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トヨタ シエンタ ハイブリッド G新車試乗記(第767回)

Toyota Sienta Hybrid G

(1.5L 直4+モーター・232万9855円~)

12年ぶりにFMCした
トヨタ最小3列ミニバンは
チャレンジする“トヨタ”だった!

2015年08月21日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタ最小の3列シートミニバン


新型シエンタ
(photo:Toyota)

2015年7月9日に発売された2代目シエンタは、現行トヨタ車で最小の3列シートミニバン。新型は純ガソリン車に加えて、アクア譲りのパワートレインを持つハイブリッド車の新設定や、異彩を放つ個性的なデザインが特徴になっている。プラットフォームは前半がアクア(ヴィッツ系)ベースで、センターから後ろは新設計。開発コンセプトは「ユニバーサルでクールなトヨタ最小ミニバン」だ。

 

ハイブリッド車では駆動用のニッケル水素電池を、2列目の足元フロア下に搭載している(photo:Toyota)

広告キャッチコピーは「How do you use, Today? ~今日をどう使う?~」、「すべてをスポーツに」など。広告キャラクターにはコロンビア代表サッカー選手のハメス・ロドリゲス、そしてオリンピック招致活動で印象的だった滝川クリステルを起用し、ミニバンにも関わらず「スポーツ」なイメージを訴求している。

トヨタ全チャンネルで販売。月販目標は7000台


名古屋での発表会が行われた中部経済産業局(中区三の丸)の様子

生産はトヨタ自動車東日本(株)の宮城大衡工場。現行カローラと同じラインで生産されるという。

販売チャンネルは、初代はカローラ店とネッツ店だったが(途中からはカローラ店のみ)、新型はトヨタ店、トヨペット店を含む全4チャンネルになった。販売目標は12年前の初代登場時と同じ月間7000台。

なお、基本的には国内向けだが、日本仕様と同じ右ハンドル車が香港に少量輸出される。

【外部リンク】

初代シエンタについて

2003年にデビューした初代シエンタは、ホンダ モビリオ、日産 キューブキュービックに対抗して登場。車名の由来はスペイン語の「7」(sieste)と英語の「楽しませる」(entertain)で、コンパクトながら7人乗れることをアピール。プラットフォームは前半がラウム(ヴィッツ系)、リアサスがスパシオ(カローラ系)、フロアはほぼ新設計と、当時から凝ったものだった。

2010年には同じ7人乗り(ただしリアドアはヒンジ式)のパッソセッテ(2008年発売、2012年販売終了)に役割を譲る形で生産・販売をいったん終了したが、2011年にはマイナーチェンジと共に異例の復活を遂げ、結果的に12年間フルモデルチェンジなしで販売された長寿モデルになった。

 
【過去の新車試乗記】
 

価格帯&グレード展開

ガソリン車は168万9709円~。ハイブリッド車は222万6763円~


「フレックストーン」と呼ばれるカラースキームの一例。グリーンマイカメタリックとブラウンパールの組み合わせ
(photo:Toyota)

パワートレインは1.5Lの純ガソリン車と1.5Lのハイブリッド車の2種類。

純ガソリンのFF車は、新世代1.5Lエンジン「2NR-FKE」(109ps、136Nm)とCVT(無段変速機)の組み合わせ。4WD車は従来型1.5Lの1NZ-FEを継続する。ガソリン車(FF)のJC08モード燃費は20.2~20.6km/L。価格は168万9709円~で、上級グレードの「G」が198万0327円~。

ハイブリッド車は、アクア譲りの1.5Lハイブリッド(システム出力100ps)を搭載。JC08モード燃費は27.2km/L。価格は222万6763円~、上級グレードの「G」が232万9855円。

6人乗りと7人乗りを用意


「ウェルキャブ」も充実。車いす仕様車はガソリン車がベースで、最大3名+車いす1名仕様や5人乗り仕様などがある
(photo:Toyota)

