キャラクター&開発コンセプト
大成功した先代ベースで「エコモデルチェンジ!」
2011年11月29日に発売された新型セレナは、1991年にデビューした初代バネットセレナ(C23系)から数えて4代目のモデル。初代はセミキャブオーバーのFRベースだったが、1999年に登場した2代目(C24系)以降はFFベースとなり、「モノより思い出」のCMキャッチコピーで有名に。2005年にデビューした3代目(C25系)では、ミドルクラス3列シートミニバンの本流に徹したことで、ファミリー層に支持され、ベストセラー車の仲間入りを果たした。
その大ヒット車の跡を継ぐ新型(C26系)は、プラットフォームこそキャリーオーバーだが、アッパーボディを全面変更し、時代の要請に合わせてパワートレインもしっかり“環境仕様”に換装。エンジンは全車2リッター直噴の「MR20DD」に、変速機は4WDを含めて全車エクストロニックCVTとしたほか、ライバル車に先駆けてアイドリングストップシステムを主力グレードに採用。クラストップレベルの10・15モード燃費15.4km/L(FF車)を達成している。広告キャッチコピーはそのものズバリ、「エコモデルチェンジ!」だ。
2007年から3年連続ミニバン一位を達成
目標販売台数は月間5400台で、これはほぼ先代(同6000台)と同水準。現在、リーフが話題の日産だが、新型セレナの受注も好調で、発売後約3週間で早くも1万0091台を受注したとのこと。
なお、先代の販売台数は実質的に同一モデルのトヨタ・ヴォクシーとノアを足した数字には及ばなかったが、名目上は2007年から2009年まで3年間連続で年間7万台以上を売り、ミニバン一位となっている。ただし2010年は4代目ステップワゴン(2009年10月発売)が急激にシェアを奪還したため、セレナと首位を争そう展開となった。結果は間もなく出るはずだ(後日追記)。
※1月11日に発表された自販連の統計によると、2010年(1~12月)の新車販売台数は、ステップワゴンが8万0934台(登録車中で7位)で、7万5040台(同8位)のセレナを僅差で上回った。なお、ステップワゴンは前年比188.1%とほぼ倍増し、終盤までモデル末期だったセレナは95.2%と前年並みだった。
スズキは「ランディ」として販売
先代と同じように、新型セレナもスズキにOEM供給され、2代目「ランディ」として12月21日に発売されている。「2.0S」と「2.0G」の2グレード構成で、フロントグリルのデザインも異なるが、その他はおおむね同じだ。
なお、先代セレナ/ランディの生産は、日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)で行われたが、新型の生産は福岡県苅田(かんだ)町の日産九州工場に移管されている。
※過去の新車試乗記
■新車試乗記>日産 セレナ 20G (2005年6月)
■新車試乗記>日産 セレナ J (1999年7月)
※外部リンク
■日産自動車>プレスリリース>新型「セレナ」の受注状況について (2010年12月21日)
■日産自動車>プレスリリース>新型セレナを発売 (2010年11月8日)
■スズキ>プレスリリース>新型ランディを発売 (2010年11月8日)
価格帯&グレード展開
216万3000円からスタート。ハイウェイスターは249万9000円
全車2リッター直4とCVTで、グレードは計4種類。ベーシックな「20S」(216万3000円)、アイドリングストップやVDCが備わる「20X」(233万1000円)、さらにインテリジェントキーなど装備が充実して内装色が明るいフェザーグレーとなる「20G」(258万3000円)、そして同じくインテリジェントキーのほか、専用エクステリアや専用の足まわりを備えた「ハイウェイスター」(249万9000円)となる。売れ筋は先代でも販売台数の7割、新型でも初期受注の70%を占めたハイウェイスターだ。
4WDはハイウェイスターのみ26万2500円高で、他は27万3000円高。オーディオやナビは全車オプションだが、VDC(横滑り防止装置)は「20S」を除く全車に標準装備される。
■20S FF:216万3000円/4WD:243万6000円
■20X FF:233万1000円/4WD:260万4000円
■20G FF:258万3000円/4WD:285万6000円
■Highway STAR FF:249万9000円/4WD:276万1500円 ★今回の試乗車
なお、いつもと同じパターンで、株式会社オーテックジャパンによるカスタム車「ライダー」も発売されている。ベースは「20X」で、価格はFFが269万8500円、4WDが296万1000円。同時にオーテックジャパンは新型セレナの福祉車両(日産ではLV:ライフケアビークルと呼ぶ)も各種用意しており、こちらでもハイウェイスターベースが選べる。
パッケージング&スタイル
三角窓が巨大になった。それ以外はキープコンセプト
見た目で先代C25系と新型26系で何が違うかと言えば、それはもう「Aピラーおよび三角窓の形状」に尽きる。先代にも三角窓はあったが、新型では三角窓を構成するサブピラーがルーフ付近から下がってくる形になり、一気にその面積が大きくなった。ただしこれは外観というより、後で触れる室内からの眺めを大きく変えている。
