キャラクター&開発コンセプト
ボルボの最新テクノロジーを結集させたフラッグシップモデル
S80は従来のS90の後継となるボルボの新しいフラッグシップモデルだ。最近ではワゴンのイメージが定着してしまったボルボだが、4ドアセダンにもニューモデルを投入し、イメージの脱却を図ろうとしている。何よりも21世紀に向け生産50万台規模のメーカーを目指すボルボにとって、S80はメルセデス・ベンツEクラス、BMW・5シリーズといったライバルひしめくプレミアム・セグメントの重要な戦略モデルとされている。
価格帯&グレード展開
主力の「2.9」は580万円、2.8ターボの「T-6」は650万円
日本仕様のS80は2.9リッターNAの「2.9」(580万円)と2.8リッターツインターボ「T-6」(650万円)の2種類で、両車とも4AT。「T-6」には本革シート、CD/MDオーディオ+13スピーカーが標準となる。
今回試乗した「2.9」には、本革シートや10連奏CDチェンジャーなどをセットにしたエレガント・パッケージと「RTI (ロードトラフィックインフォメーションシステム)」なるボルボ独自開発のナビシステム(35万円)がオプション装備されていた。
パッケージング&スタイル
量産世界初の「直6横置きFF」
生産の合理化を図るためにボルボはプラットフォームを「大」と「小」の2種類に集約し、それを伸ばしたり縮めたりすることで、すべてのレンジ・モデルを賄なう戦略を展開する予定だ。S80はその大きい方のプラットフォームを使った最初のモデルだ。FRであるS90の基本設計は760のものだから、実に18年振りのオールニューモデルとなる。
メカニズム面で最大の特徴は、直列6気筒エンジンをフロントに「横置き」するFF車ということ。これは現在の市販車では、他に類を見ない珍しいレイアウトだ。全長の長い直6をわざわざ横置きにしたのは、
1、エンジンルームの前後にクラッシャブルゾーンをより大きく確保できる。
2、吸排気系の高効率化。後方排気となるため触媒までの距離が短くなり、ローエミッション化に有利。
と、メリットとしては直5・横置き850と同じものだ。
「ボルボは四角い」という既存の概念を覆す
ボディサイズは全長4820mm×全幅1830mm×全高1450mmと、このクラスのサルーンとしては常識的な数値だ。スタイルは「ボルボは四角い」という既存の概念を覆すもの。どちらかといえば曲線を多用したデザインだが、全体に硬質で四角いイメージは残っている。
押し出しのあるフロントマスクは、大きくえぐられた彫りの深いもので、マスカラのようなライト下の黒い樹脂が印象的。V型に広がるボンネット、そこからつながる張り出しの効いたショルダーライン(ドアは伝統通り、ぶ厚い)のデザインはかなり個性的。スクエアなイメージからの脱却の意図は伝わってくるが、これまでのボルボユーザーが離れてしまうのでは、とちょっと心配してしまう。テールランプも複雑な造形で、これが皆にカッコイイと映るのかどうかは、ちょっと判断しかねるが、中庸でないのは確か。Eクラスと並んでも十分個性を主張できる点は高く評価できる。
スカンジナビアン・デザインを一歩踏み出したインテリア
室内は驚くほど広いわけではないが、北欧独特のテイストはフラッグシップモデルに相応しい、お洒落でリッチな雰囲気を生んでいる。ラウンド形状メーターナセルにエッジをつけるなど、ちょっとしたスパイスを効かせて個性を出しているのが上手い。
ただ、スイッチは数が多い上に、サイズも小さく、使い勝手は今一つ。また、イグニッションをONにするとダッシュ中央部から5.8インチモニターがソロソロと上昇してくるあたりは、未来的な演出効果大だが、いかんせん表示画面が小さく、ドライバーから離れているために視認性はよくないのが残念。
試乗車にはオプションとなる本革シート(T-6は標準装備)が奢られていた。サイズは大きく、座面の奥行きが深いために、小柄な人だと膝の裏に面圧を感じるかもしれない。クッションは柔らかいが、サポート性は悪くはなかった。