乗車定員は、従来の7人乗りに加えて、6人乗りが新設定された。ハイブリッド車を含むFF車は6人か7人かを選択可能で、4WD車はすべて6人乗りになる。6人乗りのセカンドシートは中央にアームレストとドリンクホルダーが備わるもので、7人乗りのセカンドシートは中央席ヘッドレスト付のベンチタイプになる。乗車定員による価格差はない。

TSSCは全車オプション


内装(トリム)色はフロマージュ(写真)とブラックの2種類
(photo:Toyota)

先進安全装備については、現行カローラ、オーリス、ヴィッツに続き、Toyota Safety Sense C(TSSC)を全車にオプション設定。レーザーレーダーと単眼カメラにより、約10~80km/hの速度域で作動する自動ブレーキ、車線逸脱時に警告を行うレーンディパーチャーアラート(LDA)、オートマチックハイビーム(AHB)、先行車発進告知機能を備える。オプション価格はガソリン車のGやハイブリッド車なら5万4000円、それ以外は9万1800円。

 

パッケージング&スタイル

キーワードは“アクティブ&ファン”


新規開発色のエアーイエローがテーマカラー

新型シエンタで衝撃的なのが外観デザイン。“アクティブ & ファン”をキーワードに、トレッキングシューズをイメージしてデザインしたというエクステリアは、コンサバだった初代シエンタとは正反対。また、巨大なメッキグリルが定番の国内向けトヨタ製ミニバンとも真逆の、欧州車風になっている。はっきり言えばシトロエンのバッジがついていてもおかしくない。実車を前にすると造形に破綻がなく、質感も高いことが分かる。

特に試乗車のボディカラーは、テーマカラーでもある青みがかかった「エアーイエロー」で、街中では目立ちまくり。コンパクトミニバンでこんなにジロジロ見られるのも珍しい。

ボディサイズ(先代比)は、全長4235mm(+115)×全幅1695mm(同)×全高1675mm(+5)、ホイールベース2750mm(+50)。全長とホイールベースは、現行フリードより少し大きくなった。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
初代トヨタ シエンタ (2003~2015) 4100~4120 1695 1670~1680 2700 5.2~5.5
ホンダ フリード (2008~) 4215 1695 1715~1745 2740 5.2
2代目トヨタ シエンタ (2015~) 4235 1695 1675 2750 5.2~5.8
2代目トヨタ ウイッシュ (2009~) 4590~4600 1695~1745 1590~1600 2750 5.2~5.5
トヨタ アイシス (2004~) 4635~4640 1695~1710 1640~1670 2785 5.4~5.5
トヨタ プリウス α (2011~) 4615~4645 1775 1575~1600 2780 5.5~5.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装デザインも見ごたえあり


試乗車はブラック内装。オレンジのアクセントが効いている

インパネの造形、色使いの面白さ、質感の高さなど、内装も見どころ満載。どことなくフランス車(ルノー?)を思わせるエモーショナルな造形が面白く、ダッシュボードも硬質樹脂でありながら、独特のシボや表面処理でスラッシュ成形っぽく見える。ドアトリムには、ちょっと化繊っぽいが、サラサラした手触りのファブリックを貼る。上級グレード「G」に装備されるオートエアコン操作ダイアルの質感も妙に高い。

また、初代シエンタはトヨタが当時好んで使ったセンターメーターだったが、新型はメーター位置こそドライバー正面に移しながら、ステアリングの上から見る方法を採用している。これが意外に視認性がよく、デザイン的にもまとまっている。外観デザインがいいクルマは、内装デザインもいいという好例。

 

グラブボックス内は某メーカーのカバン風にオレンジ。中が見やすい。

ドリンクホルダーの質感も高い(エアコンの冷風が当たらないのは残念だが)。スタートスイッチがちょっと遠い
 

6~7人乗車が無理なく可能


最近のトヨタ車はシートがいい。左足フットルームはやや狭め

試乗車はハイブリッドの7人乗りで、セカンドシートは一般的な3人掛けのベンチシートになる。中央席用ヘッドレストがあるが、ルームミラーの視界を遮るので、普段は取り外しておくのがいい。

