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スズキ スイフトスポーツ新車試乗記(第649回)

Suzuki Swift Sport

(1.6L直4・6MT:168万円/CVT:174万8250円)

最高出力100kWを達成!
新開発6MTを搭載した
待望の「スポーツ」が登場した!


2011年12月28日

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キャラクター&開発コンセプト

100kWの1.6リッターエンジンや6MTを採用


東京モーターショー2011に出展された新型スイフトスポーツ

新型「スイフトスポーツ」は、現行スイフト(2010年9月発売)のスポーツモデル。新型はジャスト100kW(136ps)を発揮する新開発の1.6リッターエンジンを搭載。さらに新開発の6速MTもしくは7速マニュアルモード付CVT、専用サスペンション、専用内外装などを採用し、「気持ちの良い走りと操る楽しさ」(プレスリリース)を追求したモデル。コンセプトは「スポーティ フラッグシップ」だ。6MT車は2011年12月13日に発売済みで、CVT車の方は少し遅れて2012年1月27日に発売される。

 

新型スイフトスポーツ用の改良型「M16A」型エンジン

■スズキ株式会社>プレスリリース>新型スイフトスポーツ発売

【過去の新車試乗記>スズキ スイフトスポーツ】
■初代スズキ スイフトスポーツ (2003年8月更新)
■2代目スズキ スイフトスポーツ (2005年10月更新)
■2代目(後期型) スズキ スイフトスポーツ (2007年6月更新)

価格帯&グレード展開

6MTが168万円、CVTはその6万8250円増し


特別塗装色のプレミアムシルバーメタリック

スイフトスポーツはモノグレードで、6MT(168万円)CVT(174万8250円)の2種類。FFのみで、4WDはない。また日本仕様は5ドアのみで、欧州向けの3ドアはない。

工場装着オプションはディスチャージヘッドランプ(6万3000円)くらいで、キーレスプッシュスタート、クルーズコントロール、フルオートエアコン、ESPは全車標準。オーディオヘッドユニットは販売店オプションになる。

ボディカラーは計6色で、チャンピオンイエロー4、スーパーブラックパール、アブレイズレッドパール2、ブーストブルーパールメタリック、そして2万1000円高のプレミアムシルバーメタリック(写真)とスノーホワイトパールが用意される。

 

特別仕様車の「スイフト RS」
(photo:スズキ)

ちなみに普通のスイフトは、全車1.2リッター(1242cc)の5MTかCVTで、124万4250円~165万3750円(4WD含む)。アイドリングストップ装着車(10・15モード燃費は25.0km/L、JC08モード燃費は21.8km/L)もあるほか、11月にはエアロパーツや欧州仕様の足回りを採用した特別仕様車「RS」(137万0250円~154万8750円 ※4WDを含む)も発売されている。

パッケージング&スタイル

専用エアロパーツ、2本出しマフラー、大径17インチタイヤを装着

現行スイフトのスタイリングは、もともとかなりスポーティだが、スイフトスポーツは開口部が2倍くらいに大きくなったフロントグリルや髭のようなフィン付の大型フォグランプベゼルを備えた専用フロントバンパーを採用。ちょっとVWアウディっぽいのは何だが、ほどよく精悍になっている。

 

ボディサイズは全長3890mm×全幅1695mm×全高1510mmで、普通のスイフトに比べて40mm長い

ボディ側面にはサイドアンダースポイラーや5穴タイプの17インチアルミホイール&タイヤ、リアにはディフューザー形状のバンパー、2本出しマフラー、ルーフエンドスポイラーを装着。ちなみに新型スイフトスポーツは、「2011年度グッドデザイン賞」受賞車。先代スイフトは受賞しているが、現行モデルはなぜか選ばれなかったので、今回の受賞はそのリベンジといったところ。

 

ホイールベースはベース車と同じで2430mm

最小回転半径はスイフトのエントリーグレード(タイヤは175/65R15)だと4.8メートル、上級グレードの185/55R16タイヤ装着車だと5.2メートルだが、スイフトスポーツはさらにワイドな195/45R17タイヤを履きながら、同じ5.2メートルに抑えている。このジャンル(FFホットハッチ)では5.6メートルくらいあるケースが珍しくないので、頑張って小さくした方だ。

