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日産 スカイライン クーペ 370GT Type P新車試乗記(第485回)

Nissan Skyline Coupe 370GT Type P

(3.7L・5AT・401万1000円)

「あーいのスカーイラーイン♪」に
ときめいたお父さんに贈る
愛すべき大人のクーペ。

2007年11月02日

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キャラクター&開発コンセプト

V6スカイラインクーペとしては2代目

2007年10月2日に発売された「CV36型」スカイラインクーペは、06年11月に発売された12代目「V36型」同セダンのクーペ版。 03年1月にデビューした先代クーペ(CV35型)の後継車となる。

V6搭載モデルとしては2代目だが、「FM-Lプラットフォーム」やVQエンジンの根本部分をCV35型から引き継ぐ点では、ビッグマイナーチェンジと考えてもいいだろう。主な改良点はボディ外板を一新した引き締まったスタイリング、日産版バルブトロニックといえる、吸入空気量を吸気バルブでコントロールする新機構「VVEL」(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)の採用だ。

今や「スカG」というより「Gクーペ」

CMタレントはセダンと同じ渡辺謙とイチロー。キャッチコピーは「日本に、クーペのときめきを」。国内の目標台数は先代の実績(月間220台ペース)を受けて200台だ。一方、北米でのスカイライン(というかインフィニティG37クーペ)への評価は絶賛に近く、現地では日本の約10倍規模が売れるという。その他ロシアや韓国でも出足は好調で、新しく「インフィニティ」チャンネルがスタートする欧州市場にも投入される。日本のスカGファンとしては嬉しくもあり、淋しくもある状況だ。

それでも日産によると、発売後2週間を経過した10月15日時点の国内受注は、目標の約8倍となる1562台に達したという。もともと目標が低すぎるのでは、という指摘はあるが、昨今の国内市場の状況を考えればやはり望外の人気ぶりと言えるだろう。

・新型「スカイライン クーペ」の受注状況について(2007/10/16)
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2007/_STORY/071016-01-j.html

・Infinity USA(英語)http://www.infiniti.com/index.html

価格帯&グレード展開

Zよりちょっと高い369万6000円~447万3000円

全車3.7リッター「VQ37VHR」(333ps)で、装備・仕様により4グレードを設定。セダンと異なり2.5リッター車はなく、逆に6MTが選べる。

■「370GT」(5AT:369万6000円) 標準車
「370GT Type P」(5AT:401万1000円 ※今回の試乗車) 上記「標準車」の本革シート仕様
■「370GT Type S」(6MT:411万6000円、パドルシフト付5AT:417万9000円) 
 4輪アクティブステアや19インチタイヤ付
■「370GT Type SP」(6MT:441万円、パドルシフト付5AT:447万3000円) 上記「Type S」の本革シート仕様

メーカーオプションは、サイドとバックモニター付のHDDカーウイングナビ(29万8200円)、同ナビとレーダークルーズ&プリクラッシュ機能等のセット(41万8950円)、ウッドパネル&茶革シート仕様(10万5000円)など。

全体にフェアレディZ クーペ(337万500円~449万4000円 ※「Version NISMO」含む)より高めだが、Zのエンジン(313psの「VQ35HR」)よりパワフルだし定員も4人だし、ということを考えればむしろお買い得といえる。

パッケージング&スタイル

先代とほぼ同サイズ。セダンよりワイド&ロー

ボディサイズ(先代比)は全長4655(+15)×全幅1820(+5)×全高1390mm(-5)、ホイールベース:2850mm(同)とほとんど変更なし。ちなみにV36セダン比ではそれぞれ-100mm、+50mm、-60mm。少しショートで、ワイド&ローとなる。

ちょっとフェラーリ風になった

「艶やか(あでやか)」をテーマにしたスタイリングは、なかなかカッコいい。先代からシャシーの骨格を受け継ぐので全体のプロポーションも大差はないが、歩行者保護用にポップアップエンジンフードを採用してまでボンネット高を低くするなどのこだわりが実り、まるでフェラーリ599のような、というと言い過ぎかもしれないが、躍動感あるデザインとなっている。ボディカラーに用意された赤「バイブラントレッド」もちょっとフェラーリのそれっぽく、スタイルを引き立てる。

