キャラクター&開発コンセプト
セレナはエルグランド、ラルゴの下に位置する5ナンバーミニバンだ(今回ラルゴは消滅したが)。先代は91年に登場し、キャブオーバータイプ(ミッドシップエンジンの後輪駆動)に、衝突安全性を向上させる短いノーズを持たせ、先進性を国産車ではいち早く披露。しかしさすがに8年を経て商品力は大きく低下していた。新型ではノーズの中にエンジンを搭載し、前輪駆動を基本とするFFに変更。つまり、ステップワゴンと同じパッケージングとなった。FF化により、低床&フラットフロア化を進め、居住性や使い勝手を向上させていのが特徴だ。
開発コンセプトは「しっかり・快適1BOX」とし、今までの1BOXとは一線を画する、しっかりとしたボディ剛性、しっかりとした走行性能を確立し、その上で1BOXの持つ快適性をさらに高めたものとなっている。ベースは現行サニーで話題となった「新世代M&Sクラスプラットフォーム」を1BOX専用に改良したもので、前部以外はオールニューとのこと。また、両側スライドドアを採用しながらも、ボディ剛性を大幅に向上していることも見所のひとつ。両側スライドドアの“全車標準装備”というのは「軽自動車を除く1BOXタイプミニバン」では日本初とのこと。なお、先代に設定されていたバン(商用車)はこれを期に消滅し、商用部門はマツダの新型ボンゴのOEM供給となる。
価格帯&グレード展開
200万円前後の、安さをウリとした展開でライバルに勝負をしかける
ガソリンはBの174.9万円からハイウェイスターGパックの249.9万円、ディーゼルはJの216.5万円からハイウェイスターGパック276.9万円。4WDは25万円高(Bには設定なし)。日産の計算では前モデルに比較して7万円程度の値下げとなっているという。実際のところ試乗したJは189.5万円と激安に思えたが、別に不満はなかった。オーディオはないが、カーショップでつければ安いものだし、カーナビも好みでつければいい。ただJ-Vパックにはキーレスエントリー、スライドドアパワーウインドウ、ステレオがつくので、売れ筋はこちらだろう(204.9万円)。CVTなどの装備を考えると、ステップワゴンにも十分対抗しうる価格だ。なお、カタログには価格が明記されている。記憶が正しければ、日産車では始めてのケースのはずだ。
パッケージング&スタイル
ボクシーなスタイルながら、個性を出そうとした努力は認めるが、かっこよさとは無縁
ボディサイズは全長4520mm×全幅1695mm×全高1825mm。全長はノアとステップワゴンの中間の数値。ホイールベースは2695mmで、先代よりも40mmダウンとなっているが、床下搭載の縦置きエンジンから最前部に横置きしたのだから、ホイールベースが短くなるのは当然といえるだろう。
デザインはギョロリとした大きなヘッドランプが特徴だ。ウインドウグラフィックスがリアにかけて狭くなっているので、斜め前方から眺めると異様なほど顔がでかく見える。2頭身のようで、これはこれでかなりユーモラス。リアは横一文字の赤いガーニッシュを採用する、古典的手法だ。ステップワゴンもノアもそうだが、効率のいいパッケージをとればかっこよさと無縁になるのは残念なところ。Vクラスのようなかっこよさを打ち出すことを期待していたのだが。先代で人気のあった「ハイウエイスター」は、今回ちょっとハズした感じ。はじめからもう少し派手なエアロをつけないと、往年の人気は獲得できないだろう。このあたりはサードパーティのエアロメーカーに余地を残したというところか。
室内は広い。文句なく広い。隅々まで角張らせて広げた印象だ
全幅に変更はない。にもかかわらず広くなったように思えるのは、室内高だ。何と、95mmもアップした1300mmとなっている。そのカラクリはフロアが低く抑えた新プラットフォームの採用だ。しかも後方にやや傾斜したフラットな床面を実現している。ウォークスルーは2列目シートのアレンジ次第では3列目シートまで可能だ。これに配慮したコラムシフトは共通アイテムとなっているが、セレナのパーキングブレーキは足踏み式ではなく、運転席左側のフロア式を採用している。シートは小ぶりで、ウォークスルーには差し支えないが、なぜ、あえてフロア式を採用したのかは理解できないところ。
傾斜の強いAピラーに合わせて奥行きを増したインパネは、センターにモニタースペースを設けてある。乗用車的な洗練さがあり、圧迫感もなく、好印象。両側スライドドアの窓はJでは手動式ながらも開閉可能で、斜め前方の視界が確保できる三角窓の採用も嬉しいところ。このあたりの使い勝手はノア、ステップワゴンよりも確実に勝っている。
ドライビングポジションはノア、ステップワゴンより低いといえどもやはり1BOX感覚。この手のクルマの必須であるステップが設けられている。170cmぐらいの人ならとりあえず、それを利用しないで乗り込める高さだ。ペダルも上から踏み下ろす印象となり、足に力が入りやすいからか、無意識にペダルを奥まで踏み込んでしまう。高速巡航を考えれば、ペダルはもう少し重くしたほうがいいだろう。
後発だけあってシートアレンジは大変良い。ただし、寝るには適さない
