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ホンダ モビリオ スパイク新車試乗記(第238回)

Honda Mobilio Spike

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2002年10月05日

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キャラクター&開発コンセプト

ファミリーのモビリオ。「個人」のスパイク

大ヒット車、フィットのプラットフォームを使ったスモールカー第3弾。その名の通りモビリオとほぼ同じボディ構造ながら、より「個人」向け。「ガレージボックス」なる言葉をキーに、趣味や遊びの道具として開発されている。

モビリオ発売の9ヶ月後となる2002年9月19日に発売されたわけだが、両車の違いは、デザイン。モビリオのヨーロッパ路面電車デザインに対して、若者向けアメリカンカジュアル?スタイル。そして3列シートに対して2列シート。手動に対して電動のスライドドア。90psに対して、新型VTECの110psエンジン。

2台で一つ、と考えれば

目標台数はモビリオと同じ5千台/月。今年1~8月でモビリオは平均5千台をクリアしているので、無理な数字ではないだろう。両方合わせて1万台/月となれば、ホンダにとっては嬉しいはずだ。

ライバルはトヨタ・bB(129.8~173.8万円)、新型キューブあたり。欧州車では2列シートのルノー・カングー(175万円)が近いが、向こうはもともと商用車。ホンダもモビリオ・ベースで商用車を作ったらヒットするかも?

グレード展開

とほぼ同じ価格&グレード体系

グレード体系はモビリオと同じ「W」(149.9万円)、「A」(139.9万円)「Y」(134.9万円)の3種類。プラス18万円で4WDとなる。

電動スライドドア(左側のみ)はトップグレードに装備。7速モード付きCVTは上位2グレードに設定。オートエアコン、アルミホイールなどはセットオプション(10万円)。全てオーディオレスとなるのに注意。

シートが消えて、20馬力増える

159.9万円のモビリオ「W」とスパイク「W」(Lパッケージ付)を比較すると、モビリオにはオーディオやオートエアコン、3列シートが装備されるのに対し、スパイクにはそれらが無い。代わりに電動スライドドアとプラス20馬力が付いて来る(おそらくモビリオにも、いずれ電動ドアが装備されるだろう)。

パッケージング&スタイル

秀才モビリオがストリート系不良に変身

西のフィアット・ムルティプラ、東のホンダ・モビリオ。小型ミニバンのデザイン上の傑作車は最近ではこの二つじゃないだろうか。両車、天才的パッケージングを持ちながら(ムルティプラは3×3の6人乗り)、デザインがあまりにぶっ跳び過ぎて評価を分けている。そう言えば、モビリオの開発担当者は「ムルティプラは意識した」と言っていた。とはいえ、モビリオの販売はけして悪くはなく、かなり日本市場に受け入れられたといえそうだ。

それでもさらに変化球を投げてくるのが、ホンダの(というか日本のメーカーの)スゴイところ。スパイクは骨格にほとんど手をつけず外装のみ一新させ、ユーロトラム(ヨーロッパの路面電車)風の知的スタイルから、アメリカンで、ワルで、ストリートなクルマに大変身。ファミリーっぽい最後尾シートは捨てて、代わりにホンダ十八番のVTECエンジンを搭載したわけだ。

ただし、基本的にはモビリオのまんま。スパイクのデザインコンセプトは「メタル・インゴット(金属の延べ板)スタイル」で、特徴は、モビリオの後部窓を潰して出来た極太リアピラー(に見えるもの)、「ガレージの扉のような」リアバックドア。そして角張ったノーズ。デザイン的にはいささかちぐはぐ感がある。

形容しがたい異様なまでの押し出しの強さ

サイズは全長4,110×全幅1,695×全高1,740mm。モビリオより55mm長く、10mm幅広く、35mm低い。ホイールベースは同じ2,740mm。実際の印象は、数字よりかなり大きい。5ナンバー車とは思えない押し出し感。ちなみに試乗車はフルエアロ、金色Hマークの外装のせいか注目度が妙に高かった。新型Zに無反応だったワカモノの視線をやけに感じた気がしたのは、それだけマーケティングが正しい証拠なのだろう。好意的なものかどうかはまだ分からないけれど。

