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トヨタ スペイド G新車試乗記(第670回)

Toyota Spade G

(1.5リッター直4・CVT・174万円)

21世紀初頭の傑作車、
ポルテが2代目にモデルチェンジ!
その兄弟車スペイドに試乗した!

2012年08月31日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目ポルテの兄弟車として登場


新型ポルテ(右)とスペイド

8年ぶりにフルモデルチェンジした新型「ポルテ」とブランニューモデルの「スペイド」は、主にフロントデザインが異なるだけの兄弟車。全長4メートル未満、全高約1.7メートルのコンパクトで背高なボディに、電動スライドドアを助手席側に備えた、トヨタ言うところの「プチバン」(ミニバン的要素を持ったコンパクトカー)になっている。いずれも2012年7月23日に発売された。

なお、ポルテは従来通りトヨタ店とトヨペット店向けで、スペイドはトヨタカローラ店とネッツ店向け。ネッツ店に関しては、これまでネッツ店で販売していた同じくプチバンの一種であるラウムが2011年秋に販売終了となったので、今回のスペイドはその代替モデルとも言える。ちなみに車名スペイド(Spade)は、Space(空間)とWide(広い)を組み合わせた造語とのこと。

 

ポルテ、スペイドは共に国内専用モデルになり、目標販売台数はそれぞれ月間4000台の計8000台。発売後一ヶ月の受注は、その3倍の2万4000台(ポルテが約1万1000台、スペイドが約1万3000台)とのこと。

生産工場は、トヨタ自動車東日本(株)の東富士工場(静岡県裾野市)。同社は2012年7月に関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北の3社が合併して誕生したもの。

■過去の新車試乗記
トヨタ ポルテ 150r (2004年9月更新)

■外部リンク
トヨタ自動車>プレスリリース>ポルテをフルモデルチェンジするとともに新型車スペイドを発売 (2012年7月23日)

価格帯&グレード展開

1.3および1.5リッターで、145万~174万円(FF車)

ポルテとスペイドは基本的に顔やボディカラーの設定が異なるだけで、ラインナップや価格はまったく同じ。パワートレインはトヨタのコンパクトカーでは定番の1.3リッター(95ps、12.3kgm)および1.5リッターエンジン(109ps、13.9kgm ※4WDは103ps、13.5kgm)で、変速機は4WDも含めて全車CVT。価格は1.3リッター車が145万~155万円(FFのみ)、主力の1.5リッター車が159万~174万円(4WDは17万~18万円高)。

アイドリングストップ機能は5万4600円のオプション(1.5リッターの場合)

装備設定は独特で、主力グレードで自由にメーカーオプションを選べるのが特徴。例えばスマートエントリーパッケージ(4万5000円)、アルミホイールや内外装のメッキ加飾パーツをセットにしたドレスアップパッケージ(6万5000~7万5000円)、コンライト(オートライト)を含むHIDパッケージ(5万5000円)、サイド&カーテンシールドエアバッグ(4万2000円)、アイドリングストップ機能(5万4600円 ※1.3リッターの上級グレードは標準装備で、1.5リッター・FF車のみに設定)などが用意されている。また、前席は主にセパレート式だが、ベンチシートタイプも中間グレードに用意している。

パッケージング&スタイル

違いは「顔」と「色」

試乗したのはスペイドだが、ポルテと異なるのは先に触れた通り、フロント部分のデザインやリアコンビランプ、そしてボディカラーの設定くらい。ポルテの方は「スクエアオーバル」をモチーフに「リラックス感」を重視したという先代譲りのホンワカ顔。一方、スペイドの方はプロジェクター式ヘッドライトの鋭い目付きに横基調のスリットを組み合わせた「シャープな造形で存在感を主張した」顔。言ってみればノアとヴォクシー、アルファードとヴェルファイアみたいな関係。昨今の風潮ではカッコイイ系の後者が販売を伸ばす傾向にあるが、ポルテ/スペイドの場合は果たして。

 

またボディカラーはそれぞれ8色ずつで、共通カラーは6色(パールホワイト、ブラック、シルバー、レッドなど)。残りの2色が専用色で、ポルテにはクリームベージュとエアグリーンパールクリスタルシャイン(薄いグリーン)が、スペイドの方にはかつてのWiLL サイファを思い出させるシトラスマイカメタリック(試乗車)とダークバイオレットマイカメタリックが用意される。

