(Longは510L)。荷室奥にはリチウムイオン電池が搭載されている(はず)

SクラスはMercedes-AMG S63とS65を除き、全車ランフラットタイヤ(MOExtendes)が標準。ゆえにスペアタイヤやパンク修理キットはない
 

基本性能&ドライブフィール

発進はモーターが担う


2.2L 直4「BlueTEC」ディーゼル。ボア×ストロークは83.0×99.0mmの超ロングストロークで、圧縮比も16.2と普通に高め。尿素インジェクターでNOxを除去する

試乗したのは標準車のS300h(998万円)にオプションのAMGライン(147万5000円)を装着したもの。

スタートボタンを押しても、バッテリーの充電状態が良好なら、エンジンは始動せず、静かなまま。逆に充電状態がそこそこだったり、エンジンが冷え切った状態だと、ブルン!とディーゼルエンジンが始動し、ゴロゴロゴロとディーゼルエンジンの音を響かせる。ただし、それは車外で聞いた場合であり、車内ではほとんど気にならない。

エンジンが始動しなかった場合、S300hは冒頭でも触れたとおり、電気モーターのみで発進する。2080kg以上の車重(試乗車は2170kg)に対して、モーターの出力は27psしかないが、トルクは0rpmから250Nm(25.5kgm)を発揮し、巨大なボディを音もなくユルリと発進させる。ちなみにミッションは7Gトロニック・プラスこと7速AT、駆動用バッテリーはドイツ製ハイブリッド車で定番のリチウムイオン電池だ。

ディーゼル+モーターで750Nmの圧倒的なトルク

ディーゼル・ハイブリッド車で都合がいいのは、ディーゼルエンジンの弱点である低回転時のカラカラ音がないこと、そしてディーゼルターボが意外に苦手とする極低回転(だいたい1500rpm未満)を、電気モーターに任せられること。この点で、確かにディーゼルのハイブリッド化には意義があるな、と感じさせる。

いったん動きだせば、パワートレインの主役は2.2L(2142cc)の直4クリーンディーゼルターボ(204ps、500Nm)に移る。エンジンが始動するタイミングは、充電状態やアクセルの踏み加減によるが、おおまかに言えばプリウスなどのトヨタ製ハイブリッド車と似たような感じだ。じわりと加速していけば、30~40km/hくらいまではモーターで走るし、80km/h程度でもアクセルオフすれば回転計の針がストンとゼロを指す。

エンジンとモーターを合わせたシステム最高出力は231psで、パワーウエイトレシオは9kg/ps前後と平凡だが、システム最大トルクは750Nm (76.5kgm)もあり、常用域の加速力は十分。日本の法定速度内なら、いつでも軽々と加速する。車重が2トン超もあるとは思えない。

しかも最高出力は3800rpm、最大トルクは1600-1800rpmという超低回転で発揮するから、エンジンを上まで回す必要はまったくない。常用回転域は1500~2000rpm超くらい、時に3000rpmまで、といった感じで、アクセルを少し踏めば分厚いトルクが湧き出る。0-100km/h加速は7.6秒とあるが、体感的にはそんな数値をはるかに上回る力強さがある。

アスファルトを踏みしめるがごとく

それにしてもS300hは気持ちよく走る。ボディ剛性の高さ、静粛性の高さ、アスファルトを踏みしめるような濃厚な接地感など、基本性能の高さがストレートに伝わってくる。

そしてもちろん乗り心地もいい。全車標準のAIRマティックサスペンションにより、路面の状態に関わらず、フラット感を保つ。高速域では最大20mm車高を落とし、路面にスッと張り付くように、安定感、安心感を高める。

さらに、このS300hへの設定はないが、AMGやマイバッハなどの上級モデルには、ステレオカメラで前方路面の凹凸をミリ単位で検知し、各輪サスペンション油圧ユニットを瞬時にコントロールしてボディの上下動を抑える「マジックボディコントロール」が装備される。

ハンドリングもFRらしい素直なもので、滑らかなステアリングフィールが気持ちいい。交差点で少し切り込めば、ズワッとノーズが内側を向き、自分の意のままにクルマが動く感じがする。とにかく速度や路面を問わず、どこでも安心して走れる。これを「いいクルマ」と言わずして、なんと言おう。

アクセルオフでセーリング。鉄壁の運転支援

そういったわけで、当然ながら高速巡航もお手のもの。100km/h巡行時のエンジン回転数は7速トップで約1500rpmだが、アクセルをオフにすればエンジンが停止し、クラッチが切断されて惰性で走るセーリングモードに入る。

