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スズキ スペーシア X / T新車試乗記(第691回)

Suzuki Spacia X / T

(0.66L・直3/直3 ターボ・CVT・132万3000円/141万7500円)

スズキのスーパーハイト軽、
パレットあらためスペーシアは
一家に一台の「ミニバン」だった!  

2013年04月12日

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キャラクター&開発コンセプト

名前を変えて、新規巻き直し


今回試乗した新型スペーシア。手前がターボ、奥がノンターボだが、外観はドアミラー内蔵ウインカーを除いて同じ

2013年2月26日に発売されたスズキの新型軽「スペーシア」は、パレット(2008~2013年)の後継車。ワゴンRよりも背の高いボディに、両側スライドドアを組み合わせた、いわゆるスーパーハイト(もしくはスーパートール)ワゴンであり、ダイハツ タントが開拓した軽のスーパーハイトワゴン市場に向けて新規巻き直しを図るモデルになる。

開発コンセプトは、「広くて便利、軽くて低燃費の軽ハイトワゴン」。新型ワゴンR譲りの軽量ロングホイールベースの新プラットフォーム、クラストップの室内長、多彩な収納スペース、先代パレット比で90kgもの軽量化、スズキの自慢のエコ技術「スズキグリーン テクノロジー」による低燃費などが特徴。JC08モード燃費はクラストップの29.0km/L(自然吸気・FF車)を達成している。

日産へのOEM供給は終了

spacia_02_mazda_flairwagon.jpg
マツダ フレアワゴン

新型の目標販売台数は、先代パレット(月間6000台)より多い7000台。CMキャラクターは先代パレットのチャーリー・チャップリン(のそっくりさん)に代えて、新型では映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)やNHK朝ドラ「梅ちゃん先生」(2012年)の堀北真希を起用。クラスリーダーのタントやN BOXを追撃する構え。また、マツダへOEM供給するフレアワゴンも、すでにスペーシアがベースの2代目に移行している。

ただし、これまでパレットとほぼ同数を販売していたOEMの日産ルークスは、2012年度いっぱいで販売終了。こちらの後継モデルは、2014年に発売予定の三菱との共同開発車になる。

 

■過去の新車試乗記
ホンダ N BOX (2012年2月更新)
スズキ パレット (2008年3月更新)
2代目ダイハツ タントカスタム (2008年3月更新)
初代ダイハツ タント (2003年12月更新)

 

価格帯&グレード展開

売れ筋「X」は132万3000円から、ターボは約10万円高い


オプションの「スマートフォン連携ナビゲーション」(7万3500円)は、スマホ感覚で操作できるマルチタッチ対応6.2インチディスプレイ付。昭文社の「マップルナビ」を標準搭載し、接続したスマホにダウンロードした専用アプリを画面上で操作できる

ラインナップは自然吸気エンジンの「G」、その上級グレードの「X」、ターボ車の「T」の3グレード。変速機は全車CVT(ジヤトコ製の副変速機付)で、それぞれにFFと4WD(11万7600円高)がある。キーレスプッシュスタートシステムやオートエアコン(カテキン・エアフィルター付)は全車標準。

オプション関係は、「スマートフォン連携ナビゲーション」装着車は7万3500円高、ホワイト2トーンルーフ仕様車(X、T)は4万2000円高、ディスチャージヘッドランプ装着車(X、T)は5万2500円高。またGのみ、セットオプションでスライドドアクローザー(後席両側)、チルトステアリング、運転席シートリフター、フロントアームレストボックス装着車が2万6250円高。

なお、追って「スペーシア カスタム」も発売される予定。フロントデザインが専用になり、内装はブラック基調になる。


■G      122万8500円(2WD)/134万6100円(4WD)
■X      132万3000円(2WD)/144万0600円(4WD) ※今回の試乗車
■T(ターボ) 141万7500円(2WD)/153万5100円(4WD) ※今回の試乗車

 

パッケージング&スタイル

グリルレス、そしてロング&ワイドルーフを採用


先代パレット同様にピラーは全てブラックアウトし、ガラスエリアの広さを強調。ベルトラインも下がっている

ワゴンRにも通じる、カッコいい系だった先代パレットに対して、一転してファミリーカー的な親しみやすいデザインとなったスペーシア。フロントデザインは上品なグリルレスとなり、パレットでは釣り目だったヘッドライトもスクエアに変化。顔の表情は、すっかり柔和になった。また、全体のスタイリングは、ピラーの角度が立たされ、ルーフを長く、かつ幅を広げて、いかにも室内が広そうなボクシーなものに変身。真正面もしくは真後ろからのシルエットを見ると、それが一番分かる。さらに、ヘラで削ったような浅くて水平のキャラクターラインもセンスがいい。