至れり尽せりのユーティリティ

インパネもモビリオを踏襲。それでもメーター盤面にチェッカーを入れたり、透過照明を赤にしたりと専用の演出が施される。ステアリング左右スポークには、マニュアルシフト用の+-ボタンが付く。フロントはベンチシートで、小物入れはフィッシングベスト並に豊富。オプションで頭上にコンソールも追加できる(1.98万円)。

シートが減った分、モビリオを上回るラゲッジは外観のワルっぽさに関わらずとても実用的。出っ張りを減らした、まっ四角な開口部は、自転車を縦積みするのに間違いなく便利だ。奥行きは最大1,855mm。フィット同様のシートアレンジ、スパイクならではの細かい工夫で、アウトドアスポーツの移動手段としては確かに便利そう。当然ながら電動スライドドアも便利。他メーカーにも言えるが、安全上の配慮だとしても今後は右側も電動化すべきではないだろか。

基本性能&ドライブフィール

アクセサリー満載の試乗車

試乗したのはトップグレード「W」の前輪駆動モデル(車両本体:149.9万円)。オプションとしてDVDナビ(20万円)、Lパッケージ(10万円)、HIDヘッドランプ(5万円)など。加えて、エアロパーツ、サブウーファー、15インチアルミなど100万円相当のアクセサリー付き。デモカーとは言え、やや「やり過ぎ」仕様。豊富なアクセサリーも魅力の一つ、というメーカーの主張だろう。

モビリオの20馬力アップ

パワーユニットは最近フィットに追加された新型1.5リッターSOHC・VTEC「L15A」。モビリオのエンジンをシングルカムのまま4バルブ化。110ps/5,800rpm、14.6kgm/4,800rpmを発揮(20ps、1.2kgmのアップ)。1270kgのボディを不満なく走らせる。ホンダらしくスムーズに回るが、低速からトルキーなのが特徴だ。

ホンダのCVT「マルチマチック」は、違和感なく回転数を制御。街中のベタ踏み加速では3,500~5.000rpmの一定回転をキープして、CVT特有の加速感なき加速を見せる。Sモードだと500回転ほど回転数をさらに上乗せする感じ。マニュアルモードだともっとスポーティだが、どんどん自動シフトアップしてしまう。元来走りを楽しむクルマではないので、あまり意味はないが、あくまで「遊び」だ。全速度域で使用できるLモードは元気はいいのだが、本来の目的通りエンブレが効き過ぎて街中で使ったりするとギクシャクする。

風にも負けず、高速もそつなく

高速走行時のエンジン音はわりと入ってくる。100km/h巡航は約2,600rpmとCVTの割に低くない。それでも、法定速度域なら風切り音やロードノイズと同レベルなので特別ウルサくはない。開口部の大きいボディを感じさせない、乗用車的な走りだ。乗り心地はまずまず。荒れた路面でも、ポンポン弾むようなことはない。

そこからアクセル全開にすると、レッド手前6,000rpm前後を使ってジワジワ加速。空気抵抗の大きいボディ形状ながら、メーター読みで155km/hまで達する。クルマの性格を考えれば十分な性能だろう。その際の直進性も問題なく、リラックスして運転できる。ただし、エンジン音はそれなりに高まる。90馬力のモビリオより室内は騒がしい印象だ。

上下幅の大きい燃費

見た目と違い低重心なので、意外にハンドリングは良い。ただ、試乗車はオプションの195/55R15タイヤのせいか、限界域でややヒヤッする動きを見せた。電動パワステのフィールも希薄。いずれにしても飛ばしたくなるクルマでは、もちろんない。

参考までに燃費は高速道路をメインに約300km/h走行して約10km/L。付属の燃費計は高速80km/h巡航で17.0km/L、100km/h巡航で15.0km/Lを表示。街乗りでは7~9km/Lだった。オドメーターを切り替えると燃費計になるのは便利。印象としてはもう少し高燃費だとうれしいが、これは走り方の問題もありそうだ。

ここがイイ

小さくてもゆったり乗れ、しかもたっぷり積めるという意味では、日本の交通事情(及び社会情勢)にジャストフィット。まあ、この点はモビリオも同様で、時代が求めるクルマということになるだろう。3日ばかり試乗したが、何も考えず日々使うには、こんな便利なクルマはない。ワンタッチで床下へたたみ込めるリアシートはやはりいい。