インテリア&ラゲッジスペース

専用メーターパネル、ステアリング、シフト操作系を採用


インパネやドアトリムはヘアライン入りのメタル調パネル付

インパネの意匠はところどころスポーツ専用。ステアリングは赤いステッチ入りで、リムやスポークの形状を微妙に変えた専用品。またメーターパネルも中央の液晶ディスプレイ(瞬間/平均燃費や外気温などを表示)がシルバーのリングで囲まれ、スズキの言葉を借りれば「5眼メーター」になっている。速度計も非スポーツが200km/hスケールのところ、スポーツはちゃっかり240km/hスケール。もちろん日本仕様では速度リミッターが180km/h+で効く。

 

こちらはCVT車のインパネ。専用ステアリング、240km/hメーター、パドルシフトに注目
(photo:スズキ)

それより先にクルマ好きの目が向かうのは、6MT車ならシフトノブ、CVT車なら7速マニュアルモード用のパドルシフトだろう。試乗インプレッションでも触れるが、操作性はどちらも良好。またドライバーの足もとにはステンレス製のペダルプレートが並ぶ。

専用スポーツシートや赤いステッチを採用


専用シート表皮や赤いステッチがスポーツの目印
(photo:スズキ)

専用スポーツシートも赤いステッチ入り。サポート性はただ座っただけだと、可もなく不可もなく、という感じだが、ワインディングでは背もたれのフレームが上体をしっかり支えてくれる。もちろん運転席にはシートリフター、ステアリングにはチルト(40mm)およびテレスコ(36mm)調整機能が備わる。

 

足もとは広く、背もたれ角度も適切。ファミリーカーとして普通に使える

素のスイフトと異なり、後席には3名分のヘッドレストと3点式シートベルトが備わる。またスイフトスポーツ専用ではないが、1段階のリクライニングも可能。

なおエアバッグは前席フロントに2個を標準装備するだけで、サイドエアバッグやカーテンエアバッグはオプションでも設定なし。欧州車だと6エアバッグが珍しくないが、このあたりは考え方次第か。

荷室スペースはベース車同様、最小限

資料に荷室容量の明記はなかったが、見た目は普通のスイフトと同じなので、容量もそれと同程度(130リッター)だろう。BMW MINIでも150~160リッターだから決して広くはないが、割り切りの良さをむしろ評価したい。

 

床下には天地の薄いサブトランク。その下には普通のスイフトだとテンパー式のスペアタイヤがあるが、スイフトスポーツには電動コンプレッサー付のパンク修理キットが備わる。

基本性能&ドライブフィール

最高出力はジャスト100kW(136ps)

今回は12月に箱根で行われたメディア向け試乗会に参加。箱根周辺や芦ノ湖スカイラインという特殊なコースではあるが、6MTとCVTの両方を取っ替え引っ替え試乗することができた。

エンジンはいずれも新開発の1.6リッター直4。先代スポーツの「M16A」型をベースに、可変吸気システム付の樹脂製インテークマニフォールドを新採用したもの。インテークマニホールドの途中に電動のフラップ(インテークコントロールバルブ)があり、低回転時にはそれを閉じて吸気管長を長くし(吸気を遠回りさせる)、トルクを確保。高回転時にはそれを開けて吸気を近道させてパワーを稼ぐ。

VVT(連続可変バルブタイミングシステム)は吸気側のみだが、カムプロファイルをハイカム化。また、排気側はエクゾーストマニフォールドを4-1形状としている。また耐ノッキング性能を上げるため、燃焼室まわりの冷却性も高められている。

これら諸々の改良は、とにもかくにも開発目標に掲げた100kW(136ps)/6900回転を達成するため。先代スポーツは92kW(125ps)だったから、最高出力は実に約9%アップ。また最大トルクも先代の148Nm(15.1kgm)から160Nm(16.3kgm)へと約8%もアップしている。

 

吸気VVTの採用などで先代比11psアップの136psを発揮する「M16A型」エンジン。遮熱板で見えないが、エキマニは見事にタコ足形状。さすが二輪メーカー

圧縮比は11.1→11.0とほぼ変わらず、指定燃料も従来通りプレミアムだ。「レギュラーではダメなんですか?」とエンジン開発担当者に聞くと、「とにかく1.6リッターで100kWが目標でした。そのためにはノッキング対策が(レギュラーのままでは)難しい」とのこと。

まずは試乗会場から箱根の一般道へ走り出す。乗り心地は普通のスイフトと大差ないか、ひょっとするとスポーツの方がイイかも?と思うほど良好。箱根の道をゆっくり走っていても、突き上げ感や揺すられ感がまったくない。軽量ホイールによるバネ下の軽さやモンロー製ダンパーなどが効いている感じ。

