キャラクター&開発コンセプト
2代目ステージアは正真正銘のスカイラインワゴンか?
日産のLクラスワゴンがステージアだ。初代が誕生したのは1996年。かねてからのワゴンブームで、当時のスカイラインをベースに慌てて作られた(らしい)にも関わらず、セールス的にはまずまずの成功を収め、プレステージワゴンという新たなジャンルを確立した。2代目となる新型の開発コンセプトは「デュアルシーンで余裕の走りと優れた機能を発揮するプレステージツーリングワゴン」。プラットホームは、今年6月デビューのスカイラインから採用されはじめたV6エンジン専用FRプラットホーム「FMパッケージ」を採用する。実質的にはスカイラインのワゴンと思っていいだろう。
ボディタイプはベーシックなワゴンボディの他、今回から新設定されたSUVとのクロスオーバーモデルの2タイプ。駆動方式はFRと4WDとがあり、エンジンは2.5リッターと、そのターボ仕様、3.0リッターの計3タイプ。ミッションはエンジンと駆動方式の違いにより、4速ATか5速ATが組み合わせられる。乗車定員は5名。スカイラインが北米のインフィニティチャンネルで販売を展開するのに対して、ステージアは国内専用モデルとなる。
価格帯&グレード展開
「ラグジュアリー・スポーティ・ヘビーデューティー」の3本立て、価格は249~356万円
車種構成は大きく3つ。「RS」はブラックを基調としたモノトーンコーディネイトのインテリアカラーやスポーツシートなどの採用で、スポーティーさを演出している。「RX」はインテリアを茶系にするなどラグジュアリー感を演出したモデルだ。このどちらも属さないのが「AR-X FOUR」である。その名の通りのオールロード・クロスオーバー・ビークル4WDとして今回からステージアの新しい個性となるモデルで、スバル・ランカスター、ボルボ・クロスカントリーと同じジャンルのクルマだ。
そのぞれのモデルをもう少し詳しく分析してみよう。まず「RS」系だが、安いものから順に「250RS(249万円)」「250RS-V(264万円)」「250RS FOUR(277万円)」「250tRS FOUR V(316万円)」「250tRS FOUR V HICAS(328万円)」の5グレードで構成される。「V」が付くグレードには、キセノンヘッドライト、オートライトシステム、プライバシーガラス、17インチタイヤが標準装備されている。「FOUR」は4WDモデル、「t」はターボエンジン、「HICAS」は電動スーパーハイキャス装着車を意味する。以上、グレードによる装備の差別化は最小限に抑えられており、逆に言えば最も安い「250RS」でも十分に満足のゆく仕様となっているわけだ。
「RX」系は「250RX(268万円)」「300RX(320万円)」「250RX FOUR(296万円)」「250tRX FOUR(325万円)」の4グレード。こちらは唯一3.0リッターモデルが用意されているのが最大の特徴だ。「RS」系と比べて快適装備が充実しており、運転席パワーシート、後席エアコンなどが標準装備される。
「AR-X FOUR」。主な装備は「250tRX FOUR」に準じている。違いはシートが専用のタンカラーの本革&サプラーレコンビネーションシート、前席シートヒーター、助手席パワーシート、オーバーフェンダー&シルプロテクター、電動スーパーハイキャス、18インチタイヤなどが装備されること。この内容で価格は356万円。「250tRX FOUR」に対して31万円高となっており、シリーズ中最も高価なグレードとなる。
パッケージング&スタイル
ボディサイズ(先代比)は全長4765(-35)×全幅1760(+5)×全高1510(+20)mm。ポイントは2850mmのホイールベースだ。全長が35mm短くなっているののにも関わらず、ホイールベースは逆に130mmもアップしているのだ。これによって後席の膝元スペースは90mmも拡大。もちろん前席スペースのはきっちり確保。これは言うまでもなく、スカイラインと共通の「FMパッケージ」を採用したことによる恩恵だ。スカイラインとの共用化はプラットフォームだけに止まらない。外装パーツではフロントドア、フロントウインドウ、ドアアウターハンドル(←ローレルとの共用パーツでもある)も共用している。またスカイライン同様、ゼロリフトの実現で、空力特性は優秀でワゴンボディながらCd値0.32~0.33を達成している。