 

新色「キャンドルオレンジメタリック」や「フォレストアクアメタリック」(写真)など、2トーンルーフも含めて全11色を用意

パッケージング面では、ワゴンR譲りの新型プラットフォームによってホイールベースが先代より25mmストレッチ。室内長はオーディオ位置を奥に移動することなどで、先代パレット比で130mm、現行タントより55mm、N BOXより35mm長い2215mmになった。まだそんなに伸び代あったのか、という感じではあるが。

ボディカラーは全11色(2トーンを含む)。パールホワイトは2万1000円高、ホワイト2トーンルーフ仕様車は4万2000円高。

 

フロントはグリルレスで親しみやすを演出。ルーフ幅は60mmも拡大

リアはL字型リアコンビランプで個性的に

AピラーやDピラーを立てることでルーフ長は先代より45mm伸びている
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 室内長(mm)
スズキ パレット (2008-2013) 3395 1475 1735 2400 2085
スズキ スペーシア 2425 2215
2代目ダイハツ タント(2008-) 1750 2490 2160
ホンダ N BOX (2012-) 1770 2520 2180
 

インテリア&ラゲッジスペース

頭上の広々感がアップ。テッシュボックス対策がすごい


インパネには中断に棚が新設され、明確に上下2段構成に変身。横方向への広がり感も出た

操作系などの配置は先代パレットとほぼ同じだが、インパネの造形は一新。配色もブラウンとベージュの2トーンになり、よりファミリカーらしい明るい雰囲気になった。広々感は従来モデルより横方向に広がった感じで(室内幅は40mmも広がったらしい)、天井だけ高いという感じはない。またAピラーも細くなり、視界を向上させたという。

そして子育て層の心を、最もつかみそうなのが、今やこのクラスの軽で必須のテッシュボックス入れ。新型スペーシアでは助手席ダッシュの中に加えて、天井のオーバーヘッドコンソールにもテッシュボックスがそのまま入る。しかも純正アクセサリーを使えば、助手席ダッシュの方はフタ付きのゴミ箱にも変身するという芸の細かさ。もちろん、スズキ車に欠かせない助手席下の“バケツ”も継承。

 

写真はテッシュを取り出せる状態だが、フタを閉じて見えなくすることも可能。別売アクセサリー(シリコン製で4410円もするが)でゴミ箱にも変身

天井にもティッシュボックスが。アクセサリーで小物入れにもなる

運転席の基準ヒップポイントは低め(670mm)とし、小柄な女性の乗り降りに配慮。シートリフターとチルトステアリングはXとTに標準、Gにセットオプションで用意
 

軽初(&スズキ初)のロールサンシェイドを採用


リアシートは左右独立式で、5段階のリクライニングや170mmのスライドが可能。XとTには軽初のサンシェードが備わる

シートが改良されたことや、先代で足もとにあったヒンジ部分の出っ張りもなくなったことで、後席の座り心地はぐっと良くなった。前後シートで約13kgも軽量化したそうだが(フレームに980MPaの超高張力鋼板を採用した)、それによるネガは生じていない。

前席同様、天井付近の絞り込みが少なくなった分、頭上の開放感も増している。室内高(後席足もとから天井まで)は1375mm。何より嬉しいのが、軽初のみならずスズキ車初の引き出し式ロールサンシェイド(XとTに標準)。高級車だけでなく、こういうクルマにこそ欲しかった装備。

リアの両側スライドドアは、開口部が広く(開口幅580mm、開口高1230mm、リアステップ高はクラスで一番低い340mm)、乗り降りしやすい。

 

XとTのリアスライドドアには電動スライド(助手席側のみ)やドアクローザー機能も備わる

助手席の下には現行ワゴンR同様、「エネチャージ」用のリチウムイオン電池

XとTには後席にロールサンシェイドを装備。このあたりは高級セダン並み
 

荷室の最大開口幅は1130mm、開口高は1110mm

後席を足もとに格納するシートアレンジは、先代パレット流を継承(ダイブダウンリヤシート)。27型自転車の積載も可能・助手席背もたれの前倒しも可能(撮影時に忘れました)

