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スズキ スイフト 1.5XS新車試乗記(第347回)

Suzuki Swift 1.5XS

(1.5リッター・4速AT・136万5000円)

2004年12月24日

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キャラクター&開発コンセプト

欧州で徹底的にテスト

2004年11月1日に発売された2代目スイフトは、スポーティーなスタイルと新型プラットフォームによる高い走行性能が特長のコンパクトカーだ。原型は2002年パリモーターショーの「コンセプトS」。テーマは「ダイナミックコンパクト」で、見た時も乗った時も力強いことを目指した。有名レースドライバーを含む多数のヨーロッパ人ドライバーの意見を聞きながら、欧州のテストコースで約1ヶ月半サスペンションとブレーキを開発。さらに3000km以上のヨーロッパ公道テストでシャシーを仕上げたという。途中でトレッドを大幅に拡げるという、異例の設計変更を行ったとの逸話もある。

世界4ヶ国で同一品質、同時生産

世界戦略車スイフトの生産は日本(静岡県湖西工場)、ハンガリー(マジャールスズキ社)、インド(マルチウドヨグ社)、中国(重慶長安鈴木汽車有限公司)と4ヶ国で行う。いずれも巨大な市場を持つ地域だ。目標は「同一品質・同一性能による同時生産」。同じレベルの工場ライン、ラインスタッフ、部品調達を一斉に行うわけで、大きな投資と周到な準備が必要となる。具体的には日本から生産がスタート、2004年末までにハンガリー、2005年春にインドと中国で生産を行う予定だ。国内の販売目標台数は月3000台。

JWRCに投入

イグニス(先代スイフトの欧州名)に続いて、新型スイフトはWRC(世界ラリー選手権)の入門カテゴリーであるスーパー1600クラス(JWRC)に投入される。もはや市販車と関係の薄い本家WRCと違い、市販車両に近く、欧州で人気の高いJWRCでの活躍は格別の意味を持つ。スズキにとっては初代カルタス(1983年)以来、久しぶりに走りを主軸とするモデルだ。

価格帯&グレード展開

おおよそ100万円台前半

グレードは3種類。ベーシックな「1.3XE」(101万3250円~)、CDプレーヤー、スモークガラス、回転計が付く「1.3XG」(108万6750円~)、そして最上級の「1.5XS」(136万5000円)。ベーシックでも装備は豊富だが、売れ線は中間グレードの1.3XGで、オーディオレス仕様(-2万1000円)やマニュアルも選べる。

イモビライザーは全車標準。残念ながら日本でも自動車盗難は増える一方で、今後はイモビの必要度が高くなるだろう。低価格車でも盗難に遭う確率は意外に低くない。

パッケージング&スタイル

ショート&ワイド「トレッド」

ボディサイズは全長3695mm×全幅1690mm×全高1510mm。全長はコンパクト、全幅は5ナンバー枠一杯でショート&ワイドだが、狙いが一番分かるのはフロントで1470mm(旧型比+65mm)、リア1480mm(同+95mm)のトレッド値だ。同じ5ナンバー幅(1690mm)でワイドトレッドが目立つMINI(クーパーS)を、フロントで+16mm、リアで+20mmも上回った。タイヤも185/60R15と1クラス上だ。この足元が全体の印象を決めている。

ホイールベースは2390mmと平均的。デザインの効果で、オーバーハングはかなり短く見える。今風にAピラーとBピラーをブラックアウトして、Cピラーはボディ同色とした。全部ブラックアウトがMINI、BとCだけブラックアウトがイストだ。ボディカラーは合計8色で、試乗車はガーネットオレンジパール。

ジャストフィット

インパネやダッシュボードの質感は高く、ブラック基調の樹脂で、男っぽい雰囲気。スイッチ類はよく整理されていて機能的だ。前席の広さはまさにジャストサイズで、狭くなく広過ぎない。シートのサイドサポートは控えめだが、適度に体を支えてくれる。ドライビングポジションも自然で、乗った瞬間から自分のクルマのようになじむ。ATのシフトゲートにはスズキ初のジグザグパターンを採用。シーケンシャルより使いやすい。

タンブルで折り畳む後席

リアシートのクッションは平板で、スペースも膝が背もたれに触れるか触れないか、というギリギリのところ。それでも高い天井のおかげで窮屈さはない。乗り降りしやすいのもいい。

