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ボルボ S80 V8 AWD新車試乗記(第451回)

Volvo S80 V8 AWD

(4.4L・V8・6AT・840万円)

8年ぶりにモデルチェンジした
ボルボのフラッグシップセダン。
その4.4リッターV8モデル、
"パワード by ヤマハ"に試乗した!

2007年02月17日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目に進化したフラッグシップセダン

8年ぶりの全面変更で2代目となったS80は、XC90と並ぶボルボのフラッグシップ。ボルボの新しい開発キーワード「スカンジナビアン・ラグジュアリー」をテーマとした内外装デザイン、新しい3.2リッター直列6気筒、もしくはXC90に先行採用されたヤマハ製4.4リッターV型8気筒を搭載し、アイシンAW製の6速ATと組み合わせる。日本では2006年11月に発売された。

衝突安全性はもちろん、アクティブ・セーフティ技術も充実している。ミリ波レーダーによる「ACC」(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や追突警告機能、さらに死角への他車の進入をドライバーに警告する死角情報提供システム「BLIS」 ( ブラインド・スポット・インフォメーション・システム )をいち早く実用化。販売目標は世界市場で年間5万台だ。

価格帯&グレード展開

575万円からスタート。V8は840万円から。

日本仕様のエンジンは直6(238ps)とV8(315ps)の2種類のみで、いずれも自然吸気ユニット。S60とは一線を画し、直5は用意されない(海外には直5ターボや直5ターボディーゼルがある)。全車6ATで、ラインナップは以下の通り。

S80  3.2直6(238ps) 575万円
S80 3.2 640万円
S80 3.2 AWD 680万円
S80 V8 AWD ★ 4.4・V8(315ps) 840万円
S80 V8 AWD TE 939万円

★今回の試乗車

上質な内装や後席DVDシステムを備えた「V8 AWD TE」は受注生産となる。

パッケージング&スタイル

外寸そのまま、スポーティに変身

ボディサイズ(先代比)は全長4850mm(同)×全幅1860mm(+25)×全高1495mm(+45)。背は高くなったが、大型化は最小限だ。ホイールベース(2835mm)が45mm伸びた分、オーバーハングは削られたわけだが、おかげでスタイルは抜群に引き締まった。ぱっと見、一つ下のS60(4575mm×1815mm×1430mm)のようなスポーツセダンルックだ。品質感も抜群に上がっている。ボルボの特徴だったヘッドライトのワイパーは、ほとんどの現行ラインナップ車から省かれている。

 

先代のモチーフを踏襲したのに印象がこれだけ違うのは、プロポーションと細部のデザイン処理が違うからだ。フォードの高級車部門(PAG)の中で、メルセデス、BMW、アウディ、レクサスに対抗できる正統派高級セダンは、ジャガーかボルボしかない(リンカーンはあまりにドメスティックだ)。そう考えるとフォードがS80に期待する役割が見えてくる。

スカンジナビアン・デザインと高音質オーディオ

現行S40/V50、新型C70、次期V70と同じ「フリーフローティング・センタースタック」、すなわち裏側が空洞の、板状センターコンソールを採用。上品なデザインは巷で人気のスカンジナビアン・デザインを強く意識したもの。かつてボルボの持ち味だった機能性重視の無骨さは薄れてしまったが、それも時代の要請か。試乗車はベージュ基調にウォールナット・ウッドパネル仕様だが、黒基調やアルミパネルも選べる。

オーディオは今やボルボに欠かせないデンマークのDYNAUDIO製スピーカーとアルパイン社製650Wデジタルアンプで構成される、ドルビーサラウンド・プロロジックIIシステム(主力グレード)。前席には夏用のベンチレーテッド機能と冬用のシートヒーターがやはり主力グレードに標準で備わる。

インテリジェントキーに防犯システムを搭載

ブロック型のインテリジェントキーには、「PCC」(パーソナル・カー・コミュニケ-ター)なるシステムが組み込まれている。クルマから離れても100m以内なら車両状況が分かるというもので、「 i 」(インフォメーション)ボタンを押して緑のランプが点けば間違いなくロックされた状態、黄色ならアンロック状態を示す。赤なら留守中にアラームが作動したことを示し、赤の点滅なら車内の心拍センサーが「現在、車内に誰かが侵入している」ことを検知している。▲印の「パニックボタン」を押せば、アラームが起動してクラクションが鳴り始める。

