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ヒュンダイ サンタフェ新車試乗記(第167回)

Hyndai Santafe

 


2001年04月07日

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キャラクター&開発コンセプト

コリアンブームがクルマ業界までに飛び火? 世界第7位のグローバル企業が日本市場になぐり込み

日本では知る人ぞ知る存在のヒュンダイ(漢字で書くと「現代」)。創業は1967年で、長年、三菱との技術提携によりクルマを開発、生産してきた。そしてかつての日本メーカーのように安さを武器に世界各地へ進出。98年には同じ韓国メーカーの起亜自動車を吸収合併し、今や韓国ナンバー1メーカーにして世界第7位の生産量を誇るまでに成長した(2000年にはダイムラー・クライスラーと提携してグループ入りした)。その年間総生産台数は約280万台。これは提携関係の濃い三菱どころかか、ホンダさえ上回る数字である。これだけ巨大なグローバル企業にも関わらず日本への進出が遅れた背景には、韓国の日本車に対しての輸入禁止措置がある。このことにより逆に韓国側も本格的な輸出を自粛していたわけだが、2000年にその措置が解禁されたことから、日本への本格的進出の道が開かれたわけだ。

さて今年1月、198番目の戦略国に選ばれた日本への導入モデルは、四駆の「サンタフェ」の他、オデッセイ風の3列シートミニバン「トラジェ」、コロナクラスの大衆セダン「エラントラ」の計3車種。日本車に劣らない品質および性能と、割安な価格設定により、日本市場での定着を狙うという。

今回試乗した「サンタフェ」のデビューは2000年のデトロイトショーで、オールラウンドな走行性能を持ち、多様なライフスタイルに対応するという小型クロカン四駆だ。その成り立ちはモノコックボディ+エンジン横置きのFFベース。つまりRAV4に代表されるライト感覚の新世代SUVの一台ということになる。搭載されるエンジンは2.4リッター直4と2.7リッターV6の2ユニット。駆動方式は前者がFF、後者がフルタイム4WDで、ミッションはどちらもフロア式4AT。なお、ハンドル位置は右のみの設定。ちなみに韓国は右側通行だから本国仕様は左ハンドルとなる。

 

価格帯&グレード展開

世界的人気のSUVが177.7万円から。日本車キラーが再び上陸

グレードは2.4リッターモデル、2.7リッターモデルともに「GLS」のワングレードのみ。価格は2.4リッターモデルが177.7万円、2.7リッターモデルが223.2万円と、メイド・イン・コリアらしい激安ぶり。だからといって装備は一切ケチっておらず、オーディオがレス仕様となっている以外、一通り全ての装備は揃っている。オプションとしては全車に電動サンルーフ(5.5万円)、2.7リッターモデルのみに本革シート+サイドエアバッグ(11.5万円)を用意。

ライバル勢よりも20~30万円ほど安い感覚で、他のライトSUVでは直4しか買えない価格でも、サンタフェならV6が買える、という具合。価格だけで判断すれば、輸入車はもちろんのこと国産車のライバル勢にとっても驚異になりうる存在だ。ただ、この価格が値引き一切無しのワンプライスとなると事情は違ってくる。国産車の場合、このクラスでは10万円、20万円程度の値引きは当たり前。となると国産車との差は10万円ほどに縮まる。だったら信頼性に実績のある国産車を…、というのが当然の成り行きだろう。実体は分からないが、多分ワンプライスはないと思われる。

かつてクライスラー・ネオンが日本車キラーとよばれて安さをウリに進出してきたが、見事に大コケした。この例を見るまでもなく、海外ではまずまずの成功を収めてきたヒュンダイだが、日本への参入はそれまでのように甘くいかないと思う。日本車に近いクルマだけに、本家の日本で売るのは、なかなか困難が伴いそうだ。

 

パッケージング&スタイル

グローバルデザインゆえ結構大きい。全体としてなかなか頑張っている

ボディサイズはマツダ・トリビュートととほぼ同一の大きさで、全長4500mm×全幅1845mm×全高1710mm。ホイールベース2620mm。この大きさは今、世界で最も拡販が見込まれているライトSUVの世界基準といえるもの。ヒュンダイとしても、それを十分認識しているはずだ。最低地上高も205mmと、悪路走破性も意識したSUVとして十分の高さが確保されている。ただ、やはり日本で扱うとなると、1800mmを超える全幅がネック。トリビュート同様、世界戦略車としてのジレンマといえるだろう。

