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ボルボ S60 ドライブ・イー新車試乗記(第627回)

Volvo S60 DRIVe

(1.6リッター直4ターボ・6速DCT・375万円)

事故ゼロを目指して・・・・・・
歩行者を検知してフル制動する!

2011年03月26日

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キャラクター&開発コンセプト

歩行者との衝突を回避する「ヒューマンセーフティ」を採用

2010年3月のジュネーブモーターショーでデビュー、日本では2011年3月5日に発売された新型ボルボ「S60」は、同社の「S40」と「S80」の中間に位置するミドルクラスセダン。初代S60は2000年にデビューしたので、今回の2代目は約10年ぶりのフルモデルチェンジになる。

ダイナミックなスタイリングが目を引く新型S60だが、最大の売りは運転支援システム「ヒューマンセーフティ」を新採用したこと。従来の「シティセーフティ」は前走車への追突を防ぐものだったが、これは車両だけでなく、歩行者との衝突も回避・軽減する。システム的には、シティセーフティの赤外線レーザーセンサーに代えて、ミリ波レーダーおよびカメラによる画像認識技術を使い、35km/h以下において前方の障害物や歩行者等を捕捉し、必要とあらばフルブレーキングを行って衝突を回避する。

 

ボルボ S60
(photo:Volvo Car Corporation)

なお、前走車や歩行者等への衝突を回避する点では、スバルの「アイサイト」も同じだ。こちらは二基のCCDカメラ(ステレオカメラ)によって前方を監視するタイプで、作動条件もボルボとは多少異なるが、いずれにしても両システムは現時点で世界で最も進んだ安全装備と言える。

なおアイサイトは2011年3月現在、旧世代のver.1がエクシーガ、完全に停止するまでブレーキを掛けるver.2がレガシィに搭載されており(今後は他モデルに拡大される予定)、一方のヒューマンセーフティは2011年モデルから、V70、XC60、XC70、S80に設定されている。ボルボは2020年までに、新型のボルボ車による死傷者をゼロにするのが目標だ。

1.6直噴ターボ+6速DCTも新採用。ワゴンのV60も登場する予定


ボルボ V60
(photo:Volvo Car Corporation)

環境面では、新開発の1.6リッター直4・直噴ターボエンジンと6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載したグレード「S60 ドライブ・イー(DRIVe)」で対応。10・15モード燃費:12.6km/Lを達成し、ボルボ初のエコカー減税対象車(自動車重量税と取得税が50%減税)となっている。なお、このエンジンは2011年モデルの「V70 ドライブ・イー」にも搭載され、こちらも同じくエコカー減税対象車となっている。

S60の生産を行うのは、ベルギーのゲント工場。販売目標台数はグローバルで年間9万台。欧州(ロシアを含む)、北米、それ以外の地域で、約3分の1ずつという。

また欧州ではすでに、ステーションワゴン版「V60」も発売されている。セダンにも増してデザインはとてもスタイリッシュだ。日本導入は今年の夏ぐらいか。

※外部リンク
■ボルボ・カーズ・ジャパン>プレスリリース>All-New Volvo S60、3月5日販売開始 (2011年1月27日)

過去の新車試乗記
■モーターデイズ>新車試乗記>ボルボ XC60 T6 SE AWD (2009年9月更新)
■モーターデイズ>新車試乗記>ボルボ S60 T-5 (2001年3月更新)

価格帯&グレード展開

1.6ターボは375万円。オプションの「セーフティパッケージ」は25万円

 

こちらはスポーツサスペンションや18インチの“ダイヤモンドカット”アルミホイールを装備する「S60 T6 AWD Rデザイン」

パワートレインは二本立て。「ドライブ・イー」は1.6リッター直4ターボと6速DCTの組み合わせで、FFのみ。上級グレードの「T6 AWD」は、3リッター直6ツインスクロールターボと6速トルコンATを組み合わせたもので、ボルボ車でおなじみのプレチャージ式電子制御AWDとなる。

