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スマート新車試乗記(第58回)

smart



1999年01月22日

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キャラクター&開発コンセプト

メルセデス・ベンツの技術力とスウォッチのデザインセンス

スマートはメルセデスの技術力と、スウォッチのデザインセンスが融合した2人乗りシティコミューター。元々はダイムラー・クライスラー(当時ダイムラーベンツ)と時計メーカーのSMH社(スウォッチ)の共同事業であるMCC(マイクロ・カー・カンパニー)社が開発。その後スマートの発売寸前になってSMH社は事業から撤退したため、現在では事実上ダイムラー・クライスラーの1モデルという形だ。

スマートがすごいのは、ただ小さいだけでなく、社会を巻き込んだ次世代交通手段の可能性を秘めているあたりだ。すでにヨーロッパ10ヶ国で販売されており、専用駐車場があったり、レンタカーとして用意されていたりと、インフラまで整いつつあるのがこのクルマの付加価値といえそうだ。生産はスマートのために新設されたフランスの専用工場で行なわれている。

価格帯&グレード展開

並行輸入されており、価格はまちまち

現在、日本で乗れるスマートは並行輸入車のみ。エンジンは600cc直列3気筒ターボエンジンで、45psの廉価版「ピュア」と、55psの高性能版「パルス」の2グレードがある。ミッションは6速セミATのみ。今回試乗したのは、「パルス」をベースにアルミホイール、本革内装、エアコンなどを装備した限定7500台の発売記念モデル「リミテッド1」だ。

輸入業社によって価格はまちまちだが、リミテッド1の価格は輸送費用、予備検査などがかかるため、200万円を超えてしまう。今回試乗した名古屋のオートトレーディングが扱うリミテッド1は235万円。普通の「パルス」は198万円だが、エアコンが標準ではないのが日本では辛いところ。

パッケージング&スタイル

軽より1メートル近く短い

スマートのボディは、全長2500×全幅1515×1529mm。新規格の軽が全長3400mm以内なので、それより1メートル近くコンパクトだ。ホイールベースは1812mmと全長の70%以上を占める。ボディの四隅に張り出したホイールは15インチと大きく、スタイリングの安定度は、はみ出したタイヤが生み出していると言ってもいいだろう。

デザインスケッチから抜け出てきたようなスタイル、というと、ありきたりの表現だが、このボディデザインはどう見てもコンセプトカーそのままという感じ。未来的といえばまさに未来的だが、日本のマーケティングでは絶対に商品にならないカタチだ。ヨーロッパの人でもやや過激な印象をうけるのでは。日本ではトヨタのヴィッツですらが奇抜と思われるほどなので、これを容認できる人は少ないだろう。

衝突安全性はEクラス並み

外板パネルなどの部品点数は極めて少なく、ドアやボンネットは樹脂製となる。色も塗装ではなく樹脂自体に着色したものだ。これはコスト削減とサービス性の向上を目的としたものだが、違う色に取り替え可能な点も面白い。安全性についても、駆動系をを全て床下に配置したサンドイッチ構造や、「トリディオン・セーフティセル」と呼ばれる強固なタマゴ型のボディ骨格を採用。オフセット前面衝突時の安全性はメルセデス・ベンツEクラスに匹敵するという。

インテリアも奇抜

内装についても度肝を抜かれる。まず室内空間が革新的に広い。2人乗りと割り切り、エンジン、バッテリーなどを全て床下に配置。スペアタイヤはオプション、ガソリンタンクの容量も一般車の半分以下の22リッターとして稼いだ結果だ。ルーフ部はすべてガラス張りで(ブラインドはオプション)、助手席は運転席よりも十数cm後方にずらして配置してある。おかげで助手席に座ると、横幅はともかく、前後方向は大抵のクルマより広く感じられる。

インパネの造形は見ての通りすごいもの。ブルー基調にアイボリーの本革(グレードに応じてオレンジ生地などに変更される)を配するポップなデザインセンスは脱帽ものだ。ステアリング、ペダル(床から生えている)までキュートなデザインで、インパネ表面には布が張られている。シンプルながらも全く安っぽくないあたりは、ぜひ日本車にも学んでほしいところ。

さらに感心させられるのはシートだ。骨格にネットを張っただけに見えるが、すごくしっかりとしていて、座り心地、ホールドとも文句なし。ヒップポイントはやや高めで見晴らしは良く、ヘッドルームも十分に確保されている。

リアゲートは上側がガラスハッチの上下開きで、ホイールハウスの張り出しは全くなく、軽ミニバンの荷室ほどはある。助手席の背もたれは水平に前に倒れるので、長尺物も載せられる。シティコミューターとして使うなら十分な広さといえるだろう。ちなみにラゲッジの床を開けるとエンジンが出現する。

