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新車試乗記 第172回 トヨタ ソアラ Toyota Soarer

 

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日時: 2001年05月19日

 

キャラクター&開発コンセプト

セルシオ+ベンツSLK=ソアラ? 世界を目指したゴージャスな全天候型コンバーチブル

日本で一番贅沢なパーソナルクーペ、ソアラ。1981年に登場した初代は流麗なスタイルと最先端のメカ&装備を備えた、類い希なる「高級クーペ」として日本の自動車業界を席巻。それまでの法人需要の3ナンバー車から、個人需要の3ナンバー車という方向性にお墨付きを与えた。しかし、そのプレミアム性も代を重ねるごとにフェードアウト。1991年からはレクサスブランドとしてアメリカ市場にも参入を果たしたが、こちらもイマイチ。F1参戦を控え、プレミアムイメージ構築が緊急課題のトヨタとしては、ベンツのSLシリーズやジャガーのXKシリーズのように「ウチもこんなの作ってます」とアピールしたいところ。…というわけで4代目となる新型の登場だ。

誕生から20年という節目に合わせてフルモデルチェンジされた新型の切り札は、電動で開閉可能なメタルトップ。ただ美しくて贅沢なだけでなく、ルーフを開ければ100%オープン、閉めれば100%クーペという1つで2度オイシイというエンターテイメント性を引下げて新境地を開拓。パワートレーンは世界一静かとも言われるセルシオの4.3リッターV8エンジン+5速AT。その成り立ちは、まさしくセルシオのパーソナルクーペ版といえるもの。乗車定員は一応4名。アメリカではレクサスブランド「SC430」として販売される。

価格帯&グレード展開

ワングレード、ワンプライス。本革内装、DVDナビも付けてジャスト600万円

グレードは「430SCV」のみ。ルーフの開閉状態や走行状態に合わせて音場特性や音量を自動補正する「スーパーライブサウンドシステム」、オープン時に最適な温度・風量を自動調整する「フルオートエアコン」、パワーシート付き本革内装、本木目パネル、盗難防止システム、クルーズコントロール、DVDナビ…。安全装備ではVSC、デュアル&サイドエアバッグ。その他、あまり必要のないアイテムも含めて全部標準装備。そのお値段はズバリ600万円! 「よくまあ、こんな不況の続くご時世に」と嫌味になるゴージャスだが、その内容からすれば意外に安い(?)とも言えるのでは。オプションとなるのは高級オーディオメーカーの「マークレビンソン製オーディオ(15.0万円)」、「エクリュ」と呼ばれる白色基調の本革内装(3.0万円)、リアスポイラー(3.5万円)ぐらいだ。

ライバルは車格だとメルセデスベンツのSLシリーズ(990~1250万円)およびCLシリーズ(1190~1460万円)、ジャガーのXKシリーズ(1040~1310万円)。本命は同じ電動メタルトップを採用すると言われている次期SLシリーズだろう。また、価格だとメルセデスベンツのSLK320(570万円)/CLKカブリオレ(740万円)、BMWの330Ciカブリオレ(640万円)、ボルボのC70カブリオレ(495万円)といったあたり。あと電動メタルトップという点では日産シルビアヴァリエッタ(279.8~289.5万円)、プジョー206CC(275万円)もライバルと言えるかも。こうしてみると、どのクルマより優位性があることがよくわかる。

パッケージング&スタイル

クーペでもオープンでも美しいグラマラスなボディデザイン

ボディサイズは全長4515mm×全幅1825mm×全高1355mmという堂々としたもの。これでも先代より全長を385mm短くしてコンパクト化を図っており、真横から見ると、ウエストラインが非常に高く、サイドウインドウの天地が狭い、というのが特徴となっている。

