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スズキ ワゴンR スティングレー DI新車試乗記(第467回)

Suzuki Wagon R Stingray DI

(0.66L直噴ターボ・4AT・144万9000円)

クールな名前と
クールなフェイスの
クールなアールがやってきた!

2007年06月23日

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キャラクター&開発コンセプト

ワゴンRの「クールフェイス」版

2007年2月5日に発売されたワゴンR「スティングレー」は現行ワゴンRの派生モデル。「クールフェイス ワゴンR」のコンセプトのもと、主にフロント部分のデザインを変更したもので、その他はワゴンRと大差なしと考えていい。

なお、2月のデビュー時は4ATだけだったが、5月にワゴンRシリーズと足並みを揃えてCVT(無段変速機)が追加されている。これと同時に、ワゴンRシリーズ全体の販売目標も従来の月間1万5000台から、2万台(年間24万台)に引き上げられた(スティングレーのみの台数は未発表)。なお、ワゴンRの2006年販売実績は、国内新車でダントツ1位のおよそ22万台だった。これは乗用車で1位のカローラ(約14万台)を上回り、事実上の1位であるヴィッツの2倍に匹敵するすごい数字だ。

スティングレー今昔

スティングレー(Stingray)とは、尾に針(sting)をもつエイ(ray)の1種。邦名アカエイのこと。しかしクルマ好きにとってスティングレーと言えば、往年のシボレー・コルベット・スティングレーのことだろう。正確には2代目コルベット(1963-67年)と3代目(1968-84、スティングレーのサブネームが付くのは前期型のみ)がそれに当たるが、以後スティングレーと名乗るコルベットは登場していない。なお、コルベット・スティングレーの排気量は5.4~7リッター超と、ワゴンRスティングレーの10倍前後もあった。

一方、スズキにも70年代初め「スティングレー・ルック」をうたった軽自動車があった。コークボトルスタイルの先代フロンテから一転、エッジの立ったデザインを特徴としたフロンテ71(1970-73)がそれだ。「スズキのスティングレー」といってこのモデルを連想する人は、かなりのクルマ通である。

価格帯&グレード展開

エンジン3種、変速機は2種で、116万5500円から

ワゴンRスティングレーは、エンジンが異なる以下の3グレードで展開する。価格はいずれもオーディオレス・2WD車のもの(4WDもある)。14インチアルミホイールは全車標準だ。

・「X」・・・自然吸気エンジン(54ps) 116万5500円(4AT)/119万7000円(CVT)
・「T」・・・ターボエンジン(60ps) 127万500円(4AT)
「DI」・・・直噴ターボエンジン(64ps) 144万9000円(4AT) ★今回の試乗車

パッケージング&スタイル

ワゴンRと違うのは主にフロント

基本的にボディはワゴンRと同じなので、サイズもやっぱり同じ全長3395mm×全幅1475mm×全高1635mm。外板で異なるのはAピラーの付け根より前だけ、と言っていい。すなわち、ヘッドライト周辺、ボンネット、前フェンダー/バンパーなどだ。トヨタbBのようにグッと起こしたボンネットの下に、ヘッドライト(何と全車ディスチャージ!)と、透明アクリル板で覆った「二重構造スケルトンタイプ」のパネルを横一文字で並べた顔は、確かにクール(カッコいい)。カタログのキャッチコピーは「顔で戦え。目で挑め。」である。その他、スポイラー類が追加されたほか、リヤコンビランプはワゴンRと同一形状のクリアタイプとなる。

14インチアルミとディスチャージを全車標準装備

スタイリングでもう一つキーになるのが、14インチ径の専用アルミホイールだ。スポーク内側が黒くペイントしてあるが、上品にまとまっていている。普通なら鉄っちんとホイールキャップ、普通のハロゲンランプの「ベース車」を設定するところを、全車14インチアルミ、ディスチャージ・ヘッドライト標準装備としたあたりがスティングレー独特のこだわりだ。

キーレススタートも全車標準

インテリアも基本はワゴンRと同じだが、スティングレーでは樹脂とファブリックが黒で統一され、メーターと左右の空調吹き出し口、ドアの取っ手はブラックメッキされている。インパネセンターとドアアームレストの樹脂パネルは、メーカー資料に「光の反射により、黒の中から光の粒子が輝くようなサンドブラック柄」と詩的に表現されるもの。これにより安易なメタル調パネルを廃している。

