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日産 スカイライン 350GT Type SP新車試乗記(第446回)

Nissan Skyline 350GT Type SP

(3.5L・5AT・380万1000円)

12代目に進化した
ニッポンのスポーツセダンに
新しい「ときめき」はあったか?

2007年01月13日

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キャラクター&開発コンセプト

キープコンセプトの12代目

2006年11月20日に発売された形式名「V36」となる12代目スカイラインは、先代V35の正常進化版だ。ホイールベース長の変更もなく、エンジン形式も「VQ」の名を継承するなど、基本的には先代を土台とする。逆に言えば、土台以外の全てを刷新。内外装を変更し、ボディ剛性も大幅に強化。エンジンパーツの大半を変更して回転フィーリングや高回転域の伸びを改善したほか、サスペンション構造も見直した。世界初のアクティブな4輪操舵「4WAS」も採用する。

米国では「インフィニティ」

先代同様、米国では「インフィニティ・Gセダン」として販売される。米国進出後に大きな成功を収めたという点で、同じような境遇のイチローや俳優の渡辺謙をCMに起用するのも話題だ。国内の目標販売台数は月間1000台と決して多くない。

関連サイト
Infinity USA 公式サイト(英語)
https://www.infinitiusa.com/

価格帯&グレード展開

「250GT」が300万円台前半、「350GT」が300万円台後半

2.5リッターの「250GT」(279万3000円~331万8000円)と3.5リッターの「350GT」(348万6000円~380万1000円)という構成で、4WDの250GT FOUR(27万3000円高)もある。インフィニティGセダンには6MTもあるが、日本仕様は5ATのみだ。

「カーウイングス」ナビは、サイドおよびリアモニター付きで29万8200円のオプション。売りの一つである4輪アクティブステア(TYPE SPないしType Sのみに設定)もオプションだ。

パッケージング&スタイル

抑揚が付き、男性的に

ボディサイズ(先代比)は全長4755mm(+5)×全幅1770mm(+20)×全高1450mm(-20)とわずかではあるがワイド&ローに。一方で見た目の変化はそれ以上に大きく、平板で退屈だった先代に比べてかなりドラマチックに見える。日本的に楚々としたレクサスと比べると、アメリカンで男性的だ。

 

巷で言われているように、上級のフーガ(北米ではインフィニティ M35 / M45 )と印象が似てしまったのは否めないところ。スカイラインの象徴だった丸型4灯リアライトは今やフーガにさえも付いている。なお、すでにスクープされているように、2007年中に登場する次期「GT-R」の方は、まったく別のデザインとなる。

スポーティな内装、和紙風のアルミパネル

室内デザインも、やはりフーガを思わせる。高級感は控えめで、標準の黒内装はスポーティな印象が強い。メーターシュラウドと一体で動く電動チルト/テレスコステアリングを調整すれば、ばっちりドライビングポジションが決まる。センターコンソールのアナログ時計はちょっとオジサン趣味だが、タイトなコックピット感はいかにも走りのクルマらしい。

標準仕様の左右ドアとセンターコンソールには、和紙のような独特の表面仕上げが施された本アルミ製パネルが張られる。これはインフィニティも同じで、英語でちゃんと「ジャパニーズ・ワシ・ペーパー」と説明されている。

つま先が入らない後席

狭いと言えば語弊があるが、後席の足元は少なくとも足のつま先がシート下に入らない点で不満を覚える。FR車ゆえに同寸法のFF車より狭いのは仕方ないが、この辺りは上級のフーガとの棲み分けだろうか? レクサスISよりルーフの絞り込みが控えめな分、頭の周囲は広く感じられる。

トランク容量は430Lとこのクラス(中型FRセダン)の平均。カタログには9インチゴルフバッグが4個積めるとある。アームレスト部分のみトランクスルーが可能。テールゲートにドアハンドルがあるのは便利だ。