デザインは基本的に曲線を多用したもので、アメリカ人好みの雰囲気がある(サンタフェという名はニューメキシコ州にある都市から命名)。ウエストラインでボディ色が異なる2トーン処理はSUVの定石ともいえるもの。グリルはほどほどの大きさで、ヘッドライトはやや吊り目。昔のクロカンみたいにカンガルーバーはないし、背面タイヤもない。流行のツボは押さえてある。また品質面でもチリがあってないというような部分はなく、しっかりと世界の一流水準に達している。

先入観なしで見れば国産車と見間違えるほどのクオリティ

インパネは右、左ハンドルの共用化を前提とした左右対称のデザインで、ウインカーレバーがちゃんと右側に設置されているのは立派。センターパネルに収まるスイッチレイアウトは、上から空調の吹き出し口、ハザードランプ、オーディオ、エアコンという順。それと最上部には簡易ナビ(といっても単なるデジタル表示の方位計、標高計だが)が付く。シフトノブ、パーキングブレーキはともにフロア式。このようどこの国の人でも困惑を招かない、ごく標準的なレイアウトだ。カーナビは1DINを入れればいいだろう。

装備は、オーディオだけはレス仕様となるがリモコンロックを始め一通りのものは揃えられている。パワーウインドウ、電動格納ドアミラーはもちろんのこと、エアコンは液晶表示のオート式、ステアリングは本革巻き、それにややチープながらもドリンクホルダーも前席に2名分用意されている。後席はダブルフォールディング機構付の6:4分割機構を採用しており、倒せば広大にしてフルフラットなラゲッジスペースが出現する。バックドアは跳ね上げ式で、小物の出し入れに便利なガラスハッチも付く。斬新なアイデア装備こそないが、これといって不満もない。

品質の高さはちょっと驚かされる。トヨタとはいかないまでも、マツダあたりとは十分互角に競争できるだけのレベルには達している。ただ全体にはグレー一色の素っ気ない印象。木目調パネルを付けるといったわざとらしい高級感の押しつけがないのは好感が持てるところ。本革シートもオプションで用意されている。

室内で最も不満だったのは後席の座り心地だ。足元や頭上の余裕には問題なのだが、後席の可倒機構のしわ寄せが及んだのか、フロアに対して座面がやや低い。実際に座ってみると、ひざ裏が浮いた状態になってしまう。また前席下の空間がなく、そこに足先を入れることもできない。細かいことであるが、改善されるか否かで、後席の居住性はすごく変わってくる。このあたりはSUV作り経験の浅さといえるかも。

 

基本性能&ドライブフィール

トルクフルなV6と本格的な4WDシステムは価格に見合った以上の性能

搭載されるエンジンは2.4リッター直4DOHC(最高出力145PS/5500rpm、最大トルク20.0kgm/3000rpm)と、オールアルミ製となる2.7リッターV6DOHC(最高出力179PS/6000rpm、最大トルク25.2kgm/4000rpm)の2種。駆動方式は前者がFF。後者はフルタイム4WDだ。このクラスではスタンバイ式が多数派だが、サンタフェはビスカスLSD付きセンターデフ式(前後トルク配分は60対40)。加えて、ブレーキによるトラクションコントロール機能も搭載するという本格的な内容だ。気になる10・15モード燃費は8.7km/l。ランドローバー・フリーランダーの2.5リッターV6(7.7km/l)、マツダ・トリビュートの3リッターV6(8.0km/l)よりも優れており、スズキ・グランドエスクードの2.7リッターV6(8.8km/l)とほぼ同じ。なお、指定燃料はレギュラーとなる。

重いボディにもかかわらず、動力性能には不満がない

試乗したのは2.7リッターV6搭載車。179馬力というパワーは排気量から考えれば順当。車重は1710kgと、このジャンルでは最も重い。となると加速面は期待できないと思ってしまうところだが、「全域にわたって最大トルクの80%以上を発生する」と謳うだけあって、実際は非力さを感じさせない。急勾配の発進以外なら必要十分なで加速が望めるし、ボディの大きさからすれば軽快感のある走りとも言えるだろう。高速巡航も快適だ。140km/h位の巡航は快適にこなし、直進性や安定感も十分。