注目のヒューマンセーフティは、最上級グレードの「T6 AWD Rデザイン」には標準装備されるが、それ以外のグレードでは25万円のオプション「セーフティパッケージ」に含まれる。同パッケージは、ヒューマンセーフティ、全車速追従機能付のACC(アクティブ クルーズ コントロール)、車線逸脱警告機能、斜め後方の車両接近を警告する「BLIS(ブリス=ブラインド スポット インフォメーション システム)」などをセットにしたものだ。

 

「S60 T6 AWD Rデザイン」の内装。専用レザー、T-Tec、テキスタイルのコンビになる

最も安い「ドライブ・イー」の車両価格は375万円だが、そこにヒューマンセーフティを装着すると400万円になり、さらに上級グレードでは標準のレザーパッケージ(25万円)やナビゲーションパッケージ(25万円)を注文すると450万円になる。試乗したのも「ドライブ・イー」のフル装備車。

【1595cc 直4・直噴ターボ(180ps・24.5kgm)】+6速DCT 【FF】
■10・15モード燃費:12.6km/L
■JC08モード燃費:11.4km/L
・「S60 DRIVe」     375万円    ※今回の試乗車

【2953cc 直6・ターボ(304ps・44.9kgm)】+6速AT 【4WD】
■10・15モード燃費:8.9km/L
■JC08モード燃費:8.5km/L
・「S60 T6 AWD SE」     519万円
・「S60 T6 AWD R-DESIGN」  579万円

パッケージング&スタイル

「大胆」だが、繊細。コンパクトに見える

日本市場では「ダイタン(大胆)」を広告キャッチコピーにするくらいで、新型S60のスタイリングは思い切りダイナミック。まずはそのアグレッシブな顔つきに目を奪われるが、ボルボがアピールするのは「ダブルウェーブ」と呼ばれるボディ側面のプレスライン。ホイールアーチ付近で微妙に上げて、車体中央で微妙に下げるという繊細なもので、よくある力強いキャラクターラインとは一味違う。

 

ボディサイズ(カッコ内は先代比)は、全長4630mm(+25)×全幅1845mm(+40)×全高1480mm(+50)。ホイールベースは2775mm(+60)。数字的には先代より大きくなっているが、同時に凝縮感や塊感も強くなっている。フロントオーバーハングは長めだが、それをあまり意識させない。Cd値は0.28とある。

 

特に斜め後ろから見るとコンパクトな印象が強く、最もカッコいい。ルーフとリアウインドウがファストバッククーペのように滑らかに傾斜し、ハイデッキのボディ後端でスパッと切り落とされる。セダンの割に、リアオーバーハングは短く、トランクリッドの前後長は無いに等しい。でもってディフューザー風のバンパープロテクター、2本出しマフラー、それにサイドシルのカバーが、いいアクセントになっている。

なお、日本仕様では、専用のドアミラーステーとドアハンドルによって、全幅を1845mmに抑えたという。現行のメルセデス・Cクラスが1770mm、BMW・3シリーズが1800mm、アウディA4が1825mmだから、何とか少しでも抑えたかった、というところか。実際に乗った感じは、これらのライバル車に比べて特にワイドという感じはしなかったが、小回りが効かないのは気になった。最小回転半径は「ドライブ・イー」で5.5メートル(上級のT6では5.8メートル)だが、体感上はもう少し効かない感じ。1990年代の国産2リッタークラス・FF車の感覚に近い。

インテリア&ラゲッジスペース

デザインはいつものボルボ流。質感も高い


写真は「レザーパッケージ」および「ナビゲーションパッケージ」装着車

素っ気なく言えば、インテリアはいつものボルボ流。例のフローティングセンタースタックもすっかりおなじみだ。ただ、同じように見えても、各部のデザインは目新しい。メタル素材を使うだけでなく、表面仕上げにもこだわっていて、質感がグンと増している。

新型S60には新しい操作系「ボルボ・センサス(Volvo Sensus)」も導入されている。直感的な操作で、あらゆるシステム設定にアクセスできる、というのがうたい文句だが、この手のものはなかなか狙い通りの効果を発揮しないもの。新型S60の場合も各操作性には不満が残った。これについては後で詳しく触れる。

 