セカンドシートの足もとフロアは、その下にバッテリーがあるとは思えないほど低く、出っ張りもない。スライドドア部の乗り込み高さは先代より55mm低く(FF車で330mm)、スライドドアの開口幅は50mm拡大されたという。とても乗り降りしやすい。

初代から劇的に進化したのがサードシート。初代はエマージェンシー的なものだったが、新型は大人でも快適に過ごせるものになった。不満と言えば、セカンドーシートの背もたれが眼前に立ちはだかることくらいか。フリードの6人乗り(キャプテンシート)だと真ん中が空いていて、視界の点では優れる。

 

サードシートは足もとスペースもあり、意外に快適。サイドの小窓もいい感じ

試乗車は7人乗り仕様。セカンドシートは前後スライド、リクライニング、タンブル格納が可能
 

荷室もいろいろアレンジできちゃう


サードシート使用時の荷室は最小限。フロアの上にある袋は三角表示板

サードシート使用時の荷室スペースはミニマムだが、そのサードシートはセカンドシートの座面下にすっぽり格納できる。これが新型シエンタの見せどころで、知らない人が格納時だけ見たら、5人乗りだと勘違いしそう。ちなみにフリードのサードシートは、現行ステップワゴンのような床下収納ではなく、サイド跳ね上げ式になる。

また、シエンタのセカンドシートは背もたれを水平に畳めるほか、座面ごと前に跳ね上げるタンブル格納も出来る(これは下にサードシートを格納するためでもある)。フリードはセンタータンクレイアウトのおかげでパッケージングの点では有利な立場にあったが、今回はトヨタが一気に巻き返してきた、という感じ。

 

サードシートを格納した状態で、セカンドシートをタンブルしたところ

同じくサードシートを格納した状態で、セカンドシートの背もたれを倒したところ
 

荷室のフロアボードを外したところには、パンク修理キットを搭載する

ハイブリッド車では、エンジンルームから追い出された鉛バッテリーが荷室床下に配置される
 

基本性能&ドライブフィール

アクアより300kg、2代目プリウスより100kg重い


ハイブリッドのエンジンルーム。ガソリン車の方は写真右のPCU(パワーコントロールユニット)の代わりに鉛バッテリーが搭載される

試乗したのは最上級グレードの「ハイブリッド G」(232万9855円)。TSSC、ナビ、16インチアルミなどのオプション込みで総額284万6203円という仕様。

パワートレインはアクア譲りの1.5Lハイブリッドで、元をたどれば先代(2代目)プリウス用を大幅に改良したものだ。システム出力はアクアと同じ100psになる。

さて、アクアや2代目プリウスの場合、出足に関しては電気モーターのトルクでググっと発進・加速する印象が強いが、新型シエンタの方は発進こそモーターでするものの、その後はエンジンで走る感が強い、というのが第一印象。

車重は1380kgあり、アクアより300kgほど重く、2代目プリウスと較べても100kgほど重く、1.8Lハイブリッドの現行(3代目)プリウスとはほぼ同等。車重の重さをカバーするため、最終減速比はアクアの3.190から、3.791にローギアード化されている。

意外に山道はそつなくこなす

7名乗車に対応する格上のリアサス、長いホイールベースのおかげで、ワインディングでは見た目に反して?しっかり走ってくれた。このあたりは先代でもなにげに評価された部分。基本的にはアンダーステアが強くてロールも大きいが、うわっ曲がらないと思ったり、グラっと来たり、リアが唐突に出たりといったことはなく、安心して走ることができる。最後にはS-VSCが緩やかに介入する。

高速道路でも、ソフトな足回りやロングホイールベースなどの恩恵で、乗り心地は良好。ただし急なステアリング操作に対してはロールが大きく出る。このあたりは欧州車的な走りより乗り心地重視という感じ。

静粛性に関しては、風切り音は全く気にならなかったが、速度が上がってくるとロードノイズか排気音か、こもり音が全体に高まってくる。また、150km/hあたりでリミッターで出力制御されるようで、最高速はそれ以上は出ないようだ。つまりプリウスのような高速道路での速さはない。操安とのバランスや実用燃費に対する配慮だろうか。