エンジンもけっこう静か。開発スタッフによると「(吸気音などを増幅させる)エンハンサーなどを付けて、エンジン音を聞かせる方向も考えたが、(検討した結果)止めました」とのこと。結果として素顔ならぬ素のエンジン音だけが聞こえて、これはこれでありというか、むしろ自然ではないか、と思う。

【6MT】 新型スイフトスポーツの宝


ご存じ芦ノ湖スカイラインはこんな道。尾根沿いに小さくアップダウンを繰り返しながら、2速、3速を多用するワインディングが続く

まずは6MTの印象から。発進はごく簡単で、自然吸気エンジンらしい自然な加速感と共に走り出す。1速と2速にトリプルコーンシンクロを奢った6MTは、ケーブル式ながらシフトストロークが短く、かといって硬さもない。今回の試乗中、ミスシフトはもちろん、ゲートを探ることすら一切なかった。とても操作性のいいギアボックスだ。

ちなみにスズキにはこれまで、キザシやSX4の海外向けに6MTがあったが、そのミッションは高トルク対応で大きく重いため、スイフトには使えない。ゆえにスイフトスポーツ用の6MTは、シャフト間の寸法を詰めて小型軽量化を図った新作。CVTの方が車両価格は高いが、日本市場における「つぶしの効かなさ」を考えると、この6速ギアボックスこそ実は新型スイフトスポーツで一番お金が掛かっているところかも。

また、スズキによれば、先代スポーツの国内向けは7割が5MTだったらしい。要因にはATモデルが4速だったせいもあるはずが、今どきMT率が7割というのは驚くべき高さ。もちろん海外はMTが主流で、欧州向けの新型スイフトスポーツ(ハンガリー生産)には6MTしかない。

ワインディングではまさにオン・ザ・レール

芦ノ湖スカイラインへ向かう登り勾配では2速のまま、レッドゾーンが始まる約7300回転までブン回す感じ。高回転域でも重苦しさはまったくない。芦ノ湖スカイラインと6MTのギアリングはまさにドンピシャで、2速、3速を行ったり来たりしながら、非常にリズミカルに走ることができる。

ちなみにこの6速、全体にクロースレシオかと思いきや、実際にクロースなのは2速~5速で、6速は燃費を稼ぐためのオーバードライブになっている。開発担当者によると、1速~4速の各ギアでカバーする速度域は、先代の5MTと大差ないらしい。確かに新旧のギア比(最終減速比と掛け合わせた数値)を比べてみると、そんな感じだ。

コーナリングに関しても、難しいことは一切なし。ステアリングをせいぜい90度まで切り込めば、芦ノ湖スカイラインにあるほとんどのコーナーを、スムーズなラインで気持ちよくクリアできる。ブレーキを残しながら入っても、ESPのおかげでブレーキングアンダーに陥ることはなく、もちろん唐突にオーバーステアに転じることもない。パワーが136ps程度ということもあって、イケイケで行っても絶対的な安心感がある。

 

195/45R17タイヤは、国産スポーティモデルで定番のブリヂストン・ポテンザRE050A。軽量17インチアルミホイールはスポーツ専用の5穴タイプ

その要因となっているのが、まずステアリングから伝わってくるガッシリ感。ステアリングギヤボックスにはブラケットメンバーが追加され、ドイツ車のような重厚な操舵感がある。ついでに言えば、フロントサスペンションのサブフレームにもV字型メンバーが追加されているし、フロントおよびリアのアクスルも強化品(ハブベアリングを大型化し、キャンバー剛性を向上)。フロントサスペンションも、ダンパーストラットを大径化して、リバウンドスプリングを内蔵したもの。 そしてドライブシャフトやインターミディエイトシャフトもスポーツ専用品と、よくもまあと感心するくらい目立たない部分に手が入っている。

ワインディングを走行中、中でも一番ありがたいのは抜群の接地感。特にリアに関しては、「実はマルチリンクなんです」と言われたら信じてしまいそうなほど、ピタリと路面を捉えて離さない。もちろんリアサスもアームや取付剛性を強化した専用品だが、型式自体は一般的なトーションビームだ。このあたり、リアマルチリンクのMINIを意識したものだと思う。