デザイン案を担当したのはヴィッツと同じEPOC(欧州にあるトヨタ系列のデザイン工房。ちなみに先代は北米のCALTY)。それを最終過程でトヨタ自身が手直ししたものだ。グラマラスなラインで形成されたスタイルは、前後のフェンダーが筋肉のように盛り上がり、テールはツンと上を向く。かなり引き締まった感があり、まさしくダイナマイトバディ! ちょっと顔デッカチな気がしないでもないが、とにかく異国情緒、ムンムン。セクシームード、ムンムン。デザインだけで「スゴそう! 」「カネがあったら欲しい! 」という気にさせるオーラがある。その点では初代のインパクトに匹敵する。

最大の目玉はSLKへのライバル心が作った滑らかトップ

最大の目玉となるのが電動開閉式のメタルトップだ。4年前、すでにベンツのSLKが、日本では昨年に特殊車両として日産のシルビアが類似構造を採用しており、トヨタ流に手直ししただけに過ぎない、とも言い換えることができるが、ドデカ高級車に採用したのは初の試み。ポイントは8個のモーターを採用したこと。これにより同時に複数の動きが可能となり、よりスムーズで素早い開閉動作を実現。操作方法はインパネ上のスイッチを押すだけ。押している間(時速6km/h以下の状態)は、ウインドウの開閉からロックの解除まで、全て自動でやってくれる。それに要する時間はおよそ25秒。ルーフが地上から約1.8mまで持ち上げられて、トランクに収納する。その動きは極めて派手! ギー、ガシャン! というロボット的な動きは微塵もなく、終始、静かで滑らか。オープンになるまでの過程で、順序を間違えたら、えらいことになりそうだが、万が一に備えて手動でも行えるのだという。ただ残念なのは、その華麗なるパフォーマンスを、操作スイッチを押していなくてはならず、当のオーナー自身が見られないこと。リモコンで遠隔操作ができればなお良かったのでは(笑)。

見られて嬉しい、大胆で新鮮な雰囲気を醸し出すインテリア

木目、金属、本革が交錯する室内も非常にゴージャス。インパネは助手席側がジャガー風、運転席側がアリスト風いった印象で、中央最上部にナビモニターが埋め込まれる。ナビモニターとオーディオは必要に応じて、木目のフタで隠すことも可能だ。特に「エクリュ」と呼ばれる白い本革と「パーズアイメープル」と呼ばれる黄色い木目の組み合わせは、非日常的な高級感があり、まるでショーカー。「これじゃ汚れが目立つ」なんて貧乏くさい考え方はこの際、捨てるべき。オープンともなれば内装のセンスも問われるだけに、この大胆さは合格だ。ただ、ペガサスのソアラマークがやや安っぽく、ステアリングとシート裏にバーンとあるのは、ちょっと好みが分かれるかも。

目新しい装備としてはエアコンに注目したい。オープン走行でも快適であるように、専用の吹き出し口とオープンモード制御つきフルオートエアコンを採用。オープンカーでは特に冬場だと、下半身が冷たくなるわけだが、ソアラではセンターコンソール側面に「ラップジェット」と呼ばれる吹き出し口を新たに設け、そこから温風を送り出して下半身を暖める寸法。さらに、車速に合わせても風量が変化し、外気中の排ガスを感知すると、その濃度に応じてエアコンの吸い込み口モードを外気から内規循環に自動的に切り替える。このように豪華で最新という性能を与えられながらも、一方で助手席の足元には、極めて原始的なネットポケットが。凝ったエアコンもスゴイが、アナログなこのネットも重宝するだろう。

トランクの狭さは、電動メタルトップの代償。後席は、シートのカタチをした荷物置き場と心得るべし

前席は想像するよりもタイトで、シートが両脇に追いやられているせいか、視界に入るピラーの存在が気になるところ。後席はエマージェンシ用と割り切っているので、極端に狭く、特に足元スペースはドライバーにふんぞりかえり姿勢をとられると、ほとんどゼロ。ラゲッジもトランクフードだけはタタミ一畳分とド迫力モンだが、実際のスペースは凸凹しており使い勝手が悪く、ルーフを収納した状態だと、ゴルフバッグ一個でほぼ満杯だ。しかもこれはスペアタイヤのないランフラットタイヤ仕様の場合。標準仕様だと頼みのゴルフバッグ1個分のスペースもスペアタイヤに陣取られて、容量は135リッターから89リッターとなってしまう。この状態だと、ほとんど使い道がない。荷物はリアシートに置くのが原則だ。