運転席側にリアドアが追加された


新型ポルテ&スペイドでは運転席側の前後にヒンジドアを採用

ボディサイズは両者共通で、全長3995mm×全幅1695mm×全高1690mm。つまり全長や全幅はヴィッツ並みにコンパクトだが、全高はミニバン並み。このあたりのサイズは2600mmというホイールベースを含めて、先代ポルテと大差ない。ただ、背は先代より少し低くなり、Cd値(空気抵抗係数)は0.31から0.29に改善されている。ちょっと残念なのは、絶版となったラウム(全高1535mm)ほど背が低くなく、機械式立体駐車場には入れないこと。

 

一方、先代ポルテと大きく違うのはボディ右側、つまり運転席側にもヒンジ式のリアドアが追加されたこと。先代の場合は、運転席がヒンジドア、助手席側がスライドドアの変則3ドアハッチバックだったが、新型は変則4ドアハッチバックになった。おかげで利便性は大幅に高まったものの、ボディ右側から見ると普通の5ドアハッチバックにしか見えないので、デザイン的な面白さについては少々目減りした。

 

試乗車はパッケージングオプションのアルミホイール装着車

とはいえ、新型にも左右非対称のボディ構造が受け継がれるなど、ユニークさは相変わらず。Aピラーからボディ後半にかけて、ピラー、サイドウインドウ、ドア等の形状が左右で全く異なる様子は見もので、開発陣の苦労が偲ばれる。またデザイン的にも、左右でボディ形状が異なるものを一台にまとめるのは難しかったはず。その痕跡は、例えば運転席側のCピラーあたりの処理にも残っているように見える。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
スズキ ソリオ 3710 1620 1765 2450 5.0
日産 キューブ 3890 1695 1650 2530 4.6
先代トヨタ ポルテ 3990 1690 1720 2600 5.1
トヨタ ポルテ
/スペイド
3995 1695 1690 2600 4.6/5.0 ※
トヨタ ラウム(販売終了) 4045 1690 1535 2500 4.9
トヨタ シエンタ 4100 1695 1670 2700 5.2
ホンダ フリード スパイク 4210 1695 1715 2740 5.2
 ※165/70R14タイヤ装着車(1.3リッター車)のみ4.6メートル
 

インテリア&ラゲッジスペース

ユーティリティにこだわった力作


内装色はポルテ、スペイド共に、写真の「プラム」と明るいベージュ基調の「フロマージュ」の2通り

インパネデザインは外観以上にユニークで、なかなかの力作。まず目を引くのがダッシュボード上部を塹壕のように掘った収納スペース(運転席アッパートレイ)。ここに棚を設ける例は珍しくないが、ここまで底を深くしてボックス状にしたものは珍しい。携帯電話や財布、飲み物など、モノを放り込んでおくのにとても便利。開発時には意識したのはリビングルームとのこと。

ステアリングはトヨタお得意の楕円タイプ。シフトレバーは使いやすいインパネシフトで、オーディオ・ナビの位置も悪くない。また左右非対称のAピラーで仕切られたフロントウインドウやサイドウインドウからの視界も良好。また助手席側の足もとを深くえぐって、広々とした空間にした点もユニークなところ。そしてメーターは最近トヨタではモデルチェンジを機に廃止されることが多いセンターメーター。それ自体は悪くないが、アナログ速度計の視認性がひどく悪いのが玉に瑕。

 

セカンドバッグくらいなら入りそうな運転席アッパートレイ

また室内空間は全長4メートル未満の「コンパクトカー」とは思えないほど広い。室内高は1380mmもあり、小学3年生くらいなら立てるほど。またフロア地上高は300mmと低く、サイドシルはほとんど出っ張っていないので、乗降性も抜群にいい。ここは子供もそうだが、足腰の弱った高齢者に間違いなく喜ばれるポイント。この点だけで、ポルテ&スペイドの購入を決める人がいてもおかしくない。

「柱の傷はおととしの♪」


助手席側Bピラーにはなんと子供の身長を測ることができる目盛り。120センチまで刻まれている

さらに新型ポルテ&スペイドで感動的なのは、助手席側Bピラーの室内側に、子供の身長が図れる目盛りが刻まれていること。これぞまさに子供や孫のいる世代の心を鷲づかみにするキラーアイテム。