着座位置は低いが、デザインはセダン譲り

試乗車は革内装の「Type P」。センターコンソールのアナログ時計から分かるように、内装デザインは基本的にセダンと同じだ。全高が60mm低い分、着座位置も低いが、視界は良好。ヘッドルームにも余裕があるし、運転ポジションもばっちり決まる。ステアリングの上下・伸縮調整は電動(標準車を除く)で、セダン同様(そして先代同様)メータークラスターごと動く。カーウイングスに備わるサイドブラインドモニターとバックモニターも便利だ。

重箱の隅をつつけば、ステアリング右側のスタートスイッチが死角になり、やや押しにくい。それから標準車および「Type P」グレードだと、パドルシフトが付かないことが挙げられる(後述)。

陽射しを除けば、十分実用になる後席

ホイールベースはセダンと同じで、2人掛け後席の足もとは十分に広い。身長170cm未満なら、ヘッドルームも何とかOKだ。フロントシートは全車電動で、ワンタッチで電動スライドしてくれるから乗り降りも割と楽にできる。

弱点は直射日光がリアウインドウを通して後席乗員の頭を直撃してしまうこと。それさえ除けば(例えば夜間なら)十分実用になる。少なくともただの荷物置き場としてはもったいないスペースだ。中には「(ポルシェ911みたいに)もっと狭くてもいい」と思う人がいるだろう。

トランクスルーで十二分にカバー

V36型セダンのゴルフバッグ4個に対して、2個(収納方法を説明するイラストがリッド裏に貼ってある)が精いっぱいの浅いトランクだが、後席の背も垂れを倒してトランクスルーすれば容量は大幅に増える。

先代CV35型クーペより開口面積をアップ、オープナースイッチを左リアコンビランプ内にこっそり配置するなど、細かい気配りがいい。床下にはテンパータイヤと車載工具が収まる。

基本性能&ドライブフィール

排気量+198cc、高回転化、「VVEL」追加

試乗したのは、標準車に電動レザーシートを備えた「Type P」(5AT)。エンジンは全車、新開発3.7リッター「VQ37VHR」(333ps、37.0kgm)。現行V36型セダンの3.5リッター「VQ35HR」(315ps、36.5 kgm)の部品を約35%変更し、排気量を198ccアップ。バルブ作動角・リフト量連続可変システム「VVEL(Variable Valve Event and Lift)」を追加したものだ。言うまでもなく「VVEL」の要は、スロットルバタフライに頼らず、バルブ制御によって直接、吸気量を調整できることにある。日産のシステムではバタフライの働きがまだ大きいようだが、基本的な狙いはBMWのバルブトロニックやトヨタのバルブマチックと同じだ。出力やレスポンスの向上、燃費の改善が目的となる。

これぞ、胸のすく加速

とはいえ、交通の流れに乗る分には、従来のVQとそう大差はない。前が空いた時を狙ってアクセルをちょっと踏み込めば、例の「ドゥルルルル」というVQサウンドを高めて、気持ちよくダッシュを決めてくれる。真骨頂はシフトレバーを右に倒した「DS」モードかマニュアルモードで、ペダルを床まで踏み込んだ時。「シュバン!」という感じで一気にレブリミットまで吹け上がる。このレスポンスと速さもさることながら、まったく暴力的ではないリニアな加速感が気持ちいい。これぞ「胸のすく加速」という感じだ。

文句なしの乗り心地

いきなり動力性能の話になってしまったが、一番感心したのが快適性の高さだ。今回は銀座の日産本社で広報車をピックアップ。そこから名古屋までの360kmを、120km/h前後で流れる東名高速道路でひたすら巡航したが、乗り心地に関しては「まったく」文句の付けようがないレベル。ピッチングは皆無で、突き上げに関しても、「Type S」「Type SP」系の19インチより1インチ小さい18インチタイヤ(前225/50R18、後245/45R18)ではほとんどない。ロードノイズやパワートレイン系のノイズも、ほぼ完全に遮断している。

静粛性に関して「文句の付けようがない」としないのは、120km/hを超えた瞬間、まるでスイッチが入るように風切り音が高まるため。他が静かなため目立ったということもあるが、それ以上速度を増しても風切り音は一定だから、超高速域では下手な高性能セダンより逆に静かかもしれない。

