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ボルボ S60 T-5新車試乗記(第164回)

Volvo S60 T-5

(2.3L直5ターボ・5AT・520万円)

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2001年03月17日

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キャラクター&開発コンセプト

エステートのボルボが送り出す、スポーツティな4ドアサルーン

昨年9月のパリ・サロンでデビューを果たしたS60は、フラッグシップのS80とボトムレンジの S40の間を埋める新型サルーン。S70の後継車であり、エンジンやサスペンションなどの主要コンポーネンツは S80や新型V70がベースだ。デザインもそれらの面影を強く残しており、さらに自ら「4ドアクーペ」を名乗る流麗なスタイルが特徴だ。メルセデス・ベンツCクラス、BMW・3シリーズにねらいを定めたモデルであり、フォード傘下のプレミアムカーメーカーとしての姿勢が、S60には強く表れている。 

価格帯&グレード展開

395~520万円、Cクラスに勝負を挑む

全車5速ATの直列5気筒・横置きで、駆動方式はFFだ。ラインナップは以下の通り。

・「2.4」 2.4リッターNA(170ps、20.0kg-m)  395万円
・「2.4T」 2.4リッターライトプレッシャーターボ(200ps、29.1kg-m)  465万円
・「T-5」 2.3リッターターボ(250ps、33.7kg-m)  520万円

現行のV70と比較しておよそ50万円安い設定だ。装備の面では「2.4T」と「T-5」が共通で、「2.4」のみ、クルーズコントロール、革巻きステアリング、トリップコンピューターなどが省かれる。

(の3種類。ミッションは全車で、ターボモデル

パッケージング&スタイル

S80を凝縮、クラス最大のワイドトレッドが自慢

ベースはS80およびV70と共通なるが、ホイールベースは2715mmまで縮小されている。ボディサイズは全長4575mm×全幅1815mm×全高1430mmと、V70より全長を詰めて、コンパクトに。一方で、トレッドはV70/S80系と大差なく、クラス最大。ボディ剛性もV70 をそのまま凝縮しただけあって、V70のおおよそ1.4倍となっているらしい。上級車種からの流用ゆえ、資質自体は1クラス上といったところだ。

全体のフォルムは「V70のサルーン版」もしくは「S80の縮小版」。それもそのはずで、フロント周りのパーツはV70と同一。細部に違いはあっても、基本は同じという。一方、Cピラーとショルダー部分はC70に近いデザイン処理だ。これがクーペ風に見える最大の要素となっている。どの欧州車とも違う個性があって、なかなかカッコイイと思う。

四角じゃないけど、中身はしっかりとボルボ

全幅が1800mm以上あることを考えると室内は決して広くはないが、スポーツセダンという性格からすればむしろそのタイト感が心地いい。シートは北欧車らしく厚みのある大きなサイズで、アップライトなポジションに座らせるもの。前席、後席の足元空間、頭上空間ともに不足はない。後席の乗降りも、割合に楽だ。

なお、コンソール部分とステアリングを除くインパネはV70のものを共用する。メーターはシンプルなアナログ。これといって特別な演出は図られていない。これも堅実なボルボらしいところといえるだろう。

エステート的な機能が随所に盛り込まれているのも見どころだ。後席の6:4分割可倒機構、助手席のシートバック可倒機構、後席中央のチャイルドシート(オプション)などが装備される。ラゲッジの容量は424L。前述した助手席、後席の可倒機構を使えば、3m前後の長モノも積み込むことができる。

基本性能&ドライブフィール

250psの直5ターボを搭載した「T-5」

試乗したのは2.3リッター直5ターボの「T-5」。最大出力は250ps、最大トルクは2400~5200回転で33.7kg-mを発揮する。ターボ用の5速ATはギアトロニック(ティップシフト機能)付き。シフトパターンは「P-R-N-D」という並びで、Dレンジからレバーを左に倒すとシーケンシャル型(+/-)のマニュアル操作ができる。

車重がV70より軽いせいもあって、出だしは当然パワフルだ。2000回転辺りまでアクセルの反応に緩慢なところもあるが、ターボにありがちなトルク変動による違和感もなく、レッドゾーンまで俊敏に吹け上がる。エンジン音も官能的と言える心地いいものだ。

