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VW シャラン TSI コンフォートライン新車試乗記(第630回)

Volkswagen Sharan TSI Comfortline

(1.4リッター直4ターボ+SC・6速DCT・438万円)

小さなエンジンでも力持ち!
復活のシャランは、
究極の排気量ダウンサイジング
ミニバンだった!

2011年04月22日

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キャラクター&開発コンセプト

15年ぶりのフルモデルチェンジで、日本市場に再投入


新型VWシャラン(写真はTSI コンフォートライン)
(photo:VGJ)

フォルクスワーゲンの「シャラン」は、1995年に登場した7人乗りミニバン。初代は日本でも1997年から2年間で累計約1200台を販売。その後はラインナップから外れていたが、海外では何度かマイナーチェンジしながら販売を継続していた(累計販売台数は60万台以上)。

そのシャランが2010年に初のフルモデルチェンジで2代目となり、日本市場にも12年ぶりに登場した。受注は同年11月22日にスタート。本格的なデリバリーは2011年2月から始まっている。

両側スライドドアを採用。1.4ツインチャージャーと6速DSGを搭載


新型シャランは2×3×2の計7人乗り。シートはすべて独立タイプ
(VGJ)

先代シャランのリアドアはヒンジ式だったが、新型は両側スライドドアを新採用。しかもスライドドアは全車電動と、日本市場を意識した仕様となっている。シートレイアウトは2×3×2の7人乗りで、すべて独立シートになる。

パワートレインは、ゴルフ等ですでに定評のある1.4リッター直噴のツインチャージャー(ターボ+スーパーチャージャー)と6速DCT。加えて日本向けのVW車では初めて「ブルーモーション テクノロジー」と呼ばれる環境技術を採用し、「Start/Stop(スタート&ストップ)システム」や「ブレーキエネルギー回生システム」を全車に搭載。これらにより10・15モード燃費は14.0km/Lを達成し、エコカー減税75%対象車となっている。

マイチェン版トゥーランと共に、「VWのミニバン」をアピール


こちらは弟分の新型ゴルフ トゥーラン(293万~339万円)
(VGJ)

生産は初代シャランと同じポルトガルのAutoEuropa工場。以前はフォードとの合弁工場で、初代シャランとその兄弟車であるフォード・ギャラクシーを生産していたが、現在はVWグループの工場として2代目シャランと兄弟車のセアト・アルハンブラを生産している。

なお、日本では同じ7人乗りミニバンで弟分の「ゴルフ トゥーラン」(こちらはヒンジドア)のマイナーチェンジ版(顔がゴルフ6風になった)と同時発売になり、いずれも家電通で知られる土田晃之(てるゆき)を起用したテレビCM・広告が展開された。キャッチコピーは「ミニバンを選ぶことは、家族の安全を選ぶこと」。

※外部リンク
■フォルクスワーゲン>プレスリリース>新型「シャラン」発売 (2010年11月)

価格帯&グレード展開

電動スライドドア標準で、379万円から


こちらは「TSI ハイライン」。外観では17インチホイール&タイヤが目印

パワートレインは1種類で、グレードは「TSI コンフォートライン」(379万円)と上級の「TSI ハイライン」(438万円)の2種類。

TSI コンフォートラインでも装備は十分で、例えば電動スライドドア、アルミホイール、3ゾーン式フルオートエアコン、9エアバッグ(ニーエアバッグを含む)、ESP、パークディスタンスコントロール、3年間定期点検工賃無料パック「フォルクスワーゲン プロフェッショナル ケア」が全車標準だ。なお、「ダイナミックコーナリングライト」と呼ばれるAFS機能が付いたバイキセノンヘッドライト(16万8000円)は、名目上はオプションだが、実際には装備済みの車両が主力のようだ。

それより59万円高いTSI ハイラインには、バイキセノンヘッドライト、リアビューカメラ、スマートエントリー&スタートシステム「キーレスアクセス」、電動テールゲート、パドルシフト、レザー&アルカンタラシート、シートヒーター、8スピーカーオーディオシステム、1インチアップの225/50R17タイヤなどが標準装備される。さらにレザーシートパッケージ(21万円)も選択できる。

 

パワーテールゲートはTSI ハイラインのみの装備
(photo:VGJ)

