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オペル シグナム 2.2新車試乗記(第305回)

Opel Signum 2.2

(2.2リッター・5AT・355万円)

2004年02月14日

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キャラクター&開発コンセプト

「スポーツ・リムジン・ワゴン」

2003年12月6日に日本で発売されたシグナムは、ベクトラシリーズの最上級モデル。名をシグナムとしたのは、オメガが旧態化(日本では販売終了)した今、オペル車の頂点となる特別なモデルだからだ。

面白いのはシグナムが高級車で定番のセダンではなく、ハッチバックという車型を選んだ点。長いホイールベースで得た余裕はすべて後席に使う。よってオペルはシグナムを単なるスポーツワゴンではなく「スポーツ“リムジン”ワゴン」と呼ぶ。メーカーが挙げる「デザインのダイナミズム」「室内空間設計の自由な発想」「仕上げの美しさ」で新境地を開く。ブランドイメージの牽引役も期待されるところ。

3代目となる現行ベクトラから顕著になった品質向上もポイントだ。べクトラで証明した、クラストップレベルの高いシャシー性能も引き継いでいる。言わば、ハード面は文句なしに良い現行ベクトラに、個性と斬新なアイディアを盛り込んだのがシグナムだ。生産はオペル本社のあるリュッセルスハイム工場で行われる。

続々と新型車が登場するオペル

自動車メーカーとして100年の歴史を誇るオペルは、1930年前後にアメリカのGM傘下へ。GMの欧州部門として高いシェアを誇ってきた。ドイツでは VWと並ぶフルラインメーカー(小型車から大型車までを生産するメーカー)であり、手堅い製品作りで幅広く支持されている。

一方、日本では最近元気のないオペル。シグナムに続いて今春3月には小型ミニバンのメリーバが発売され、秋にはゴルフ5の好敵手である新型アストラが上陸する予定。2004年はオペルにとって「かわいいヴィータ」導入以来の、一大攻勢の年となる。

価格帯&グレード展開

ベクトラとの差はわずか

欧州には4気筒ターボやディーゼルエンジンもあるが、日本仕様は2.2リッター直4の「シグナム 2.2」(355万円)と3.2リッターV6の「シグナム 3.2」(422万円)の2モデル。いずれも5速AT装備で、3.2には左ハンドルも用意する。3.2は基本的にベクトラと同じV6だが、2.2は直噴化された新型エンジンを搭載。

ちなみに、ベクトラセダンは335~405万円。5ドアのベクトラGTSは343~410万円で、シグナムとそれほど変わらない。シリーズのどれを選ぶかは、スタイルの好みや使い勝手と言えるだろう。

パッケージング&スタイル

胴長の「ベクトラスポーツワゴン」

ボディサイズは全長4635mm×全幅1800mm×全高1460mm。ベクトラ(セダンとGTS)より全長で+25mm、全高で+5mm大きいだけと、実はほとんど同サイズだ。一方、ホイールベースは130mmも長い2830mm。同じようなコンセプトのホンダ・アヴァンシア(1999年~。すでに生産終了)は、全長4700~4795mmで、ホイールベースが2765mm。これでもホイールベースは十分に長かったが、シグナムの方がずっと胴長だ。

外観は、前から見るとベクトラGTSに限りなく近く、上下グリルの意匠がわずかに違うだけ。リウインドウを大きく寝かせた後姿は、キャッチーな意匠に乏しく、バッジを見ないとどこのメーカーの、何のモデルかが分かりにくいが、実はよく見るとなかなか個性的で、アウディ・アバントのようなフェンダーの張り出しや大径17インチホイールはスポーティですらある。Cd値は0.33だ。

ベクトラに準じたインパネ

インパネ、ステアリングまわりのデザインもベクトラとほぼ同じ。シンプルでカチッとした仕上げだ。ダッシュボード上面やドア内張りの上縁はソフトパッド入りで、室内ドアハンドルには手触りの良い表面仕上げが、グラブボックスやコイン入れには植毛加工が施される。スイッチのタッチ、フタ類の動きにも安っぽさはない。クオリティコントロールは今や日本車並みと言っていい。

誰でもベストポジション

前席はオペル車らしいガッシリした作り。スポーツシートと呼べるくらいホールド性も高い。座面高を調節するサイドのラチェット式レバーを操作したら、座面の前側しか動かないので「ドイツ車らしくない」と思ったら、なんと後ろ側に別のラチェットレバーがあった。ダイヤルが前後に付くタイプはあるが、レバーがダブルで付くタイプは初めて見た。もちろん操作性も調節幅も文句ない。ステアリングはチルト(上下)とテレスコ(前後)付き。ほとんど誰でもベストポジションが取れるはずだ。