シンプルで張りのある面で構成された外観デザインは、よくまとまっている。しかしテールランプの処理がアッサリしたフロントに比べてちょっとクドイかと思う。左右が離れすぎたヘッドライトを持つ顔つきは、オオサンショウゴみたいで個人的に好きになれない部分。スカイラインとボルボV70を足して2で割った感じ、そんなところか。
新型ステージアの新しい個性である「AR-X」はどうか。日産としてはこの手のワゴンは、アベニール・ブラスターにつぐ提案だが、AR-Xはより本格的に仕上がりとなっている。専用アイテムとして18インチタイヤや樹脂製オーバーフェンダーなどが装着され、プレミアムワゴンの上級感と、得体の知れない凄みが融合した存在感を漂わせている。ボディサイズは全長4800mm×全幅1790mm×全高1550mm。最低地上高は標準グレードよりも40mm高い180mmを確保する。それでいて全高は1550mm。これは「立体駐車場に入る」と言われ、最近の国産乗用車のスペックでよく見る数字だ。
ラゲッジの利便性は世界一!? かる~い力で開閉可能のテールゲート
スカイラインとの共用化は室内にも及んでいる。内装色や木目調パネルのカラーこそ違えども、インパネとフロントシートは完全に同じ。非常に機能的でセンスの良さが感じられるデザインだが、先代のインパネが専用だっただけに、新型はより“スカイラインのワゴン”になったことを再認識させられる。
ラゲッジをはじめとするワゴンとしての性能はボディサイズと正比例するので、Lクラスのステージアは基本的にハイレベルな実用性を持つ。ラゲッジは先代の475リッターから500リッターにアップ。先代で定評だった左右独立式のハッチ側から可倒操作可能なリアシートが備わるほか、ガソリンタンクの後席下への移動により、ラゲッジの床下には57リッターの大容量アンダーボックスも用意される。このアンダーボックスのヒンジにはガスステー式が採用されており、レバーのワンタッチ操作で自動的に開く。その他、買い物袋をぶら下げるのに便利な収納式フックも用意されている。
何より驚かされるのがテールゲートだ。開け閉めの操作が非常に軽くてスムーズなのである。その秘密は外装パネルの素材にある。なんと軽量で剛性に優れた樹脂素材を使用しているのだ。テールゲートは軽い操作性を実現するのみならず、ボディ剛性の一翼を担う構造体として機能するように設計されているのもポイント。これは世界初の試みで、ハッチが高い剛性を確保している。
テールゲートの見所はまだあって、オートークロージャーとガラスハッチが全車に付く。またヒンジの位置が、ルーフ後端から前方に合理的なレイアウトとしているため、狭い場所でも開閉しやすい。ステージアは基本的に“男のワゴン”だが、機能面では女性ユーザーも惚れ込む仕上がりとなっている。
基本性能&ドライブフィール
280馬力エンジンと4WDシステムの投入で、スカイラインと差別化
エンジンは3タイプで、すべてV6となる。2.5リッターの「VQ25DD(215馬力/27.5kgm)」と3.0リッターの「VQ30DD(260馬力/33.0kgm)」はスカイラインからのキャリーオーバー。残る1つ、2.5リッターターボの「VQ25DET(280馬力/41.5kgm)」はステージア専用だ。
ミッションはすべてマニュアルモード付きで、FRの2.5リッター車が4速AT、他はすべて5速ATとなる。MTの設定はない。
4WDシステムは、日産独自の電子制御トルクスプリット式「アテーサE-TS」。これはトルク配分を路面状況や車両の運動状況などに応じてトルク配分を0:100~50:50まで自動的に制御するというもの。また、任意でシンクロモードとスノーモードの切り替えも可能だ。シンクロモードは発進時に50:50の直結四駆となる。スノーモードは発進時50:50の直結四駆となるほか、雪道やアイスバーンにおける発進やアクセル操作を容易にしてやろうというモードだ。
最大トルクはスカイラインGT-Rの40.0kgmを凌ぐ! 低回転域でのターボレスポンスが悪い
試乗したのは280馬力モデルの「AR-X FOUR」。ロック・トゥ・ロックはスカイライン同様、2.8回転とクイック。車重は一番軽量な「250RS」より170kg重い1720kg。カーテンエアバッグや電動ガラスサンルーフなどのセットオプションを装着した場合、1770kgと気づけばシーマ並の重さとなっている。もちろん3200rpmで最大トルク41.5kgmを発生するのだから、それぐらいの重量増は何の支障にもならない。ちなみセドリック/グロリアに搭載される280馬力ターボエンジンの最大トルクは3600rpmで39.5kgm。いかに今回試乗車したエンジンが凄いのか理解できるだろう。しかし、発進時に限って言えば、正直、スペックから感じられる圧倒的な力強さは感じられない。目覚めの悪いゾウ(という感じ)である。