また、先代ポルテで採用されたアンブレラホルダー(傘立て)が継続されているのも嬉しい(ただしサイド&カーテンエアバッグ装着車では小物入れに変更される)。また助手席側のグラブボックスにティッシュボックスを逆さまに入れれば、下のスリットからテイッシュを一枚ずつ取り出せる)工夫も。テッシュボックスは前席の背もたれ裏にも入れておける。

 

助手席スライドドアの開口部は、幅1020mm×高さ1250mmとアルファードより大きい。助手席シートは前後に700mm(FF車)もスライドする

運転席の座り心地は良好。アイポイントが高く、視界はとても良い。ステアリングはチルト調整のみ
 

後席の座り心地は抜群で、空間もミニバン並みに広大。助手席より「上席」かも。室内高は1380mmもある

後席の座面クッションはチップアップが可能だが、フックで固定するのが面倒。ただしこうすれば普通サイズの自転車も積めるし、後席片側に1名座ることも可能
 

荷室は後席を畳んでもこんな感じ。後席重視と荷室の割り切りは、日産キューブに似ている。荷室容量は354リッター(4WDは296リッター)

床下にはパンク修理キットを搭載。スペアタイヤはオプション(1万0500円)
 

基本性能&ドライブフィール

もはやCVTもアイドリングストップも違和感なし

試乗したのは「1NZ-FE」こと1.5リッターエンジンを搭載した最上級グレード「G」(FF)。乗る前からいかにも乗りやすそうなポルテ/スペイドだが、走りはまさにそんな期待通り。ああ、トヨタ車って素晴らしいと思わせる、街中でのイージーな運転感覚と滑らかな走りに、すぐに馴染んでしまえる。

変速機はCVTだが、アクセル全開時を除けば、もはやCVTの違和感はなく、いい意味でトルコンATから変速ショックとか変速時の段付きだけを取り除いたもの、という感じ。そもそもこの1.5リッターは十分なパワーがあるので、街中ではそうそう全開にする機会などない。

電動パワステも、いちいち電動だと言うのが馬鹿らしくなるほど、もう本当に普通。まあ、そういったものは今のトヨタ車ではごく当たり前のものだが、心なしか現行ヴィッツよりも乗りやすく感じる。国内専用モデルのせいだろうか。

 

試乗車はオプションのアイドリングストップ機能付だったが、これの出来がまたいい。価格は5万4600円とそれなりだが、これならアイドリングストップ嫌いの人でも許せるのでは、という仕上がり。というか、エンジンが基本的に静かな上、タコメーターが付いていないので、注意していないとアイドリングストップしたことに気付かないかも(もちろん、アイドリングストップ中にはメーター内には表示が出る)。再始動もスムーズかつ素早いし、スターターノイズも車外ではけっこう聞こえるが、車内ではほとんど聞こえないほど静か。

また、細かいことだが、トヨタのアイドリングストップは、アイドリングストップ中にパーキングやニュートラルにシフトしてもエンジンが掛からないのがいい。駐車場に止めてエンジンが停止したのに、パーキングに入れたらまたエンジンが掛かった、なんていう無駄なことがない。

見た目によらず操縦安定性も良好。VSCも全車標準に

いつものワインディングでも走ってみたが、操縦安定性もまったく問題なし。というより、期待以上にいい。限界自体は高くないが、そこまで行っても常に弱アンダーステアをキープするし、そこからステアリングをさらに切り込んでも(緊急回避ではありがちな状況)、キューーーと一定のスキール音を立てながら、しっかりと曲がってくれる(おそらく全車標準のVSCが多少介入している)。また旋回中にブレーキを踏んだり、アクセルを急に戻す(これも緊急回避ではよくあること)という状況でも、VSCがすかさず介入して、オーバーステアになるのを防ぐ。どういうわけか、とにかく前後のグリップバランスがいい感じ。先代ポルテも見た目によらずハンドリングは良かったが、VSCが全車標準になったことで、もう文句なしになったと思う。

