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キャデラック SRX新車試乗記(第352回)

Cadillac SRX

(3.6リッター・5AT・635万円)

 

2005年02月05日

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キャラクター&開発コンセプト

FRモノコックシャシーベース

1902年創業で百周年を迎えたキャデラックは“アート&サイエンス”と題し、保守イメージを破るモデルをリリースし始めた。ステルス戦闘機のようなスタイリング、欧州車レベルの操縦性を持つCTS(スポーツセダン)やXLR(メルセデスSLの対抗馬)といったブランニューモデルだ。

SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)である今回の「SRX」も新世代組の一つ。CTSのモノコックシャシー「シグマ・アーキテクチャー」をベースに、中型の高級SUVとしたもの。特徴はモノコックシャシーらしい操縦性や快適性、オプションで3列シート・7人乗りにもなるユーティリティの高さなど。老舗ブランド「キャデラック」の象徴性もキーだ。米国版「カー・アンド・ドライバー」誌では、日産のインフィニティFX35/FX45、ポルシェ・カイエン、VWトゥアレグ等に競り勝ち、2004年ベスト・ラグジュアリーSUV車に選ばれている。

生産はCTSと同じ、ミシガン州のランシング・グランド・リバー(LGR)工場。キャデラック、シボレー、オペル、サーブなど10以上のブランドを持ち、フィアット、スバル、スズキ等をネットワークに収めるGMは世界中でクオリティ・コントロールの向上を目指しており、この工場も最新のグローバル製造システム(GMS)を採用している。

価格帯&グレード展開

3.6リッターV6はカイエンがライバル

2005年から3.6リッターV6を追加して計2モデルに。「SRX 3.6L」(635万円)、従来からあるノーススターV8エンジン搭載の「SRX 4.6L」(745万円)だ。米国ではFRがスタンダード仕様だが、日本仕様はすべてAWD(All Wheel Drive=4WD)となる。ちなみにライバル視するポルシェ・カイエンはV6の6ATが676万円、V8の6ATが906万円だ。

ここで日本のキャデラック全体をおさらいすると、XLR(1200万円)、セダンのSTS(695~865万円)、ドゥビル(825万円)、CTS(498~598万円)、フルサイズSUVのエスカレード(764万4000円)となる。エスカレードは三井物産系の販売店が扱い、それ以外は全国のヤナセ、そして2003年に始まったキャデラック専売店(札幌、横浜、千葉、名古屋、2005年1月現在)が取り扱う。

パッケージング&スタイル

スタイリッシュで威圧感少ない

ボディサイズは全長4965mm×全幅1850mm×全高1710mm。全長は5メートル近いが、全幅はかなり常識的だ。威圧感もなく、かなり都会的な印象。ちなみにキャデラックのフルサイズSUV「エスカレード」は全長5100mm×全幅2040mm×全高1950mm、車重は2530kgという巨漢だ。

ホイールベースは2955mとリムジン並みで、なんとラダーフレームのエスカレード(2946mm)より長い。横からは車高を上げたステーションワゴンのように見える。バックは要注意だが、ソナーがあるので少し助かる。

「パワー・アジャスタブル・ペダル」

精緻さに欠けるウッドパネルは価格不相応だが、装備は充実。最新の機能を備えたボイスコントロール機能付きDVDナビ(3.6はオプション)がいいし、BOSEのオーディオも低音をドンドコ鳴らす。ラップ、ヒップホップに最適。

 

標準装備のレザーシートの座り心地はなかなかいい。電動でアクセル/ブレーキペダルを前後に動かす「パワー・アジャスタブル・ペダル」を装備する。「まずドライバーが視界を確保し、運転しやすい姿勢にシートやハンドル位置を調整し、最後にアクセルペダル、ブレーキペダルをアジャスト」すれば「どなたでも理想的なドライビングポジションを得ることができる」とカタログにある。

100万円で豪華リムジンに

試乗車は50万円の「アクティブパッケージ」(ナビとサンルーフ)付き。さらに50万円追加すると2列シート(5人乗り)が3列(7人乗り)に、大きなウルトラビュー電動サンルーフが、さらに大きなウルトラビュー「プラス」になり、リアDVDシステムと「マグネティック・ライド・コントロール」サスペンションが付いてくる「走る居間」仕様になる。1,000,000円という価格がアメリカンに?大ざっぱだが、子供たちが大人しくしてくれるなら安いものか。実際、2列目は下手なミニバン以上に快適だ。

アメリカンSUVっぽく、荷室は割と簡単にセカンドシートまでほぼ真っ平らにできる。セカンドシートがタンブル(前に跳ね上がる)するのはサードシートへのアクセス用。要するにあくまでサードシートはおまけだ。

基本性能&ドライブフィール

快適で乗りやすい

試乗車は05年から加わった3.6リッターV6モデル。全長はランクル100より長いが、ハンドル位置を除けば、運転感覚は日本製ミニバンやSUVとそう大差ない。幅が1850mmと常識的で(ランクル100は1940mmもある)目線が低いせいだ。乗用車ベースなだけに、走りもいたってスムーズ。モノコックの四輪独立懸架(前:ダブルウイッシュボーン、後:マルチリンク)だからユサユサしないどころか、乗り心地レベルはかなり高い。エンジン縦置きだけあって、ステアリングもよく切れる。最小回転半径はメーカー測定値で5.9メートルと小さくないが。

トルキーかつ俊敏

気持ちいいのはV6エンジン(258ps、35.0kgm)の力強さだ。1シリンダーの排気量は約600ccで、ハリアーのV6(北米では3.3だが日本仕様は3リッター)の約500ccよりかなり大きい。V6としてはトルキーで、ゆったり運転できる。それでいてアクセルを踏み込めばギア比のせいか、2030kgのボディをけっこう軽々走らせる。