両グレードに共通のオプションは、ナビゲーションシステム「RNS510」(グレード別に24万1500円/32万5500円)、電動パノラマスライディングルーフ(16万8000円)など。

■フォルクスワーゲン シャラン
【1.4リッター直4 ターボ+スーパーチャージャー】

・TSI コンフォートライン  379万円  今回の試乗車
・TSI ハイライン      438万円

パッケージング&スタイル

ボディサイズはエスティマ級。デザインはポロやゴルフの相似形


ボディカラーは白、シルバー、ブルーなど計5色。試乗車は黒(ディープブラックパールエフェクト)

先代シャラン(と言っても覚えている人は少ないと思うが)より一回り以上大きくなった新型シャラン。ボディサイズは全長4855mm×全幅1910mm、ホイールベースは2920mmと堂々たるものだが、全高は1750mmとけっこう低い。つまりはアルファード/ヴェルファイアではなく、エスティマやマツダMPVあたりに近い。

ボンネットが長めの乗用車的スタイルは、日本のアッパーミドルクラスミニバンに似た雰囲気だが、妙にカッコをつけていないところがVWらしいところ。ポロやゴルフをそのまま相似形で大きくしたような感じ。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm)
■VW ゴルフ トゥーラン 4405 1795 1670 2675
■VW シャラン(初代) 4620 1810 1760 2835
■トヨタ エスティマ 4795 1800~1820 1730~1760 2950
■VW シャラン(2代目) 4855 1910 1750 2920
■トヨタ アルファード/ヴェルファイア 4850~4865 1830~1840 1890~1915 2950
 

インテリア&ラゲッジスペース

パサートみたいな質感。装備も充実


試乗車は「コンフォートライン」だが、装備はかなり充実している

VWがミニバンを作るとこうなるのか、と妙に腑に落ちるインパネまわり。突飛な意匠や装備はなく、まったくもっていつものVW流。全体の質感や雰囲気はパサートレベルか。装備も揃っていて、フルオートエアコンやリアエアコンも全車標準。オーディオ画面を流用したパーキングセンサーも付いている。細かいところでは、電動パーキングブレーキがしっかり採用されているのも見逃せない。

 

全車、運転席はリクライニングが電動。ハイラインではレザーとセットでフル電動になる

運転席はコンフォートラインの場合、座面の角度を変えられないのが惜しいが(ハイラインなら可能)、リクライニングとランバーサポートは電動。手動だとリクライナーがダイアル式(仮眠を取る時などに面倒)になりがちなVWにあって、これはなかなか便利。

フロントシートの座面は、少し高め。とはいえ、小柄な女性でも何かにつかまらずに乗り込めるレベルで、降りるときも座面から足を伸ばせば、つま先が地面に届くと思う。

電動スライドドアを装備。2列目は3座独立式

2列目シートは3座独立タイプで、それぞれ別個に前後スライド(最大16cm)とリクライニング(最大20度)ができる。またシートサイズは3人平等なので、2人掛けをベストに設定した国産ミニバンと違って、一人分のサイズは小さめ。ダラッとした姿勢は許されず、シートベルトをしてキチッと座った方が収まりがいい。思想面も含めて、ここが国産ミニバンと決定的に違うところだ。

ヒップポイントは1列目より115mm高くなり、前方視界や周囲への見晴らしを確保している。このため乗り込むときに少し高く感じられ、降りるときに地面が遠く感じられるが、許容範囲だろう。

 

肩のレバーを引けば、簡単にシートが前方に寄る

電動スライドドアはドアハンドルを引くと一呼吸あってグィーンと動き出す。一度慣れてしまうと手放せなくなる装備の一つで、最近では欧州でも人気があるようだ。

3列目への乗り降りは、2列目シートがワンタッチで座面ごと前に跳ね上がり、「エビぞり」するイージーエントリー機構によって、すんなり行える。ここも日本のメーカーからすれば「やられた」と思う部分かも。

3列目は2座独立式。居住性はセカンドシートに迫る

3列目シートは、完全独立の2座。3人掛けベンチシートにする国産ミニバンとは、ぜんぜん意識が違うところだ。座ってみると、2座に割り切った甲斐があって、これがなかなか快適。170センチ未満なら頭のまわりも余裕だし、横方向のゆとりはセカンドシートを上まわるかも。フットルームも意外に広くて、2列目シートの乗員とスペースを折半すれば、足を組むことも出来る。視点は2列目よりもさらに高い。