といったわけで、ことスタイリングに関しては、先代と大きく変わり映えしない。ちょっと釣り目だが、柔和な顔立ち。フロントドアの途中でキックアップするショルダーライン(日産は「シュプールライン」と呼ぶ)。スライドドアのレールを巧く取り込み、上下二層構造に見せるリアビューなど、先代の特徴をほぼそのまま受け継いでいる。見慣れないと、新旧を一瞬で見分けるのは難しい。
ボディサイズもハイウェイスターで(カッコ内は先代比)、全長4770mm(+30)×全幅1735mm(+10)×全高1865mm(+15)、ホイールベース2860mm(同)と、先代とほぼ同じ。なお、ハイウェイスター以外のグレードは、全長4685m、全幅1695mmと相変わらず5ナンバー枠に収まっている。
インテリア&ラゲッジスペース
視界良ければ、すべて良し
ロックを解除して運転席に乗り込むと、未来的なフル液晶メーター「マルチグラフィックアッパーメーター」が鮮やかに光って、ドライバーの目を奪う。しかも日産車では珍しい、ステアリングの上から見るタイプだが、これは新型リーフも同じだ。
その次にオオッと感心してしまうのが、フロンウインドウと大きな三角窓、そして前述のシュプールラインによる見晴らしの良さだ。写真では分かりにくいが、サブAピラーの室内側トリムの形状も左右で微妙に変えているという。
松葉のように細い2本のAピラーが天井から伸び、その間から左右の景色が見えるこの眺め、どこかで見たことがある・・・・・としばし記憶を探って出てきたのがシトロエンのC4 ピカソ。さすがにセレナのそれは、C4ピカソほどの圧倒的なパノラマビューではないが、言葉を換えれば常識の範囲内。優れた視界は、安全に直結するものなので高く評価できる。
チルト&テレスコは全車標準。質感も高い
ステアリングはしっかりチルト&テレスコ付。また質感も全体に高い。試乗したハイウェイスターは全体に黒基調だが(「20G」のみ明るいフェザーグレー)、ジャカード織とトリコットのコンビシートは起毛されているので手触りが良く、見た目もいい。また車両価格が200万~250万円というクラスにあってコストに制約がある中、樹脂のシボ加工や化粧パネルの選定にも、モチベーションの高さとセンスの良さが感じられる。
ウォークスルー優先の7人乗りにも、8人乗りにもなる
セカンドシートはシート形状など細かく改良されているが、平たく言えばほぼ先代ベース。具体的にはフラットで低いフロアに、前後スライド可能なセカンドシートを据えるのは当然として、中央席には先代のものを改良した「スマートマルチセンターシート」を採用。これは、セカンドシート中央席がアームレストや小物入れに変身するもので、1列目までザザァーと移動させて、センターウォークスルーにすることも出来る。
さらにセカンドシートの左側を横スライドさせて2人掛けのベンチシートにすれば、サードシートの乗り降りはよりスムーズになる。これはいわゆるマツダの「カラクリシート」と同じで、1台でキャプテンシート(2×2×3の7人乗り)とベンチシート(2×3×3の8人乗り)が兼用できるものだ。作る方のメーカーも、選ぶ方のユーザーも悩まなくていい一石二鳥のレイアウトであり、ミニバンにおける一つの「最適解」とも言えるだろう。
またスライドドア開口部も先代よりわずかに拡大されたほか、現行エルグランド(2010年10月発売)譲りの機能として、ボタンを押すだけで電動開閉できる「ワンタッチオートスライドドア」も採用している。取材中は知らなかったので一度も使わなかったが。
ラージクラスに迫るサードシート
サードシートも先代とよく似た雰囲気だが、ヘッドレストが大型になり、クッションが厚くなるなど細かな改良を受けている。相変わらず中央席のシートベルトは2点式だが、二人掛けとして考えれば、背もたれや座面のサイズもたっぷり。頭上から足もとまで空間の余裕も十分で、居住性はラージクラスミニバンに大きく劣らないと思う。また前述の通り、センターウォークスルーにしろ、サイドからにしろ、乗り降りもしやすい。
サードシートを跳ね上げても斜め後方が見える
このクラスではフル乗車の場合、荷室スペースが最小限となりがちだが、新型セレナではとりあえず奥行き40センチ程度の空間を確保。さらにサードシートを収納する場合は、このクラスのミニバンでは定番のサイド跳ね上げ式で行う。なお先代には前後スライド機能もあったが、新型では廃止されている。
新型セレナではこの跳ね上げ機構も改良して、「スマートアップサードシート」に進化。5年前の先代では、スプリングの力で軽く操作可能にしたのがトピックだったが、今回はリンク機構をピボット式リンクとガスダンパーに変更して、跳ね上げるというより90度回転させるような仕組みとした。これによってサードシートを跳ね上げた状態でも、斜め後方の視界を確保している。
床下収納スペースも大容量。スペアタイヤは省略
床下には9インチのゴルフバッグやベビーカーが丸ごと入る大収納スペースを確保。ボードを立てれば(なぜか紐でつながっていて外せない)、背の高い物も置ける。
というわけで、ボディの隅々まで使い切ったパッケージングゆえ、スペアタイヤは省略。パンク修理キットは2列目右側シートの座面下に収納されている。