なお試乗車のタイヤは、パッケージオプションのアルミホイールとセットの175/65R15で、銘柄はダンロップのSP スポーツ ファストレスポンス。これに関しては、特に低燃費に特化したタイヤではないようで、それがワインディングでの印象の良さにもつながっているかも。標準の14インチや15インチはいわゆるエコタイヤになるようだ。

高速走行が格段に快適になった

高速道路も、法定速度で走る範囲なら十分に快適。なにしろ先代ポルテは最後まで4ATだったわけで、一気にワイドレンジのCVTになった恩恵は絶大なものがある。先代ポルテは1.5リッターでも高速走行時の静粛性が低く、当時のモーターデイズ試乗記にも「風切り音をはじめ、エンジン音、ロードノイズなど様々な騒音が加わって、高速長時間走行を苦痛にする」、「長距離ドライブにはあまり向かないタイプのクルマ」と厳しいが、新型(特にこの1.5リッター)ならもう不満はない。

ただ、100km/h前後では足回りからコツコツと細かい振動が入り、やっぱりこの背高ボディを支えるために足は硬めになってるんだなぁと思う。また同じく100km/h前後からは、Aピラー付近でサワサワという風切り音が発生する。いずれも文句を言うレベルではないが、100km/hよりも90km/h、90km/hよりも80km/hの方が快適でスムーズに走る、という印象を受ける。また燃費的にも80km/h程度で走るのが良さそうだった。

試乗燃費は13.0~18.5km/L。JC08モード燃費20.6km/L

今回はトータルで約220kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつものように一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が13.0km/L。夜間、空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が、あれよあれよという間に伸びて18.5km/Lだった。また計測距離が短いのであくまで参考ながら、100km/h巡航は約18km/L、80km/h巡航は19~20km/L前後という感じだった。

JC08モード燃費は試乗車のようなアイドリングストップ機能付が20.6km/L、アイドリングストップ機能なしの場合は19.0km/L。燃料タンク容量は42リッターと少ないが、実用燃費がいいので航続距離は十分。指定燃料はもちろんレギュラー。

 

ここがイイ

動力性能、操縦安定性、快適性など、走り全体。パッケージング、ユーティリティなど

とにかく乗りやすし、操縦安定性も十分なレベルにあるし、VSCもいよいよ全車標準であること。特にこのクルマの場合は、必需品だと思う。高速道路も含めて、常用平均速度が低い日本の道路だが、これくらいの走行性能は欲しいし、逆に言えばこれくらいがちょうどいい。とにかく普通に街中を走って、気持ちのいいクルマ。1.5リッター車の場合はオプションになるが、アイドリングストップの出来もいい。

走りの気持ちよさは、CVTがトルク感をうまく演出していることにありそう。エンジンをそんなに回さなくても、エンジンが唸ることはなく、十分な力強さで加速していく。1.3リッター車は乗っていないので分からないが、1.5リッター車は「ちょうどいい」感に満ちている。高速巡航も不満が無くなった。エンジン回転が低いため、室内の静粛性も高い。このカタチで一般道から高速道路まで、静粛性が高いのは立派。

 

そしてもちろん後席を重視したパッケージングやユーティリティ装備の充実。このあたりは先代ポルテ譲りの部分だが、これをさらに高めるものとして、運転席側にリアドアを追加したことも、やはり歓迎できる。これを例えば、電動スライドドアにするのはボディサイズ、コスト、重量的に難しかったにしても、Bピラー付の観音開きドアだったりすれば、なお良かった(面白かった)ようにも思うが、通常のヒンジドアにしたのも、これはこれで正解だと思う。シフトレバーがコラムからインパネに移ったのも使いやすくてよかった。

ここがダメ

メーター視認性、右リアドア周辺のデザイン処理、スピーカーの音など


メーター盤面が暗く、昼間の視認性はかなりいまいち

アナログ速度計の視認性が悪い。白っぽい盤面に、黒枠のレタリングという組み合わせだが、このレタリングがまず良くない。夜間はレタリングが赤く浮き上がるので問題ないが、昼間は盤面が影になって暗くなり、数字がとても読みにくくなる。走行中の速度を知るのは、安全運転(というか遵法運転)の基本なので、ここは早めに改善したいところ。

運転席側リアドア周辺の中途半端なデザイン処理。左右非対称デザインゆえだが、開発時にはここをスライドドアとする案もあったようで、そんな迷いも影響したのかも。デザイン的にもパッケージング的にも画期的なクルマゆえ、少なからず残念な部分。

