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新車試乗記 第175回 トヨタ カローラスパシオ Toyota Corolla Spacio

 

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日時: 2001年06月09日

 

キャラクター&開発コンセプト

初代の思想を受け継ぎながらも“5+2シーター”に変身、カローラのミニバン仕様

初代スパシオの登場は1997年1月。当時のカローラをベースに、2-2-2の3列シート6人乗りを実現し、コンパクトなミニバンとして話題を振りまいた。でもコンセプトは良かったものの、無理のあるパッケージングは非難を浴びることに。2列目シートは完全なお子さま用。3列目シートも然り。2-0-2の4人乗り仕様もダメ。その後加わった2-3-0の2列シート5人乗り仕様、つまり、背が高い以外何の芸もない極フツーの仕様が主役となってしまった。

2代目となる新型スパシオは、先代の反省を生かし、2-3と2-2-2というコンセプトを合体。「5人+2人思想」で登場した。開発テーマは「リラックス&フレックス」。コンパクトなサイズながらリラックスできる2列シートの上質な居心地良さ、フレキシブルな3列目シートのシートアレンジを備えた新しいパッケージングで生まれ変わった。

エンジンは先代の1.6リッター(4WDは1.8リッター)に代わり、1.5リッターと1.8リッターの2本立てに。駆動方式は今のところFFのみだが、いずれ4WDも追加設定されるだろう。

価格帯&グレード展開

排気量アップでも価格はほぼ据え置き。149.7万円から188.7万円

グレードは下から「V」「X」「X-Gエディション」「Sエアロツアラー」の4種類。このうち「V」は1.5リッター搭載車のみ。また「Sエアロツアラー」は1.8リッター搭載車のみとなる。主力グレードは恐らく「X-Gエディション」となる見込み。量販グレードは「X」で価格は1.8リッターが160.7万円、1.5リッターが153.7万円。価格差がわずか7万円なら、1.8リッターのほうが絶対にお買い得。

また、これにオートエアコン、タコメーター、木目調パネル、電動格納ドアミラー、プライバシーガラス、運転席アームレスト、オーディオ等が追加装備された「Gエディション」の価格は1.8リッターが169.7万円、1.5リッターが162.7万円となっている。「X」のプラス9万円と、装備内容から考えれば、これが一番お買い得といえよう。「Sエアロツアラー」は名の通りエアロパーツが装着されたスポーティ仕様で、足回りではタイヤサイズが1インチアップされる。価格は188.7万円。

なお、ライバルはホンダストリームとマツダ・プレマシー。トヨタとしてはストリームを強調としていたが、大きさ的にもコンセプト的にもマツダ・プレマシーの方だろう。

パッケージング&スタイル

プレマシーか? エスティマか? ボディ拡大とともに男らしさを増した外観デザイン

背の高い2BOXボディのサイズは全長4240mm×全幅1695mm×全高1610mm。ホイールベースはベースのカローラと同じ2600mm。先代と比較して全長+55mm、全幅+5mm、全高-10mm、ホイールベース+135mm。ちょっぴり大きくなったわけだが、それでもホンダ・ストリームと較べてずっとコンパクトで、マツダ・プレマシーと較べても全長は短い。

デザインはキュートさが全面に押し出されていた先代に対して、新型はスポーティーさが強調されている。シャープな線が多くなり、グリルを5角形にすればマツダ・プレマシー? いや、彫刻的な彫りの深さとBピラー付け根からキックアップするキャラクターラインはエスティマか? そう思った読者の方、感性鋭い。実は新型スパシオの原案を担当したのは現行エスティマを手がけたトヨタ関連会社テクノアートリサーチなのだ。この会社、他にもe-comや先代マジェスタ、ウインダムも担当。個人的にはどれも秀逸なデザインだと思うし、今回のスパシオも同クラスでは出色の出来。カローラシリーズという中庸的なイメージを残しながら、かなりアグレッシブで斬新な一面も備えている。

インパネシフトの新採用で、悲願のウォークスルーを実現

カローラ譲りの高品質のインパネで注目したいのが新採用されたインパネシフトだ。インパネシフトは同社のハリアーをはじめ、他モデルでも多く採用されているが、スパシオは手前に大きく張り出しているのが特徴。操作性はフロアシフトだった旧型と較べて劇的に進化しており、乗用セダンのように違和感なく使える。反面、足踏み式パーキングブレーキの採用などで実現した前後左右のウォークスルーの使い勝手は、インパネシフトと前席の余裕がなく、しかもフロアが凸凹しているので楽勝とはいかない。しかし、ウォークスルーの使用頻度を考えれば、さして問題にはないだろう。