車内空気清浄システム「CZIP」

S80だけの装備ではないが、車内空気清浄システム「CZIP (クリーン・ゾーン・インテリア・パッケージ)」(全車に4万円のオプション)もボルボらしい装備だ。スウェーデン喘息アレルギー協会の認定基準をクリアしたというもので、室温が10度以上の時にドアロックオフと同時に換気を始める機能、清掃しやすい天然ゴム製フロアマット、アレルギーのリスクが少ないアルミパネル等を備える。要するに、換気(VOC<=揮発性有機化合物>の低減など)、ハウスダストやカビの抑制といった、アレルギー対策の基本に則ったものだ。活性炭フィルターや、有害ガスを検知して外気導入口の開閉を自動で行う「アクティブ・キャビンフィルター」も全車に標準装備する。言うまでもなくアレルギーフリーを保証するものではないが、第3者機関の認定を得ている点がいかにも北欧らしい。そういえば、後席には灰皿が見あたらなかった。

セダンでもワゴン並みの使い勝手

後席はさすがに十分な広さ。基本的には2人掛け+中央に子供1人用で、試乗車には無かったが、アームレストには例の「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」(3万8000円)を注文装備できる。これは体重15~36kgの子どもにシートベルトをフィットさせるための一種のブースターだ。

 

容量480Lのトランクもちょっとした技巧派だ。フロアボードを半分起こして荷室を前後に仕切る「グロサリーバッグ・ホルダー」はゴムベルトも付いていて、買い物袋が固定できる。6:4分割の完全トランクスルーも、このクラスでは珍しい。背もたれのロックをトランク側のレバーで解除できるなど、日本のRV車みたいに気が利いている。こうした高級セダンでもワゴン並みの使いやすさを狙っているのが、よく分かる部分だ。

基本性能&ドライブフィール

Powered by ヤマハ

試乗したのは「V8 AWD」。走りに関しては最上級グレードの「V8 AWD TE」と同じモデルだ。エンジンはヤマハ製4.4リッターV8(315ps、44.9kg-m)、変速機はアイシンAW製の6ATと、パワートレインはそろって日本製だ。

やはり一番の話題はボルボセダンで初のV8エンジンだろう。実際に乗れば噂通りのスポーティさで、このエンジンの印象が強い。ステアリング左の始動ボタンを押すと「クククク(スターターの音)、ファン!」と吹け上がり、アイドリング時も「ウーー」と不敵に唸る様子は、大排気量スポーツカーみたいだ。

ちなみにこのエンジン、前述のようにヤマハ発動機製だが、基本設計はボルボ(もしくはボルボとヤマハの共同開発)と言われている。ヤマハと言えばモーターサイクルの世界で時にホンダのお株を奪うエンジン屋。4輪事業では、古くはトヨタ2000GT(1967年)の直6から、70年代の「2TG」、80年代の「4AG」まで、トヨタに一連のDOHCエンジンを供給。レース分野ではトヨタ7(1969年)に始まり、1989年からの一時期はF1用にV8、V10、V12を開発した。またフォードにはトーラスの高性能グレード「トーラス SHO」(SHO:Super High Output)用に、3リッターV6・DOHC(223ps)と3.4リッターV8(238ps)を供給した過去がある。ヤマハとフォードとの関係は、実はけっこう深い。

ヤマハ発動機>製品の歴史http://www.yamaha-motor.co.jp/profile/cp/history/automotive/index.html#01

「ボルボ、どうなっちゃったの?」という刺激的加速

バンク角60度のV8は、ボア・ストローク:94.0×79.5mmのショートストローク型。俊敏な吹け上がりは「ボルボ、どうなっちゃったの?」(まあヤマハ製なんだが)というくらい鋭い。チューンドV8のように、中回転域でバオーンと荒々しくも、粒の揃ったサウンドを放った後、6000回転までスカーンと回りきる。1速のギアリングが低めなので、発進加速は刺激的だ。なおかつ低速トルクもちゃんとあり、ゆったりも走れる。反面、高回転では途端に伸び鈍るし、車重が1880kgあるのでむやみに速くはないが、ヤマハ製をひしひしと感じさせる高性能ユニットだ。

スポーティな要素も取り入れた運転感覚

駆動系はボルボ他車と同じハルデックス・カップリングを使った電子制御AWD。発進時にあらかじめ80Nm(8.2kg-m)のトルクを後輪に配分しておく「プレチャージ式」も同様だ。通常時は前95%、後5%でトルクを分配し、状況に応じて50%:50%まで変化する。ピレリの最高峰タイヤ「P Zero」のおかげもあって、トラクション不足を感じることは皆無だった。運転感覚はよく出来たFR車のようで、とても洗練されている。