 

エアバッグは計9個で、全方位で乗員を守る
(VGJ)

なお、エアバッグは1列目フロント×2、1列目サイド×2、運転席ニーエアバッグ×1、2列目サイド×2、1列目から3列目まで頭部をカバーするカーテンエアバッグ×2の計9エアバックを装備する。3点式シートベルトをきっちり7人分を用意するのは、言うまでもない。

最大の見どころは荷室アレンジ

3列目シート使用時のトランク容量は大きくないが、床下が深いのでゴルフバックなら縦に二つ、大型スーツケースなら一つは積めそう。なお、シャランでは釘が刺さった程度なら内側の保護層が空気漏れを防ぐ「モビリティタイヤ」(コンチネンタル製)を採用。スペアタイアやパンク修理キットを省いている。

 

サードシートを格納するところ

さて、見どころはここから。3列目の肩口にあるレバーを引くと、座面がバネ仕掛けで跳ね上がり、180度反転。そのまま背もたれは前方に90度反転し、スッポリと床下に収まる。サードシートの収納方法はもう何十種類も見てきたが、これは初めてのパターンだ。。操作は比較的簡単で、力に自信のない女性でも出来る。この状態で、荷室容量は711リッターになる。

 

助手席まで倒したところ

さらに2列目は、背もたれを前に倒すと、座面が同時に大きく沈み込んで、フラットに倒れる。やはり日本車よりもガチッとした動きだが、操作力はそれほど重くない。荷室容量は最大2297リッターだ。

基本性能&ドライブフィール

1.8トンのミニバンに1.4リッターのエンジン


1.4 TSI “ツインチャージャー”エンジン
(VGJ)

試乗したのは「TSI コンフォートライン」だが、パワートレインは全車共通。車重は1830kgとそれなりに重く、実際のところエスティマ(2.4リッターの方)とだいたい同じ。対してシャランのエンジンは、過給器をターボ+スーパーチャージャーのダブルで備えるとはいえ、排気量はたったの1.4リッター。さすがに荷が重かろうと思ったが、結論から言うと特に問題なし。動き出しのみモワッとしているが、すぐさまスーパーチャージャーによる過給が始まり、ボディをグイグイと前に押し出す。具体的には1500回転という低回転から、2.5リッター並みの最大トルク24.5kgmを発揮。特に登り坂では、ウインチで引っ張られるように、坂を坂とも思わないような感じで上ってゆく。

 

(VGJ)

運転席からの眺めは、意外にミニバンっぽくないが、やはりエスティマとかオデッセイみたいな感じ。狭いところだと少々横幅が気になるが、それとて国産の同クラスミニバンと大差ないレベル。最小回転半径は5.8メートルで、これはエスティマやアルファードあたり(いずれも5.7~5.9メートル)と同等で、実際の印象もそんな感じだ。つまり取り回しにはほとんど苦労はない。

数値以上の力強さ。追い越しが得意

トランスミッションはVW言うところの「DSG」ことDCT。乾式クラッチの7速ではなく、湿式クラッチの6速だが、まったく不足はない。60km/hで6速トップに入るところも、ゴルフやトゥーランあたりと同じだ。

「コンフォートライン」にはパドルシフトが付かないが、シフトレバーをSモードにすれば、その必要は感じられない。こまめで滑らかなギア選択、素速いキックダウンは、まさにDCTならでは。タコメーターの針が変速の度に“瞬間移動”する様子も、相変わらず感動的だ。

欧州仕様(同じ150psの1.4 TSI、6速DCT仕様)の0-100km/h加速(メーカー発表値)は9.9秒。そんなに速そうな数値ではないが、実際には常に分厚いトルク感があるため、数値以上の力強さがある。

トップスピードも意外によく伸びる。パワーウエイトレシオは1830kg/150ps=12.2kg/psだが、Cd値0.299という空力性能も手伝ってか、最高速(メーカー発表値)は200km/h。実際のところも、けっこう速い。なにぶん中間加速が強力なので、下手なスポーティカーより追い越しは余裕を持って行える。

