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スズキ セルボ SR新車試乗記(第487回)

Suzuki Cervo SR

(0.66L直噴ターボ・CVT・141万7500円)

直噴ターボと7速CVTを得て、
セルボの何が変わったのか?

2007年11月17日

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キャラクター&開発コンセプト

直噴ターボ+7速CVT搭載の「フラッグシップ」軽

軽自動車のセルボ(2006年11月発売)に07年10月16日に追加された「SR」は、3気筒直噴ターボ(64ps、10.5kgm)+7速CVT(無段変速機)のパワートレインを搭載した「スズキ軽自動車のフラッグシップモデル」。ワゴンR/ワゴンRスティングレーDIと同じ、スズキの軽で最も高性能な直噴ターボは、従来の3気筒ターボ(60ps、8.5kgm)より高出力で、なおかつCVTとの組み合わせにより10・15モード燃費は23km/L(従来のターボ・4AT車は19.8km/L)を誇る。

この「直噴+ターボ+CVT」の組み合わせは、意外にも「日本初」とのこと。世界初でないのは、少なくともアウディ(の海外仕様)に直4・直噴ターボ・CVT車があるからだ。

なお、SRの追加と共に、セルボ全車で乗り心地や静粛性などの小改良が行なわれている。販売目標台数(セルボ全体)は従来と同じ月間5000台。

・「セルボ」に上級グレード「SR」を設定(2007/10/16)
http://www.suzuki.co.jp/release/a/2007/1016/index.html

価格帯&グレード展開

ソニカと真っ向勝負の141万7500円

「SR」の価格は141万7500円(4WDは12万8100円高)。従来で一番高かった「TX」(2WDで124万7400円)より17万100円高い。この価格はダイハツ・ソニカの最上級グレード「RSリミテッド」とまったく同じだ。セルボSRの方はオーディオレスだが、その代わり軽ターボ車で唯一グリーン税制適合車(低燃費&4つ星低排出ガス)で、08年3月までに登録すれば取得税が9000円安くなる。

またSRにはオートライト、本革&人工皮革シート、ターンランプ内蔵式ドアミラーカバーのセットオプション(5万2500円高)が用意される。キーレススタートは(ソニカ同様に)全車標準だ。

パッケージング&スタイル

専用のバンパー、グリル、ディスチャージライトを採用

全長3395×全幅1475×全高1535mmは通常グレードと同じ。外装はフラッグシップらしく、シャープなエッジを強調した専用の前後バンパー、専用フロントグリルを採用。ヘッドライトも目尻のところとプロジェクター周辺部が青く光る「クリスタル調」ディスチャージ標準となっている。

SR用のボディカラーは撮影車両のパールホワイトや、「SR」専用色の黒(スパークブラックパール)、紫(ミステリアスバイオレットパール)など6色だ。

本革&人工皮革シートをオプションで設定

「リーフシボ」とスズキが呼ぶ独特のシボなど、インテリアの雰囲気は通常のセルボ通り。シート地は通常モデルのブルーをあしらったものから、SRではオーソドクスな黒となっている。試乗車はオートライト等とセットオプション(5万2500円)の本革&人工皮革シート仕様。体に直接触れる前席センター部を本革とし、それ以外のサイド、ヘッドレスト、リアシートを人工皮革としたという。本来なら、手が触れやすいサイド部分こそ本革がいいように思うのだが。ステアリングホイールは標準で本革だ。

後席の背もたれは以前から左右5:5分割で畳めたが、「SR」にはリクライニング機構を追加。これは座り心地うんぬんというより、大物を積む時など「あともう少し荷室を広げたい」場合に便利なものだろう。他は従来モデルとそう変わらない。

基本性能&ドライブフィール

何はなくともCVT

今回は富士・河口湖周辺で行なわれた合同試乗会で試乗。「SR」の3気筒直噴ターボ(64ps、10.5kgm)は、ワゴンR/ワゴンRスティングレーの「DI」と同じものだが、CVTとの組み合わせが初となる。10・15モード燃費は、4ATの低圧ターボ車(19.8km/L)や、ワゴンR/ワゴンRスティングレーDI(19.4km/L)より優秀な23.0km/L。燃費のためなら、何はなくともCVTだ。

ちなみにソニカRSリミテッドとは、価格から最高出力、最大トルク、おまけに10・15モード燃費や車重にいたるまで、まったく同じ。ライバル意識は明らかだ。

パワー十分、静粛性も高い

そのパワートレインの印象は、パワー十分、変速ショックなしで、普通車のリッターカーと比べても何ら見劣りしない、というもの。むしろターボの消音・低ノイズ効果のせいか、静粛性は高いくらいだ。液封ブッシュが採用され、3気筒特有のアイドリング振動も気にならないレベルまで抑えこまれている。