基本性能&ドライブフィール
2.9でも十分。大柄なボディを意識させない軽快さ
日本に導入されるのは、「2.9」の2.9リッター直6・DOHC(204ps/5400rpm、28.6kg-m/4200rpm)と「T-6」の2.8リッター直6・DOHCツインターボ(272ps/6000rpm、 36.8kg-m/2000~5000rpm)の2種類。
試乗したのは2.9リッターモデル。大柄なボディの割に、走りは意外に軽快だ。アクセルワークに対して素直に立ち上がり、ターボなしでも豊かなトルク感がある。実用回転域の満足度は高い。しかも高回転での伸びが良く、回してもけっこう楽しい。高速での中間加速は得意としないが、それでも120~130km/hクルージングでは十分に余裕がある。
印象に残ったのはアクセルやステアリングなど操作系のフィーリング。繊細で手応えのある優しいフィーリングは、スポーティーかつエレガンスとでもいうか、S80の個性といえるものだ。
高速で目立つ風切り音。ブレーキの効き方が独特
静粛性はアイドリングから日常速度域までなら高いが、100km/hを超すあたりから風切り音がちょっと気になり始める。FF車のメリットを生かした高速安定性が持ち味だけに、ちょっと残念。
予想に反して、ワインディングでの粘りには驚いた。基本的にはアンダーステア傾向で、フロントの重さを感じさせるが、ちょっとオーバーアクションぎみでも挙動を乱さずドライバーの思い通りにトレースしてくれる。215/55R16サイズという立派なサイズタイヤのおかげもあるだろう。今回の試乗では、標準装備されているSTC(スタビリティ&トラクションコントロール)のお世話になることはなかった。
ブレーキは普通に踏んでいるとだんだん強く効いてくるという独自のフィーリング。好みの問題だが、ちょっと違和感も残った。
最後になったが、安全装備はデュアル&サイドエアバッグをはじめ、第3の側面衝撃吸収システムといわれるインフレータブル・カーテン(ピラーからルーフレールにかけて内蔵される頭部保護用のエアバッグ)、後部衝撃吸収リクライニング機構を備えたWHIPS(むち打ち症防止システム)フロントシート、STC、DSTC(ダイナミック・スタビリティ&トラクションコントロール)という2つのトラクションコントロール、EBDなどを全車に標準装備するなど最高レベルだ。
ここがイイ
好みはあると思うが、インテリアのセンスはボルボの価値をワンランク引き上げていると思う。スカンジナビアン・デザインがボルボのプレミアムイメージの要になっている。
ここがダメ
ウッドと革のコンビステアリングは滑り係数が違ってどうも扱いにくいが、このクルマの場合はさらに表がウッドで、裏が革というステアリングだった。見た目は確かに豪華な感じだが、ますます扱いにくい。このステアリングは日本専用とも聞いている。普通の革ステアリング、あるいはフルウッドがいいと思うのだが。
クルマ2台がかろうじて通れるような細い道では、少々ボディの大きさが気になった。最小回転半径も5.8m(このクラスFR車の平均は5.5mほど)と、取り回し性は今一つ。
総合評価
直6しかないとはいえ、十分高級車然とした仕上がりで、満足感は高い。ボルボはこのシリーズにはワゴンを作らないと宣言しているようだが、販売的にはやはりワゴンが欲しいところ。ライバルはやはりEクラスとなるが、あちらにはワゴンがあるし、このサイズの大型ワゴンに対するニーズはけして小さくはないはず。ボルボらしくないというデザインも、セダンだからよりそう感じると思う。ワゴンにすると今までのボルボにかなり近づきそうだ。ただ、無い物ねだりをしていてもしょうがないわけで、現行でもメルセデス嫌いの有力な選択枝にはなるだろう。
公式サイトはこちら http://www.volvocars.co.jp/