ミッションはH型のシフトゲートを持ち、 マニュアル感覚のシフトチェンジが行えるスポーツモード付「Hマチック」4速ATが与えられている。メーター内にはDレンジにしていても何速で走っているか表示するインジケーターが備わる。また、このATにはコンピュータが上り坂や下り坂の状態に合わせて、 常に最適なギアを選択し走行するHIVEC(ヒュンダイ・インテリジェント・ ビークル・エレクトリック・コントロール)が内蔵されているのだという。恐らく三菱製の「INVECS」を改良したものなのだろう。ただ、あまりシフトチェンジのレスポンスは素早くない。まぁ、クルマの性格上、多用することはないだろうが。

全体の走りの印象はフツー。ノイズはうるさいわけでもなく、静かでもない。乗り心地はソフトでもなく、ハードでもない。まあ、どちらかというと固めと表現した方がいい。パワステは軽くもなければ、重くもない。誰が乗っても不満はないが、これといって大きな満足感も得られない。つまりはあまり個性が見受けられないのだ。これは多くの日本車にありがちな特徴とも言える。実に日本車的なのだ。

しかし価格のことを考えれば上等な走りだ。V6は4気筒にない滑らかさがやはりあるし、「チープなコリアンメイド」という先入観さえ頭の中から消え去れば、日本車同様の不満ない走り、と思えてくる。唯一気になったのは路面の凸凹を素直に拾う足回りで、特に後輪はドタバタした印象が強い。

 

ここがイイ

乗ってみるとそのクォリティの高さには驚かされる。数年前韓国双龍製の四駆に乗ったことがあるが、それは乗ってすぐ分かるほど、品質感に欠けていた。しかしこのヒュンダイ車は、日本車にも負けない完成度を誇っている。実際、同じ四駆ではアメリカンクオリティを感じさせるマツダトリビュートより、いわゆる日本車に近い品質感の印象を得た。エンジンもフォードのV6を載せるトリビュートより好ましく感じた。全体としては全くの及第点。価格をかんがみて、購入に踏み切ることを否定する要素はない。

 

ここがダメ

乗ったときの印象がたいへん希薄なのは辛いところ。日本車的によくできているが没個性という印象があり、まがいなりにも外車であるこのクルマとしては、商品としてアピールが弱いということになってしまう。ブランド戦略もイマイチ見えてこない。ディーラー整備も遅れているようで、ビジネスの展開はまだドタバタしている。

エンジンルームをのぞいていたら、バッテリーの固定法が底辺部で押さえるタイプになっていることに気付いた。こうした消耗部品は、日本のアフターパーツ市場で簡単に載せ変えられるものが望ましいと思う。

 

総合評価

新車の臭いが、むろん不快ではないが、今までとは違うものだった。ドイツ車の臭い、日本車の臭いなど色々あるが、韓国車はまた独自の臭いを持っていた。ただこれは本当に臭いであって、いわゆるクルマの個性としての独自の臭い、味というものは逆にあまり感じられなかった。よくできたクルマという点では一部日本車を凌ぐものがあるが、だからといって積極的に欲しくなるというほどの付加価値は残念ながら感じられなかったのだ。

ヒュンダイは日本車を手本として、すでに品質面においては日本車を超えるものを作り出していると思う。四駆、ミニバン、セダンといった定番商品に関しては韓国車の追随はかなりのところまで来ている。ボタンダウンシャツやジーンズといった定番衣料の大半が中国などで作られているように、今後はクルマも生産国は問題ではなくなっていくだろう。サンタフェも定番商品としては十分水準を超えており、買って、毎日使う上では何ら不満はないだろう。定番衣料のようにブランドにこだわらなければだ。

それに対し日本車はWiLL VSのように今までの日本車を超える努力を始めている。ますますマスプロ化、グローバル化していくクルマという商品に、売れる付加価値を追加するのは容易ではない。そんな中で日本車のアイデンティティとは。それはニューシビックやWiLL VSのような独自性のある次世代商品開発ということになるのだろう。いやそうせざるをえない。このヒュンダイ車の出来が、まったく悪くないという事実を知ってしまうと、今後、日本車は個性で売るしかないと思わざるを得ないのだ。ユニクロの服がベトナム製であっても皆、抵抗なく買うように、毎日使うクルマとして韓国製のヒュンダイ車ももはや抵抗なく買っていい。品質はもはやグローバルなもの。生産国にこだわることがすでにナンセンスなのだ。

 

公式サイトhttp://www.hyundai-motor.co.jp/

 
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