TSSCとBi-Beam LEDについて

TSSC(Toyota Safety Sense C)の主な機能は、約10~80km/hの速度域で作動するプリクラッシュセーフティ(PCS)、レーンディパーチャーアラート(LDA)、オートマチックハイビーム(AHB)、そして先行車発進告知機能の4つ。

PCSの自動ブレーキはもちろん試乗中に体感することはなかったが、左折車の横を通りすぎる時や、狭い道で対向車とすれ違う際に、警報とディスプレイ表示、そしてABSのアクチュエーターが作動することがあり(PCSと連動したブレーキアシストと思う)、PCSの意義を体感した。なお、警報そのもは80km/h以上、約140km/hまで作動するようだ。

LDAに関しては、車線を踏む度にピーピーとうるさく、欲を言えばステアリングが振動するタイプだといいと思った。また、LDAのおかげで、電動パワステの中立付近が今ひとつビシッとしていないのもかえって気になった。こうなると、ついつい操舵アシストが欲しくなる。

AHBについては、それ以前にBi-Beam LEDヘッドランプが明るくて配光もいいしと好印象だった。LEDは電気消費量も少ないし。ただしBi-Beamにするには、LEDランプパッケージ(10万5840円)を選択する必要があり、全車標準だったら良かったのに、と思った。

先行車発進告知機能には、今回も何度かお世話になってしまった。今や軽自動車にもある装備で、そのうち付いているのが当たり前になりそう。

試乗燃費は14.3~16.3km/L。JC08モードは27.2km/L


指定燃料はレギュラーで、燃料タンク容量は42L

今回はトータルで約240kmを試乗。試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を走った区間(約80km)が14.3km/L。高速道路を80~100km/hで走った区間(約100km)が16.3km/L。また、区間が短いので参考値ながら、一般道を大人しく走った区間(約20km)が19.3km/L。トータル燃費(撮影区間以外の約210km)は15.5km/Lだった。

JC08モード燃費は、ガソリン車が20.2~20.6km/Lで、ハイブリッド車が27.2km/L。アクア(JC08モード37.0km/L)より300kg重いボディで、実燃費で14~16km/L台で走ってしまうのはやはりハイブリッドならではの芸当か。

 

ここがイイ

デザイン、パッケージング

デザインは今のところ賛否両論あるようだが、実車を見て、あるいは路上でよく見かけるようになったら、徐々に好意的なものに変化するだろう。とても意欲的な内外装デザインであり、クオリティも高く、何より大型メッキグリルを使っていないのがいい。モーターデイズとしては、このデザインを高く評価する。

3列シートのパッケージング。まず、座り心地のいい立派なサードシートがまるで存在しないかのようにセカンドシートの下にすっぽり格納できてしまうのが秀逸。また、セカンドシートをタンブルできるなど、シートアレンジの自由度も高い。センタータンクレイアウトのフリードに負けないために、知恵を絞りまくっている。

ここがダメ

ハイブリッドの走り。16インチ仕様の小回りの効かなさ

今回試乗したハイブリッド車の走りは、総じて全体に重く、エンジンで走る感が強い。同じ1.5Lハイブリッドの先代(2代目)プリウスと比べても、モーターで力強く加速する「ハイブリッド感」は薄かった。トップスピードもリミッターで低めに抑えられているようだ。となると、実質30万円ほど安い新世代1.5Lガソリンエンジン搭載車の方も気になる。モーター分のトルクはないが、馬力自体はハイブリッド車のシステム出力100psに対して、ガソリン車は109psあるし、車重は60kg軽い。

試乗車の場合、オプションの195/50R16タイヤ仕様だったため、最小回転半径が標準の5.2mから、コンパクトカーにあるまじき5.8mに広がってしまっていた。5.8mと言ったらアルファード並みであり、実際のところ小回りは本当に効かない。16インチアルミホイールは確かに見栄えはいいが、モーターデイズとしてはお勧めしない。

 