最高速度は欧州仕様で250km/h(リミッター作動)とあるが、100km/hで走るだけでも「いいクルマ」感が堪能できる。もちろん、自慢のディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付)もフル活用。ステアリングに手を軽く添えているだけで、高速道路の本線であれば、ほとんどきれいに車線に沿ってアシストしてくれる。そして車線を逸脱しそうになれば、ステアリングホイールをバチで軽く叩くような独特の振動で警告してくれる。アラーム音は煩わしいが、振動だと優しく注意されているみたいで嬉しい。夜間の長距離高速走行では、とても助かるはず。

 

言うまでもなく、運転支援装備は従来Sクラス同様、満載フルスペック状態。フロントガラス上部にステレオマルチパーパスカメラを備えるほか、フロント中央に77GHzの中・長距離レーダー、フロントとリアに各2個ずつ25GHz 短距離レーダー、そしてリアバンパー中央に25GHzマルチモードレーダーと、計6個のミリ波レーダーを装備し、車両や歩行者を検出。そして全方位を監視し、状況に応じてアクセル、ブレーキ、ステアリングを制御する。「部分自動運転」とまで謳うのは、今のところメルセデス・ベンツくらいだ。

試乗燃費は12.9~13.5km/L。JC08モードは19.5~20.7km/L

今回はトータルで約260kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を走った区間(約80km)が12.9km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が12.5km/L、13.5km/L。トータルでは約13.1km/Lだった。

JC08モード燃費は、試乗した標準モデルで20.7km/L、longで19.5km/L。燃料タンク容量は70L。軽油は現在100円/Lを切っているので、満タンでも1万円でお釣りが来るはず。

 

Sクラスに軽油を入れるという感覚が不思議。ガソリンスタンドで店員に凝視された

また、メルセデス・ベンツ日本は、S300hのプロモーションのため、鹿児島県の佐多岬から東京六本木までの1541kmを実質的に無給油で走破しており、その時の平均燃費は25.6km/Lだったとのこと。約60Lで走破したことになる。

なお、S300hは排ガス中のNOx(窒素酸化物)をAdBlueこと尿素水溶液を噴射し、SCR触媒で後処理するシステムを使う。そのため、定期的に尿素水溶液を補充する必要がある。

 

ここがイイ

クルマ全体の完成度の高さ。操作系の使いやすさ。抜群の小回り性能。ヘッドライトシステムなど

とにもかくにも、クルマ自体がいい。トルクがあり、パワーは十分。ディーゼルだが、エンジンが止まっていれば当然静かだし、エンジンが掛かっても車内は十分に静か。どこを走っても乗り心地はよく、安定性も申し分ない。ディーゼルがOKか、そうじゃないかで、S300hを選ぶかどうかは決まると思うが、Sクラスそのものの良さは誰が乗っても分かる。S300hが出たことで、あらためてV6ガソリンハイブリッドのS400hが売れているようだが、さもありなん。

電子制御シフトの「ダイレクトセレクト」、ナビ等を操作する「コマンドシステム」、従来のクルーズコントロール用レバーとほぼ同じように操作できる「ディストロニック・プラス」の操作レバー、そして伝統のシート型シート調整スイッチなどなど、あるべきところに、ちゃんとあり、(一度覚えてしまえば)思った通りに操作できる操作系やスイッチ類。それだけで「これ、欲しい」と思わせる説得力がある。

抜群の小回り性能。全長5150mmで、最小回転半径はたったの5.5m。これはヴィッツ RSの5.6mより小さい。フルロックの手前くらいでグワッと前輪が切れる感じがあり、Uターンや縦列駐車時には頼もしい限り。

標準でLEDインテリジェントライトシステム、そしてアダプティブハイビームアシスト・プラスを備えたヘッドライトシステムは、街中から郊外、高速道路まで、オートにしたままずっと走れる超優れもの。先行車や対向車がいても、それを避けるように光軸方向や配光分布がバリアブルに変わる様子は感動的。単純なハイ・ロー自動切替式のオートマチックハイビームとは、比較にならない完成度だった。

あと、これは現行のメルセデス・ベンツすべてに言えるが、オフ位置がなく、オートがデフォルトのヘッドライトスイッチは見識。夜間、無灯火で走っているクルマの多くは、もちろんドライバーの不注意だが、常時点灯するメーターとか、メーター内にライトの点灯表示がないとか、そこそこの高価格車でもオートライトの設定がないとか、クルマの方にも問題があると思う。他メーカーにも追随してほしい部分。