ディーラーオプションのタッチパネル式ナビ。オーディオの音量調節や選局・選曲はステアリングスイッチで行い、それ以上の操作は全てタッチパネルで、という作りだが、スマホとかを使いこなせる人でも、そうとう戸惑うのでは。また画面に角度を相当つけないと、昼間は光が反射して見づらい。下向きにチルトできるといいのだが。

 

オーディオのスピーカーは、インパネ奥のAピラー付け根にあるのだが、その音が悲惨。昔のカーラジオみたい。スライドドアにスピーカーは付けられないので、こうなったのだと思うが、こういった場所にあるスピーカーを交換したり、位置を変えたりするのは大変なので、最初から何とかして欲しい。また12Vのアクセサリーソケットが一つしかないのも残念。スマホ充電用やら、様々なアクセサリーをつけるのは普通なのだから、最初から3連くらいのソケットがあってしかるべき。

リアコンビランプに隠されたスペイドマーク。ボディ後半では数少ないスペイド専用パーツの一つだが、こういう子供っぽいデザインはなくてもいいと思う。

総合評価

こういうクルマが消えたら、日本車に未来はない

先代でも絶賛したポルテが、8年を経てフルモデルチェンジ。ラウムという良きクルマなき今、ポルテが基本そのままで、さらに改良されて登場したのは喜ばしい限り。こういうクルマが消えたら、日本車に未来はないと言ってもいいほど、ポルテとスペイドは使い勝手が素晴らしく良いクルマだ。全長が短いし、幅も狭いから、狭い日本の駐車場と道路事情に最適。全高は少し下がったものの、旧来の立体駐車場に依然入らないのは残念だが、これはまあ、最近の軽自動車ですらがそうなので、致し方なし。

何より新型ポルテとスペイドには、運転席の後ろにドアができたため、ますます使いやすくなった。ドライバーの場合、手荷物は後席に放り込むのが普通。となれば、電動あるいは手動のスライドドアか、後ろヒンジドア(いわゆる観音開き)の方が、より良かったとは思うが。

 

そして先代通りのシートアレンジがそのまま残り、改悪されていないことは実に結構なこと。フロアは完全な掃き出しのフラットフロアとなったし(ただし4WD車にはセンタートンネルがある)、低床だから老人や子供にやさしい。運転席ウォークスルーができるし、助手席の背面テーブルも文句なし。駐車中、ここでノートパソコンが使える。一般的なクルマの場合、広くて快適なリアシートがある場合でも、助手席に座ってしまうことが多いが、ポルテ/スペイドでは2人乗りの時でも、リアシートが中心。その結果、室内が合理的に広く使えるわけで、それこそが大きなスライドドアの恩恵だ。しかも車内には傘立てがあって(おそらく日本車では唯一)、傘を開いてから外に出るなんてこともできる。その傘立てが、試乗車のようにサイド&カーテンエアバッグがあると無くなるのは残念なので、ここはもう一工夫欲しかった(床に水平に置くのもいいと思う)。

 

ステアリング奥に「写真立て」もある。ミラー付のアッパートレーリッドは販売店オプション

さらに新型では、インパネが改良されているのがいい。様々な物入れを閉めるとテーブル状となり、かつてのステップバン(ちょっと例えが古すぎるが、このクルマもセンターメーターだった)のよう。ダッシュボード上部にもフラットな部分が多いため、いろいろモノを置けるのがうれしいところ。PNDにETC、スマホ、ネズミ捕り探知機など、ずらりと並べられそう。何より運転席右の四角いカップホルダーは、どう見てもスマホ置き場として作られたとしか考えられない。スマホを放り込むと、画面が3/4くらい見えるのだ。公式にスマホ置き場を作ると、お上の指導に引っかかりそうだが、これなら大丈夫ということではないだろうか。ステアリングの正面奥に写真ホルダーがあるのも気が効いている。子供の(孫の)写真がベストフィットだろう(ペットでもいいけど)。安全運転するようになるはず。