もちろんブレーキも専用品。フロントのベンチレーテッドディスクは肉厚化され、ブースターも改良。リアブレーキはキャリパーをアルミ製にして軽量化してある。「いかにも高性能ブレーキ」という感じの効きやタッチではないが、このパワーと車重なら性能的には十分では。芦ノ湖でひとしきり走っても、フェードの兆候はなかった。

【CVT車】 パワー感だけでなく、接地感もかなり違う

CVT車に乗り換えると、当然ながら6MT車のような、アクセルペダルと前輪がつながっているようなダイレクト感は薄れ、中間にベルトとプーリーが介在していることを意識させられる。エンジン自体はMTと同じはずながら、パワー感も今ひとつ。開発スタッフによると、CVTによるメカニカルロスは5%くらいで、パワー感に差を感じるとすれば、車重(CVTでは前軸荷重がMTより20kg重くなる)の方が要因としては大きいのでは、とのこと。とにかく、7速マニュアルモードを選択したとしても、6MTとは印象が異なる。

またワインディングで特に感じるのは、6MTのギア比と、CVTの7速MTモードのギア比の違い。芦ノ湖スカイラインのようなワインディングの場合、6MTだと2速、3速で無理なくカバーできるが、CVTの場合は、かなり高回転をキープしておかないと、シフトアップ直後にパワーバンドから外れる感じがある。

「7速なら、6速MTよりクロースレシオなのでは?」と思うかもしれないが、このCVTは超ワイドレンジを誇るハイ・ロー2段の副変速機付CVT。よってローとトップのギア比は6MTのそれより離れており、結果として各ギアのステップ比も大きくなってしまっている。具体的に数字で示すと、6MTが3.615(1速)~0.794(6速)で、その差が2.821なのに対して、CVTは4.006~0.550で、その差は3.456もある。ちなみに最終減速比は6MTが3.944、CVTが4.011と同じくらいだ。

 

また、CVT車でパワー感以上に気になったのが、接地感の薄さ。前を走る6MT車を追おうとしても、6MT車のような人車一体感が薄く、一歩引いた感じで運転せざるを得ない。マニュアルモードでも自動シフトアップしてくれるので、とにかく高回転までエンジンをブン回すのだが、6MT車について行くのは難しかった。逆に言えば、6MT車でCVT車を追いかけるのは、エンジンパワーに関係ない下りでも容易だった。

先代スポーツに比べて、燃費は約7~18%も向上

今回は試乗燃費はとっていないので、ここではモード燃費を紹介。新型スイフトスポーツの10・15モード燃費/JC08モード燃費は、6MT車の場合は15.6/14.8km/Lで、CVT車の場合は16.0/15.6km/L。これを先代スポーツと10・15モード燃費で比べてみると、6MT車では約7%向上していて、先代4AT車と新型CVT車との比較では約18%も向上している。

先代4ATより新型CVTの方が燃費がいいのは当然として、6MT車で7%も向上しているのは大きい。まさに燃費ギアに振った6速トップのおかげだろう。

ここがイイ

6MT車のハンドリング、価格設定


(photo:スズキ)

普通のスイフトでもハンドリングは文句なしだったが、136psのパワーと6MTを得たスポーツのそれは、このクラスでベストと言える完成度。資料を丹念に見てゆくと、外から見える部分だけでなくシャシー全体に事細かに手が入っており、それらの結果がこの走りなのだろう。欧州市場では3ドアボディとの組み合わせで6MTだけを販売するようだが、確かに欧州でも通用しそうな出来映え。加えて乗り心地もいいし、装備も揃ってるし、コンパクトカーとして何ら不足ない。

6MT車なら168万円という価格設定。オプションのディスチャージドヘッドライトを除けば、後は好みのオーディオやメモリーナビを後付けするだけでOK。ハチロクが話題を集める昨今だが、やはり「趣味のクルマ」として多くの人が無理なく買えるのは、このあたりの価格だろう。

ここがダメ

CVT車の走り(ただしワインディングに限った話)。今一歩のパワー感


(photo:スズキ)

今回のようにワインディングで6MT車と乗り比べてしまうと、本文にある通り、CVT車の走りには不満を感じざるを得ない。もちろん箱根のような「特殊な」状況ではなく、市街地や高速道路を「普通に」走る分にはCVTでも不満がないどころか、むしろCVTの良さが光るかもしれない。モード燃費にしたって、若干ながらCVTの方がいいわけだし。チャンスがあればCVTにはもう一度じっくり試乗してみたいところ。