ステアリングはチルトとテレスコが可能で、調整範囲も広い。ペダルのオフセットはなく、足もとも広い

試乗車は「レザーパッケージ」(25万円)装着車で、シートは明るいブラウン(ビーチウッド)。10年くらい前のボルボだと、ソフトでルーズなアメ車のようなシートが多かったが、最近のボルボ車は比較的カチッとした座り心地で、ホールド性も良好だ。相変わらずヘッドレストも大型で、全体にガッシリした作りであり、衝突時のむち打ちを防ぐボルボ独自のシート「WHIPS(ウィップス)」になっている。

見た目より広く、キチッと座れるリアシート


「DRIVe」の標準シートはT-Tecという素材とテキスタイルのコンビだが、写真はレザー仕様

そのスタイリングから「後席は狭そうだな」と思えたが、実際のところは大丈夫。ヘッドルームを稼ぐべく、確かに座面は低いが、着座姿勢は自然で、見晴らしも悪くない。つまり低いところに押し込められたような感じはしない。ルーズには座れないが、キチッとした姿勢が割と楽にとれる。

またドア開口部もそこそこあり、乗降時に頭がまともにルーフに当たるということはなく(身長170センチくらいの場合)、足先もシルに引っかかりにくい。

容量そこそこのトランク。小技で勝負

トランク容量は手元の資料では不明だが、オーバーハングが短い割に奥行きはある反面、天井左右の出っ張りは大きい。ただし小技は効いていて、荷室にあるレバーを引いて後席の背もたれを6:4分割で倒せるほか、ボルボお得意の「グロサリーバッグ ホルダー」、つまり床から垂直に立ち上がり、買い物袋などを固定できるボードも備えている。

 

床下にはちょこんとコンチネンタル製のパンク修理キットを搭載

基本性能&ドライブフィール

「ドライブ・イー」はちょっと過激

試乗したのは1.6リッター直噴ターボと6速DCTを搭載する「S60 ドライブ・イー」(FF)。ボルボでは初搭載のパワートレインだが、基本設計はフォードのようだ。最高出力は180psとMINIのクーパーS並みにパワフルで、最大トルクの24.5kgmは1600回転から5000回転までのワイドレンジで発揮する。なお「ドライブ・e」という名だが、別にハイブリッドというわけではない。ブレーキ回生でバッテリーにチャージする機能は付いているようだ。

直噴ターボとはいえ、排気量は1.6リッターしかないし、車重は1.5トン(1540kg)もあるので、パワフルな走りは期待できないかも・・・・・・と思って乗ったら、ぜんぜん違った。DCTゆえ駆動力の伝わり方はダイレクトだし、パワーもターボらしくグワッと盛り上がる。フル加速で前輪で路面を掻きながらダッシュする様は、これまでのボルボ車と大違い。正直、パワー特性はホットハッチ的で、「ボルボのセダン」には少々ピーキー過ぎる気も。もう少し過給圧を落とすか、やっぱり上級グレードの3.0リッター直6ターボがいいかも、と思わせる。

 

もちろん、丁寧なアクセル操作を心がけ、さらにセンターコンソールの「DRIVe」ボタンを押せば、低い回転域を維持し、エコモードで大人しく走ってくれる。ボディの剛性感は高く、サスペンションの動きは良いので、乗り心地はとてもいい。エンジンを低回転に留めれば、静粛性も高い。100km/h巡航時のエンジン回転数はおよそ2100回転で、そのあたりではごく平穏。

ハンドリングも一昔前のボルボとは段違いに反応がいい。先代S60よりステアリングギア比は10%クイックになり、ステアリング機構やフロントサスペンション取付部の剛性は50%アップとか、2倍とかいった数字が資料に踊る。おかげで操舵感は非常にダイレクト。試乗した「ドライブ・イー」はFFだったので、その意味でもちょっとホットハッチ的だったが、上級の直6モデルなら電子制御多板クラッチ式の4WDになるので、(XC60の例から言っても)もっと落ち着きが増すと思う。

【ヒューマンセーフティ】 警告音と光にドキッとする


左がミリ波レーダー、右は車両前方左右を180度まで映すフロントビューカメラ

従来のシティセーフティが前走車(のリフレクター)を検知すべく、赤外線レーザーセンサーしか装備していないのに対して、「ヒューマンセーフティ」では、より高性能なミリ波レーダーをフロントグリル部に搭載。合わせて物体の種別を特定すべく、デジタルカメラをフロントウインドウ部に設置し、画像処理によって身長80cm以上の歩行者を検知する。これによって「人」であると特定すれば、ドライバーに警告を行い、さらに自動でフルブレーキングまで行うわけだ。最大減速Gは、シティセーフティの0.6~0.8Gに対して、約1.0Gに達する。