荷室容量は通常で213L(先代比+23L)、さらに6:4で背もたれを倒し、タンブルさせれば949Lの大容量になる。シトロエンC2やスマート・フォーフォーなど欧州製コンパクトカーに多い方法だ。 リアドアに採用した電磁オープナーはスズキ車初。両手がふさがった時でもバックドアを楽に開けられるのが理由という。

基本性能&ドライブフィール

良い乗り心地と静粛性

試乗したのは1.5XSのFFモデル。1.5リッター車にはマニュアルはなく4ATだ。エンジンは従来からあるM15A型(110ps、14.6kgm)の進化版だが、先代スイフトスポーツのようなハイオク仕様ではなく、圧縮比9.5のレギュラー仕様。マニュアル車が1.5にないこともあって、この後に新スイフトスポーツ登場かと思わせるが、スズキによると「欧州には予定があるが、国内は未定」という。

それはさておき早速走り出す。「キーレススタートシステム」が1.5には標準なので、キーを携帯すればイグニッションを回すだけで始動する。期待通りに加速してくれるエンジンやスムーズな変速のATがいい。ジグザグゲートのシフトも使いやすい。

さらに感心したのが良い乗り心地と静粛性だ。しなやかなサスペンションでショックを吸収しながら、ハイスピードでも揺れを一発で抑え込む。一般的な走行では滅多にない大きな入力は、ねじり剛性で1.3倍、曲げ剛性で2.3倍アップしたボディが受け止める。ボディのあちこちに入念に配置した遮音材や吸音材のおかげで静粛性も高い。アルミ製オイルパンや液封マウントといった防振対策のせいか、耳障りなエンジン音も聞こえてこない。

接地性を重視

操縦性は取り立ててシャープではないが、コーナリングはとても気持ちがいい。足まわりはフロントがストラット、リアは新開発のトーションビーム。「このタイプの足まわりでは、もっともスポーティなサスペンション」と開発スタッフは言うが、特に目立つのはワイドトレッドと優れたダンパーによる、しなやかさだ。NEW MINIのゴーカートのようなクイックさとは対照的なもので、もっと接地性を重視した、じわっとくる味わいのハンドリングだ。姿勢変化は大きいが、ワイドトレッドで踏ん張る様子が伝わってきて安心感が高い。

電動パワステはモーターユニットをコラムアシスト式からピニオンアシスト式に変更。油圧に遜色ない自然な軽さで、コーナーリング中の手応えはとてもしっかりしている。タイヤは主力モデル全車でポテンザRE080(185/60R15)を採用。接地性の高いサスペンションと高性能タイヤの組み合わせでクルマを振り回すのは難しいが、タイヤのオーバースペック感はない。

抜群のフラット感

静粛性や安定性が高いとなると、得意なのは高速道路だ。100km/h巡航は4ATにもかかわらず2500回転と低い。低速トルクがあるので、この回転でもかったるさはない。ノイズは小さくないが、突出してうるさい音源はないので快適に移動できる。80km/hでも120km/hでも、快適に巡航できるのは良い点だ。

1030kgに110psとパワーに余裕のある1.5だが、最高速度はメーター読み160km/hが一杯だった。ただし、トップエンドでも抜群に安定しており、静粛性もまずまず。同クラスの足の固いライバル車に対して、フラット感や路面追従性に優れるのが特長だ。Cd値(空気抵抗係数)は0.32と悪くなく、風切り音も大きくない。

燃費は高速道路を200kmほど含んで375kmを走り、計38Lのレギュラーを消費。撮影時のゴーストップやフル加速など不利な条件はたくさんあるが、だいたい10km/Lといったところ。丁寧に走ればもう少し良いと思う。

ここがイイ

アルトにも一脈通じるスタイリングはスズキ独自の個性を持ち、一目でスイフトとわかる。世界に通じるオリジナリティがあるし、子供っぽくないのがいい。小さいくせに、いい意味で「可愛くない」スタイリングは見事。男性が乗れるコンパクトカーだ。

日本のコンパクトカーとしては固めながら、しなやかゆえ不快さを感じさせない乗り心地とワインディングも楽しい安定感を、ワイドトレッドで確保したこと。電動パワステの重さ、フィーリングも絶妙。だれもが走り出した瞬間にいいクルマだな、とわかるはずだ。