本物のリムジン機能

「スポーツ“リムジン”ワゴン」だけあって、後席の足元スペースはリムジン並み。130mmもホイールベースを伸ばす理由は、日本車なら普通「3列シートを押し込むため」だが、シグナムはすべて後席に使う。シートは左右別々に130mm(ちょうどホイールベース延長分)の前後スライド機能を持ち、さらに 30度のリクライニング機構付き。オペルは「フレックス・スペース・コンセプト」と呼ぶ。

 

130mmのスライドだが、引越しでもしない限り(よほどの荷物を運ばない限り)、一番後ろにしたままになるだろう。なぜかと言うと、この手のスライド式後席によくある「一番後ろだと逆に落ち着かない」ことがないからだ。理想的なシート形状、高い遮音性(前席から離れても、普通に会話が出来る)を備えたことで、リムジンの言葉がカタログアピールに終わっていない稀なケース。

 

乗車定員は5人で、後ろの中央席には立派な3点式シートベルトが備わる(普段は天井のシャッター式フタ付きスペースに収納)。しかし、実際のところ、ここはアームレストもしくはそれを180度反転させて使う小物置き用のスペース。クッションは薄くて固く、小さな子供でも無理がある。贅沢なフル4シーターを想定した作りだ。

 

オプションの「トラベル・アシスタント」はここに取り付けるもので、DVDプレーヤーやノートパソコンなどが固定できる折り畳み式テーブル、冷蔵庫、12 ボルト電源などを備える。天井の航空機風の小物スペース(何を入れたらいいんだろう?)の視覚効果も手伝って、ファーストクラスは言い過ぎでも、ビジネスクラスくらいの快適性は間違いない?

ワゴンRの技術がこんなところに?

「スポーツ・リムジン・ワゴン」の「ワゴン」部分だが、積載性も大きなセールスポイント。後席はワンタッチで前に倒れ、簡単にフラットな荷室が出来る。欧州車は座面を跳ね上げてから背もたれを倒すダブルフォールディングにこだわる傾向がまだあるから、これは画期的だ。しかも、背もたれと連動して座面が沈み込む…。うん? これってどこかで見たことが…。ひょっとして、同じGMグループのスズキ・ワゴンRのノウハウが伝授されたか?

 

荷室容量は最大1410 リットル。日本発売予定のベクトラワゴンには負けるだろうが、「リムジン」のトランクと考えれば十分だろう。

基本性能&ドライブフィール

オペル初の直噴エンジンでパワフルに

「乗れば良さが分かる」クルマの代表が今のベクトラシリーズ。がっしりしたシャシー、しなやかなサスペンション、静粛性など、2.0リッター級セダン(Dセグメント車)でトップクラスだ(02年8月のベクトラ2.2の試乗記でお伝えした通り)。同クラスのFFセダンを多く作る日本メーカーは、間違いなくベンチマークにしているはずだ。

その印象はシグナムでも同じ。大きく変わったのは、2.2リッターエンジンが直噴化されてぐっとパワフルになったこと。圧縮比を10.0から12.0へ大幅アップするなどして、出力を6%(147ps → 155ps)、トルクを約10%(20.7kgm → 22.4kgm)、燃費を約6%向上させた。

実際の違いは数字以上。従来エンジンはかなりアンダーパワーだったが、この直噴ユニットは、出足や中間加速、高回転でのパワー感でほぼ不満を感じなくなった。回しても振動が出ず、静かな美点はそのまま。5ATの変速もそつがなく、街中をストレスなく走ることが出来る。高回転まで回して楽しいタイプではない。

軽快な「2.2」

V6と比べると、やはり豊かなトルク感、回転の滑らかさで4気筒は譲るだろうが、振動やノイズ面で4発のデメリットはほとんど感じない。直噴だが低速トルクもちゃんとあるし、アクセルを踏んで走る楽しみもある。V6に比べて鼻先は80kgも軽いから、クルマの動きはなかなか軽快だ。V6の「3.2」ももちろんいいと思うが、車両価格で67万円も安くて燃費にも優れる「2.2」もいい選択だと思う。

山道では、レガシィみたいな先鋭化したスポーツワゴンのソリッド感はないが、乗り心地を犠牲にしない、いいバランスを感じる。ハンドリングはしっかりしており、挙動は見事にニュートラル。ねらいどおりに操れる。高速巡航は高いトップギア比を持つ5ATのおかげもあってもちろん快適。参考までに、欧州仕様の最高速(カタログデータ)は「2.2」の5ATで206km/h、「3.2」の5ATで235km/h。

セダンみたいな後席

シグナムの売りであるリムジンスペース=後席だが、すぐ後ろに巨大なハッチゲートがあるとは思えないくらい、走行中のノイズの侵入が少ない。普通はもっと後方からゴーゴーいうロードノイズや排気音が降ってくることが多い。いずれにしても、ボディ後端がこれほどビシッとした「ハッチバック車」はちょっと珍しい。スピードに関係なく、乗り心地もいい。セダンの後席に慣れた家族も、不満は感じないはずだ。