スペアタイヤレスで、パンク修理キットを搭載
 

基本性能&ドライブフィール

ターボの動力性能はコンパクトカー並み

試乗したのは自然吸気エンジンの上級(全体の中核)グレードである「X」(132万3000円)とターボエンジンの最上級グレード「T」(141万7500円)。

パワートレインは、スズキの主要モデルに行き渡りつつある新世代ユニット「R06A」型エンジン(ただし低フリクション化された最新版)に、ジヤトコ製副変速機付CVT(これも制御最適化やデフの軽量化を実施)を組み合わせたもの。もちろん、新型ワゴンR同様に、「エネチャージ」ことリチウムイオン電池を使った減速エネルギー回生機構、走行速度13km/h以下でエンジンを止める「新アイドリングストップシステム」、アイドリングストップ中でも蓄冷材で冷風を室内に送り出す「エコクール」も採用されている。

まずはターボ「T」の印象から。走り始めてすぐに思うのは、とにかく過不足ないパワーで、ある意味「普通に」走ってしまうこと。軽自動車、それも両側スライドドアのスーパーハイト系に乗っていることをつい忘れそうになる。動力性能はほとんど普通車のリッターカー並みか、それ以上かも。

 

ノンターボ「X」のエンジン。ラジエーターは従来より約30%薄型の新型で、冷却水のタンクなどの小型化を実現したとのこと

これは優秀なパワートレインのせいもあるが、先代比で約90kg軽くなったことも大きいはず。高張力鋼板の使用範囲を増やしてボディで約22kg、サスペンションで約18kg、ドアやボディで約13kg、シートで約13kg軽量化。結果、最も軽いG(FF)で840kg、このターボ(FF)でも車重は870kgと、ほとんど先代のワゴンR並みになった。もちろんクラス最軽量で、タントやN BOXより100kg前後軽い。90kg、100kgと言えば、車重の約1割、女子二人分に相当する重さだから、走りに効くのは当然か。

一方、ノンターボの方は、やや出足が鈍く、加速する時もエンジンを上まで回すことになる。現行ワゴンRやMRワゴンの場合は「ノンターボで十分」という感じだったが、スペーシアの場合はターボの方が余裕がある感じ。車重はターボより前軸で20kg軽いだけで、ほとんど変わらない。

街乗りや山道では操安に不満なし。高速走行時の横風は苦手


ノンターボのXとターボのTは、同じ足まわりで、同じタイヤを履く

背高ボディの軽と言えば、今までは上屋がグラグラするような動きが気になったものだが、スペーシアでは、少なくとも街乗りレベルでは、かつてのワゴンR並みかもと思うくらい自然になった。一般道で乗る限り、もうほとんどグラグラ感はない。また、ちょっとした山道や高速道路のランプみたいなところでも、グラっと来ずにスッと素直に曲がってくれる。軽量化による低重心設計の恩恵が感じられるところ。

ボディに関してはスポット溶接の増し打ちという古典的な手法で剛性感を高めたとのこと。足まわりは、少なくともXとTはまったく同じで、フロントスタビライザーを装備し、タイヤは155/65R14のダンロップ エナセーブ、指定空気圧は280kPa(約2.8kg)になる。Gは145/80R13で、フロントスタビ無し。

そんなわけで、大雑把に言えば、XとTの操安はよく似た感じ。特にターボは乗り心地も含めてバランスが良く、不満をほとんど全く感じさせない。一方、ノンターボのXは、車重がターボより20kg軽いせいか、乗り心地がコツコツと硬く感じられた。スズキによると、シャシーの仕上げはターボをメインで行ったそうなので、微妙にマッチングがいいのかも。

 

浜名湖と太平洋の間を横切る浜名バイパス(制限速度80km/h)にて。写真は特に横風が強い浜名大橋の上

一方、高速走行時の直進安定性は、試乗したのが例の如く、横なぐりの海風が吹きすさぶ浜松周辺だったため、横風に対する弱さが目立つ印象に。ただし、そんなシビアコンディションでも、他の普通車と一緒に走るのは難しくない。むしろ、普通車ですらフラフラするほどの強風の中、ここまでしっかり走る、ということを評価すべきか。ちょうど追い風になった時には、ワゴンRに遜色ないほどの安定感があった。