アイドリングストップはアウディA1よりも自然

VWアウディのアイドリングストップ機能は、日本でもアウディA1で導入済みだが、日本向けのフォルクスワーゲン車としては今回が初。「Start/Stopシステム」と呼ばれるこのシステム、アウディA1と似たような感じかなと思ったら、さすが上級モデルということで作動感覚はそれよりも洗練されていた。何よりスターターノイズが小さく、掛かりが速いのがいい。従来のTSIエンジンは、スターターの回る音がカシャン!という独特の音だったが、これがシャランでは、少なくとも車内では聞こえなくなった。またアイドリング音が静かなため、エンジンが止まったことに気付かないことも多く、そういった意味でも意識せずに乗れるようになっている。

 

ブレーキエネルギー回生システム(オルタネーター制御式)のイメージ
(VGJ)

エンジンが暖まってしまえば、停止する度にアイドリングストップしてくれるなど、その頻度は多め。エアコンを使っていても、実際の室温と設定温度との開きが無ければ、ポンポン止まってくれる。ただ夜間にヘッドライト、ワイパー、エアコンを同時に使用していた時には、ほとんど止まらなくなった。ブレーキを踏んでいるからブレーキランプも点灯しているわけで、消費電力が多すぎたからだろう。

なお、フォルクスワーゲンが環境技術としてアピールする「ブルーモーション テクノロジー」の一つとしては、ブレーキエネルギー回生システム(オルタネーター制御式)も採用されている。これは今や最新モデルでは当たり前のもの。補器用バッテリーに充電してオルタネーターを回すための燃料消費を減らす、というものだが、減速時のエネルギーを100%捨ててしまうのに比べると、気持ちの上でも嬉しいシステムだ。

重厚マイルドな乗り心地。大人好みのハンドリング


一見、普通のコンチプレミアムコンタクト2だが、サイドウォールに小さく「コンチシール(ContiSeal)」と刻印がある

フォルクスワーゲンゆえ乗り心地は硬めかなと覚悟していたが、これが予想外にマイルドでホッとした。というか、かなり乗り心地は良い方だと思う。真綿でくるんが鉄球を転がすような感覚は独特なもの。国産ミニバンのように徹底的にスムーズなものではないが、とても安心感がある。舗装の荒れたところに突っ込んでも、ボディが共振することはまったくない。

ハンドリングも見た目からは想像できないくらい良好。サスペンションやステアリングシステムは、パサートやティグアン用を強化して使用。おかげで運転感覚は妙に上質で、ゴルフ以上にしっとり感がある。特に100km/h台で曲がって行くような高速コーナーは大得意。いたずらにハンドリング路でのシャープさを狙ったものではなく、日常域での絶対的な安心感を狙った大人好みのハンドリングという感じ。

 

「モビリティタイヤ」のイメージ
(VGJ)

なお、シャランではボディ重量の13%(Aピラー、Bピラー、センタートンネルなど)に最近話題の熱間成形(ホットスタンピング)による超高張力鋼板(1000MPa以上のものでダイクエンチ鋼とも言う)を採用。肉厚な鋼板が使われているような感覚は、優劣はともかく日本製ミニバンと決定的に違うところだ。

タイヤは一見普通のコンチプレミアムコンタクト2だが、実は釘などが刺さっても空気が抜けにくい「モビリティタイヤ」と呼ばれるタイプ。粘着性のあるシール層を内側に張ったもので、言ってみればパンク修理材が最初から入っているタイヤ、みたいなものか。コンチネンタル独自の技術のようだ。このタイヤを装着したクルマは初だったが、走行面への影響は特に感じられなかった。

■外部リンク
コンチネンタルタイヤ公式サイト>コンチシールタイヤ

試乗燃費は7.8~11.7km/L。10・15モードは14.0km/L

今回はトータルで約180kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が7.8km/Lだった。さらに空いた一般道で大人しく走った区間(約30km)が9.7km/L、高速道路を80~100km/hで巡航した区間(約30km/h)が11.7km/Lだった。

10・15モード燃費は前述のように14.0km/Lで、車重1830kgの7人乗りミニバンとしては優秀。例えばエスティマの2.4は12km/L前後だ(エスティマハイブリッドは20.0km/Lだが)。またタンク容量が73リッターもあるので、 航続距離もかなり伸びそう。指定燃料はもちろんプレミアムになる。