操縦性はBMWやアウディのような超シャープなものではないものの、ステアリング操作に適度に応えながら、スムーズに走ってくれる感じだ。足回りには「オーリンズ」、そして「モンロー」と共同開発したという「Four-C」電子制御式サスペンションを採用。「Comfort」(快適性重視)、「Sport」(スポーティ)、「Advanced」(スポーツドライビング専用)とモードが選べるが、違いはいま一つ分かりにくい。特に「Comfort」は、もっとソフトに振ってもいいと思えるが、もちろん現状でも乗り心地は十分にいい。

世界初の死角情報システム「BLIS」

S80はベースモデルを除く全車に、ミリ波レーダーの搭載によるレーダ-クルーズ(「ACC : アダプティブ・クルーズ・コントロール」)、および追突警告機能(ACC作動時のみ)を採用している。ドライバーが回避操作を始めない場合、直ちにオーディオの音を消して警告音ならびにヘッドアップディスプレイでの赤色警告を出すらしい・・・、が、今回は設定距離を最短にしておいたせいか、自動ブレーキが働くことはあっても警告は一度も出なかった。操作は通常のクルーズコントロールとほぼ同じで、トヨタのそれにもよく似ている。

今回初めて試せたのが、ボルボが開発した世界初の死角情報提供システム「BLIS」 ( Blind Spot Information System )だ。S60R/V70Rで一足早く導入され、S80のV8モデルに標準装備されたこのBLISは、左右斜め後方の死角内への他車(オートバイ等を含む)の進入を、ドアミラー下部のCCDカメラで捉え、同じくドアミラー付け根にある警告ランプでドライバーに知らせるというもの。技術的には何ということもないものだが、実用化はボルボが初めてだ。

習慣的にミラーで確認しながら走るベテランドライバーには無用と思われそうだが、実際に使ってみると片側3車線以上の広い道路では、自分より右車線はもちろん、左車線から追い抜きをかける後続車の発見が容易で、なるほどと思わされる。特にオートバイのような見逃しがちな対象に反応するのは電子の目の優れる点だ。

最高速度は250km/h

メーカーの発表値は、V8(315ps)の0-100km/h加速は6.5秒、最高速度は250km/h。スポーツセダンとしては文句なしの性能だ。ちなみに3.2直6(238ps)はそれぞれ、7.9秒と240km/h、海外仕様の2.5直5ターボ(200ps)は8.0秒と230km/h(いずれも6AT仕様)とある。

燃費については、V8モデルの10・15モードが6.9km/L。参考までに今回の実燃費(車載燃費計による)は一般道6km/L前後、高速では7~8km/L前後、撮影等を含むトータルで5.5km/Lだった。

ここがイイ

あまり目立たない高級車が欲しい、という人に喜ばれるおとなしいスタイリング。先代よりコンパクトに見え、ますますそうした需要にはマッチする。ボディ正面は、人の笑顔に似た「スマイルフェイス」というなごみ系。一方で、室内が広いのもいい。

往年の「ランチア・テーマ8・32(パワード by フェラーリ)」ならぬ、「ボルボS80 4.4(パワード by ヤマハ)」。妙にスポーティなV8は、車格とボルボのイメージにはそぐわないが、そのミスマッチ感が面白い。また、衝突安全性に優れるという横置きにこだわっているのも独自でよい。

ナビをのぞいて、ほぼ満艦飾のハイテク類は自動車メーカーの旗艦にふさわしいもの。またリモコンで窓が全開にできたり、フロントシートに冷気のベンチレーションファンがあるのは、夏に重宝する重要な装備だ。そのほか、本文中に書いた様々な便利装備による高い実用性がいい。

ここがダメ

これでもかとハイテク装備がありながら、オートライト機能だけがないこと。北欧では常時点灯だと思うのでそのせいだろうか。

試乗車にはディーラーオプションでパナソニックの地デジ対応ナビゲーションシステムが、先代同様にダッシュボード奥に起立するモニターとともに取り付けられていた。位置的に見にくく、また前方視界も少し遮るし、タッチパネルには手が届かないため、リモコン操作しかできなかった。つまりこれだけのハイテクカーながら、ナビに関してあらかじめ考えられていないのは最大の問題だと思う。市販品を後付けしようにもフローティング・センタースタックゆえ、本当に対応のしようがない。