CVTに追加されたマニュアル7速モードは、反応も早く、何より親指の腹に力を入れるだけで見事にアップダウンする。といってオモチャっぽさはなく、節度感もある。ボタンに関してはポルシェに匹敵するフィーリングがすばらしい。CVTは電気モーター的な感覚だが、それをマニュアル的に動かすこの電子プログラムのノウハウは、今後の燃料電池自動車時代に生きるだろう。

ここがダメ

モビリオベースということで、インパネはほぼそのままだが、外装やコンセプトをここまで変えたのだから、インパネ形状だけでももう少しアメリカンな雰囲気に変更してもらいたかったところ。シートがベンチ(の割にはけっこう体をホールドする)なのだから。そしてそのベンチシートにはフルフラット機構がない。この手のクルマには必要なのでは?

また足踏み式パーキングブレーキの解除にはインパネのレバーを引く必要があるが、これは二度踏み式を採用して欲しいところだ。

総合評価

かつてステップワゴンを2列シート若者向けに改装したS-MXというクルマがあったが、モビリオに対するスパイクはまさにそのパターン。今さら大柄なステップワゴンを2列シートにしても売れっこないので、小型ミニバンでそれを実現した、というわけだ。S-MXの場合はそれでもボディーサイズがかなり変更されていたが、スパイクの場合はあくまで外板の変化。そしてそのデザインワークも、ノーズのつけ替え、窓埋め、ウインドウまわりのカラーリング(モビリオでは黒い部分をボディー色にしてある)など、メーカーというよりカスタマー的なもの。最近の若者としては、自分でカスタムするより、出来合いの(しかも安心のメーカーメイドの)カスタムカーを欲する傾向にあるので、この方向は正解だろう。ブランニューカーではないが、モビリオ・スパイクの名が示すとおり兄弟車としてこうしたクルマをメーカーが出すことに、クルマ好きとしてはあまり嫌悪感を持つべきではない。かつてのマークII3兄弟みたいなものだ。同じベース(フィット)でいろんなクルマを作るということは、省資源としても悪い方向ではない。

とはいえ実際のところ、スパイクのモビリオに対する変更点はあまりに少ない。電動ドアはモビリオにもいずれ搭載されるだろうし(もしかするとVTECエンジンも)、場合によっては、モビリオ2列シート仕様も出るかもしれない(これが欲しかったりする)。日産キューブに先駆けて発表されたあたりにも、市場対策という思惑が見え隠れする。ジジイのクルマ好きとしては、せっかくフィットベースでこのコンセプトのクルマを作るなら、かつてのステップバンのような、シンプルで潔いベーシックミニバンとしてもらいたかった、というのが本音だ。むろんこのスタイルゆえ、若者に浸透するということは理解でき、それをとやかく言うつもりはないが。

モビリオもスパイクもサイズ、パッケージングなど日本でもっとも使い勝手がよく、かつ資源的にも無駄の少ないクルマだ。1.5リッターゆえロングドライブもこなせる実力を持ちながら、日常的には軽のように使える。その昔、スバルドミンゴという軽ベースのリッターワンボックスが一部好事家(日本ばかりでなく海外にもファンがいた)に愛されたが、時が変わってそのコンセプトがポピュラリティーを獲得したわけだ。ただし、昔とは安全性や快適性、もちろん肝心のパッケージングも飛躍的に向上しているわけで、なんども言うが、日々使うのにこんな便利なクルマはない。それゆえ開発陣は「高年齢層にも乗ってもらえるのでは」と発言していたが、モビリオもスパイクもかなり「跳んだ」デザインになっているので、それはかなり難しそう。ただ、同じコンセプトで「おとなしい」クルマが作られれば、いよいよカローラ(セダン)の時代は終わるだろう。カローラやサニーを持たないホンダならできそうなのだが。

ホンダ モビリオ スパイク
●全長4,110mm×全幅1,695mm×全高1,740mm●ホイールベース:2,740mm●車重:1,270kg●エンジン:1,496ccSOHC 4バルブ・横置き●駆動方式:前輪駆動●110ps/5,800rpm、14.6kgm/4,800rpm●10・15モード燃費:16.0km/L●タイヤ:195/55R15(GOODYEAR Eagle LS2000)●価格:149.9万円(試乗車:--万円) ●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

公式サイト http://www.honda.co.jp/MOBILIOSpike/

 
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