FRっぽい感じ

快適性も高い。ロードノイズは高級セダンなみに皆無で、聞こえるのはマイルドなV6サウンドだけ。乗り心地もいい。モノコックで2トンもあれば当たり前かもしれないが、スポーティな足のカイエンとは大きく異なるところだ。ロングホイールベースに加えて、重量バランスのいいFRのせいで、フラットな姿勢を維持する。同じ理由でハンドリングも悪くはない。ロールが大きいので限界を試す気にはならないが、ステアリングの滑らかな感覚は、FRベースならでは。

高速安定性はそこそこ

一方、130km/h以上の高速走行は直進性が心もとなく、欧州製SUVとの違いが出てくる。また、エンジンの地力が問われるこうした状況では、やや非力さを感じる。米国の交通環境にSRXの快適速度はドンピシャで、不必要な安定性より、快適性を優先する米国車らしいもの。ポルシェ・カイエンのように後席は常に揺するが250km/hでも抜群に安定、というアウトバーン育ちとは方向性が異なる。

ここがイイ

以前からこの欄でよく書いているが、ペダルの位置が可動することは、すごく重要だ。特に大柄な人を基本として設計されているアメ車にこれがついていることは、人種が多い米国ならではの配慮ともいえそう。何より、シートを後方に下げて乗れると、小柄な人でもこのクルマに乗っていてかっこよく見える。同様にシートからでているシートベルトも体型を問わずきちんと締められるのがいい。

仕上がりにはアメ車の粗雑さがなくなっているし、乗っていて全体におおらかな感じがするのは他の国のクルマにはない感覚。最新型のDVDナビは使いやすいし、いっぱいある小物入れも便利。このあたりは日本車並の気配りだ。荷室は高い位置だが、横にスライドするトノカバーが使いやすい。

10・15モード燃費で4.6(6.3km/L)と大差ない6.7km/Lなのは、もうちょっとなんとかならんか、と思うが、新車価格で110万円違うし、毎年の自動車税も2万円以上違うから、3.6の追加は大きな追い風だ。

ここがダメ

価格が安いのはありがたいがその分、絶対的なパワー不足、トルク不足感は否めない。アクセルを踏み込めばマメにシフトダウンするが、アメ車的なトルクに乗った走りではなく、日本車的な印象となる。どの速度域でも接地感のない足は、乗り心地はいいが走って楽しいというものではない。

ペダルは動くのだがステアリングがテレスコしないし、シートもあまり上がらないので、ペダル、ステアリング、シートの関係がベストにできないのが残念。ペダルを手前に出したならステアリングも手前に出したいが、出ない。足が短いからペダルを手前に出すわけで、必然的にシートも上げたいのだが、希望の位置まで上がらない。また、シート位置(目線)が低いとAピラーとドアミラーによってかなり大きな死角もできる。せっかくペダルが稼働しても他が思うように動かないというあたりが、やはりアメ車だと思ってしまった。

総合評価

カイエンやXC90といった欧州車のライバルに比べると、走行性能、内装の質感などけして誉められたものではないが、そのおおらかな乗り味は比類ないもの。まるでスポーツカーのようなカイエンなどと比べると、こちらにこそSUV本来の姿を見ることになる。となればどうせ乗るならV8がいい。V6に試乗して言うのもなんだが、キャデラックというブランド力を最大限生かすためにもV8がマストだ。

ブッシュ大統領は最新の2006年式キャデラックDTSリムジンで第2期就任式へ登場したが、キャデラックこそ強いアメリカの象徴であり、アメリカ人にとってのステータスそのものだ。いつぞやのバイ・アメリカ運動こそなくなったが、今もGMが世界一のメーカーでいられるのは、大市場北米で「GMのクルマを買うことがアメリカ人である証」という風潮がけして消えていないからだろう。日本や欧州の小型(北米ではこのクラスは小型の部類)SUVを苦々しく思っていたアメリカ人はこのクルマを大喜びで買うだろうし、アメリカの道路事情なら買ったあとも十分満足できると思う。

ひるがえって日本では、若者の多くがアメリカを向き、特にラグジーなどのカスタムの世界では、アメ車人気が強烈だ。SRXもダブダブのジャージを着込んだ若者には受け入れられるはずだし、そうでない人には似合わないと思う。試乗車に入っていたヒップホップ系と言うんですか、最近のミュージックビデオなんかでよく耳にする黒人系のCDを聞きながら、街を、そしてハイウェイを走ると、スーツを着て眼鏡をかけ、首からカメラを提げている(実際には助手席においてあるが)チビな日本人の筆者は、ちょっといたたまれない気分になってしまった。

試乗車スペック
キャデラック SRX
(3.6リッター・5AT・635万円)
●形式:GH-T265S●全長4965mm×全幅1850mm×全高1710mm●ホイールベース:2955mm●車重(車検証記載値):2030kg (F:-+R:-)●乗車定員:5名●エンジン型式:3H●3564cc・V型6気筒・縦置●258ps(190kW)/6500rpm、35.0kgm (344Nm)/2800rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/76L●10・15モード燃費:6.7km/L●駆動方式:フルタイム4WD ●タイヤ:F:235/65R17、R:255/60R17(GOODYEAR RS-A)●価格:635万円(試乗車:685万円 ※オプション:アクティブパッケージ<ナビゲーション、ウルトラビュー電動サンルーフ> 50万円)●試乗距離:約160km

公式サイト http://www.cadillac.co.jp/lineup/srx/index.html


 
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