ここがイイ

これまでホンダ・アヴァンシア以外、提案したことのなかったリムジンワゴンというコンセプト。このあたりは総合評価でさらに詳しく。

硬めだが乗り心地は悪くないし、静粛性も高い。シートの出来もいいし、前述のように調整も自在。後席シートのアレンジもよくできているし、もちろん座り心地もいい。後席センターコンソール部分がクルリと回って小物置き場になるアイデアは日本車顔負け。さらにトラベルアシスタント(オプション)を装備した状態では、理想的なVIP席になる。これ、冷蔵庫になり、ノートパソコンも置ける大型コンソールだ。天井についた大型のコンソールも何となく航空機っぽいし、後席空間が飛行機の客席をイメージして作られたのは間違いないだろう(あとは助手席にスッチーがいれば完璧だ)。

日本のVIPカーの後席は成金的作りでビジネスっぽさを感じさせないが、シグナムの場合はかなりクールなVIP席なのがいい。できるビジネスエリートが美人秘書に運転させるクルマだ。

その後席はフォースリミッター付シートベルト、アクティブヘッドレスト(後席用としては世界初)、フルサイズヘッドカーテンエアバッグが装備され安全性も高い。ちなみにESP(ESC)も3輪まで個別にブレーキ制御を行う新タイプ。安全装備は充実している。

ここがダメ

けして悪くはないのだが、スタイリングはかなり地味。フラッグシップらしさが皆無なのが残念。クルマという、常に大衆の目に触れる商品ゆえ、華がないのは辛い。

インテリアはステッチの効いた革シートやドアの内張など、かなりいいムードなのだが、ダッシュボードやドアのアッパー部分の大部分をおおうソフト樹脂パッド(シボ入り)は、質感が不足気味。木目パネルでなく、メタルパネルが使われているのはクールでいいのだが、ここだけが惜しい。

コンソールセンター上部のいいところにあるドライブコンピュータの大型ディスプレイ(モノクロ液晶)は、シグナムでも健在。本来ここにはカーナビがつくべき。ドイツと日本のカーナビ事情の差が生んだ矛盾だろう。

なおこれは試乗車個体の問題だったかもしれないが、150km/hを超えるような速度域では、安定感が今ひとつだった。

総合評価

すっかり記憶の彼方へ押しやられているホンダ・アヴァンシアは、モーターデイズではカーオブザイヤーだった。大型3列ミニバンではなく、後席はミニバン並みの広さながら快適で、乗用車の走りで4人を運ぶワゴン、このアヴァンシアのコンセプトは、そっくりシグナムが引き継いだといってもいいだろう。1999年のアヴァンシアの試乗記では、これぞ21世紀のクルマと書いた。しかし、その後、日本ではミニバン人気が加速し、さらにミニバン自体が新型オデッセイのようなへたな乗用車以上の性能を持つ「低い」ものへ変わってしまった現在、もはや誰もその意見に賛同してはくれないだろう。

しかし、ミニバン後進国?である欧州では違ったようだ。主流である5ドアハッチバックの次のもの、として登場したストレッチリムジンであるシグナムは、結果としてアヴァンシアと同じコンセプトとなった。ミニバンを乗用車に近づけるという、かなり無理矢理な日本的自動車進化に対し、5ドアハッチバックを後席重視のミニバンへ近づけるというごくまっとうな進化を遂げたのがシグナムといえる。

ということで、欧州ではわかりやすいが、日本では過去のコンセプトというのがシグナムのスタンス。クルマとしては至極まっとうな進化だが、マーケティング的には日本では理解されにくいだろう。しかし、このクールな後席をまっとうに評価できる人には、シグナムは必ずうけるはずだ。いわゆるクルマ好きや旧来からの企業のVIPでなく、IT系会社のVIPなどにアピールすれば売れると思う。日本仕様のトヨタアベンシスより静かで快適だったし、何より今後の日本車では絶対に登場しないコンセプトのクルマなのだから。

試乗車スペック
オペル シグナム 2.2
(2.2リッター・5AT・355万円)

●形式:TA-Z02Z22L●全長4635mm×全幅1800mm×全高1460mm●ホイールベース: 2830mm●車重(車検証記載値):1510kg(F:890+R:620)●エンジン型式:Z22●2198cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●155ps(114kW)/5600rpm、22.4kgm (220Nm)/3800rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L●10・15モード燃費:ーkm/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:215/50R17(GOODYEAR製 EAGLE NCT 5)●価格:355万円(試乗車:355万円 ※オプション:ー)●試乗距離:約120km

 

 
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