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新車試乗記 第281回 スズキ スイフト スポーツ Suzuki Swift Sport

(1.5リッター・5MT・119万円)

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日時: 2003年08月23日

 

キャラクター&開発コンセプト

「泣く子も喜ぶ」スイフトに、硬派スポーツが仲間入り

2003年6月12日、スイフトに追加されたスポーツグレード「スイフトスポーツ」は、高回転型エンジン、5速マニュアル、3ドアボディを備えたスポーツモデル。世界ラリー選手権(WRC)と共に世界を転戦する「ジュニア世界ラリー選手権(JWRC)」に参戦するスズキ「イグニス」(スイフトの海外名)のイメージを映した外観を持つ。現在、本格スポーツ車を持たないスズキにとっては、国内外でブランドイメージ向上の牽引役を期待するモデルだ。

JWRCで念願の初優勝!

以前行われていた「スーパー1600」同様、2001年から始まったJWRCは、1.6リッターの市販車ベースの車両で争われるカテゴリー。オーバーフェンダーこそ派手だが改造範囲は狭く、外観を除いてほとんど市販車と関連性のないWRC車両(いわゆる「WRカー」)よりも、身近なクルマが活躍するラリーだ。若手ドライバーの登竜門でもある。

イグニスは今年8月のJWRC 第4戦ラリー・フィンランドで念願の初優勝を飾ったばかり。現在(2003年8月時点)のランキングでは、2~4位までをスズキが占める。ちなみにトップはルノー・クリオ(日本名ルーテシア)。他にライバルは、フォード・ピューマ(先代フィエスタ・ベースの欧州向け2ドアクーペ。すでに生産終了)、フィアット・プント、フォルクスワーゲン・ポロなど。つまりこれらが現実の販売市場でもライバルということになるわけだ。

価格帯&グレード展開

119万円は大バーゲン

スイフトは1.3リッター3種類と1.5リッターの「スポーツ」、計4種類で構成される。1.3リッターは「SE-Z」(79万円~)、「SG-X」(86.5万円~)、「SF」(99.8万円~)。今時珍しく? 5速マニュアルを全グレードに用意(海外で需要があるから)。4WDはプラス7.5万円。

スイフトスポーツは5速MT、2輪駆動のみで119万円。1.3リッター最上級の「SF」の5MTに比べて約20万円高いが、27馬力アップのエンジン、リアディスクブレーキ、1インチアップの15インチタイヤ、レカロシート、専用サスペンション、高剛性ボディ…などなどの装備を考えると、バーゲンプライスと言えるだろう。

ライバルはヴィッツRS

今やこのクラスのスポーティなハッチバック車は貴重だが、スズキがベンチマークとしたのはヴィッツのRS。こちらは1.5リッター・3ドア・5MTで130.8万円。1.3リッターなら121.8万円だ。

その他、「ラリー上がり」のモデルとしては、プジョー106・S16(225万円)、シトロエン・サクソ・スーパー1600(207.9万円)もあるが、今やどちらも生産終了。また、国内のFF硬派スポーツ市場を独占するインテグラ・タイプR(259万円)とシビック・タイプR(エアコン付きで253万円)もあるが、スイフトスポーツの価格はこれらの半分以下だ。

パッケージング&スタイル

ちょっとだけワイド


サイズは全長3620mm×全幅1650mm×全高1525mmとヴィッツ並み。普通のスイフトの全幅は1600mmだが、わずかに張り出したオーバーフェンダー分(片側25mm)だけワイド。トレッドも前後ともに15~20mm広い。ちなみにJWRC車両の全幅は巨大なオーバーフェンダーによって1740mmもある。ホイールベースは2360mmと軽自動車と同じで、短い。

カッコだけじゃない

便利な5ドアに押されて国内では用意されなかった3ドアは、スイフト・スポーツで日の目を見ることに。控えめなデザインながら専用フロント&リアバンパー、サイドスカート、ルーフスポイラーも装備。抑えたスポーティ感は、欧州市場を意識したものか。

資料やカタログでは、各エアロパーツが機能重視であることが再三にわたって強調される。リアスポイラーが空気抵抗を抑えながらちゃんとダウンフォースを生むだとか、エアダムスカートがボディー下部の空気抵抗を大幅に減らすだけでなく、底面をパネルで覆うよりも軽量化の点では有利である、などなど。ラジエーターグリルの形状変更などの細部の積み重ねで、Cd値はベース車に比べて約13%も低減したという。