では気になるシートはどうだろう。新型セレナは全車2-3-3の8人乗り(2列目シートは、中央部が大きく張り出して座り心地を確保しているので、実際には2人しかまともに座れないのだが)。2列目シートは独立して800mm以上ものロングスライドができ、脱着を可能としているのが特徴だ。シートは1脚23kgで、脱着作業自体は簡単確実だが、出し入れがさすがにちょいとしんどい。3列目シートも2列目シートと同じレール上をスライドする。それなら掛け心地の良い2列目シートを外すより、3列目シートの方を脱着式してもよかったはず。恐らく3列目シート(ベンチタイプ)は重いからそうしなかったのだろう。
とにかくシートアレンジの多彩さは群を抜いており、162パターンもあるらしい。要は3列目のチップアップにある。座面を上に跳ね上げることで薄くなるので、これを前方に寄せればラゲッジが大きくなり、後方に寄せれば2列目がいっぱいに下げられる。
ただ、2/3列目シートの回転対座は、2列目シートを一旦外して付け替えなくてはならないのが、辛いところ。できれは1列目シートの回転機構が欲しかった。せっかく2列目の背面にテーブルがあるのだから。フルフラットもあまり平らではない。寝るなら2列目を外してマットを敷き、床で寝た方が快適だろう。
最も使い勝手がいいのは2列目を一つ、常時外しておくこと。これで5人までが快適に座れ、室内はグッと広く感じられる上、ウォークスルーも快適だ。
基本性能&ドライブフィール
走りは軽快。CVTのがクルマの性格にぴたりと合っている
エンジン&ギアボックスは、2リッター直4ガソリン(最高出力145PS/6000rpm、最大トルク19.0/4800rpm)がハイパーCVTを搭載。2WDはLEV仕様。特筆すべきは2リッタークラスの4WD車にもCVTを採用した点で、これは世界初とのこと。一方のエンジン、直噴ターボディーゼル(最高出力145PS/6000rpm、最大トルク19.0/4800rpm)は4ATと組み合わせられる。新開発「オートコントロール4WD」は、滑った分だけ後輪に駆動力を伝えるタイプで、従来のビスカス式よりも重量が半分に抑えられている。足回りは同クラスではちょっと贅沢な4輪独立懸架も用い、前がマクファーソンストラット式、後がトレーリングアーム式マルチリンクを採用している。基本走行メカニズムはかなりこだわっているようで、日産の技術力の高さが伺えるものだ。
試乗したのは2リッターガソリンモデル。ノアが130馬力、ステップワゴンがマイチェンで135馬力になったのに対し、新型セレナはクラストップの145馬力を発生する。反面、3車中、車重が一番重いのがセレナとなる。
トルコンを備え一般的なATと同じクリープがあるために、CVTのぎごちなさは皆無だ。エンジンの吹け上がりは非常に軽快。アクセルが軽く、気を抜くとたちまち4000回転を超えるほどで、乗用車とさほど変わらない加速力を披露する。従来CVTはアクセルを踏むと、まず先にエンジン回転だけが上昇し、その後スピードが加速していたのだが、新型セレナのCVTは急加速以外はそれがなく、しかも静か。実に良くできている。回頭性もFRのノアが5.4mに対し、5.5mと奮闘している。同じFFであるステップワゴンは5.6mで、全長も長い。取り回し性ではセレナがリードする。
高速も静かで150km/h巡航ですら楽々。直進性もいいがちょっと横風には弱い。全体的にタイヤの接地感が乏しい感じで。もう少しどっしりして欲しいところ。コーナリングはFFらしい安定したハンドリングで、ロールは大きいしここでも接地感が不足ぎみではあるが、かなり乗用車ライクな走りができる。ファミリードライブではこれで十分。乗り心地は硬くなく、かといってふわふわせず大きな不満はないが、上質とはいえない。あくまでワンボックスワゴンとしては不満なしというところ。
ここがイイ
やはり左右のスライドドアが便利。これは特に運転者にとって便利な装備だ。車外に出てから後部の荷物を下ろしたいことは多いが、ボディを一回りしなくてもよくなった。またスライドドアの窓がほぼ全開するのはうれしいところ。窓を開けて爽快なアウトドアドライブが楽しめるし、停車してからも車内のちょっとした物のやりとりができる。このあたりは乗用車とすれば至極当然の装備がやっと付いたという感じだ。
ここがダメ
アイドリングでちょっと振動が気になった。個体差であればいいが。また運転席ではなかなかいい乗り心地も、リアシートではかなり落ちる。CVTにはスポーツモードとLモードがあるが、その間にもう一つギア(というかプログラム)が欲しいところ。Lモードではエンブレがきつい感じがした。
総合評価
ボディの重さを感じさせない元気な走り、ショックのないCVT滑らかさ、シートアレンジの多彩さを含めた充実した装備、そして安い価格と手頃な大きさ。ほぼ完璧なファミリーミニバンといえる。子供が中学生くらいまでは、このクルマが一台あることで、ファミリーはその生活が大きく変わるだろう。「クルマってこんなに便利で楽しいんだ」と必ず子供の記憶に残るはず。とにかくファミリーならセダンを売り払って、一刻も早くこのクルマに替えることをおすすめしたい。ぼやぼやしていると子供はどんどん大きくなってしまうのだ。ただ、子供がスポーツカーなどの狭いクルマに全く興味をなくす弊害があることは記憶しておきたい。この先、「エンスー」はもう育たないかも。
公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/SERENA/