キャラクター&開発コンセプト
3代目は「よりスイフトらしく」
2010年8月26日に発表、9月18日に発売された新型「スイフト」は、2000年にデビューした初代スイフト(※注)から数えて3代目となるモデル。特に2004年に発売された2代目は、欧州市場を強く意識した本格派となり、生産拠点も日本、ハンガリー、インド、中国など世界4ヶ国に拡大。世界124ヶ国における累計販売台数は、2010年7月末時点で約180万台を達成。また国内でも過去5年間にわたって年間5万台前後をコンスタントに販売する会心のヒット作となった。
※注 : 海外では前身となる2代目カルタス(1988年~)で主にスイフトを名乗ったが、日本における初代スイフト(2000年~)の海外名はイグニスとなり、2代目スイフトで初めて日本・海外ともスイフトに統一されている。
「イメージ」は踏襲するも、デザインやシャシーは一新
今回の3代目は、外観イメージこそ先代を踏襲するものの、デザインやプラットフォームはオールニュー。ボディやサスペンションの高剛性化、ホイールベース(+40mm)やトレッドの拡大などによって、シャシー性能の大幅な底上げを図っている。商品コンセプトは「More Swift」、もっとスイフトらしく、だ。
1.2リッター1種類に絞られたエンジンは、従来ユニットをベースに排気側にもVVT(可変バルブタイミング機構)を追加したもの。またCVT(無段変速機)は従来のアイシン製から、副変速機付のジヤトコ製に変更され、10・15モード燃費:23.0km/Lを達成している。
国内の販売目標は、年間4万3000台。国内向けの生産は、従来の湖西工場(静岡県湖西市)から、2008年7月に稼動を始めた相良工場(牧之原市)に移管されている。同工場では主にSX4やキザシなどの輸出向け車両の生産を行っている。
またハンガリーのマジャールスズキでも、2010年6月から欧州向け新型スイフトの生産を開始しており、欧州各国でも9月から順次発売される。
■過去の新車試乗記>スズキ スイフト XG / スイフト スポーツ (2007年6月)
■過去の新車試乗記>スズキ スイフト スポーツ (2005年10月)
■過去の新車試乗記>スズキ スイフト 1.5XS (2004年12月)
■過去の新車試乗記>スズキ スイフト スポーツ (2003年8月)
■過去の新車試乗記>スズキ スイフト (2000年3月)
価格帯&グレード展開
全車1.2リッターで、124万4250円からスタート
先代には途中から追加された1.2リッター(CVT)の他、1.3リッター(4AT/5MT)や1.5リッター(4AT)、スポーツの1.6リッター(4AT/5MT)があったが、新型は設計年次の新しい1.2リッターのみでスタート。変速機は前述のジヤトコ製CVTのほか、1.2リッターに5MTを新設定している。
グレードは3段階で、15インチタイヤ+ホイールキャップ仕様の「XG」(124万4250円)、16インチアルミホイール、本革ステアリング付の「XL」(131万7750円)、さらに6エアバッグ、ESP、パドルシフト付の最上級「XS」(147万5250円、試乗車)。
4WD(CVTのみ)はそれぞれ17万8500円高で、オーディオヘッドユニットは全車オプション(工場装着のAM/FM・CDプレーヤーは2万1000円)、ディスチャージヘッドライト(6万3000円高)は上位2グレードにオプションとなる。
なお、発売時期は未発表だが、いずれ新型スイフトスポーツが追加される。先代では約1年遅れだったので、おそらくは来年あたりか。
【1.2リッター直4(91ps、12.0kgm)+CVT/5MT】
10・15モード燃費:23.0km/L(FF・CVT)/21.0km/L(FF・5MT)/20.0km/L(4WD・CVT)
■XG FF:124万4250円(CVT/5MT)/4WD:142万2750円(CVT)
■XL FF:131万7750円(CVT/5MT)/4WD:149万6250円(CVT)
■XS FF:147万5250円(CVT)/4WD:165万3750円(CVT) ★今回の試乗車
パッケージング&スタイル
イメージは先代のまま、ただしデザインは100%ニュー
もし新型のデザインがキープコンセプトだと知らなかったら、十中八九、先代スイフトと思ったはず。それくらいに新型スイフトは、先代とそっくりだ。そのキープコンセプトぶりは、BMW MINIが2007年に行ったモデルチェンジに似ているが、MINIと違って新型スイフトのボディは完全に新設計。ボディサイズ(先代比)も、全長3850mm(+95)×全幅1695mm(+5)×全高1510mm(同)、ホイールベース2430mm(+40)と、わずかだが確実に大きくなっている。フルモデルチェンジで、これほど見た目が変わらないクルマも珍しい。