加えて、ラリー用っぽいホワイト塗装の専用15インチアルミや15mmダウンのサスペンションが外観を引き締める。さらに試乗車には、イグニス譲りの「SUZUKI Motor Sport」専用デカールがボディ前後左右に入っていた。ドアとバンパーには「Yellow Bullet(黄色の弾丸)」の文字。

日常重視のレカロ

室内で目を引くのは、レカロ社と共同開発したという専用フロントシート。イエローの「RECARO」刺繍とヘッドレストのネットの色使いが目を引く。ホンダの赤に対して、スズキはイエローでレースイメージを訴える!?

シート自体はレカロらしくガッシリした剛性感のあるもの。乗降性を優先してサポート性はさほど高くないが、日常的にはこれぐらいの形状が使いやすい。スズキの主張通り、いいバランスの作りでテストを繰り返しながら吟味された印象を受ける。フレーム自体はスズキが設計、パッドなどの支持構造はレカロ本社が担当したという。固めのシートが好きな人には歓迎されるだろう。自然なドライビングポジションが取れる点もいい。純正装備のレカロでも、ドラポジがかえっておかしくなることがあるからだ。

「演出」は最小限

カーボン調の樹脂パーツ、そして青色LEDを照明に使ったホワイトメーターなどが、ベース車の内装の味気なさを十分に補う。240km/hまで目盛られたメーターは輸出仕様イグニスの流用。リミッターは180km/hで作動するという。

これら「見た目」の装備について、スズキはカタログの中で『私たちがこのクルマに許した数少ない「演出」といえるかもしれない』と恐縮する。スイフトは、絶対的性能や新機軸ではなく、あくまでも機能にこだわった点を強調するモデルだ。

基本性能&ドライブフィール

JWRCのエンジンとベースはほぼ一緒

目の覚めるイエローと派手なデカールの試乗車につい心を躍らせながら、レカロシートの室内へ。スポーツ性を強調するスイフト・スポーツ。しかし見晴らしが良く、操作系も軽いので、運転に気負いは必要ない。

ベースエンジンは、エリオに搭載される可変バルブタイミング機構付きの1.5リッター「M15A」型(110ps/6000rpm)。それを高圧縮化(9.5から11.0!)して、さらにピストンをアルミ製「鋳造」材からアルミ製「温間鍛造」材に変更、カムシャフトやバルブ開閉タイミングも高回転重視に。このあたりはスズキのオートバイ技術が生きるところ。指定燃料はハイオクとなる。カタログの次の文句が泣かせる。

「はっきりと言おう。スイフトスポーツのエンジンのベースユニットは、いまJWRCを戦っているものとほぼ同じといえるのだ」。

ちなみにJWRC仕様のエンジンは1600ccで、吸気リストリクターと回転数制限付きでも216psのカリカリチューン。これと「ほぼ同じ」と豪語するあたりに、スズキのアツイ思いが伝わってくる。

加速フィール重視

とは言え、諸々の変更によって得られたパワーは(たった)5馬力アップの115ps/6400rpm。スズキとしては、絶対パワーよりも加速フィーリングや中低速重視のチューニングであることを強調する。

確かにエンジンは軽快かつリニアに吹け上がる。パワー・ウエイト・レシオは約8kg/psとなかなかだが、加速感よりも爽やかさが印象的。レッドゾーンが始まる6500回転直前でも、振動とノイズはそれほど高まらない。似たところで、ちょっとマツダの現行デミオのエンジンを思い出させる。

15mmローダウンとかWRCとかいうと、ハードな足回りを予想してしまうが、スイフトスポーツの乗り心地は良い。街乗りでもスポーツサスであることをあまり意識せずに乗ることできる。荒れた路面でも上下に揺すられる感じはほとんどなく、不快感なし。フロントサス左右取り付け部をつなぐパフォーマンスロッドやスポット溶接増加などの剛性対策も効いているだろう。デートや通勤に十分に使える。

LSDなしで気持ちよい走り

一昔前のハイパワーFF車だと、トルクステア(加速時にハンドルが取られる現象)なんて当たり前。ラフにクラッチミートした時のホイールスピンもお約束だったが、スイフトの前輪接地性はとても高い。曲がり角の立ち上がりで全開加速しても、内輪が空転してパワーが逃げる感じはなく気持ちよくグイグイ加速する。