入門スポーツとして考えればパワーは十分だが、欲を言えば2リッタークラスのパワーやトルクが欲しいところ。ライバルはヴィッツRSやフィットRS、ルノー トゥインゴRS、アバルト500あたりかもしれないが、この完成度ならもう一つ上のクラス、VW ポロ GTIやMINI クーパーS、ルノー ルーテシアRSあたりと勝負して欲しい気がしてくる。エンジンで言えば1.4~1.6リッターの直噴ターボか自然吸気の2リッター。馬力で言えば180~200ps前後、トルクで言えば20~25kgm前後という世界。これらのモデルが人気なのは、要するにそれくらいパワーがあった方が面白く、所有する歓びもより大きいから。コンセプトに「スポーティ フラッグシップ」を掲げる以上、さらに上を目指して欲しいと思う。

ステアリングは専用品だが、もう少し見た目にスペシャル感が欲しいところ。小径にするとメーター視認性やレバー類との位置関係が崩れるので難しいと思うが、もう少し質感を上げるとか、D型にするとか、一工夫で印象が変わるはず。昨今、スポーツモデルでもエアバッグ等の関係でステアリングを社外品に交換することは難しいので、最初からカッコいい方がいい。

総合評価

モーターショーの話

スイフトスポーツと直接関係ないが、名古屋モーターショーが12月25日に幕を閉じた。今年の東京モーターショーは会期が10日間と前回より短く、その10日間で比較すると前回を上回ったということで成功と言っているわけだが、絶対的には(前回の全来場者数と比較すれば)相当数の来場者が減っているわけで、どうも数字のマジックを見せられている気がしてしまう。その点、名古屋モーターショーは以前から会期が4日と変わっておらず、今回の来場者数は20万3900人なので、絶対的にも2009年(17万4500人)を上回った。それでもリーマン・ショック前の2007年には25万2100人も来場したので、楽観はできないのだが。

特に今年、年末の22日からという微妙な日程にもかかわらず、これだけの人が集まったということは、やはり名古屋が日本の「モータウン」だからだろう。そしてまた、この名古屋において、これだけの人数を一度に集められるイベントも、モーターショーをおいて他にない。地方ではクルマがまだまだ大きな力を持っていることを再認識するべきだと思う。少なくともこのエリアの人々は、クルマに無関心ではいられないのだ。

 

名古屋モーターショーの場合、国産メーカーのブースは東京モーターショーがほぼパッケージで引っ越してきたという感じだったが、輸入車は地元ディーラー中心の出展となり、見た目リッチな展示とは言えなかった。しかし、それでも多くの来場者を集めたのは、ひとえに輸入車に力があったからだろう。11月の輸入車登録台数は、前年比36.6%増と好調であり、年間を通しても前年を11.6%上回っている。

また中古車登録台数も同様に好調だ。クルマが売れないと言われる中で、この状況をどう考えたらいいのだろうか。これは最近の日本車がいかに魅力を失っているか、ということではないか。今回のモーターショーでも、国産車の展示は大半がエコカー、ミニバンなどのファミリーカー、SUVであり、どうにも面白みが少ない。しかしその中で、走りを押し出したハチロクとBRZに人気が集まっていたのは、クルマ本来の魅力を打ち出せば、まだまだクルマには力があるということの証左だろう。トヨタの「ファン・トゥ・ドライブ・アゲイン」を強く支持したいし、それは日本車が輸入車に負けないための正しい方向性だと思う。

もっと注目されるべき

で、東京モーターショーの時点では、これから発売されるクルマとして並んでいたのがスイフトスポーツである。人気モデルの新型ゆえ、もうちょっと話題を集めてもよさそうなものだが、今ひとつ注目されなかったのは残念。まあスイフトスポーツは先代スイフトの全販売台数の中でも9%くらいだったらしいので、致し方ないのかもしれないが、スズキ車の走りを象徴するモデルだけに、もっと派手に演出してもらいたかった。

スイフトスポーツのようなクルマが作られるのも、輸出が大きなウエイトを占めているからだが、いずれにしてもこんなスポーツモデルが日本車にあることを、日本人としては素直に喜ぶべきだろう。国内ではヴィッツRS、フィットRSがライバルとなるが、ベース車のスイフト自体がすでに大人が乗れるコンパクトカーであり、その意味でこのスイフトスポーツもクラスを超えた存在のスポーツコンパクトだと思う。そこにこのクルマの大きな存在意義がある。「スイフトマガジン」(三栄書房刊)なんていうワンメイク雑誌が作れるほど、存在感があるこのモデルが、代を重ねて販売され続けることは、日本車にとって重要なことであり、クルマというものが生き残るための素晴らしい展開だと思う。断固支持したい。