ここがダメ

特になし

上にも書いたように、ディーゼルエンジンの音や軽油というものに、そもそも抵抗がある人は、このS300hを新車で購入するというところまではいかないだろう。エントリーモデルとはいえ、約1000万円もするクルマだし(試乗車はオプション込みで約1150万円)。とはいえ、そういう人にはS400hや、プラグインハイブリッドのS550eや、純エンジン車のAMGなど、いくらでも選択肢がある。その意味で、ダメは特になし。死角のないクルマと言うしかない。

総合評価

現時点で最高と言えるハイテクカー

メルセデス・ベンツは昨年(2014年)、日本市場で新車登録台数が2年連続で過去最高となり、前年比13.2%増の6万834台になった。そして2015年上半期の台数も、前年比19.1%増の3万2677台(2014年は2万7430台)と、再び過去最高を更新。日本国内で販売されている輸入車ブランドでトップとなった。

要因としては昨年発売された新型Cクラスの好調もあるが、それだけではなくAクラスからSクラスまで、あるいはコンパクトカーからSUV、超高級セダンまでと、今やフルラインナップメーカーであることが大きいだろう。昔は中・大型セダンや2ドアモデル、ステーションワゴンくらいしかなかったメーカーだが、今やどんな客にでも対応できることが、この台数を支えている。どんな客と言っても、基本は高所得者層しか乗れないクルマ、というイメージを維持しているのが強いところだ。すべてのクルマがいわゆるプレミアムカーとしてラインナップされている。今年後半の販売台数も悪くないようだ。

トヨタは今、もっといいクルマを作ろう、ということで、『お客さまが一目見て「このクルマが欲しい」と思っていただけるデザインや、一度乗ったら「ずっと乗っていたい」と思っていただける走りなどに、これまで以上に磨きをかける』としている。これまで大衆車メーカーとして「足」を提供してきたトヨタが、今後どんなクルマ作りに向かうかは興味深いが、メルセデスの場合はもともとがプレミアム車なので、「いいクルマ」を上から下(のラインナップ)に向けて広げている状態。それゆえトヨタのような苦労はない。そうしたメルセデス・ベンツのクルマに、中間層の人たちが手を出し始めている状態ゆえ、やたら売れているということだろう。「人生一度はベンツを買ってみたい」人が手を出しやすい状況になっているわけだ。

 

そんなメルセデス・ベンツの中でも、最上級に位置するSクラスは、「メルセデス・ベンツの最高」が表現されている。Sクラスといえば、その昔、W140(1991~1998年)などに乗ってみると、やたらガバッと大きいという感覚があり、運転席も広すぎて、まるで落ち着かなかったもの。ところが現行のSクラスは、そうした大きさに関する違和感がなく、運転席は適度にタイト、取り回しも本文にあるようにとても良く、自分で毎日運転したくなる。何より、頭を預けると柔らかくて、とても気持ちのいいヘッドレストが気にいった。四半世紀前にシトロエン BXで感じて以来、そう思ったクルマは1台か2台しかない。ヘッドレストの感触は気持ちよさに直結するだけに、各メーカーはもっと研究するといいと思う。

また、本文でも触れているように、ダイレクトセレクト(電子制御シフトセレクター)やコマンドシステムなど、操作系がとにかく使いやすい。特にダイレクトセレクトは秀逸で、シフトレバーがコンソールにあるクルマがいまだ主流であることなど信じがたくなる。シフトはスイッチでいいと、もう10年も前に書いたが、それをほぼフルラインナップで実現しているのは、まだメルセデス・ベンツだけだ。また、メーターがすべて液晶ディスプレイで表示されること、それを自在に切り替えられること、しかもそれがスムーズであること。これも今後は、ごく当たり前になるはずだが、実現しているクルマはまだ少ない。安全性から快適性まで、とにかく現時点で最高と言えるハイテクカーであることは、Sクラスの何よりの魅力だろう。

走れば走るほど、お得になる

さて、S300hのディーゼルエンジンだが、エンジンがかかっている時、車外でその盛大な音を聞くと、やっぱりディーゼルは、と思ったりする。しかし、室内ではアイドリングストップのおかげもあって、全く気にならない。走っていると、低回転時にはわずかにディーゼルエンジンの微振動がステアリングに伝わってくることがあるが、まあほとんど気にならないレベルだ。以前、日本に導入されたEクラスのディーゼル車(E320 CDI)に乗った時は、悪くはないが何も好んでディーゼルに乗ることはない、と思ったものだが、今回のS300hではネガティブな印象はまったくなく、これなら買ってもいい、欲しいと思った。