オープンカーでは横転時の安全対策にも、より配慮しなければならない。ベンツSLは、横転時を感知するとロールバーが飛び出る仕組みを採っているが、ソアラはロールバーを後席のヘッドレストに内蔵している。安上がりで、それはそれでいいと思う。しかし問題はその形状だ。ヘッドレストの高さが乗員の位置よりも明らかに低く、後席の乗員に対してホントに役に立つのか、と不安になってしまう。やはり、後席は「後席のカタチをした荷物置き場」と考えるべきだろう。

基本性能&ドライブフィール

パワートレーンはセルシオと同じ。ハイテクが詰まった(?)ランフラットタイヤ

エンジンはセルシオと同じ4.3リッターV8のみの設定。最高出力280馬力/5600rpm、最大トルク43.8kgm/3400rpmというスペックも同じだ。排ガスのクリーン度も同じで「超-低排出ガス車(★3つ)」の認定を取得。トランスミッションは5ATのみで、こちらもギア比を含めてセルシオと同じだ。

足回りは前後ダブルウィッシュボーンで、タイヤサイズは245/40ZR18。先代では、一部グレード(途中で消滅)に、これを付けるだけで100万円以上という、電子制御技術の結晶「アクティブサス」が採用されていたが、新型ではそのような実験的なハイテク技術は見られない。強いて言えば、トヨタとしては初となるランフラットタイヤのオプション採用だろう。このランフラットタイヤとは、タイヤ内のサイドウォールをゴムで補強して剛性を上げ、空気が抜けてもクルマを支えるというもの。パンクしても90km/hで約160kmの距離を走ることができ、スペアタイヤを不要としている。ラゲッジ容量を少しでも多く確保したいソアラにとっては、このランフラットタイヤは必須アイテムと言えるだろう。

しかし困ったことに、ランフラットタイヤは実際にパンクしても走り続けられるので、ドライバーがパンクしたことに気づかない、という場合も考えられる。そこでソアラは「タイヤ空気圧警報システム」を採用しているわけだが、その仕組みがまた凝っている。ディスクホイール内に空気圧センサーを設け、電波で通信してメーター内のインジケーターランプに状態を表示するしくみ。タイヤの中に送信機があるのだ。

ラグジュアリーな走りだが、踏み込めば豪快に変身

セルシオのスポーツバージョン的な存在だけに、スポーツ志向の走りが与えられているような気がするが、実際はそうではない。車重は複雑な構造を持つ電動メタルトップの採用とボディ補強のため、旧型より160kg重い1730kg。これはセルシオのA仕様よりわずか50kg軽いだけ。空力特性はセルシオのCd値25に対して、ソアラは30~31。しかも剛性を確保するのが難しいオープンカーにもなるだけに、あまり引き締まった足回りは与えられない。ということで新型ソアラの全体の走りは「ラグジュアリー」志向になっている。もちろんクルマの性格からいっても、その方向性は正しいと思う。

パワステはどちらかといえば軽めで、際立つ質感の高さが印象的。アクセルの反応は緩慢で、全域トルクフルなエンジン特性と相まって、踏み量に応じてパワーが出る、というよりも、チョイと踏んだだけで十分なパワーがキープされるといった感じだ。マナー良く走れば、3000回転以上を使う頻度は、ごく限られるだろう。もちろん、アクセルを奥まで踏めばレッドゾーン手前の6200回転までキッチリ回り、カラダが浮くようなアメ車並の豪快な加速を披露する。

高速では、トップを閉めている限りセルシオの快適性を持つ。少し踏み込めばあっけなくメーターを振りきるが、どこまでも安定感は続く。コーナーでは意外にスポーティー感があり、クルマにおまかせ状態ながらハイレベルで駆け抜けられる。ステアマチックは採用されなかったが、ゲート式のシフトレバーはポジションチェンジがしやすく、マニュアル的に楽しむことができる。またトラクションコントロールは切れるがVSCは切ることができない。体感的には比較的早めにVSCが効くため、スポーツ走行といったものは楽しめないものの、実際には誰もがかなりのハイアベレージで走れるだろう。