MRワゴンのこと

ということで、唐突だが、ここでモーターデイズのイヤーカーを発表したい。スズキつながりということで、1月に登場したスズキ「MRワゴン」を今年のイヤーカーにしたいと思う。クルマの良さについては、年初の試乗記を読んでもらいたいが、今や日本車の主流である軽自動車というジャンルで、「ひとつの頂点を極めた」意義のあるクルマだと思うのだ。

残念ながらこのクルマは、スズキではベストセラーを義務付けられたワゴンRの影に隠れて、ひっそりと存在している。日産からはMOCOという名でOEMで販売され、そちらで販売台数を稼ぎ、スズキではよりマニアックなデザインで売られているわけだが、タントのようなスペース志向型の軽自動車と、ワゴンRのような元祖トール型軽自動車とは違う「ちょうどいい」軽自動車として新しい提案になっている。また新型エンジンとCVTも搭載され、それと同じパワートレインをアルトに載せたことでJC08モード燃費:30.2km/Lのアルトエコも作れたわけで、パワートレインについても新しい時代にふさわしいと思う。

 

確かにCOTYを受賞した日産リーフは今年突出した存在だったが、航続距離の短さのほか、マンション住まいの人は欲しくても買えないという点など、一般的なクルマの概念では評価してはいけないクルマだったように思う(その意味では特別賞だろう)。マツダ デミオやメルセデス・ベンツ Cクラスも、これはマイナーチェンジでしょう、と思う。全くのフルモデルチェンジで、軽自動車に新たな価値観を提案したという意味でも、MRワゴンはイヤーカーにふさわしいと思うのだ。

しかし残念ながら、いまだ現行MRワゴンは知名度すら高くなく、下手をすると不人気車として消えてしまいかねない。今後、軽はもうちょっと低コストな作りが主流となってしまうはず。その意味でも質感の高さでも見るべきものがあるMRワゴンを、せめてモーターデイズだけでもきちんと評価して、記憶に残しておきたいと思うのだ。なにしろ、どこを見回してもイヤーカー候補にすら入れてもらえていないクルマでもある。

「いいクルマ」が「いいクルマ」として知られない不幸

こういうクルマこそもっと世に知られ、評価されるべきなのだが、不幸だったのは登場して二ヶ月ほどの一番大事なときに、震災があったこと。これで巷の評価を上げる機会を完全に逸してしまった。こういう「いいクルマ」が「いいクルマ」として人に知られないことほど不幸なことはない。ブームによってブーストされたメディア情報に躍らされることなく、確かなことを知ることが、本当に難しいのが今の世の中。原発報道じゃないけれど、「本当はこうなんですよ」と言いたい気分だ。

最後にフォルクスワーゲンとスズキについて。大衆車クラスで素晴らしいクルマを作るこの二社が手を組めば、とんでもなくいいものができそうな気がしたが、残念ながらそれはかなわなかった。例えばスイフトスポーツにDSGが搭載されたら、おそらく素晴らしいものになったはずだが、それはとりあえず今はかなわない。こうなった以上、スズキには独自路線で、行けるところまで突っ走ってもらいたいと思う。

試乗車スペック
スズキ スイフトスポーツ
(1.6L直4・6MT:168万円/CVT:174万8250円)

●初年度登録:2011年12月●形式:CBA-ZC32S ●全長3890mm×全幅1695mm×全高1510mm ●ホイールベース:2430mm ●最小回転半径:5.2m ●車重(車検証記載値):6MT:1050kg(660+390)/CVT:1070kg(680+390) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:M16A ●排気量・エンジン種類:1586cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:78.0×83.0mm ●圧縮比:11.0 ●最高出力:136ps(100kW)/6900rpm ●最大トルク:16.3kgm (160Nm)/4400rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/42L ●10・15モード燃費:6MT:15.6km/L / CVT:16.0km/L ●JC08モード燃費:6MT:14.8km/L / CVT:15.6km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 トーションビーム+コイル ●タイヤ:195/45R17 (Bridgestone Potenza RE050A) ●試乗車価格:-円 ※オプション:- -円 ●ボディカラー:チャンピオンイエロー、プレミアムシルバーメタリック ●試乗距離:-km ●試乗日:2011年12月 ●車両協力:スズキ株式会社

 
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