なお、ターボとノンターボのギア比自体は同じだが、100km/h巡航時のエンジン回転数は異なり、ノンターボだと3000回転くらいで、非力ゆえに加速時には回転数が上ずりがち。ターボなら2200~2500回転で、しかも余裕たっぷりで巡航できる。横風や向かい風さえなければ、ターボでメーターを振り切るのは造作ないと思われる。こういったコンディションゆえ、風切り音は高まりがちだったが、エンジン音やロードノイズはほとんど気にならなかった。80~100km/h巡航なら、普通の声で助手席の人と話せそう。

試乗燃費はターボの有無に関係なく16km/L弱

今回はノンターボとターボそれぞれに、約50kmずつ試乗(撮影用の移動は含まず)。参考までに試乗燃費(各50km走行)は、一般道から高速道路まで、燃費に頓着しない走りで、ノンターボが15.9km/L、ターボが15.8km/Lだった。過給器の有り無しで差がつかなかったのは、ノンターボだとついついアクセルを踏んでしまうのに、ターボでは踏まなくても走るから、という違いのせいと思われる。

ちなみにJC08モード燃費(FF車)は、ノンターボが29.0km/L(現行ワゴンRより0.2km/L優れる)、ターボが26.0km/L(ワゴンRより0.8km/L劣る)。先代パレットの最終モデル(アイドリングストップ付は22.2km/Lだった)より、おおむね3割から4割ほど良い。

なお、ライバル車のJC08モード燃費(FF車)は、現行タントのノンターボが25.0km/L、タントカスタムのターボが22.2km/L。N BOXのノンターボが24.2km/L、ターボが18.8~20.8km/L。モード燃費で優劣を付けたくないが、これだけ差があると実用燃費でもスペーシアがリードするはず。

燃料タンク容量は現行ワゴンRと同じ27リッター。先代パレットより3リッター少ないが、燃費が良くなったので、ガソリンスタンドに行く頻度はむしろ減るはず。

 

ここがイイ

外装・内装のデザイン、収納スペースやサンシェイド、ターボの出来など

スタイリングが見事に良くなった。基本的なパッケージングはあまり変わっていないが、まったく印象が違う。どの部分もデザイン的にきれいに整って、パレットにあった違和感は皆無になった。また個性的なグリルレスフェイスとしたことも素晴らしい。グリルレスのMRワゴンより、グリルの大きな日産 モコの方がいいという人が結構いるのは確かだが、この「主張しない」グリルレス顔のおかげで、全体の印象に無印良品的なイイモノ感が出ている。さらにオプションのツートン塗装がいい。N BOXでもやっていることだが、白い屋根とミラー、ホイールカバーによって小さなクルマが街中でより楽しく映える。

外観同様、ごてごてしてないインパネのデザインも素晴らしい。樹脂の質感も高く、開発に女性が加わったという収納スペースは、文字通り至れり尽くせり。ダブルで用意されたティッシュボックス入れのインパクトもかなり大きい。ディッシュを入れない場合は、待望のゴミ箱にもなる。やっとゴミ箱を備えたクルマが出てきたわけだ。考え抜かれたドリンクホルダーや小物入れの位置もいい。もちろん、軽初のロールサンシェイドも。これこそどんなクルマにだってあるべき装備だ。多分、他メーカーも追随するだろう。

 

ターボの出来の良さ。141万7500円と軽自動車としては高価だが、普通車同様の動力性能ゆえに一家に一台のミニバンとしても十分に使える。パワーは十分なので、高速を使ったちょっとした遠出も不満なし。ノンターボと外観がほぼ同じなのもいいところ。普通のカタチでターボ仕様。カスタムじゃなくてもターボ仕様。普通のワゴンRでは選べなかったターボが、スペーシアならできるのだ。

運転席の位置決めがしやすく、椅子そのものも大きめで座り心地もいい。シートベルトアンカーも可動式で、ペダル位置もよく、クルマにとって重要なドライビングポジションはきれいに決まる。スライド可能なリアシートも軽量化され、折りたたみが簡単になっているが、座り心地もいい。

オプションの「スマートフォン連携ナビゲーション」(比較的安めの7万3500円)は、ついにスマホのようにフリック操作で地図を動かしたり、ピンチ操作で拡大・縮小が出来る。専用アプリをダウンロードしたスマホとの連携も可能。価格も安めで、軽の装備品としては画期的。