ここがイイ

全体の「いいクルマ」感、豊富な「うんちく」、多彩なシートアレンジなど

乗れば乗るほど伝わってくる「いいクルマ」感。徹底的に分厚いトルク、完璧な変速を行う6速DCT、良い乗り心地、安心感、上質感、安全性などなど、決して声高ではないが、真面目なクルマ作り。それでいて電動スライドドアを標準装備にしたり、電動テールゲートを用意するなど、小技が盛り込まれたところも好ましい。

家電好きも確かに納得出来る「うんちく」が詰まっていること。何も知らずに試乗したら、誰がこのクルマの排気量を1.4リッターだと当てられるだろう。走りに不満はない上、人によっては、そのうんちくを語ることに相当な満足感を得られるのでは。それはこういうクルマを買う上で、大きな商品力だと思う。CMの家電芸人には安全性だけでなく、もうちょっと色々語ってもらうといいのでは。

 

サイズの割に運転席が低いため、乗り降りがしやすい。そして何よりも多彩なシートアレンジ。特に荷室がフラットになることは、車中泊をする上ではかなり重要。また大きな荷物が積める点は、郊外の一戸建てで子育てしているような家庭なら重宝するはず。シートアレンジの動きがロジカルで、カッチリしているのもドイツ車ならでは。

ここがダメ

日本では少数派の横3人掛けシート。坂道発進で時々下がる

3座独立となっている2列目シートへの評価が、個人においてはクルマへの評価となってしまうこと。横3人掛けがダメな人には、残念ながら一切評価されないだろう。特に日本では、少数派からの支持はあっても、多数派からの支持は得られない(それこそがこのクルマの存在意義なのだが)。先代シャランはシートの取り外しができたと思うが、出来ることなら今回も2列目の中から1席だけを取り外し可能とし、他の2席を横スライド出来たらと思う。こうすれば日本でも大ヒットの可能性があるはず。

パーキングやリバースからドライブに切り換えた直後などにブレーキを離すと、少し下がってしまうことが時々あること。トルコンATの感覚で乗るとびっくりするので、クルマに詳しくない人には事前に説明があった方がいいかも。

総合評価

紛れもなくVW車

以前にも書いたと思うが、ミニバンというのは人生のある時期に無性に欲しくなり(あるいは必要となり)、それが過ぎると見向きもしなくなるものだ。むろん多くの人にとって、その欲しい時期とは子育て時代だ。二人以上の子供がいて、上が3、4歳になれば、文字通りミニバンでなければ居ても立ってもいられない。その理由の一つがクルマの一座席を占拠するチャイルドシートであり、また祖父母などを乗せることで多人数乗車する機会が増えることであるのは、言うまでもないことだろう。

一昔前はそれゆえ、輸入車好き、クルマ好きは、走りがプアな国産ミニバンしかない選択肢を嘆いたものだが、最近は走りの国産ミニバン、そして輸入ミニバンが色々選択できる時代となった。かつて初代シャランが登場した時には、一部マニアが狂喜したものだが、今は選択肢が増えて実にいい時代になったものだ。その初代シャランは、日本車のガラパゴス的な使い勝手の良さに太刀打ちできなかったのだが、新型シャランに関しては日本のミニバンに近づいた部分も多く、またさすがに久々のフルモデルチェンジだけあって、グローバルに必要とされる要件を実現し、フォルクスワーゲンとしての主張もきちんと行っている点で、素晴らしい仕上がりになっている。

 

VWの主張、走りの素晴らしさは本文にあるとおり。ゴルフをはじめ、フォルクスワーゲン車に共通するしっかりとした乗り味は、金太郎飴的ではあるが、大型ミニバンであることを忘れさせるもの。小排気量エンジンと過給器、そしてDSGというVWお得意のパワートレインもまた素晴らしすぎる。アイドリングストップも違和感なく、燃費もこのサイズのクルマなら不満のないところ。室内の質感も他のVW車同様、素晴らしいものだ。日本的豪華さに満ちたアルファード/ヴェルファイアの対極を行くシンプルな上質感は、ミニバンに乗らざるをえないクルマ好きを満足させることまちがいなし。ミニバンながら、紛れもなくいつものVW車だ。