迫力のド太いマフラーは、あくまで見た目の演出だ。セルシオ用というお墨付きということもあってエンジン音は無音とまではいかないまでも、程々に聞こえる心地よいものに仕上げられている。もちろん高回転まで回しても、耳障りになることはなく、むしろロードノイズが目立つセルシオよりも快適だ。

乗り心地は18インチというタイヤにも関わらず、十分高級車として相応しい快適なものだ。とはいっても、やはりゴツゴツしたところが気になることも確か。これは大径タイヤによるものなのか、ランフラットタイヤによるものなのか、それともその両方による弊害なのかは分からないが、とにかく路面の細かい段差を拾いがち。乗り心地がマイルドなので、余計に気になってしまう。

さて、オープン時の風の巻き込みはどうか。これが実に絶妙で、風の巻き込みは全く遮断されておらず、程良く感じさせるレベルに仕上げられている。例えば時速60kmあたりなら頬に感じる程度。時速80kmなら髪型がわずかになびくそよ風程度。時速100kmでも、カツラが飛んでいくことはないだろう(笑)。ただ、ウエストラインが高いので、座高の高さが自慢の筆者であっても「肘をドアにかける」というオープンカーのお約束ポーズはNG。このあたりはS2000同様で、新しいオープンカー全体の特徴だ。

ここがイイ

スペシャリティカーらしい個性的なスタイリングは、人によって好き嫌いがあるというのが素晴らしい。発売時点で誰にでも好まれるようなカタチではスペシャリティーカーたりえないのだ。その意味で、このスタイリングはしばらく陳腐化しないだろう。

ギアをドライブに入れたままでもトップの開閉ができるのもいい。信号待ちで気軽に開閉できる。キャンバストップの快適性の無さ、手動トップの手間がない電動メタルトップは、最高のアイテムだ。これならオープンモデルが欲しいと思える。

ここがダメ

ダメな点はほぼないのだが、一つ注文を。それは体型によるポジションだ。大柄な人はシートを後方へ下げて乗れるため、オープン時の頭上開放感が高い。しかし小柄な人はシートを前に出すため、フロントスクリーンが近づき、開放感が減少してしまう。そこでステアリングやペダルそのものが前にでてくる仕組みはできないものだろうか。ダッシュボード全体(あるいはステアリングを含めたメーターまわり)を後方に下げる仕組みでもいい。米国のお金持ちの奥さん(きっと小柄な人もいるだろう)をターゲットにしたソアラだからこそ、そんな仕組みがあるといい。シートをいっぱいに下げた助手席に座ると、解放感はまったく違うクルマのように感じられるのだから。

総合評価

久々に小社スタッフ全員が絶賛したクルマだ。高級感、装備の快適性、スタイリング、そして価格まで、何一つ不満がない。むろん実用性は低いから、あくまでサードカーとして使うとしての話だが。木目パネルが回転してカーナビディスプレイが登場するのも今風でいいし、マーク・レビンソンのオーディオは丸くて歪まない柔らかい大人の音がした。

標準で600万円という価格も高くはないだろう。ポルシェボクスターあたりと同じだが、「やはり買うならソアラでしょう」というのは全員の一致した意見。アメリカでもこの2車はぶつかるハズだが割安感ではソアラが圧倒的だ。

日本国内では発売一ヶ月で1400台を受注したそうだが、大不況下で販売価格にして84億円も売れたわけで、お金持ちにはこのクルマの割安感がよくわかったということだろう。街を走っての注目度は凄まじく、お金持ちには「ステイタス感と割安感」を、貧乏人には「いずれ欲しいという意欲」を与えてくれた新型ソアラは、久々にクルマが本来持っていた(最近忘れていた)「夢」という言葉を思い起こさせてくれた。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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