基本性能&ドライブフィール

80%を変更した3.5リッターVQ

試乗車はGT350 タイプSPに、オプションの4輪アクティブステアを付けた最上級仕様。ボタンを押すと始動する新開発VQ35HRは、従来のVQ35DEをベースにパーツの80%を変更したもの。「HR」とは「High Revolution(高回転)」と「High Responce(高い応答性)」のことで、その名の通り高回転の伸びと鋭いレスポンスを得るため改良されたユニットだ。

具体的には、V6エンジンでは採用の少ない(取り回しが難しい)完全等長エキゾーストを採用。コンロッドの延長やブロック自体にも補強を入れるという大手術で、許容回転数を7500回転までアップ。3.5リッターの排気量から315ps/6800rpmと36.5kg-m/4800rpmを発揮する。1シリンダー:600cc弱の量産エンジンとしては、かなりの高回転型だ。先代に比べてエンジン搭載位置は15mmも下がっているという。

実際、エンジンのフィーリングはかなりスポーティになり、以前のVQ35DEのようにトルクでグイグイ押し出すような粗っぽさが消え去った。依然として洗練度は往年の名機である直6の「RB」には及ばないが、そもそも当時のRBとは排気量が違う。絶対的な加速力も十分で、試乗車で1620kgのボディをほぼ意のままに走らせることが出来る。

打点は550点アップ

エンジンに劣らず印象的なのがシャシーだ。とにかくボディ剛性が抜群に高い。そのガッチリ感は最新のBMWもかくやというくらいで、日産によれば数値的にはドイツ製ライバル車を上回るという。スポーツカーのポルシェと比べても、997(現行911)には至らずとも、996(先代911)くらいか? という感じだ。なにしろボディの補強対策が徹底している。スポット打点数を550点増やし(約10%増し)、アーク溶接も20ヵ所増やしたほか、レーザー溶接長を従来の2.6m から8.2m に延長。その結果ねじり剛性は40%、フロント部の横曲げ剛性は190%(1.9倍ではなく2.9倍だ)もアップしたという。先代オーナーはちょっと複雑な心境だろうが、とにかく剛性感に関しては別物といっていい。

今回の試乗はハーフウェットからヘビーウェットという路面状況で、良くも悪くもFRらしい操縦性を存分に堪能できた。と言っても前後18インチのポテンザは濡れた路面でもグリップが高く、丁寧に走ればアンダーステアを保った走りも出来る。さらにVDCをオンにしたまま、あえて後輪をパワースライドさせても、コーナーごとに滑ったらVDCが介入、滑ったら介入を繰り返しつつ、ちゃんと一定の車線に留まりながら緊張感なく走れる。VDCを一種のセーフティネットにして、あとは自由に走らせてくれる感じだ。VDCをオフにすると後輪が流れっぱなしになるが、最後の最後までコントローラブルだ。

4WAS=アクティブステアリング+RAS

4輪アクティブステア(4WAS)は、簡単に言うとフーガのRAS(リア・アクティブ・ステア)に、アクティブ・ステアを追加したもの。日産の後輪操舵と聞いて真っ先に思い出すのが、かつてのHICAS(ハイキャス)だが、ステアリングシャフト同軸上にモーター(操舵用アクチュエーター)を備えたギアレシオ可変式のパワステを持つ点、および後輪操舵用アクチュエーター(モーター駆動)と連動して4輪の切れ角を「電子制御」する点など、今回のものは制御の自由度は全く別の次元にある。

BMWのアクティブ・ステアリングやトヨタのVGRSに対する優位点は、言うまでもなく後輪に操舵機能がある点だ。トヨタ(レクサスGS)とBMWはその代わりに(というわけではないだろうが)、後輪に電子制御スタビライザーを採用している。

未体験のレーンチェンジ性能

4WASの話が最後になったのは単に話の順番ではなく、街乗りや2速主体のワインディングだとほとんど体感できなかったからだ。最初の交差点でいきなり体感できるBMW・5シリーズのアクティブステアと違って、スカイラインの4WASは低速で控えめな設定になっている。またスカイラインは上に挙げた他車のパワステが電動式なのに対して、油圧アシストが基本であるせいもあるかもしれない。