作動領域はシティセーフティの場合、30km/h以下で、衝突が回避可能なのは相対速度差15km/hまでとしていたが、ヒューマンセーフティでは35km/h以下で作動。また35km/h以上でも、ミリ波レーダーによってかなり手前での検知が可能なので、衝突までに可能な限り減速を行うという。

 

歩行者を検知するシステムはミリ波レーダー、カメラ、制御ユニットで構成される
(photo:Volvo Car Corporation)

で、実際のところどうだったかというと、よそ見をせずに安全運転をすれば、当然ながら普通のクルマと同じ。ただ、前走車との車間距離が詰まった場合、あるいは前方に別のクルマが割り込んだ場合には、フロントウインドウ下部に、ボンヤリと赤い警告バーがヘッドアップディスプレイで投影される。車間距離を空けなさい、ということだ。

 

アラームが作動した時のイメージ。実際にはもっと真っ赤に光る
(photo:Volvo Car Corporation)

驚いたのは、場合によっては、その程度の警告に留まらず、いきなりダッシュボード上面が真っ赤にストロボ発光し、大音量でアラームが鳴り響くこと。一般的な「ピピピピ」という生やさしい電子音ではないため、かなりドキッとする。どうもブレーキペダルに踏力を全く与えない状態で前走車に接近すると、鳴るようだ。一度これを体験すると、鳴らないような運転を心がけるため、確かに安全運転にはなる。

この状態ではすでにブレーキにプレチャージが掛けられる。それでもドライバーが制動を行わず、衝突の危険性が高まった場合は、フル制動が掛かる、という仕組みだ。

【全車速追従機能付ACC】3秒以内なら自動で再発進


ACCのセットスイッチ。「+」「-」は速度調整、矢印は車間調整

ヒューマンセーフティ装備車には、ACCも搭載されている。これは全車速での追従機能を備えたもので、ACC設定時には、前走車が停止すれば自車も停止し、前走車が走り出せば自車も自動的に走り出す。

スバルのアイサイト搭載車では、この時の再発進にアクセルを軽く踏む、などのアクションが必要だったが、S60では「停止して3秒以内なら」という条件で自動発進する。実際に試したところ、確かに再発進して感心した。ただし普通にブレーキを踏めば、ACCは切れてしまうので、実用面で大きな意味はない。あくまで自動運転への第一歩ということだろう。アイサイトのように前走車が動き出したことを知らせる「前車発進モニター」は付いていない。

 

またクルーズコントロールの設定速度は、日本車だと上限100km/h(実際には115km/h程度)だが、輸入車のS60は200km/hまで設定可能。ただし調子にのって、法定速度を超える速度に設定すると、前走車がいなくなった途端、設定速度に向かって一気に加速してゆく。その意味でも、この1.6ターボは加速が唐突だ。

【BLIS】ボルボではおなじみの死角補助機能


「BLIS」のランプ。斜め後方にバイクサイズ以上の車両が接近すると、オレンジに光る

「BLIS(ブリス=ブラインド スポット インフォメーション システム)」の登場は早く、2006年に先代のS60R/V70Rに搭載されたのが世界初だ。これは斜め後方に、バイク以上の大きさの車両が侵入してきた場合、左右ドアミラーの外側にあるCCDカメラがそれを検知。同じく左右ドアミラーの付け根(車内側)にある警告ランプがオレンジ色に光り、ドライバーに注意を促す、というもの。

 

「BLIS」のCCDカメラ

当然ながら、多くのドライバーは普段からBLISに頼らず、安全運転をしているわけで、今回も「BLISが付いてて助かった」と思う機会は特になかった。ただ、死角に入った車両をうっかり見落とすリスクが減るという点では、ベテランドライバーを含めて転ばぬ先の杖になり得る。