ところで、思い起こせば4年前に試乗した先代CV35型クーペの乗り心地も、実は抜群に良かった。その時は6MT車だったので微妙に全体の印象は違うが、乗り心地に関してはすでに相当良かった記憶がある。ちなみに新型のメーカー資料にあったボディ剛性の向上比(CV35→CV36)は、ねじり剛性で+36%、横曲げ剛性で同等。一方セダンの方はねじり剛性で+40%、フロント部横曲げ剛性で+190%も上がっている。クーペはボディ構造上、もともとかなり高剛性だったのかもしれない。

「DS」ならブレ-キング時に自動シフトダウン

試乗車には「Type S」「Type SP」系に標準装備の4輪アクティブステアは付いていなかったが、公道で少々飛ばす程度ならシャシー性能はもう十分。19インチタイヤもルックスを除けば不要だ。フロントエンジンの後輪駆動で333psともなると、トラクションコントロール効きまくりと思ってしまうが、そんなことはない。むしろVDCオンでも割とタイヤを滑らせるセッティングで(もちろん穏やかに介入してくるが)、地面を後ろ脚で蹴る感じが気持ちよく味わえる。重量配分は前55:後45(910kg:740kg)とトランスアクスルでもなんでもないFR車としては悪くない。

ワインディングを走る時は、「DS」モードが一番イージーで速い。マニュアルモードだと良くも悪くも自動シフトアップしないが、「DS」ならしっかり上まで引っ張ってシフトアップしてくれるし、ブレ-キング時には自動シフトダウンもしてくれて、しかもシンクロレブ機能で回転合わせまでやってくれる。その点ではパドルシフトが無くても困ることはない。

今回は複数のスタッフで、約1000kmを5日間で試乗。東京→名古屋(主に東名高速)を100~120km/h前後で走った区間で、楽に11.2km/Lをマーク。いつものパターンで名古屋近郊(高速と一般道)を試乗した区間が7.2km/L。名古屋→東京(主に中央高速で、限りなくハイペース)と東京都心部を走った区間が6.7km/L。街中だけで雑に走ると、排気量とパワー相応に5km/L台となった。指定燃料はもちろんハイオクで、10・15モード燃費は9.3km/Lだ。

ここがイイ

圧倒的なバリューフォアマネー。カッコいいこと。素晴らしい乗り心地。それでいてワインディングの粘る足は心地よい。ハンドリングはさほどクイックではないが、思ったようにフロントがインに入ってくれる洗練された、でも楽しい後輪駆動の運転感覚。

使いやすくて見やすいインフォメーション・ディスプレイ(平均車速と平均燃費を大きな文字で同時表示する)。トランク(決して大容量ではないが後席とのトランクスルーが実用的)、カーウイングスナビ、サイドモニター、サポートアームがあってシートベルトがしやすいなど、実に使いやすいクルマになっている。

ここがダメ

久々の「なし」としたい。が、やはりオートマチックはやはり6速化が望まれる。これだけ全域でパワフルなのでパワーバンドから外れることはないが、ステップ比の大きさは若干気になる。特に2速では吹け上がり、3速では低回転すぎるというコーナーは多いはず。

また、素の「350GT」と革シートの「350GT Type P」だと、パドルシフト(マグネシウム製革巻き)が付かないが、これは全車標準とすべきでは。 確かにATは6速ではなく5速だし、「DS」モードがイイ感じで自動シフトダウンしてくれるのだが、それでもエントリーグレードですら約400万円の高級車。数万円高くなっても付けるべきと思う。

以下は好みの問題で、これは毎回書くことだが、VQのエンジン音が文句なしの快音ではないこと。高回転型3.7リッターの「VQ37VHR」でもそこは変わっていない。VQ独特のサウンドであるのは確かで、ひょっとするといずれポルシェの「ババババーン」というフラット6 (これも人によって好き嫌いが分かれる) のように、カリスマ性のある特徴となるのかもしれないが。そもそもこのVQ、排気量といい、吹け上がり方といい、ポルシェ911を相当意識した跡がある。