センタートンネルが微妙に張り出していて、ドライバーの左足もとが狭い。言われないと気付かないくらいの微妙さではあるが、少々気になった。

荒れた舗装路を特定の速度で走ると、たまにピッチング(上下方向の揺れ)がなかなか収まらないことがある。ロール後の揺り戻しも大きめで、一人で乗る時はもう少し硬めでもいいかな、という印象。

 

ハイブリッド車や、TSSCを装備したガソリン車に備わるマルチインフォメーションディスプレイは、切替時にしばらく表示される情報画面のメニューが情報表示部分の上部を遮ってしまい(写真)、少々使い勝手が良くなかった。メーターパネルの天地が薄いため仕方なく、だろう。

総合評価

三河魂が垣間見える?

先代の「あっさリラックス」なデザインの正反対を行く、シトロエン DSラインかと思うような外観は、まずもって素晴らしいと思う。日本車ってなんでこうなの、と思うことが多い昨今だが、同じ会社からこうも違うデザインテイストのクルマが出てくるあたりに、トヨタという会社の可能性を見る思いだ。普通なら「キーンルックはどこに行ってしまったんだ?」となりそうだが、現経営陣はこれにGoを出している。ドイツのメーカーのごとく頑固な一貫性がない代わりに、こういった新しいものを商品化してしまうのが、トヨタらしさかもしれない。まあ巨大企業ゆえ、それだけ方向性がバラバラという見方もないわけではないが。また、マーケティング主導の商品開発だけでなく、チャレンジングな商品開発が認められているあたりに、官僚的ではない三河魂が垣間見えるというのは穿った見方か?

 

室内でも、特に質感には目を見張る。スズキが軽らしからぬ質感を出しているように、このクルマはコンパクトクラスらしからぬ質感。ステッチの入った革張りのように見えるインパネの樹脂素材は、見た目だけならスラッシュ成形などもう必要ないのでは、と思えるほど。各メーカーが競い合って質感アップしている昨今は、クルマの進化がまさに目に見えて分かるところだ。斬新なインパネデザインもほめたいところだが、ここは外観同様、かなり好みが分かれるだろう。しかしかつてセンターメーターで斬新なインパネを作り出していたトヨタが、新たなチャレンジをしたという点では評価すべき。

 

シートアレンジもよく考えられていて、セカンドシートを跳ね上げることで、荷室がうんと広くなるあたり、先代を超えた使い勝手になっているし、サードシートの居住性もぐんと良くなった。また、先代のサードシートは今はなきファンカーゴの後席をベースにしたもので、セカンドシート下に格納するところは新型にも継承されており、今回も荷室の広さにファンカーゴを思い出してしまった。

提案型のクルマではない

とまあ、外観、内装、シートアレンジと絶賛してきたが、走りに関しては少々残念な思いもある。当然とはいえ、トヨタのハイブリッド車だなあという金太郎飴感。それに加えて「なんだか妙に走らないなあ」という感覚、そして左足の置き場がなんだか狭いという辛さ。デザインや使い勝手がよければ、走りは気にしないという人がもはや多数。特にこのクルマのコンセプトからすれば、走りなど二の次、三の次なのも分かるが、クルマである以上、某メーカーのようにそれなりにズムズムして欲しいもの。いや、もしかすると、今後の大衆向け量産車は今以上に走らない方向へ変わっていくのかもしれない。直進安定性や操縦性さえちゃんと確保されていれば、妙にパワフルじゃないほうがより安全なのだし。その意味では最高速だって150km/hも出れば十分なわけだが。

 

初代は中断はあったものの約12年間も販売された。新車で買ったにしろ、中古で買ったにしろ、12年前のシエンタに乗っている人は、そう多くはないと思うが、まだまだいるはず。13年経つと税金も上がるし、走行距離だって10万kmを超えているだろうから、さすがにもうこれ以上は乗っていられない、ということになる。

とはいえ代替が検討できるライバル車は、現時点ではモデル末期のホンダ フリードくらいだ。身内のウイッシュやアイシスも登場してから久しい。しかしこのボディサイズで、いざという時に多人数乗車できるクルマが欲しい人は少なくない。その意味で、シエンタの後継モデルを出せばそこそこ売れるというマーケティング結果は出るはずで、その予測を担保にして今回は斬新なデザインでチャレンジしたのかもしれない。売れるか分からないけど冒険してみました、という提案型のクルマではないように思う。