試乗燃費は8.1~10.8km/L。10・15モード燃費は12.6km/L

今回は計175kmを試乗。試乗燃費は、いつもの一般道・高速道路をまじえた区間(約90km)が8.1km/L、郊外の一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約60km)が10.8km/Lだった。燃料は当然ながらハイオクで、タンク容量は67リッター。10・15モード燃費(ドライブ・イー)は12.6km/Lだ。

ここがイイ

ヒューマンセーフティの搭載。トレンドを押さえたクルマ作り

ミリ波レーダーによって、より遠方からの検知が可能になり、歩行者に対しては画像認識で対応することによって、かなり「ぶつからないクルマ」になってきた。スバル共々、事故ゼロの実現に向かって着実に進んでいる。

直噴ターボ、6速DCT、スポーティなハンドリング、斬新なスタイリングなどなど、最新の業界トレンドを押さえていること。この点では多くの日本車より進んでいる。乗り心地もいい。

スタイリング。古くからのボルボファンから見れば「ボルボらしくない」だろうが、悪くないと思う。

ここがダメ

各種スイッチ類の操作性。1.6ターボは少し過敏

かつてボルボのスイッチ類は、「手袋をしたままでも操作できる」「分かりやすい絵文字で子供でも分かる」と絶賛されたものが、S60のそれは見た目を優先したせいか、形状や大きさの似たスイッチが並び、絵文字表示も小さい。センタースタック右上には、オーディオやナビの大部分を一元操作できるコントローラーもあるが、これも慣れを要した。

「PCC」と呼ばれる高機能キーは全車オプションだが、ブロックキー本体が微妙に小さく、扱いにくい。またステアリング左側のスロットに差し込むのもやりにくかった。出来ればPCCは標準装備がいい。

 

ナビゲーションパッケージ装着車には、ナビ・オーディオ操作用のリモコンが付いてくる。タッチ式のロータリーダイアルは目新しいが、これも使いこなすにはかなりの慣れが要る

「RTI」と呼ばれる純正HDDナビは、フルセグ地デジチューナー付だが、ワンセグでもフルセグでも感度が今ひとつで、都市部でも途切れることが多かった。

本文でも触れたが、「ドライブ・イー」の1.6ターボは、もう少し出力特性を穏やかにした方が車両キャラクターに合うと思う。それから思ったより小回りが効かない。慣れ次第かもしれないが、もう少しハンドルが切れて欲しい、と思うことがあった。また電動パーキングブレーキはレガシィ同様、レバーを押してオン、引いてオフだが、これもちょっと分かりにくかった。

総合評価

レザーとナビなしで400万円

クルマがヒットする要因はなんなのだろう。総合力?、あるいは一点豪華主義?。思うにスタイリングがカッコイイとか、ハイブリッドで燃費がいいとか、何より安いとか、何かひとつだけ強い特徴のあることが、ヒットの要因になっているように思える。クルマは多くの消費者にとって、トータルとしてはとても分かりにくい商品になっているので、特徴を分かりやすくアピールすることが、ヒットするためには重要なポイントと言える。

そこでS60だが、このクルマはまずカッコイイ。セダンらしからぬ流麗なスタイルが光っている。加えて、SUVのようなリアのバンパープロテクターも、セダンではちょっと他にお目にかからない手法で上手い。欧州車では重要なフロントまわりのブランドアイデンディティも確立されており、ライバルとなるアウディA4はもちろん、A5までも、これ一台でやっつけちゃおう、という意気込みが感じられる。サイズも大きすぎず、スタイリングは90点の出来といえるだろう。

 

インテリアの質感は高い。特に茶色い革シートの試乗車はオシャレで、十分満足できる。右ハンドル化による足元の狭さという弊害もない。ところが前述のようにナビ関係はちょっと厳しい。ナビに関してはナビパッケージを選択しない、という手段もあるので、内装関係は80点というところか。

走りも軽快だ。いや相当にスポーティだ。一見普通のセダンながら、ワインディングで存分に楽しめる。小排気量ながらパワフルさが小気味いいし、6速DCTも先取りしている。反面、このパワー感のためにちょっとターボの効きが唐突で、穏やかに走りたい時には少しばかりうっとおしく感じられる。ボルボのセダンというイメージからすると、ちょっとやり過ぎ感もあって、やはり80点というところ。