ここがダメ

前席の位置によって後席が格納時につかえる。ノンターボの乗り心地。改良の余地があるナビなど

後席の「ダイブダウンリヤシート」は、格納方法が先代パレットの3アクションから2アクション(背もたれを倒す、シート全体を足もとに落とす)に改良されたが、実際には前席(主に助手席)をかなり前にスライドしておかないと、つかえてしまって格納できないことがある。出来れば、前席のスライド位置が真ん中あたりでもスムーズに格納できると良かった。あるいは助手席スライドをもっと簡単にできるといいのだが。テレビCMのように、普段は助手席をできるだけ使わないという選択もあるだろう。そうなるとタントのように背面テーブルが欲しくなる。

ノンターボの動力性能と乗り心地。現行ワゴンRやMRワゴンあたりだと、ノンターボで十分と思えるが、スペーシアの場合はターボに比べてパワー不足感があり、ついついアクセルを深く踏みがち。本文にある通り、実用燃費も大差ないという印象だった。また、燃費のためタイヤ空気圧が高いのは両車同じだが、なぜかノンターボの方だけコツコツとした細かい付き合上げが気になった。ノンターボとターボの価格差は約10万円だが、買うならやはりターボがいい。

新アイドリングストップシステムはブレーキを踏みながら減速中、時速13km/h以下になるとエンジンを止めるわけだが、止まらずに走り続ける場合もあるわけで、それに対応するためにエンジン再始動はブレーキペダルから足を離す操作に対して敏感になっているようだ。ゆえに、停止中もブレーキペダルを踏む力がちょっと弱まると、意に反してエンジンが掛かってしまうことがままあった。また、ステアリングを操作しても再始動するが、これもちょっと力を入れるだけで掛かってしまうなど、少し敏感過ぎ。なかなか難しいところではあるが。

 

オプションの「スマートフォン連携ナビゲーション」は悪くないのだが、走行中はフリック/ピンチが出来なくなる。代わりに、タッチパネルの「+-」ボタンで拡大・縮小は出来るのだが。フリック/ピンチ操作に対する反応も、初期のAndroid風。とりあえず方向性は間違っていないが、スマホがどんどん先行していくだろうから、さらなる急速な進化を望みたい。またオーディオの音がかなりチープだったのは残念。

ESPがまったく用意されていないこと。また先代ではベースグレード以外で全車標準だったサイドエアバッグがオプションからもなくなったこと。むろんプリクラッシュセーフティシステムもまったく用意されていない。これまでの軽自動車としては、もはややることはなくなったと言えるほど完成しているが、クルマとしてはまだまだやることが残っている。それらも急速に進化しないとまずいだろう。

総合評価

クルマも見た目がすべて、なのか


新型スズキ スペーシア。奥に見えるのは先代パレット

5年前の先代パレット試乗記では、縦横・左右の「拡大」に関しては、ほぼやり尽くした、これ以上のスペース拡大はもう無理、装備に関してもほぼやり尽くした感があるし、次期モデルが心配だ、などと書いたが、心配するまでもなかった。新型はスペーシアという名が示す通り、更に広くなり、ユーティリティや装備類はさらに使いやすくなり、充実した。スタイリングも良くなり、燃費も向上した。クルマはいくらでも進化するものなのだなあと感心。これで完全にタントに対抗できる。というより、N BOXに対抗できる事が大きいか。

先代パレットがなぜタントに追いつけず、N BOXに抜かれたかを考えてみると、タントの場合は、言うまでもなくBピラーレス&スライドの「ミラクルオープンドア」の勝利だろう。ほんとうに便利かどうかは実は微妙だと思うが、ピラーレスの見た目のインパクト、夢のある提案は、今も十二分に魅力的だ。人は見た目がすべて、らしいが、クルマも見た目がすべて、なのかもしれない。ピラーレスを次期タントでも続けるとしたら、スペーシアには脅威が残ることになる。

 

しかしピラーレス化は、走行性能、安全性能、そして何より重量増による燃費性能に影響があることは否めない。次期型がどうなるか知らないが、ダイハツとしては難しい選択になるのではないか。車重を減らして燃費を向上させられるのか。あるいは運転席側の後席ドアまでもスライドにするのだろうか。

次にN BOXの場合だが、このクルマの魅力はホンダらしい全体のデザインコンシャスぶりと、センタータンクレイアウトを活かした居住空間だろう。特にこういったクルマでは特徴を出しにくいリアハッチまわりのデザインは個性的で見事。これもまた見た目がすべて、に合致。スーパーハイトワゴンなのにカッコイイ。ただしスペーシアより100kgも重い車重は燃費面ではハンディだし、バランスのいい走りという点では、やはりスズキ車の方に一日の長がある。