効果を体感しやすいのは、高速道路で車線変更をする時だ。FRセダンで雨天の高速走行時にスパッとステアリングを切って車線変更する人はいないだろうし、やろうとも思わないだろうが、4WAS付きスカイラインならいとも簡単にそれが出来る。その際の違和感はなく、もしあるとすれば「この速度で、こんな簡単に車線変更できたっけ?」という違和感だ。低速では多少ゴツゴツした足回りも、高速道路では絵に描いたようなフラットライド。ただし、今回試乗したグレード(350GT タイプSP)のロードノイズは、欧州車並みに大きめだった。

最後に、今回試乗した際の参考燃費は280km走ってトータルで約6km/L。街乗りは5~6km/Lだが、高速燃費は10km/L以上を維持するなど良好で、結果的に悪化を食い止めた。

ここがイイ

高速機動隊にうってつけの操縦性の高さと乗り心地。もう改造しなくても大丈夫なので、税金の無駄遣いが減るでしょう。がんばって稼いでください(苦笑)。というくらいよく走るので、とにかくとても楽しいセダンだ。免許が心配です。ステアリング連動ではなく、コラム固定式パドル(マグネシウムに革張り)は大きめゆえ、固定でもたいへん使いやすい。舵角が小さいこのクルマの場合、固定式の方が確かに有効だろう。アクセルペダルがオルガン式なのも、ポルシェみたいでいい。

繰り返すがとにかく走りが楽しい。5ATゆえ、結果的には常にエンジンががんばっている感じがあるし、その絶大なトルク感に加え、4輪アクティブステアでとにかくよく曲がる。それゆえ運転にそう自信がなくてもチョイと走りに行きたくなってしまうスポーツカーだ。それでいて実用的なセダンであり、サイズも大きすぎず、質感も高いと、ハードウェア的に文句のつけようがない。先代とは出来がまったく異なるから月1000台(ちょっと寂しい数字)の目標台数はちゃんと売れるだろう。

 

純正カーナビで一番の出来と思えるカーウイングス対応ナビは、モニターと操作系の位置が素晴らしい。トヨタ車がダッシュ最上段から一段下の位置になってきている中、依然として最上段に位置し、その下に操作パネルが水平に近い状態で置かれていて操作しやすい。タッチパネル対応となったし、音声入力もお利口だ。画素数の上がったディスプレイも、より美しくなっている。日産車(スズキも)のプローブ情報に基づくルート検索も可能となっている。

ここがダメ

スタイリングがすげーカッコいいか、と言われると、そうでもないこと。インフィニティではなく、スカイラインとして開発した、と日産は主張しているが、本当に日本人の琴線に触れるデザインを目指したかどうかと言えば、そうではないと思う。以下総合評価に。

4輪アクティブステアは自分のウデよりも、よく曲がるため、運転が上手くなったという勘違いに陥りやすい。ワインディングはものすごく楽しいが、スピンしそうにもないあたり、どこか自然ではなく「お釈迦様の手の上の孫悟空」感がある。新しい走りの世界に一歩踏み出していると思うが、ドラテク旧人類はついて行けないのではないか。レクサスISより、ある意味さらに未来的な速さをユーザーがどう評価するだろうか。

シンクロレブコントロール(ダウンシフト時に回転合わせを行なう)付きになった5ATだが、そろそろ日産にも6ATが欲しい(せめてトップグレードには)。レスポンシブなのをアピールしたいあまりに、変速制御や電子制御スロットルが過敏なのも5ATだからではないか。アクセルを踏み直した時、意図に反してシフトダウンし、ウワッと一気に吹ける、といった感じは現行ポルシェ911(やはり未だに5AT)と近い感覚ではあるが。

総合評価

V6になった先代V35から「こんなのスカイラインじゃない」という人が多くなったようだ。セダン不人気という世情はあるにしても、そのあたりが先代のかなり苦しかったところだと思う。しかしそれも日本市場に関しての話で、北米インフィニティとしてはかなり評価は高かったようだ。今回のスタイリングにしても、そのためにキープコンセプトで来た、という感じだ。世界のマーケットを向いたスタイリングだろう。