いっそ無印商品にOEM

初代ポルテはユニバーサルデザインのクルマとして、子供や老人に優しいことがコンセプトだった。それは確実に受け入れられたわけで、8年間の累計販売台数が立証している。そこでもっと売らなければ、ということで、スペイドが作られたわけだが(もちろんラウムの生産終了に伴う、販売店対策でもあるが)、ノアに対してヴォクシーが成功を収めたように、スペイドが「ミニバンではデカすぎる」というダウンサイザー家族にウケて、ポルテを凌ぐ人気となるのは間違いないところ。そうやって、こういう良心的なクルマが売れることは歓迎したいが、スペイドもスタイリングはいまいちというか、カッコよくはない。ポルテはコンセプト通りで悪くないが(しかし先代のほうが良かったと思う)、そのポルテよりは、という消極的な理由で買うお父さんが多いのではないか。

 

カッコ良さとか、走り、趣味性、ステイタス感といったクルマの重要な要素は一切考えず、ひたすら便利な生活道具を目指して開発した場合、ポルテとスペイドは完璧なプロダクトだろう。スマートみたいなコンセプト優先車がいいとか、ポルシェのような走りやブランド力を兼ね備えたクルマがいいとか、いいオヤジが乗っていても恥ずかしくない高級セダンがいいとか、そういった雑念(というか、そこがクルマでは今や一番重要だったりする)を捨て去って、一台だけ選びなさいと言われたら、まったく躊躇なくこのクルマにするだろう。高速巡航も不満がなくなったから、日本国内における道具としてのクルマでは、最高の一台かもしれない。今までのクルマ感を超越できる人のクルマだ。

でも、でもやっぱり素直に買えないのは煩悩のせい。例えばスペイドのカッコ良さというのは、なんだか子供っぽいし、ポルテは「鳩のCM」が象徴するように「あまりに」だ。そういうのは関係ない、というところまで、どうしても達観できない。

 

そこで思うのは、このクルマが無印良品あたりとコラボできたら、ということ。かつてトヨタもWiLL シリーズでは他ブランドとのコラボしていたが、あんな感じで、内外装を無印良品に作らせて(デザインさせて)みたら、大人の乗れる便利な道具ができ上がると思う。いっそ無印商品にOEMしてしまってもいい。乱暴な言い方だが、このクルマの場合は、トヨタ車であることすらも正直言って意味が無いところまで来ていると思う。ポルテ、スペイドとは別の、無印なデザインのおしゃれな生活道具(ハードウェアは安心のトヨタ製)が出てきたら、ガラパゴスな日本専用車ではなく、iPhoneのように世界でも売れるのでは、と妄想してしまう。

さらに果てしない夢としては、この「ドンガラ」だけが欲しい。商用車的な、シンプルな内外装で、あとはユーザーが自由に造作できるモデル。さらに8年後のフルモデルチェンジでは、そんなクルマも作ってもらいたい、などと言ってる場合ではなく、現行モデルでもやれないことはないと思うのでぜひ。枯れたオヤジになった頃に、そんなポルテが買えることを希望したい。

 


試乗車スペック
トヨタ スペイド G
(1.5リッター直4・CVT・174万円)

●初年度登録:2012年7月●形式:DBA-NCP141(-BEXGK) ●全長3995mm×全幅1695mm×全高1690mm ●ホイールベース:2600mm ●最小回転半径:5.0m ●車重(車検証記載値):1170kg(720+450) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:1NZ-FE ●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:75.0×84.7mm ●圧縮比:11.0 ●最高出力:80kW(109ps)/6000rpm ●最大トルク:136Nm (13.9kgm)/4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:19.0km/L/20.6km/L(アイドリングストップ機能装着車)

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 トーションビーム+コイル ●タイヤ:175/65R15(Dunlop SP Sport FastResponse) ●試乗車価格(概算):224万2755円  ※オプション:スマートエントリーパッケージ(スマートエントリー&スタートシステムなど) 4万5000円、ドレスアップパッケージ(15インチアルミホイール、内外装メッキ加飾など) 6万5000円、HIDパッケージ 5万5000円、ナビレディパッケージ(ステアリングスイッチ、バックカメラ) 3万円、アイドリングストップ機能 5万4600円、サイド&カーテンシールドエアバッグ 4万2000円、オーディオ エクセレントナビ 19万4250円、ETC 1万6905円 ●ボディカラー:シトラスマイカメタリック ●試乗距離:約220km ●試乗日:2012年8月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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