インパネでもう1つ注目したいのがヴィッツ譲りのセンターポケットだ(センターコンソール両脇にある洞窟上の小物入れ)。内側が黒く塗られており、ポケットというよりはブラックホール。開発者曰く「寝かせればペットボトルの収納にも便利ですよ」とのこと。とにかくカップホルダーは豊富で、それらしいもの(ダッシュ上部の穴はカップホルダーとはうたわれない)も含めると、運転席まわりだけでも5個もあり(上部の穴、センターポケット、ドアポケット、助手席サイドの2個分)、乗車定員数よりもはるかに多く用意されている。

飼い犬に最適?! あくまでイザというときの3列目シート

先代は2列目シートを、使用頻度が高いにも関わらず、子供用もしくは緊急用と割り切っていたため、3列目シート以上に窮屈だった。そのため1列目シート以外マトモに座ることができず、ユーザーからの苦情も多かった。そこで新型では2列目シートを重要視し、居住性を大幅にアップ。同時にシートアレンジの使い勝手も大幅アップ。ホイールベースの延長によって左右独立のスライド機能が可能となり、その他、リクライニングと格納の機能が備わる。さらにユーザーの年齢層を見込んで、両側席にはワンタッチで引き出せるジュニアシート(座面が持ち上がる)も組み込んでいる(オプション)。

こうして2列目シートは本来あるべき姿となったわけだが、その代わり3列目シートは完全な脇役に。「フレキシブルベンチ」と名乗るとおり、シートではなくあくまでベンチ。まるでホームセンターで売っているレジャー用チェア。これに取って付けたようなヘッドレストと一応3点式となるシートベルトが備わる。逆に使わないときは、完全に床下へ納めることができるので、荷室はスッキリとしている。というか、これが通常の姿。

3列目シートの居心地は正直、子供でも苦しい。しかし、収納してしまえば邪魔にならないし、容量自体も旧型よりも向上しているわけだから存在意義はそれなりにある。「おまけ」であっても、はなからそう考えていればいいわけで、手間はプレマシーの脱着式よりかからないし、その後の置き場所に困ることもない。年に数回ぐらいなら、これで十分だと思う。「備えあれば憂いなし」とはよくいったものだ。全長わずか4.3m足らずで3列目シートを実現するなら、「5+2のレイアウト」はやはり最良のパッケージングといえよう。

基本性能&ドライブフィール

エンジンはカローラ系から受け継いだ1.5と1.8リッターの2本立て

エンジンは新型カローラで実績のある1.5リッター直4(110馬力/14.6kgm)と1.8リッター直4(136馬力/17.4kgm)の2タイプ。どちらも軽量コンパクトのアルミブロック、触媒の早期活性化に有利な後方排気、そして全域の効率をアップさせるVVT-iを採用する新世代ユニットだ。ミッションは4速ATのみ。ちなみにパワステ1.8リッターが油圧式、1.5リッターが電動式となる。

走りは不満なし、というより空気みたい中庸なもの

試乗車は1.8リッターモデル。車重は1210kgと、カローラと比較してわずか30kg増に抑えたのは立派。また先代(1.6リッター・6人乗り仕様)と較べても10kg軽く、最高出力は26馬力アップの136馬力。スペックから比較しても新型の加速力の向上は明らかだ。それでいて燃費は+1.4km/lの14.6km/lと、経済性も向上。1.6リッターから1.8リッターに格上げされたデメリットは全くない。これで価格はほぼ据え置きなのだから、実質的には値下げ。さすがデフレのニッポン。

次にライバルと比較してみよう。まず、1.7リッターのストリーム(i-VTECの2リッターは別格だから、あえて比較しない)と比較すると、最大出力、最大トルク、車重、燃費の主要な4つの要素は全てコンパクトなボディを生かしたスパシオが有利。1.8リッターのマツダ・プレマシーも然り。スパシオ、乗る前から期待を盛り上げてくれる。