見た目だけでなく、イメージ戦略も重要な点だ。タントは徹底的に子持ち女性向けで、2代目デビューから現在まで続く小池栄子とユースケサンタマリアのCMの通り、奥さんの方が強いファミリー向けに徹している(まあ大体の家庭は奥さんが強いものだが)。さらに若い男性向けとして、カスタムを用意して別にフォローするやり方もうまかった。ノーマルタントの売れ行きは、ファミリー向けに完全に絞りこまれたマーケティングの勝利だろう。

 

これに対してN BOXは男性にもウケるスーパーハイトワゴンだ。ハイトワゴン感が弱いスタイリングは、ワゴンRクラスのユーザーをも取り込もうという姿勢の現れ。そのために女性はもちろん、男性もかなり欲しくなる。そこでのキーは熟年男性だ。昔は定年になって庭いじりや畑仕事を楽しもうという人が、足としての軽トラックを買ったものだが(今でもそういう需要は少なくない)、昨今はN BOXがその代わりとなっている。定年後の出費を抑えた暮らしのアシグルマとしては、どんな生活シーンでもマルチに使えるスーパーハイトワゴンはもってこい。といってタントは女性っぽいし、タントカスタムでは子供っぽい。そこで団塊の世代に人気があるホンダ製で、道具っぽさを感じさせるN BOXが熟年男性に売れることになる。

次の課題は安全性能

今回のスペーシアはどうだろう。CMキャラの堀北真希はちょっと外した感があるが、最近はお母さんと新入学児童というバージョンを流し始めた(http://www.suzuki.co.jp/spacia/cm/)。今後はファミリーカーとしての押しが強くなりそうだ。それでもタントほどファミリー向けという感が強くない分、熟年男性も取り込めそうだ。特に普通車並みに走るターボが、子供っぽいカスタムじゃなくても選べるのは嬉しいところ。ホームセンターで大物を買ったり、孫の迎えで自転車を載せたりなど、これまで軽トラがやっていたことを、よく走るターボのスペーシアでできるわけで、これは大きいと思う。

スペーシアは日産にOEM供給されないので、絶対的な台数確保が難しい。そこでより広い層に売ろうとこういうコンセプトになったのだろう。ファミリー向けではモデル終盤のタントとタメを張り、さらに熟年向けに増販し、今夏に発売とされるカスタムで若者層も取り込んで、スペーシア単独(だけでなくマツダのフレアワゴンというOEMもある)で台数を確保するということになるのだろう。

 

ということで先代パレットの試乗記のように、ここまで良くなると次が心配だ、とまとめたいところだが、今回はそうはいかない。次の大きな課題は安全性能だ。衝突安全、衝突予防安全が、今後の自動車トレンドとなることは、もはや明らか。次のモデルが出るであろう5年後には、この風潮が軽自動車にも来ることは間違いない。実用燃費で15km/Lも走れば燃費性能はもうそろそろ十分だし、これ以上画期的に良くなることはガソリンエンジン車では難しいと思う。現在でも空気圧を異様に高くした燃費スペシャル的な車輌が増えている。不毛な燃費競争より、実のある安全性競争こそ今後の軽にとっての課題。安全なハイトワゴンを作った会社が、次の軽市場を席巻すると思う。

 


試乗車スペック
スズキ スペーシア X / T
(0.66L・直3/直3 ターボ・CVT・132万3000円/141万7500円)

●初年度登録:2013年3月●形式:DBA-MK32S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1735mm ●ホイールベース:2425mm ●最小回転半径:4.4m ●車重(車検証記載値) :850kg(500+350) / 870kg(520+350) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:R06A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置/同ターボ ●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:11.0/9.1 ●最高出力:38kW(52ps)/6000rpm / 47kW(64ps)/6000rpm ●最大トルク:63Nm (6.4kgm)/4000rpm / 95Nm (9.7kgm)/3000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/27L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:29.0km/L / 26.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソン・ストラット+コイル/後 I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)+コイル ●タイヤ:155/65R14(Dunlop Enasave EC300) ●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:- -円 ●ボディカラー:パールホワイト / フォレストアクアメタリック ●試乗距離:約-km ●試乗日:2013年4月 ●車両協力:スズキ株式会社

 
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