期待通りの加速をみせるのは、やはりターボが明確に利いてくる2500回転以上からとなる。さらに3000回転を過ぎるれば、底知れない大トルクでワインディングの上り勾配を全く意識させない圧倒的な可速力を生み出す。ドッシン、ドッシンとようやくゾウが元気になった感じ。280馬力を実感させるターボパワーは、許容範囲の6600回転まで衰えを知らない。ただ、5M-ATxのシーケンシャルシフトを楽しもうとすると変速ショックを感じさせない反面、アップ、ダウンともにレスポンスがやや遅いのが残念なところ。システム的に完全固定タイプではないのも(例えば3速にすると車速に応じて勝手に1~3速間をシフトチェンジする)、ストレスがたまる部分である。
また乗り心地においても路面からの突き上げが明らかに強く、バネ下重量の重さが気になる。これは18インチタイヤのせいだろう。また、オフロードに対する耐久性を高めるために、サスリンクをアルミ製からスチール製に変更されたことも原因と思われる。サスが特別に締め上げられた様子はなく、ロールもそれなりに大きめだ。いずれもSUVと思えば許容できる部分だが、このクルマはプレステーシワゴンの延長線上にあるのだから、走りの上質感はしっかりと確保して欲しいところ。最小回転半径が標準ボディが5.3m~5.5mなのに対して、AR-X FOURは5.8mと、小回りが利かないこともちょっと不満だ。
ただ、有り余るエンジンパフォーマンスとオールシーズンタイヤを装着していることを考えれば、挙動変化は上手く抑えられていると思う。高速コーナーで「飛ばしすぎかな」と思っても、正確にトレースしてくれるし、挙動の乱れも穏やかか。このあたりはアテーサE-TSによる効果的なトルク配分、電動スーパーハイキャスを実感させられる。超一級のシステムを用いるなど素性は非常にいいので、時間をかけて煮詰めれば、印象はガラリと変わるだろう。
ここがイイ
スカイライン譲りのインパネは、さすが最新デザインだけあって使いやすい。特に下からせり上がってくるカーナビディスプレイは、純正ならでは。もちろんDVDゆえ、不満のないガイドで快適に移動できる。
荷室の使い勝手もいい。ラゲッジ長は2155mm(5人乗っても1145mm)、幅は1380mm、高さ825mm。ミニバン的には使えないが、乗用車より圧倒的に便利だ。ダンパーで開くラゲッジアンダーボックスも便利だろう。まあ、一般的にはこの荷室は、犬を置くスペースではあるが。
ここがダメ
10・15モード燃費8.8km/リットルだが、プレミアム仕様で、試乗したときのメーター上の実用燃費は4.4km/リットル。120kmほどの試乗で、3000円近いガソリン代が必要だった。うーん。
スカイライン同様のチルトステアリング角度に同調して動くメーターだが、かえってベストな角度にならない。うーん。運転席の左足もと床がフラットでないのも少し気になった。
総合評価
最近、日産のデザインはほんとにいい。ステーションワゴンという最もデザインしにくいカタチながら、個性がちゃんとあって、しかもカッコイイ。ライバルになるであろうトヨタのブリット(モーターショーにでていたモデル)が、個性を求めるあまり破綻した(ように思える)のとは対照的にスタイリッシュで、くどいようだがカッコイイ。ハイリフトしてもよりカッコよくなっちゃうのだから、スタイリング的には出色のできだ。
ただ、ステーションワゴンというカテゴリーが、日本では「犬を積む人」以外に好まれなくなってきている事実は、辛いところ。そういう人はクルマのハードとしての良さより、メルセデスとか、ボルボといった記号性に引かれるわけで、日産ステージアという記号性にはまだそれだけの力がない。今後はプレミアム感をいかに育て上げていくか、がハードの熟成と共に重要なポイントだと思う。
ハードの熟成という点では、AR-Xに280馬力ターボはオーバースペックに思えた。2500回転までは、ほんの一瞬とはいえトルクの不足を感じてしまうし、ターボが効き始めると「ドッカン」とくるわけで、これには、スカイラインのNAエンジン程度のナチュラルなパワー感が好ましく思えてしまった。スポーツワゴンというコンセプトはローダウン系のモデルに任せておいて、ハイリフトモデルはランカスター同様に大排気量NAエンジン搭載モデルが欲しいところ。要は3リッターV6モデルの設定があれば、ということだ。
公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/STAGEA/