ワイドトレッドが効果を発揮

安定感も抜群と言っていい。リアの接地感が極めて高く、「DSTC」もギリギリまで介入しない。ロールを含めた姿勢の変化は少なく、緩やかなワインディングで走らせると、実に気持ちがいい。ロック・トゥ・ロックは2.7 回転とシャープで、操縦性もスポーティだ。ワイドトレッド、ロングホイールベースの効果は高速巡航にも発揮され、安楽にして信頼感のある走りを見せる。

気になったのはハイパワーFF車ゆえ無理もないが、ステアリングを素早く操作したり、舵角を与えたままアクセルを踏むとアンダーが強まり、時に前輪がトラクションを失うこと。乗り心地もそれなりにハードで、段差を乗り越えたときにお尻に伝わるゴツゴツとした感触が高級感をそぐ。ボルボ最速のクルマには違いないが、バランスを考えれば200psエンジンと標準サスペンションの「2.4T」のほうが上かもしれない。全体にはスポーティーというより、グランドツーリング向きだ。

なお、ワイドトレッドによって前輪の舵角が大きくとれたため、最小回転半径も小さい。コロナなど小型セダン並の5.3mを実現しており、実際のところ想像以上に小回りが効く。

ここがイイ

固い乗り心地も、高速では当然「しなやかな」というものへ変わる。インパネの質感は高くはないが、インテリアにはそれなりにグッとくるセンスの良さがある。ここはCクラスより上(好みの問題だが)。オプションの革シートの座り心地もいい。なにより膝の裏側のところ(シートの先端部)に付いているカンガルーポケットが携帯電話などを入れておくのに結構便利。

日本にもかつて背が低くてスポーティーなセダン、いわゆる「4ドアハードトップ」なるものがあったが、S60は単に流麗なだけに終わっておらず、力強さも兼ね備えている。何よりちゃんと骨太な窓枠があり、「いかにも丈夫そう」というボルボならではのイメージが健在だ。ちなみに今回、試乗したボディのカラーは派手な金色だったが、S60のスタイルはその色に負けていない。その意味でもボルボのデザイン力は相当なものだ。

ここがダメ

そう安くはない価格。もちろんこの価格がボルボのブランドバリューを高めていることは否定しないが、革シートやサンルーフなどのオプションパッケージが30万円だから合計550万円。なかなかサラリーマンには手が出しづらいし、高級車を買える層だと他のブランドも選択肢に入ってくる。

総合評価

流麗なスタイルは確かにカッコイイし、走りもスポーティだ。Cクラスなどのドイツ車、シーマなどの日本車を敬遠する、業界人系のオジサンには最適な高級車ブランドだろう。乗ってセンス良く、走って楽しく、乗せて喜ばれる、しかも嫌味なところがない希有な「ガイシャ」だ。

ただ機能も、ブランド力も一通り文句なく揃っているが、ドイツ車のような徹底さも、日本車のようなチャレンジもなく、印象はかなり希薄になる。クルマとしてはごくごく当たり前な作りで、ワクワクするような面白味には欠けているのだ。走りを求めるなら、ブランドを求めるなら、選択肢はほかにもあるという点で「ニッチ商品」というスタンスは免れない。それがボルボらしさだと言われれば返す言葉はないが。

さて、S60ばかりでなく、スポーティというキーワードがこのクラスのセダンの生き残り作という昨今の風潮は分からないではないが、やや虚しいものもある。中身はもちろん違っているが、要はかつての日本の4ドアハードトップ路線。格好勝負だ。セダンというカタチには、もっとエモーショナルな提案がないと、単なる懐古趣味に見えてしまう。ボルボは10年以上乗る(乗ることができる)クルマといわれてきたが、クルマの作りの激変が予測される今後10年間、この路線で変わらぬ価値を持ち続けるのは、かなり厳しいだろう。試乗車には装備されていなかったが、あちこちで見にくいと指摘されているカーナビに、ボルボの新しさへの取り組みの中途半端さが見えてしまう。IT系の充実、パッケージングの徹底こそが今後のセダンのあるべき姿だと思うのだが。

 
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