では実際の走りはどうか。これが期待ハズレというか案の定というか、やっぱり中庸な走り。カローラの良質な走りがきっちりとミニバンのスパシオにも引き継がれている。確かに全高とシートポジションが高い分、ライバルと比較してもスポーティーさという点では劣る。しかし乗り心地や静粛性では完全にスパシオが上回っている。ハイペースでのコーナリング時は、ハンドルを切り始めたときからロールが発生すものの、不安となるレベルではないし、クルマの性格からいっても許容範囲内だ。強いて不満を挙げれば、もう少しタイヤの接地感が欲しいところ。ちょっと乗り心地を重視しすぎたような印象を受ける。

スパシオの最大の美点は取り回しの良さだ。ロングホイールベース化は不利な要素だが、前輪の切れ角を大きくすることで、1.5モデルで4.9mの最小回転半径は先代よりも0.1m大きいだけ。1.8リッターモデルも5.1mと、ライバルと較べて0.2m以上優秀な数値を実現している。旦那さんより奥さんの使用頻度が多ければ、これは強力な武器となるだろう。また、ライバルと較べて若干高めに設定された620mmのシートポジションも自然に乗り降りできるし、特に女性はスカートの裾の乱れを気にしなくてもすむだろう。ストリームとプレマシーが男性の視点に立った作りや走りに対して、スパシオは女性の意見も多く採り入れているな、という印象を受けた。まぁ、それも森高千里のテレビCMを見れば一目瞭然ではあるが。

ここがイイ

エクステリアデザインが素晴らしい。特に斜め後ろからのビューはとても個性的。奇をてらわずまとまっているという点では、最近のトヨタ車の中でも出色の出来だろう。まあ先代は今思うとあまりに情けないスタイルだった。クルマより(CMの)爆笑問題の方が印象に残っている。

また先代ほどではないが、ディスプレイの位置も高めでいい。最近一時よりディスプレイ位置が下がり気味(来年からの規制を見越して?)のトヨタだが、スパシオではキープしたので、まずは拍手。基本はカローラシリーズとの共用のため、苦肉の策で作られたインパネシフトだが、使いやすさはフロアより当然上。とはいえ、このタイプならコラムでも問題はないわけで、シフトを意識しなくてもいいという点で、コラムが欲しいところ。

ジュニアシートは重量がかかっているとき(座っているとき)には操作できないしくみ。子供がいる家庭には必需品だが、チャイルドシートと違って、あまり買わない家庭が多いので、装備されていれば使うだろうし、結果的に安全でいい。

ここがダメ

傾斜のきつい、太いAピラーは右前方視界を著しく妨げる。小さな三角窓があるが、女性の運転ポジションだとほとんど意味をなさない。かなり気になった。

セカンドシートはジュニアシートの設定のためか、3座が基本。従って一人分はとても小さい。サードシートもむろん小さいので、フロント2座以外はすべて子供用といえるほど。セカンドシートは2人掛けを基本とした方がもっとマルチに使えるように思う。

背が高いせいか、高速道路の発券機では中間の口から発券され、運転席から手が届きにくいのにはまいった。今後は発券機の認識機能を改良する必要がありそうだ。またせっかく用意された100V電源のソケットが荷室にしかないのはちょっと不満。

総合評価

ユーザーイメージはCMのとおり森高千里。結婚して子供が二人くらいの若い奥さんがメインドライバーで、ミニバンとヴィッツという2台は所有できない(する必要もない)が、毎日乗れて、マルチに使えるクルマがあると便利という御家庭用だ。試乗車が1.8のX-Gエディションだったので、走りは活発。スポーティーな足ではないが、奥さんがワインディングを責めることもなかろうから、これでOKだ。余裕ある高速巡航は家族の遠出(帰省?)を楽なものにしてくれるはず。ユーザーに合わせてか、ステアリングが軽すぎるのは気になるが、重くすれば逆に不満が出るだろう。つまりこれはルノーセニックのトヨタ版そのもの。セカンドシートが3座なのもセニックコンプレックスの現れか? などと勘ぐってしまう。2,3列めシートは外れないものの、はね上げれば荷室は不満なく広がるし、上げ底フロアを利用した2列め床下の小物入れも便利。

名前のスパシオとはイタリア語の空間という意味とか。カローラサイズで究極の空間を作り出しており、NCVシリーズの中では異端の存在でありながら、もっともNCVを体現したクルマといえそうだ。これこそ21世紀のカローラ(ファミリーカー)のあるべき姿だろう。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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