JATCO製CVTも今風にスリップ感の少ないリニアなもので、室内で聞く限りベルトノイズもほとんど耳ざわりではない。7速マニュアルモードはさすがにパドルシフトではなく、シフトレバーを押し引きするタイプだが、メルセデス・ベンツ並み?の7速もあるのでステップ比は小さく、小気味よい変速が可能だ。

4速 対 7速

後半は、低圧ターボ+4ATの「TX」(60ps、8.5kgm)と2台で、富士スバルラインを使い、富士の5合目(標高2305m)まで往復してみた。車重はほぼ同じ(TX:810kg、SR:820kg)で、体感性能もスペック上の差(4psと2kgm)ほどない。平地での加速なら、低圧ターボ車でもけっこう付いていける。

100km/h巡航は、低圧ターボ・4AT車でも約3300回転ほどと十分に低いが、「SR」はCVTの面目躍如でさらに低い2800rpm。まるで一昔前の普通車2リッター・4AT車なみの低さだ。この回転域でもすでにターボの過給圧がかかっているので、アクセル操作にもちゃんと反応してくれる。

「TX」との差が出るのはワインディングに入ってからで、まず「TX」の4AT(こちらもスズキ初採用だったマニュアルモード付き)だとコーナーの侵入で適切なギア比が選べないため(2速だと低過ぎ、3速だと高過ぎる)、有効なエンジンブレーキが得られず、旋回中から脱出にかけてもトラクションが掛からない。結果、加速が緩慢になるほか、どうしてもフラつきやすくなる。コーナーを抜けるたびに、先行する「SR」が遠ざかってゆく。

逆に7速マニュアルモード付きの「SR」に乗り換えると、適切なギアリングでコーナーに入ってゆけるので、旋回速度が速いだけでなく、安心感も高いし、楽しい。前を走る「TX」を余裕でつつけるほどだ。「多段化が操縦性にも効く」という理屈を、身をもって体験することとなった。

ここがイイ

軽としては十分といえる動力性能、よい乗り心地、7速CVTの的確なシフト感。軽としてはしっかりしたシート、上質で、4人と荷物がちゃんと乗る室内空間、燃費の良さと排ガスのクリーンさ。おおよそ軽としては究極のものになっている。これぞクルマの進化だ。

ここがダメ

こうなってしまうと気になるシャシー性能の低さ。街乗りではそう気にならないが、ハイスピードからフルブレーキングした時の安定性やブレーキタッチは、走りの良さに比して今の基準に達していない。「軽にこれ以上の性能は過剰」というのは実に正論だが、ここに来てリッタカーを越えるほど進化したパワートレインとのギャップが、どうにも目立つようになってしまった。

オプションのオートライトはもう少し早めに点灯して欲しいところ。シート背もたれのノッチがもう少々細かく調整できるとベスト。何より7速あるのだからやはりパドルがあれば、という感は強い。

実際の販売では、もはや普通車1.5リッタークラス並みの価格はかなり厳しいだろう。よほど強力な「普通車を選ばない理由」がないと、いくら諸経費が安いといえ選びくい軽になってしまった。

総合評価

ついにスズキからも究極の軽

2年前に登場したソニカはやはり業界には衝撃だったようだ。今回のSRはソニカに追いつけ追い越せで作られ、ついに追加されたモデルであろうことは想像に難くない。確かにSRの性能はソニカに比するものになったと思う。そう、これでセルボもソニカ同様に、もはや軽という概念を超え、1.5リッタークラス並みの性能を持つ理想的な小型車になったわけだ。ターボラグなどないし、CVTノイズも聞こえない、パワー感には不足なし、さらに先日試乗したヴィッツの1リッターで気になった3気筒特有のアイドリング振動もほとんど感じられない。10・15モード燃費(23.0km/L)はソニカに並んだし、軽ターボ唯一のグリーン税制にも適合し、来年3月までに登録すれば取得税が9000円軽減されるというあたりを含めて、ついにスズキからも軽として究極の高みに達したクルマが登場したわけだ。

乗ってみればたぶん誰でも、このハード面、特にパワートレインの仕上がりには及第点をつけると思われるクルマだ。さすがに腰高感はあるものの、ワインディングも楽しいし、法定速度プラスαでの高速クルージングも快適。これだけの動力性能ゆえ、シャシー性能に関しては不満が残るものの、他は特に言うことはない。

若い女性と年配男性の両方に売れる?