むろん、抜群の燃費性能にも脱帽するしかない。全く不満ない動力性能を実現しつつ、街乗りで実質13km/Lは走る。一般的にこのクラスの純ガソリンエンジン車なら5~6km/L前後であり、月1000km走ればハイオクが200L必要だ。140円/Lだとしても2万8000円。これがS300hだと、1万円以下で済むので、月にして1万8000円、年間で20万円以上。10年12万km走れば、200万円以上浮く計算になる。となると、このクルマ、実は800万円以下ということになる。それに加えて購入時には自動車取得税24万9400円と自動車重量税3万7500円はゼロだ。排気量は2.2Lしかないから、自動車税も安い。実際にはAdBlue(尿素水溶液)の補給など、ガソリン車にはないコストも必要だが、すごいコストパフォーマンス。こう計算すると、ガソリン車など買ってる場合じゃないと思えてくる。

 

まあ、このクラスに乗ること自体、あまりエコな行為とは思えないので、このクラスのディーゼル車はエコはエコでもエコロジーじゃなくてエコノミーの方かもしれない。1000万円のクルマを買う人が、そんな細かい計算をするかどうかは知らないが、走れば走るほど、お得になるクルマであることは間違いないだろう。しかもハードウェアとして見た場合には、ほんとうに何一つ文句ないクルマだ。フォルクスワーゲンがディーゼル問題でつまづいている間に、いいディーゼル車を次から次に出しているメルセデス・ベンツは、いよいよ日本の輸入車販売では独走しそうな気配だ。今後日本でも格差はますます広がっていくだろう。プレミアムなクルマが買える人と、そうでない人により分かれていくはず。買える人の最良の選択がメルセデス・ベンツであり、それがまたエコノミーでもある。つい「なんだかなあ」とぼやきたくなるというものだ(苦笑)。

 

試乗車スペック
メルセデス・ベンツ S300h AMGライン
(2.2L 直4ターボディーゼル+モーター・7速AT・1145万5000円)

●初年度登録:2015年9月 ●形式:LCA-222004
●全長5150mm×全幅1915mm×全高1495mm ※AMGライン装着車
●ホイールベース:3035mm
●最低地上高:110mm ●最小回転半径:5.5m
●車重(車検証記載値):2170kg(1130+1040) ※AMGライン装着車
●乗車定員:5名

●エンジン型式:651
●排気量・エンジン種類:2142cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・ディーゼル・ターボ・縦置
●ボア×ストローク:83.0×99.0mm ●圧縮比:16.2
●最高出力:150kW(204ps)/3800rpm
●最大トルク:500Nm (51.0kgm)/1600-1800rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:軽油/70L

●モーター形式:EM0007
●モーター種類:交流同期電動機
●定格電圧:126V
●最高出力:20kW(27ps)
●最大トルク:250Nm(25.5kgm)

●駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
●トランスミッション:7速AT

●システム最大出力:170kW(231ps)
●システム最大トルク:750Nm(76.5kgm)/
●JC08モード燃費:20.7km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR)
●サスペンション形式(前):AIRマティックサスペンション(エアサスペンション)
●サスペンション型式(後):AIRマティックサスペンション(エアサスペンション)
●タイヤ:前245/45R19、後275/40R19(Bridgestone Potenza S001 MOExtended Made in Poland) 
 ※AMGライン装着車

●試乗車価格(概算):1145万5000円
※オプション:AMGライン(AMGスタイリングパッケージ、19インチAMG 5ツインスポーク アルミホイール、Mercedes-Benzロゴ付ブレーキキャリパー&ドリルドベンチレーテッドディスク、ステンレスアクセル&ブレーキペダル、ブラックハイグロスポプラウッドインテリアトリム、AMGスポーツステアリング、ヘッドアップディスプレイ) 147万5000円
※含むS300hラグジュアリーパッケージ(エクステンデッドウッドインテリアトリム、プライバシーガラス、360度カメラシステム、エアバランスパッケージ<空気清浄機能、パフュームアトマイザー付>、後席シートヒーター、赤外線反射・ノイズ低減ガラス、パノラミックスライディングルーフ) 74万4000円分
●ボディカラー:ダイヤモンドホワイト(メタリック)

●試乗距離:約260km ●試乗日:2015年12月
●車両協力:メルセデス・ベンツ名古屋南・名古屋北

 
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メルセデス・ベンツ 名古屋南・名古屋北

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