ではミニバンとしてはどうか。ヒップポイントが高すぎない運転席は、乗り降りしやすく秀逸。電動スライドドアの標準装備も大正解だろう。機能性だけを考えたら、ヒンジドアなどはミニバン以外でも無くしたいくらいだ(ラウムやポルテ、プジョー1007あたりがあまり売れなかっただけに今後出てくることは難しいだろうが)。電動であることも重要だし、スライドドアの窓ガラスも全開に近いほど降りるので文句なし。

少数でなりたつ輸入車ビジネス

ところがドイツ車、というか欧州車を強く主張しているのが2列目のシーティングだ。日本ではここを大人の特等席とし、このクラスでは大きめのキャプテンシートを2座を置くのが王道。しかしシャランでは、ここに小ぶりなシートが3つある。シートの作り自体はしっかりしているが、やはり大人には少し小さい。なので大人がひとりで座ると、「せっかくのこの広い空間で、この小さなシートに座らなくてはならない意味とは?」と考えてしまう。このボディサイズ、この価格なら、やはり2座仕様が欲しいと思う。

もちろん、2列目シートをフラットに倒せるのは素晴らしい。キャプテンシートの場合、そうした芸当は打てない。しっかり座れて、なおかつフラットに出来るのだ。もちろん3列目シートも簡単に倒せて、見事フラットになるので(奥行きは2メートルを超える)、車中泊は快適そうだ。むろん積載性は日本の大型豪華ミニバンなど比較にならないほど高い。VWらしい質実剛健さが光るところだ。後席をチャイルドシートが占拠することが多ければ、キャプテンシートは無用の長物。となればファミリーミニバンとしてはこちらの方が圧倒的に良いはずだ。この2列目シートをどう考えるかが、このクルマへの個人的な評価を決めるだろう。

そしてもう一つ重要なことがある。それは複数台所有の問題だ。大型ミニバンを持つ家庭の多くは、複数台を所有しており、大型ミニバンは日常的にはあまり使われていない。休日などハレの日に乗るのが豪華大型ミニバンなわけで、その点ではいくら実用的でも、見た目が地味なミニバンは分が悪い。つまり国産メーカーがシャランのようなミニバンを国内向けに作っても、商売にはならないだろう。

 

結局のところ、シャランは機能性云々より、もはや3リッターV6の時代じゃないでしょ、と思える人だけが乗ればいいクルマだ。そして、そういう人がそこそこいて、それゆえにそこそこ売れて、メーカーもディーラーも、そこで働く人も、無事にやっていけるという良い循環のビジネスがなり立てばいいわけだ。震災後は、大量生産・大量消費よりも、そういう少数で成り立つビジネスモデルがもてはやされるようになるだろう。そして輸入車ビジネスはそこにピタリとはまるものなのだ。「あまりたくさん売れないことは、皆が幸せということ」へと時代は変わりつつあるのかもしれない。

試乗車スペック
フォルクスワーゲン シャラン TSI ハイライン
(1.4リッター直4ターボ+SC・6速DCT・438万円)

●初年度登録:2011年3月●形式:DBA-7NCAV
●全長4855mm×全幅1910mm×全高1750mm ※RNS510装着車は1765mm
●ホイールベース:2920mm ●最小回転半径:5.8m
●車重(車検証記載値):1830kg(1040+790) ●乗車定員:7名

●エンジン型式:CAV
●排気量・エンジン種類:1389cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ+スーパーチャージャー・横置
●ボア×ストローク:76.5×75.6mm ●圧縮比:10.0
●最高出力:150ps(110kW)/5800rpm
●最大トルク:24.5kgm (240Nm)/1500-4000rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/73L
●10・15モード燃費:14.0km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット(+コイル)/後 4リンク(+コイル)
●タイヤ:215/60R16 モビリティタイヤ( Continental ContiPremiumContact2 ContiSeal )
●試乗車価格:395万8000円 (含むオプション:バイキセノンヘッドライトパッケージ[バイキセノンヘッドライト/ダイナミックコーナリングライト/ヘッドライトウォッシャー] 16万8000円)
●ボディカラー:ディープブラックパールエフェクト
●試乗距離:180km ●試乗日:2011年4月
●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧(ファーレン名古屋中央)

 
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