それから電動シートは、もうちょっと前部を下げられるように調整できると小柄な人のためにはいいと思う。

総合評価

日産の良心

フェラーリのようなボディデザイン、マセラティのような内装、ポルシェのような走りと何かに似ている感はなくもないが、それでもトータルに考えればこのクラスのクーペとして、今まさにこの日本に存在していること自体が素晴らしいことだ。北米市場があるおかげで、わずか月200台とはいえ日本で販売できるわけだが、例えばこうしたクルマを持たないトヨタと比べれば、日産の良心というか、クルマ屋としての立ち位置が見えてくる。そこをモーターデイズとしては強く支持したい。

そして、GT-R程のスーパーカーはいらないが、日常的に使える「スポーツカー」が欲しいというジジイの欲求にはピタリとはまるクルマだ。価格もジジイならなんとか手が届きそうな400万円前後というあたり、これまた良心的。輸入車では1000万円超クラスの性能が半値以下の価格とは、日本に生まれて良かったと思う。試乗車は18インチでもあり、その足の柔らかさも日常乗りにふさわしいもの。音もよく遮断されているので、最高速あたりでも静かだ。爆発的なパワーで思うままに加速するが、トルク感はそう強くないから、静かな室内と相まって、滑らかすぎて物足りなく思うのは贅沢だろうか。

そこが例えば911あたりと違う部分で、もう少し走りに癖が欲しいと思ってしまうのも確か。同様にスタイリングも華というか個性がもうちょっと欲しい。実はこのクルマ、街中ではたいして目立たない。いわゆるスペシャリティ感が足りないのだ。北米であれば典型的なスポーツカーとしてそれなりに個性的だと思うのだが、輸入車が跋扈(ばっこ)する日本の街中ではもうちょっとスカイライン的なノスタルジーというか、アクが感じられるスタイリングが望まれるところ。運転席からも見えるフロントフェンダーの峰はなかなか素晴らしいので、リアフェンダーをもっとファットにすると、より格好良くなりそうだ(車幅は無用に広がってしまうが)。

走馬燈のように

とはいえ、最近のBMWやトヨタのような、無理やり個性をひねり出したようなボディラインはどこにもなく、あまり派手では日常で困るというジジイにはこれでいいのかもしれない。となると、スカイラインという名にも、もはやとらわれる必要はないのではないか。スカイラインだから欲しいという人が多いと思う反面、スカイラインだからいらないという人も結構いるようにも思う。すでに直6でもないのだから、スカイラインという伝統から離れ、日産GT-R同様、新たな価値のクルマとして車名を日産クーペあたりにすると、もう少し広範な人気(台数)を得られるかもしれない。

それにしても発売以降、一時的にせよ爆発的(実数はたいしたことはないが)に売れていることは、ことジジイの間でクルマに対する意欲が萎えているわけではないことを示している。クルマ好きのジジイは死ぬ間際に、それまで乗ってきた様々なクルマが走馬燈のようにアタマの中で巡る(はず)。その時「あのクルマはいいクルマだったなあ」と思える一台がこのクルマであることは保証できる。そしてこのクルマがやがて中古車になり、若いクルマ好きの車歴の一台に加わり、やがてその若者がジジイになったとき、「あのクルマは・・・」といえるようになれば・・・。スカイラインクーペによってそんな美しい流れが、もう一度日本のモータリゼーションに復活すれば、開発と生産だけの自動車立国へと成り下がるような未来にはならないのではないか。期待を込めてそう思いたい。

試乗車スペック
日産 スカイライン クーペ 370GT Type P
(3.7L・5AT・401万1000円)

●初年度登録:2007年9月●形式:DBA-CKV36 ●全長4655mm×全幅1820mm×全高1390mm ●ホイールベース:2850mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1650kg( 910+740 ) ●乗車定員:4名 ●エンジン型式:VQ37VHR ● 3696cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ● 333ps(245kW)/ 7000rpm、37.0kgm (363Nm)/ 5200rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/80L ●10・15モード燃費:9.3km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン/後マルチリンク ●タイヤ:前225/50R18、後245/45R18( Bridgestone Potenza RE050A )●試乗車価格:463万1450円( 含むオプション:カーウイングスHDDナビ+バックビューモニター+サイドブラインドモニター 29万8200円、ETC 3万1500円、Bose サウンドシステム 12万0750円、本革シート 10万5000円、フロアカーペット 6万5000円 )●試乗距離:約1000km ●試乗日:2007年10月

日産>スカイライン クーペhttp://www2.nissan.co.jp/SKYLINE/V36/0710/index.html

 
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