特にLSDの装備なしで、これだけのトラクションを得たところがいい。強力なLSD付きのクルマにありがちな妙な緊張感がなく、気持ちよくコーナーを攻めることができる。Keiワークスに採用したヘリカルLSDを装備すれば絶対的なコーナリングスピードは上がったはずだが、そうしなかったのはあくまで気持ち良さにこだわったからだろう。

フィールに配慮したという電動パワステは、据え切り時を除くと電動っぽさはほとんどない。ギアレシオも変更されていて適度にクイック。剛性感を上げ、ショートストローク化されたシフトフィールも不満のないもの。ミッションもクロスレシオ化されており、レッド直前まで回せば気持ちよく回転が繋がる。回転落ちもなかなか速い。

ここがイイ

ということで、その気で走ればなかなかに楽しく振り回せる。なんちゃってラリーカーではあるが、まじめに作られており、スポーツを感じられる走りだ。もちろん価格の安さはさすがスイフト。通常の路上で楽しむ分には、倍以上の価格のホンダのタイプRより楽しいかも。費用対効果ならぬ「費用対楽しさ」はかなり高いマシンだ。

控えめなエアロパーツが主張するように、派手さはないが実用性、快適性、経済性がうまくバランスしている。カタログの文句がアツイのは、限られた予算の中でエンジニアががんばり、それを会社も認めているという、良い社内バランスの証拠だろう。

ここがダメ

ベースのスイフトが安価であることをあまりにも強調するあまり、どうにもブランド力が弱いこと。スズキ製オートバイは二輪業界では十分ブランド力があるが、スズキ製小型車はそれが確立できていない。軽自動車ではナンバー1メーカーであるにもかかわらずだ。スイフトスポーツは、そうしたブランド力を立てるいいチャンスだと思う。3ドアでもあり、名前をいっそイグニスして出せばよかったと思う。

総合評価

乗ってみると体感的な凄さはなく、市街地を流していても乗り心地がよく、低速トルクもあるからMTでもイージードライブが可能。結構「街乗り」用のクルマだ。もちろん同クラス他車をブッちぎるパワーがあるし、ワインディングは楽しい。ホールドだけでなく快適性の面でもレカロシート採用の意味はある。日常的な足としても使え、その気になればスポーティに楽しめるお得なクルマ、といえる。

以前、ノーマルのスイフトはコンパクトカーの理想だが色気がない、積極的に選ぶ意味が希薄、と書いた。さらに「GMグループの世界戦略車ということをもっと前面に打ち出して、世界一の小型車として勝負をかけるべき」「男性がスイフトを買おうと思っても、現状では言い訳がしにくい。ハードウエアの出来は悪くないし、その出自もウンチクがあるのだから、あとは色づけ、イメージ作りをすれば、ヒット作となることも夢じゃないはず」とした。

今回のスイフトスポーツはそのあたりを、ほぼ完全にフォローしている。クラス世界一のラリー車というイメージ展開と低価格路線は、無く子も喜ぶ79万円だから買う、という選択から、出来のいい世界戦略小型車だから買う、という選択へと消費者を向かわせることができるだろう。

こうなるとMTだけでなくヴィッツRSのようにATの設定が欲しいところ。そして、スイフト「スポーツ」でなくスイフト「イグニス」なんてサブネームをつければ、もっと広い年齢層にも売れると思う。ナンバー1ラリーカー・イグニスのイメージが強ければ、積極的に選ぶ意味が出てくるはずだ。Q:「何乗ってるの」A:「スイフト」は、男の子には辛いが、A:「ラリーで勝ってるイグニス」なら言い訳どころか、一目置かれるはず。その場合の119万円は大変「費用対効果」が高い。

試乗車スペック
スズキ スイフト スポーツ(1.5リッター・5MT・119万円)

●形式:TA-HT81S●全長3620mm×全幅1650mm×全高1525mm●ホイールベース:2360mm●車重(車検証記載値):930kg(F:ー+R:ー)●エンジン型式:M15A●1490cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●115ps(85kW)/6400rpm、14.6kgm (143Nm)/4100rpm●使用燃料:プレミアムガソリン●10・15モード燃費:16.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:185/55R15(ヨコハマ製 ADVAN)●価格:119万円(試乗車:―)

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/swift_sport/index.html

 
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