 

そして安全性だが、衝突安全性の高さは言うまでもないとして、予防安全装備であるヒューマンセーフティは現状、世界最高峰のものだろう。他の様々な電子デバイスも良い。スバルのアイサイトを除けば、ここまでのものは他にないだけに100点をつけたいところだが、使いこなすには学習とか、慣れは必要で、ちょっと乗った限りでは警告されてばかりでワケがわからない。この点をマイナスして95点。

燃費はまあ、こんなモノでしょ、と我々は思うのだが、燃費ヒステリーな世の中としては物足りないかもしれない。ターボの効かせ方を調整すれば、もうちょっと伸びそうな気がするので、やはりパワー感とトレードオフのようだ。で70点。そして何より価格が手頃だ。レザーとナビのパッケージを注文しなければ400万円。これは手を出したくなる。

一点豪華主義のセールストーク

つまりこのクルマ、総合的にはすごく高得点になる。スタイリッシュなデザイン、手頃なサイズ、よく走って、安全ハイテク満載。ボルボというブランド力もあるから、プレミアム感も十分。かなりいいじゃない、と思う。

だけど全てを盛り込みすぎたために、それぞれが主張しあって、全体としてこれだ、という分かりやすさを打ち出せていないのが残念なところ。これだけ技術をテンコ盛りにしておいてバランスを取るということは、なかなかむずかしいものだ。例えば「安全」を全面に打ち出すなら、こんなに走らなくていいと思う。穏やかな走りと高い安全性、そして優雅なスタイルとなれば分かりやすい。走りが穏やかなら、燃費も向上させられるだろう。

となると、上級セダンとしてはT6 AWDの方がゆったり走れるという点ではバランスがいいかもしれない。直列6気筒エンジンで排気量が倍近くあるのだから、当たり前といえば当たり前だ。ただ、燃費だって当然落ちるし、価格もグンとアップするから、そのあたりを考えると簡単には言い切れない・・・・・・。まもなく登場するワゴンのV60は、スタイリングからしてかなりスポーツ路線のようだから、今回のようなパワーユニットはそちらにこそふさわしいということになるのかも。

 

ヒューマンセーフティが今年のモデルからV70、XC60、XC70、S80に設定され、ボルボはあと9年で新型車による死傷者をゼロにするという、偉大な目標を掲げる。ライバルとなるスバルの最新型アイサイトがレガシィにしか載っていない現在、ボルボはヒューマンセーフティを全面に押し出すことこそ、何よりの一点豪華主義セールストークとなるはず。カッコイイS60に載ったヒューマンセーフティ、それだけで十分売れると思います。

試乗車スペック
ボルボ S60 ドライブ・イー
(1.6リッター直4ターボ・6速DCT・375万円)

●初年度登録:2011年2月●形式:DBA-FB4164T ●全長4630mm×全幅1845mm×全高1480mm ●ホイールベース:2775mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1540kg(930+610) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:B4164T ● 1595cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:79.0×81.4mm ●圧縮比:10.0 ●180ps(132kW)/5700rpm、24.5kgm (240Nm)/1600-5000rpm ●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/67L ●10・15モード燃費:12.6km/L ●JC08モード燃費:11.4km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット(+コイル)/後 マルチリンク(+コイル) ●タイヤ:215/50R17( Michelin Primacy HP ) ※標準サイズは215/55R16

●試乗車価格:450万円 (含むオプション:レザーパッケージ<本革シート、助手席8ウェイパワーシート、シマーグラファイトアルミニウムパネル、17×7.0J アルミホイール+215/50R17タイヤ> 25万円、セーフティパッケージ<全車速追従機能付ACC、歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム、車間警告機能、ドライバーアラートコントロール、レーン・ディパーチャー・ウォーニング、BLIS>、ナビゲーションパッケー<HDDナビゲーションシステム、12セグ地上デジタルTV、アクティブベンディング・デュアルキセノンヘッドライト、ヘッドライトウォッシャー> ●ボディカラー:- ●試乗距離:約175km ●試乗日:2011年3月 ●車両協力:ボルボ・カーズ千種ボルボ・カーズ・ジャパン

 
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