ギアのつながりがよく、トルクとのバランスがいいため、4ATに何ら不満がない。このクラスはCVTが主流になりつつあるが、この4ATならCVTにひけをとらないし、伝統的な「ギア」には心理的に安心感がある。ジグザグゲートもマニュアル操作がしやすく、これならマニュアルモードはなくてもいい。

スズキ初のキーレススタート機能が用意されたし、内装の質感も高い。オプションでサイドカーテンエアバッグもスズキ車で初設定された。旧スイフト(当面、販売継続)ほどの泣く子も黙る価格ではないが、出来の良さを考えると価格には割安感がある。

ここがダメ

インパネセンターに、アクリルパネルがオシャレっぽいオーディオが収まっていて、これが内装の高品質感に一役買っているが、オプションのナビやオーディオに代えると、いきなり雰囲気が落ちる。ナビはクラリオン製で日産のカーウィングスに対応しているが、月額472円の使用料がかかるし、最新日産車の絶妙な操作性は当然望めない。こうなるとインパネのオーディオをいじらず、広いダッシュ上面に社外品のナビモニターをとりつけることになりそうだ。

ただ、そうするとダッシュボード中央の瞬間燃費計(1.5XSのみ)や社外温度計が見えなくなってしまう。また瞬間燃費計しかなくて、平均燃費計はない。エコランする時に便利なので、ぜひ切り替えタイプにして欲しいところだ。

試乗車はバックドアの電磁ロックの反応が良くなく、半ドアになりやすかった。すぐ改善されるとは思うが。また室内のポケット類は必要十分といった程度。やたら工夫を凝らして、数多く用意するのがこのクラスの国産車の通例だが、新型スイフトはちょっとさっぱりしすぎ。カップホルダーもシフト前にあり、位置が低い。

凄くまじめに作られているが、ギミックが何も用意されていない分、試乗した後に強い印象が残らないのがちょっともったいなく感じた。何か一つ「オオッ」と思わせるアイキャッチになる部分、華のある部分が欲しかった。

総合評価

世界で売ることを前提に欧州車の走りと日本車の信頼性を合体させた新型スイフトは、素晴らしくよくできた小型車だ。前述のように、シャシーに関しては実に奥が深い。そして何より大人の男性でもその「通っぽさ」ゆえ、自信を持って乗れる小さいクルマなのがうれしいところだ。例えばパッソは完全に女性向けだし、フィットは15㎝も全長が長い。マーチはマーチだし(笑)、ちょっと大きいベリーサは小ジャレすぎているし、MINIは若者的すぎる。ポロも最近は女性のクルマっぽい。ラテン車は割高感があるし、スマートフォーツーは二人乗りだ。次期ヴィッツが最も気になるライバルになると思うが、未だ出ていない現状ではスイフトがこのクラスでベストバイだろう。長距離だって快適に走れるから、これ一台だけのカーライフでもたいした不満はでないはず。

そうはいってもスイフトに問題がないわけではない。それは性能ではなく、実にオーソドックスで一芸に秀でていない(強い個性がない)ことと、明確なブランド戦略が感じられないことだ。特に、クルマの本質で勝負できる世界の市場とは大きく異なる日本市場では、このクルマの上質感をどう訴えるかが難しいところ。旧スイフトの強烈な売り方(価格・CM)によってできてしまった、スイフトという名のブランドイメージをどう変えていくつもりなのだろうか。旧スイフトはまだ当面、平行して販売されるというが、同じ名前で正反対のクルマがあるのは果たして?

販売台数は日本が一番少ないようだが、コンパクトカーのブームにのり、大人のコンパクトカーとして打ち出していけば、ダウンサイジングの流れの中、月3000台ばかりではない数がはけると思う。新型ヴィッツは大人のコンパクトカーというイメージ戦略を必ずやってくる。繰り返すが、現状ではスイフトはこのクラスでベストバイ。後は打ち出し方の問題だ。

試乗車スペック
スズキ スイフト 1.5XS (1.5リッター・4速AT・136万5000円)

●形式:DBA-ZC21S●全長3695mm×全幅1690mm×全高1510mm●ホイールベース:2390mm●車重(車検証記載値):1030kg (F:640+R:390)●乗車定員:5名●エンジン型式:M15A●1490cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●110ps(81kW)/6000rpm、14.6kgm (143Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/43L●10・15モード燃費:16.4km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/60R15(BRIDGESTONE POTENZA RE080)●価格:136万5000円(試乗車:137万8230円 ※オプション:フロアマット 1万3230円)●試乗距離:約375km

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/swift/

 
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