ただ、ソニカはインパネシフトで、レーダークルーズコントロールが設定されていたり、ステアリングスイッチがあったりと先進性な試みが目立ったが、セルボはオーソドックスでその点ではやや不満が残る。デザイン面もインテリアを含めて過去にセルボの試乗記で書いたとおり、「ちょっと違う感」があるのは否めない。本革+人工皮革のシートも座り心地は悪くないが、やはり高級感という点では微妙だ。

つまりハード面はこんなにいいクルマなのに、デザインを含めたソフト面が今ひとつという感じがしてしまう。現在の販売状況では、当初のターゲットであった若い女性と同時に、高級な軽を求める年配の男性にも売れている。いわゆる普通車と比べれば圧倒的に数の出る軽自動車だけに、こういう分析にも説得力があるわけだが、若い女性と年配男性の両方ににうける商品って世の中では他に見あたらないし、それってちょっと変な話でしょう、という感覚は否めない。おしゃれな女の子とジジイ(失礼!)が共に好む商品なんて。が、ここに重要な問題が潜んでいるのではないか。実はクルマという商品こそ、他の商品と異なり、この両方のマーケットに売れる可能性を持っている希有な存在だと思うのだ。

今や輸入車では当たり前の復刻版

例えばMINIはそういう商品の一つだ。そしてフィアットの新しいチンクエチェント。これも洋の東西を問わず年配から若者まで、とても気になるクルマだ。何よりこれら小型車は価格が安いから、実際に買ってもいいかなという気にさせられる。何が言いたいかというと、以前セルボ試乗記でも書いたが、つまりはフロンテクーペの、またはカプチーノの(タイプはまったく違うが、スマート的なものとしてツインを加えてもいいかも)系譜を復活させ、そこにこのSRの素晴らしい性能を与えれば、クルマ好きが喜んで買える軽(小型車)が誕生するのではないか、ということだ。ポルシェが、フォルクスワーゲンが、MINIが、そしてフィアットが皆、デザイン的には過去を復刻し、そこに最新の性能を与えて成功させている。日本でそうしたことを可能にするクルマは、過去に国民車として圧倒的な人気を集めた軽しかないのでは。スズキは「SR」の性能でフロンテクーペを作ればいいし、スバルはソニカの性能でスバル360を復活させればいい(トヨタ-ダイハツ系になった今、それがスバルの生きる道なのではないか)。

地道に働く若者に、買える価格で夢のあるクルマを

クルマが売れないのは、クルマが多様化しすぎてワケがわからなくなったためだと思う。若い子たちは決してクルマに興味を失っているのではないが、新型車の種類や名前が多すぎ、もちろん高額すぎて、とても身近には思えない。それでも、維持費が安いゆえ若者が興味を持てるという点で、軽自動車には大きなアドバンテージがある。「軽なら買っても維持できるんだが」という若者が多いのは事実なのだ。そこにフロンテクーペやスバル360のようなキャラの立った車種を、SRの性能を持って投入すれば絶対にバカ売れする。いやそこまで売れないとしても大きな話題性が出て、クルマ業界は活気づくはずだ。

2年前絶賛したソニカも、1年前に出たセルボも、共に販売は厳しい状況だ(とはいえ売れない小型車と比べれば破格に売れているのだが)。それはそうだろう、実際どちらもなんだかよく分からなくて値段ばかり高い軽に見える。スペシャリティ軽ならば、スタイリングやコンセプトで勝負をすべき。性能は十分以上のSRに乗りながら、格好良くて高性能で、しかもそこそこ安い(これは質感の出し方を見直し、装備をオプション化していけば工夫次第で可能だと思う)スペシャリティ軽自動車の出現を夢見てしまった。SRやソニカの性能であれば、それには若者だけでなくジジイだって乗るはず(多くのジジイも、実はお金がない人の方が多いのだから)。金持ちは確実にいるから高級車は放っておいても売れるが、日本はそう金持ちばかりの国ではない。地道に働く若者に、買える価格で夢のあるクルマを供給して欲しいのだ。自称中小企業で、庶民の味方、発展途上国の味方であるスズキには大きな期待をかけている。

試乗車スペック
スズキ セルボ SR
(0.66L直噴ターボ・CVT・141万7500円)

●初年度登録:2007年10月●形式:DBA-HG21S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1535mm ●ホイールベース:2360mm ●最小回転半径:4.4m ●車重(車検証記載値):820kg( -+- ) ●乗車定員:4名 ●エンジン型式:K6A ● 658cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・直噴ターボ・横置 ● 64ps(47kW)/ 6500rpm、10.5kgm (103Nm)/ 3500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30L ●10・15モード燃費:23.0km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前ストラット/後I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク式) ●タイヤ:165/55R14( Bridgestone B250)●試乗車価格:156万7913円( 含むオプション: セットオプション<オートライト、本革&人工皮革シート、ターンランプ内蔵式ドアミラーカバー> 5万2500円、パール塗装 2万1000円、AM/FMラジオ付MD/CDプレーヤー 6万480円、フロアマット 1万6433円 )●試乗距離:-km ●試乗日:2007年10月

 
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