さらに、ワゴンRなら最上級グレードの直噴ターボ車「RR-DI」にしかない運転席シート高調整やチルトステアリングがスティングレー全車に備わるほか、キーレススタートも全車標準となる。ワゴンRより価格が高めの分、装備はいい。

一方で、ワゴンRがこれまで築き上げてきたパッケージングや道具感といった財産は、しっかり受け継いでいる。助手席下の、例の取り外し式バケツもそのままだし、リアシートや荷室の使い勝手も変わらない。

基本性能&ドライブフィール

1リッターNAに匹敵するパワー感とレスポンス

試乗したスティングレーは、今までワゴンRでも試乗する機会がなかった直噴ターボの「DI(ディーアイ)」(64ps、10.5kgm、10・15モード燃費19.4km/L)。中間グレードの低圧ターボ(60ps、8.5kgm、18.8km/L)より大幅にトルクフルながら、10・15モード燃費は逆に優秀なモデルだ。

実際に乗ってみて印象的なのは、とりもなおさず「まったく」と言っていいほどターボラグがないことだ。多少クルマに詳しい人でも、知らなければノンターボと思い込みそうなほど、その加速感とレスポンスは自然吸気エンジンに限りなく近い。直噴で圧縮比が10.5と高めなのが主な要因だろう。もともと軽の最高出力は自主規制で64psが上限だから、高出力(高過給圧)を狙う必要がないせいもある。

そんなわけで、スティングレーDIの走りは普通のワゴンRに輪をかけてイージーかつ快適。動力性能そのものはヴィッツやパッソの1リッターと同等以上だが、ボディ幅はそれらより20cm前後狭いので、狭いところにもズンズン入っていける。

立派なブリヂストン・ポテンザのおかげで、コーナリングもまずまず。高速道路での100km/h巡航は3500回転ほど。ロードノイズ共々、静粛性は十分で、法定速度で走る分には何の問題もない性能を見せる。

総合的にスイフトと比べると・・・

そうは言いつつ、シャシー自体は2003年秋にデビューしたワゴンRそのもの。多くの短距離・買い物・通勤用ユーザーには関係ない領域ながら、法定速度を大幅に越える(といってもリミッターが作動する140km/h弱までだが)高速域でのダブルレーンチェンジなど、緊急回避的なシャシー性能は「過剰クオリティ」気味の今の軽自動車界においては平均的。

また快適性も「完全にリッターカー並みか」と問われれば、このDI(144万9000円)をもってしても、3気筒独特の振動やノイズは皆無ではない(やはり平均的な軽ユーザーなら意識しないレベルだが)。この点は先日試乗したスイフトの1.2リッター・CVT(119万7000円)にわずかに及ばず。パワーの点ではもうどっこいどっこいなのだが。

ここがイイ

若い男の子にはますます買いやすくなったこと。とりあえず名前がカッコいいし、ルックスも内装も若向け。ワゴンRが欲しくて買っても「彼女のクルマ?」とか「家のクルマ?」とか言われなくてすみそう。若い男の子に限らず、あまりに数の多いワゴンRゆえ、少しは差別化を図りたい、という人には朗報だろう。

装飾はいろいろ追加されているが、ワゴンRが元々持っていた道具感が生きており、虚飾とならず、シンプルなカッコ良さとなっていること。さらにワゴンR譲りの絶妙・究極のパッケージング、使い勝手が加わり、言うことなし。

直噴ターボの仕上がりが素晴らしい。4ATも変速の違和感がないし、とにかく走りにはもう何のストレスもない。ただしそれは、この価格を良しとする人だけが納得できるものだが。

ここがダメ

パワーステアリングは電動だが、巡航時に反力がやや不自然に感じられる。いかにもモーターでわざと重みを出しているという感じだ。気にしなければ別に、という程度だが、改良の余地はあるだろう。

先日試乗したスイフトの1.2リッター(110万2500円~)の存在。スイフトは全体の車格、快適性、燃費など、いろんな意味でバランスが抜群。クルマ好きとしては、同じ金を出すならスイフトだな、と思うはず。もちろんそんな比較をする人は少ないから、欠点とはいえないのかもしれないが。