その意味で日本人的には、スタイリングがフーガに似ているという点でも、ちょっと不満が残るところ。イチローのような世代はまだしも、渡辺謙の世代にとってはやっぱり新型も「こんなのスカイラインじゃない」という感が強いだろう。今さら死んだ子の歳を数えても仕方ないと思うのだが、世間とはそういうものだ。とはいえ、先代よりはシャープになり、ギュッと塊感のある、よりコンパクトな印象のセダンとしては、ライバルとなるレクサスISやBMW・3シリーズにタメを張るかなりカッコいいスタイリングだと思う。日産の、というよりインフィニティのデザイン・アイデンティティとしても、このスタイリングは正しいと思う。日本のスカイラインの系列に組み込んで考えるから、なんだか変な印象を持ってしまう。

スタイリングの話を除いて新型スカイラインを見れば、かなりの絶賛に値するクルマといえる。とにかくその走りには「強烈」な印象がある。BMW3シリーズがクルマ本来の自然な気持ちよさ・トータルなバランス感を、ISがハイテクに守られた人工的なかつ絶対的なスポーティーさを味としている、とすれば、スカイラインはハイテクを越えた荒々しさをかいま見せるところが味だ。スカイラインは昔から、荒々しく速いセダンという印象があるが、確かに今回の新型もその印象から外れていない。例えばハコスカを今だ愛している元ヤンキーのチョイ悪オヤジなど、試乗してみたらきっとこのクルマを否定できないと思う。3シリーズやISとは違う、チョイ悪な感覚はこのクルマが日産車であるがゆえ。昔から走り屋はトヨタではなく日産。その意味で「ときめきは帰ってきた」と思うのだ。

もちろん超扁平18インチタイヤなのに乗り心地は快適だし、低速追従機構付レーダークルーズコントロールやら、最新型ナビ(ブルートゥース対応・CFカードスロット付)やら、インテリジェントキーやらといったハイテク系の装備も用意されているから、日本車が誇る最先端のユーティリティーも味わい切れるだろう。内装の質感や仕上げも素晴らしい。和紙のような加工のアルミパネル(これもアメリカ人向け)だけは好みが分かれるはずだが、その場合は本木目パネルに変えればいいだけだ。

 

公道を走るスポーツカーとしてはポルシェ997並みのおもしろさがあり、四人がちゃんと乗れるセダンでなおかつハイテク満載。最高でも400万円程の価格は、ものすごくコストパフォーマンスが高い。ディーラーでレクサスほどのおもてなしは無いと思うが、そもそもそうは壊れないだろうから、ディーラーへ行く頻度も低いだろう。その分レクサスISよりもコストパフォーマンスが高いといえる。あとは日産車というブランド、そしてスカイラインという名の呪縛だけ。もしこのクルマがインフィニティとして日本で売られたら、人々の見方は相当に異なるはずだ。売れ行きは、スカイラインとしてときめくかどうか、に尽きるだろう。


試乗車スペック
日産 スカイライン 350GT Type SP
(3.5L・5AT・380万1000円)

●形式:DBA-PV36 ●全長4755mm×全幅1770mm×全高1450mm●ホイールベース:2850mm●車重(車検証記載値):1620kg( F:880+R:740 )●乗車定員:5 名

●エンジン型式:VQ35HR ●3498cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・縦置●315ps(232 kW)/6800rpm、36.5 kg-m ( 358 Nm)/4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/80L ●10・15モード燃費:8.8 km/L(※4WAS付き。Type SP 標準車は9.2km/L)●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:前225/50R18、後245/45R18( Bridgestone Potenza RE050A )

●試乗車価格:426万7200円( 含むオプション: カーウイングスナビゲーションシステム、バックビュー/サイドブラインドモニター等 29万8200円、アクティブAFS 3万1500円、4輪アクティブステア 13万6500円 ) ●試乗距離:約280km ●試乗日:2006年12月

 

 

Movie

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