基本性能&ドライブフィール

動力性能は十分

リアに搭載される599ccの3気筒エンジンは、小排気量によるトルク不足を補うためターボで過給される。今回試乗したリミテッド1は高性能の55ps仕様で、変速機は6速セミATとなる。

キーの差し込み口は、サーブのようにシフトレバー後方。エンジンをかけて、シフトをNレンジ(Pレンジはない)から左に倒す。そうすると1速に入り、メーターのインジケーターに「1」と表示される。アクセルを踏めば前進するが、クリープはない。坂道発進は左足ブレーキが必要だ。シフトアップは+/-の上下式で、手動で行う。ちょうどマニュアルシフト付きATのマニュアル部分だけのような感じだ。日本のAT車ばかり乗っている人には、ちょっと慣れが必要となる。

発進時は何のもたつきもなくスムーズに走り出すが、6000回転以上がレッドゾーンなので、すぐに吹けきる。その前にシフトするのだが、ギアチェンジのタイムラグはかなり長い。ワンテンポもツーテンポも遅れてモワーンとくるのだ。ただし、普通のMTのように、いったんアクセルを戻しながらシフトチェンジをすれば、この違和感はなくなる。とはいえ交差点を曲がったら急な坂道で、素早いシフトダウンが行われず、ちょっと焦った場面も。

シフトチェンジは忙しいものの、クロスした6速はパワーを最大限に引き出すのには有効で、64psの軽よりも力強い印象だ。ターボラグは少なく、2000回転から最大トルクがでるので、速いとさえ思うほど。6速トップは完全なオーバードライブ用で、街中では5速か4速までとなる。

驚きの高速性能

高速性能は素晴らしいの一言。5速、100km/hから加速を開始すると、ほぼレッドゾーンで130km/hに達する。つまり100km/h以上の速度で、シフトダウンして追い越しがかけられるのだ。抜かれたクルマは皆驚く(というか、笑う)。

さらに130km/hでも6速トップ:4000回転ほどで巡航が可能だ。直進安定性もあり、リアエンジンのためかエンジン音も小さい。まだまだいけそうだが、やがてリミッターが効く。単なるコミューター以上の走りには心底驚かされた。

乗り心地は、エルクテストの影響もあるようで、確かに硬い。絶対的にホイールベースがないので、ヒョコヒョコするし、突き上げもある。ここは誰もが最も気になるところだろう。ただ、ハイパワー軽のような軽薄な硬さがなく、走りにドッシリとした重量感があるので、個人的には全く許せる範囲だった。

またコーナリングではリアエンジンでトーションバースプリングのリアサスのためか、同じような形式のポルシェ911のようなフィーリングがあった。コーナリングを楽しめるクルマではないのは確かだ。

ここがイイ

コンセプト、仕上がり、走り、居住性、全てにおいて、タウンカーとしての理想に最も近いクルマ。フロント1座、リア2座のハイパワー軽自動車を理想のクルマとして考えていたが、それにかなり近い。この手のクルマが全販売台数の半分くらいになると、自動車はまだしばらく生き延びられるかもしれない。

ここがダメ

価格をもう少し何とか(現地価格もちょっと高すぎるのでは)、信頼性もちょっと不安(タコメーターが時々止まった)。

総合評価

ハードの面の仕上がりに関しては、ほとんど言うことがない。ただ、もしこのカタチ、このデザインワークでなかったら、かなり不満がでただろう。このクルマのいいところは「どらえもんカー」的なキャラクター性があることだ。白黒パンダルックのスマートは、女子高生に「カワイイ」といわせることができる最初のクルマではないだろうか。

ハードの面で成熟したクルマという商品は、この先、キャラクター商品化していくしかないだろう。性能はどれも似たり寄ったりで、すでに素人には区別が難しいほど。こうなると、売れる要素はキャラクター性のみとなる。デザインでどこまで遊べるか。それがこれからのクルマの売れ行きを大きく左右するはずだ。例えばメルセデスAクラスは、今やハードよりキャラクターで売れている(この場合スタイルよりもブランドというキャラクターだが)。スマートはクルマの未来を変えるかもしれない斬新なコンセプトと完成度を、キャラクター商品的なデザインで包んであるのが凄いところ。同じ程度の出来を持つ軽自動車には、それがない。キティちゃんミラをダイハツが発売したことがあったが、ステッカーチューンに止まらず、キティちゃんをモチーフとしたボディデザインのムーヴ(想像するだに恐ろしいが)を作れば絶対に売れる(ような気がする)。理詰めで作られたスマートだが、キャラものでもあるということが画期的だ。クルマの持っていた既存の価値を全部吹っ飛ばしている。

公式サイトhttp://www.smart-j.com/

 
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