そんな風にデザインがキープコンセプトになったのは、現場サイドから「デザインはなるべく変えないで欲しい」という要望があったから。スズキとしても、まだまだスイフトのイメージを「転換する時期ではない」と考えたようだ。会場で話を聞いた開発デザイナーも「今回は先代の印象に近づけるのに苦労しました」と言う。デザインに関しては、自社のデザイナーをイタリア・トリノやフランスに送って、現地でスケッチを行ったという。
その一方で、面構成が表情豊かになり、グッとスポーティさが増したのも事実。ヘッドライトが大きくなったのも目立つが、大径タイヤ(先代より約1センチ外径が大きい)を履いて、足もとの踏ん張り感も高めたほか、サイドウインドウの面積自体を小さし、同時にその後端のラインを垂直から斜めに変更して、海外で販売する3ドアと共通のデザインとしている。
なおホイールベースが40mm伸びた分は、キャビンスペースの拡大に・・・・・・と思うところだが、実際にはそのほとんどがノーズ部分(ダッシュボードより前)に当てられたという。目的は直進安定性の向上や補修コストの低減だそうだ。特に後者は、欧米では保険料率に大きく影響するためユーザーの関心が高い。
後ろ姿も、大きく変わっている。リアゲートの開口線がハッチバック車としては異例なほど高くなり、バンパーのボリューム感を大幅にアップ。リアコンビランプの下端と開口線が一直線になってデザインもスッキリしたほか、ナンバーの位置もかなり高くなった。もちろん、これによってボディ剛性も上がっている。その反対にリアゲートは小さく、積載性については犠牲になっているが、スタイル自体はなかなかカッコいい。
なお、最小回転半径は先代では14インチタイヤ(165/70R14)で4.7メートル、15インチタイヤ(185/60R15)で5.2メートルだったが、新型では15インチ(175/65R15)で4.8メートル、16インチでも5.2メートルに抑えている。同等のタイヤサイズを持つライバル車より、かなり小回りが効く。
インテリア&ラゲッジスペース
スタートボタンは全車標準。細かな改良とシンプルなデザインが好印象
黒基調でシンプルなインパネも、全面変更されたもの。ドアパネルからダッシュボードにかけてシルバー塗装の加飾パネルが細く横切るが、質感に関してはちょっと上がったかな、という程度。むしろ妙に凝らず、シンプルさに徹したところに好感が持てる。
そして何とキーレスプッシュスタートが全車標準!となったのが、新型スイフトの上級移行ぶりを物語るポイント。スタートボタンの場所がグローバルカーにありがちなステアリング左側ではなく、操作しやすい右側であるのも嬉しい。
またダッシュボード中央奧にあったマルチインフォメーションディスプレイが、メーターパネル内に移設されたのも、細かい点ながら良くなった部分。従来は位置が遠く、また文字が小さくて見にくかった。代わりにダッシュボード上面には、蓋付きの収納スペースが設けられている。
テレスコ&チルトも全車標準、シートも文句なし
スイフトの本気ぶりが伝わってくるのが、チルト(上下40mm)とテレスコ(伸縮36mm)付のステアリングを全車標準としてきたこと。肝心のシート自体も、座り心地、ホールド性ともに文句なく、当然ながらシートリフター(上下58mm)も付いている。このままスイフトスポーツに使っても良さそうなシートだ。
適切な着座姿勢、分厚いクッションを備えた後席
リアシートの居住性も、クラスベストと言えるもの。シートアレンジを捨てて、たっぷりと確保されたクッションの厚みとヒール段差(床から膝裏までの高さ)、適度な背もたれ角度(上級グレードでは1段階調整できる)、空間の広さ、乗降性の良さ(欧州Bセグメント車と比較して)など、ほぼ不満のない作りだ。ただし中央席にはヘッドレストが無く、シートベルトも2点式となる。
エアバッグはダブルエアバッグを全車標準とし、最上級の「XS」に前席サイドエアバッグとカーテンエアバッグの6エアバッグを標準装備としている。
荷室は確信犯的に小さい
全長3850mmというコンパクトなボディで、スタイリングと居住性を優先した結果、明らかに割り切られたのが荷室スペース。後席使用時の荷室容量は、BMW MINI(150~160リッター)よりも小さい、というか軽自動車並みの130リッターしかない。
床下にはサブトランクがあり、フロアボードを外してしまえば210リッターになるが、この状態でもMINIの3割増し程度。新型VWポロの280リッターと比較してしまうと、かなり小さめだ。
後席の背もたれを畳めば、上げ底のフラットモードで455リッター(床下スペースを含まず)に拡大できるが、この数値もライバル車より小さめ。数値はあくまで目安なので、単純にライバル車との比較はできないが、このあたりの割り切り具合は、MINIやフィアット500的と言える。開発スタッフによると、積載性よりカッコいいクルマを、という要望は、欧州市場をはじめ、日本でも強いという。