「最高級セダン」にしては、エンジン透過音、ロードノイズなど全体に何となく騒々しい。

総合評価

いわゆるハイテクてんこ盛りで仕上がったボルボのフラッグシップは、立ち位置が非常に微妙だ。世界市場で年間5万台、そのうち7割が新規顧客というのがボルボ本社のもくろみだが、そのおとなしいスタイリングは、やたら強そうなフェイスを押し出してくるライバルたちに比べ、いかにも奥ゆかしい。特に少しコンパクトになったかに見えるスタイリングは、ライバルと比べてメーカー最高級車としての強い存在感が感じられない。しかしその奥ゆかしさこそ、最近の派手さに嫌気するユーザーに受け入れるはず、というのがボルボの主張だろう。とはいえ、たとえば試乗車は840万円。メルセデスならCLSだって買えるこの価格は、かなり限られたユーザーの選択肢となるのが現実だと思う。新規顧客となると、さらに難しいのではないか。

また実際に走ってみると、ややスポーティな方向へ振られた性格は、このクラスのライバル同様とはいえ、最高級ボルボを求める、特に日本のユーザーの需要にはややミスマッチに思える。確かに走って楽しいタイプのクルマだが、高速巡航時の静粛性(120km/hを超えると風切り音が気になる)や直進性(轍が気になる)にはフラッグシップらしい重厚感が不足気味に感じた。また、角を丸く処理した四角がテーマというインテリアはデザイン性こそ素晴らしいが、質感の面ではやはりフラッグシップとしてもう一頑張り欲しい。FFベースらしい室内の広さや、ワゴンの機能をフィードバックしたような荷室の作りなど、機能的には実によくできているだけに、バランスとして惜しいと思うのだ。

それに対して様々なハイテクデバイスは、これでもかというくらい満載。レーダークルーズコントロールは当然ながら(国産車が上限とする)115km/h以上でも設定できるため、実用になりうる装備で、特にステアリング上のスイッチがたいへん使いやすいのは印象に残るところ。世界初のBLISも試乗車では標準だし、まああれば便利な装備だと思った。スマートキーとボタンスターターは今の高級車の主流で、始動スイッチが左にあるあたりはトヨタ流。これまた世界初という防犯用の車内心拍音監視センサーはトヨタもびっくりの標準化だ。アダプティブヘッドライト(キセノン)は当然だし、そういえば世界初がもう一つ。正直、試乗中はその効果のほどがよくわからなかったがIDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)は操作系のモニタリングによって、緊急性の低い情報通知を先送りにするという。

 

こうした装備代金を考えると、800万を超える価格も納得できるところ。同じ価格で高級感を極めて実用性をやや落とすか、実用性を極めて高級感を後にするかという選択では、S80は後者を選んでいる。腰の部分への膨張圧力を胸の部分より5倍強化したエアバッグや、とてもすばらしい音を奏でるオーディオなどがその一例だ。そうした点こそボルボらしい律儀な質実剛健さとして評価すべきだろう。

先週紹介したC70のような派手なクルマはわかりやすくて売りやすい(絶対数が売れるというわけではない)が、じっくりその内容をユーザーに理解させる必要のあるS80のようなクルマは、インポーター、ひいてはメーカーの広報・広告活動がどこまでできるかにかかっている。ボルボならではの独自のブランドイメージがまだまだ残る今、広報活動の如何がこのクルマの今後を占うと思う。

試乗車スペック
ボルボ S80 V8 AWD
(4.4L・V8・6AT・840万円)

●形式:CBA-AB8444 ●全長4850mm×全幅1860mm×全高1495mm●ホイールベース:2835mm●車重(車検証記載値):1880kg( F:1160+R:720 )●乗車定員:5名

●エンジン型式:B8444 ● 4413cc・V型8気筒・DOHC・4バルブ・横置●315ps(232 kW)/5950rpm、44.9 kg-m ( 440 Nm)/3950rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70 L ●10・15モード燃費:6.9 km/L ●駆動方式:電子制御4WD ●タイヤ:245/40R18 (Pirelli P Zero Rosso )

●試乗車価格:844万円( 含むオプション: セキュリティ・パッケージ<ロックホイールボルト、ラミネーテッド・サイドドアウインドウ> 4万円 ) ●試乗距離:約200km ●試乗日:2007年2月 ●車両協力:ボルボ・カー 尾張一宮

 
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