総合評価

現行ワゴンRが出た頃の試乗記(2003年10月)ではその出来の良さに「世の中のクルマの半分くらいは、ワゴンRにしちゃっても十分なんじゃないか」と書いたのだが、そこまではいっていないにしてもワゴンRの売れっぷりはすごい。クルマが売れない時期である07年4月の販売データ(参照データは月刊自家用車07年7月号)を見ながら、つれづれに計算してみたが、箱形ハイトワゴンの3台に1台がワゴンR(1万7185台)だ。OEM車であるマツダAZワゴン(1969台)を加えると軽全体の5台に1台がワゴンR兄弟である。

では世の中の日本車全体ではどうか。約29万台の総販売台数のうち、ワゴンRとAZワゴンは1万9000台ほどだから、実に15台に1台程度がワゴンR兄弟ということになる。この数字、これだけのモデル数がひしめく新車市場の中では驚異的だろう。それだけ多くの人がこのクルマの良さ(高効率なパッケージングと経済性)を認めているわけだ。さらにワゴンRタイプの軽自動車は合わせると6万台ほどになるから、5台に1台はこのタイプ。箱形ハイトワゴンは日本の国民車となっている。

いつもの話で恐縮だが、こうなると1970年代前半に登場したホンダライフ・ステップバンの先進性に驚くほかない。ワゴンRと3面図を比較してみると、そのあまりの類似性に苦笑さえしてしまう。当時の若者向けカタログ雑誌(「別冊『宝島』全都市カタログ」1976年刊)の紹介では、

「46万~49万円と何しろ安い。燃費が極端に良く経済的。日本のクルマを機能的にしぼりこんでいくとこのようなかたちになるのかもしれない。使い方次第でいくらでも魅力が引き出せる。速く走るばかりがクルマではない」

とあった。これはカタログ雑誌での紹介であり、当時の自動車雑誌ではそうした紹介はなかったように思う。走りは確かに辛かったから、クルマ好きはステップバンを評価できなかったようだ。

まあそれは今もそう変わっていないわけで、クルマ好きはこの手のクルマは好きではない。しかし、民意はこのクルマを強く支持している。実際、このスティングレーに代表される後期ワゴンRは「日本のクルマを機能的にしぼりこんで作ったかたち」の最終完成型ともいえるだろう。走りの方も、路上における法定速度に大改革でもない限り、もはやほとんど不満はない。特に直噴ターボの試乗車では静かな高速巡航がとても印象的だった。

フルスロットルから急減速しながらレーンチェンジしたりすると確かに挙動は乱れる。そして間もなく出るであろう次のモデルに、そうした挙動を抑える高いポテンシャルのシャシーが与えられるとすれば、クルマ好きとしてはむろんそれは大いに歓迎したい。ただ、現状の素晴らしいパッケージングやバランスのとれた性能をキープできればの話だ。今でも毎月2万人もユーザーが増えているのは、今の性能で十分と考えているから。となれば昔のステップバンの記事冒頭にある「何しろ安い」と記事を書けるワゴンRは出せないものだろうか。

ステップバンとワゴンRの評価で大きな差は価格だ。ワゴンRの最安値は81万9000円(5速MT)。試乗車に至っては150万円近い。道具として買うにはちょっと高く感じるし、もっと安ければ年収300万円未満の若者だって、新車で買う気になれそうだ。今売れている軽はワゴンRのような高価格トールワゴンタイプと激安セダンタイプの2種類。ということは、「ワゴンRで激安」という組み合わせだったら、これはとんでもなく売れると思う。新型スイフトが出たとき、旧スイフトが安値で継続販売されたが、ワゴンRもそんな展開はできないものだろうか。それこそが年収300万円時代の国民車だと思うのだ。

試乗車スペック
スズキ ワゴンR スティングレー DI
(0.66L直噴ターボ・4AT・144万9000円)

●形式:CBA-MH22S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1635mm ●ホイールベース:2360mm●車重(車検証記載値):870kg(540+330)●乗車定員:4名●エンジン型式:K6A ● 658cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ● 64ps(47kW)/ 6500rpm、10.5kg-m (103 Nm)/ 3500 rpm ●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30 L ●10・15モード燃費:19.4 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:165/55R14(Bridgestone Potenza RE030) ●試乗車価格:147万円 ※オーディオレス仕様( 含むオプション:パール塗装 2万1000円 ) ●試乗距離:160km ●試乗日:2007年6月

 
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