愛されるデザインを長く売る

実際、発売後1ヶ月の実績は、目標の7倍にもなる4万9000台とバカ売れ。ハイブリッド車とガソリン車の比はちょうど半々。購入者は女性が3割というが、女性が主に乗る場合でも男性名義で購入されることが多いから、実質的なユーザーは半分以上が女性だろう。そして年齢的にも幅広いという。初代も同様に7000台が月販目標だったが、立ち上がりの目標値はわずか1万5000台だった。12年の間に、シエンタはこれほど「売れるクルマ」に育ったわけで、当時いろいろ出た斬新なトヨタ車(ラウム、スパシオ、オーパなど)の中では、ポルテと共に数少ない成功例だろう。

初代シエンタが、色々経緯はあったにせよ12年も販売されたのは、現代のクルマがものによっては10年程度は十分に商品性を保てることの証左ではないだろうか。新車で買った場合、10年程度は乗ることが増えている昨今なので、それも合わせて考えると、モデルサイクルは今後どんどん伸びていくだろう。その意味では10年色褪せないデザインは重要だ。発売した時は斬新でも、10年保たせないといけないという意味では、ある程度の先読みも必要になる。

 

初代シエンタが登場した2003年頃には、まだ初代ヴィッツが販売されていた。初代ヴィッツにはまるでフランス車のようなおしゃれさがあったが、6年ほどでフルチェンジして逆に魅力を失ってしまったように思う。シエンタは12年という時を経て、2000年代初頭の、魅力的なクルマを連発した時代のトヨタ車に先祖返りしたようだ。愛されるデザインを長く売るというビジネスが、日本でもそろそろ成り立っていいのではないかと思う。このクルマはその試金石かもしれない。

 

試乗車スペック
トヨタ シエンタ ハイブリッド G
(1.5L 直4+モーター・232万9855円~)

●初年度登録:2015年7月 ●形式:DAA-NHP170GMWXQB
●全長4235mm×全幅1695mm×全高1675mm
●ホイールベース:2750mm
●最低地上高:145mm
●最小回転半径:5.8m
※オプションの195/50R16タイヤ装着車の場合。標準仕様は5.2m
●車重(車検証記載値):1380kg(790+590)
●乗車定員:7名

●エンジン型式:1NZ-FXE
●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:75.0×84.7mm ●圧縮比:13.4
●最高出力:54kW(74ps)/4800rpm
●最大トルク:111Nm (11.3kgm)/3600-4400rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42L

●モーター形式(フロント):2LM
●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
●定格電圧:-V
●最高出力:45kW(61ps)/-rpm
●最大トルク:169Nm(17.2kgm)/-rpm
.2kgm)/-rpm

●駆動用バッテリー種類:ニッケル水素電池
●トランスミッション:電気式無段変速機

●システム最大出力:73kW(100ps)/-rpm
●システム最大トルク:-Nm(-kgm)/-rpm
●JC08モード燃費:27.2km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション形式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:195/50R16(Yokohama dB Decibel E70C)

●試乗車価格(概算):284万6203円 ※オプション:195/50R16タイヤ&16×6J アルミホイール 8万2080円、Toyota Safety Sense C(レーザーレーダー+単眼カメラ方式プリクラッシュセーフティシステム、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム) 5万4000円、先行車発進告知機能 -円、スーパーUVカット&シートヒーターパッケージ 2万9160円、ナビレディパッケージ(バックカメラ、ステアリングスイッチ) 2万9160円、LEDランプパッケージ(Bi-Beam LEDヘッドランプ、フロントフォグランプ、コンライト等) 10万5840円、SRSサイドエアバッグ+カーテンシールドエアバッグ 4万8600円、スタンダードナビ 15万0120円、ETC車載器 1万7388円
●ボディカラー:エアーイエロー

●試乗距離:約250km ●試乗日:2015年8月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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