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日産 ブルーバードシルフィ アクシス新車試乗記(第399回)

Nissan Bluebird Sylphy AXIS

(2.0リッター・CVT・241万5000円)


2006年01月21日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目はBプラットフォームがベース

2000年に登場した初代ブルーバードシルフィは、サニーベースの上級小型セダンだった。入れ替わるように消滅したブルーバードの名を受け継ぐものの、メカ的にもクラス的にも直接の関係はない。そのサニーも2004年に販売終了した。

2005年12月に登場した2代目は、マーチ/ティーダ系のBプラットフォームをベースに開発。ホイールベースはティーダより100mm長い2700mmまで伸び、プリメーラ(販売終了)をしのぐ前後長にまで成長した。ただし、ボディサイズは5ナンバー枠に収まっている。

「モダンリビングコンセプト」第3弾

ティアナ、ティーダに続いて「モダンリビングコンセプト」を採用したインテリアデザインは、初代に比べて格段に洗練された。ハンドバックが入る収納スペースなど、女性ユーザーを意識した工夫も多い。販売目標は3000台。ライバル車は手堅く売れているトヨタのプレミオ/アリオンで、小規模ながらかつてのBC戦争(ブルーバード対コロナ)の構図となる。

価格帯&グレード展開

販売主力は200万円前後

1.5 リッター(178万5000円)もあるが、主力は2リッター(192万1500円~231万円)。さらに法人市場向けの「ブロアム」(241万5000 円)、オーテックが専用外装やレザーシートで仕立てた「アクシス」(227万2200円~)もある。今回試乗したのはこのアクシス。

パッケージング&スタイル

ホイールベースが伸びてスリークに

ボディサイズは全長4610mm×全幅1695mm×全高1510mm。先代シルフィよりホイールベースで165mm、全長で115mm以上長く、伸びやかなスタイルになった。Aピラーが最近のセダンにしては立ち気味で、オーソドクスな印象を狙ったことが分かる。日産マークのないフロントグリルはアクシス専用パーツ。

すらっとしていて美しいリアビュー。カタログを開いた最初のページに、リアの写真を使ったのは偶然ではないだろう。真横から見るとティアナみたいだが、サイズは一回り小さい。特に横幅はティアナ(1765mm)に比べて数字以上にナローに見える。ここ最近の流れに沿って、シルフィもガラスアンテナを採用。

最大の魅力はインテリア

S字曲線のダッシュボードや二枚貝が開いたような「シェルシェイプ」シート。試乗車のアクシスはノーマルの艶消しウッド調パネルに代えて、バーチウッド調を採用。シート地もシルキースエードから、レザーに変更してある。もちろんこの方が高価だが、シルフィ本来のナチュラルな風合いは味わえない。レザーの張りが強く、ノーマルが持つフランス車のような座り心地も薄まっている。  

ハンドバックがすっぽり入る大容量センターコンソール(通常のクルマの2~3倍となる9.7L)は今までにありそうで無かったもの。写真にはドリンクホルダーが少し見えるが、この後ろにも十分なスペースがある。助手席グラブボックスも大容量で、取扱説明書を入れる場所以外にCD12枚、MD25枚が同時に入るスペース(10L)がある。

高級セダンなみの後席

後席フットルームの広さはシーマやセルシオをしのぐというが、確かに足が伸ばせるほど広く、乗車姿勢も自然だ。助手席のシートバックにはスナップボタンでマチが調節できる大型ポケットが付き、ここにもハンドバックが置ける。反転したフロントアームレストは、フック付きのリアトレイに変身。曲線を描くフロントのシートバックは、衝突時に後席乗員がぶつかった時の衝撃を和らげるという。

ミドルクラスセダン並みの荷室容量

荷室容量も先代の423Lから大幅にアップして504Lと、ほとんどミドルクラスセダン並みだ。座り心地を優先して後席背もたれは固定とし、アームレスト部分だけトランクスルーする。
5ナンバーセダンのパッケージングとしては総じて究極に近い完成度といってもいいだろう。

基本性能&ドライブフィール

余裕のパワーとシャシー性能

試乗車は2.0リッターの「アクシス」。内外装をオーテックジャパンが仕立てたファクトリーカスタム車だが、足回りを含めてメカニズムはベース車と同じだ。タイヤはベース車のトップグレードと同じ195/60R16サイズを履く。

車重はおおむね1200kg台(試乗車で1260kg)と軽く、エンジンは日産の新世代2リッター「MR20DE」(133ps、19.5kg-m)。よってパワーは十ニ分。CVTなので発進こそ穏やかだが、街中を流すだけなら低回転をユルユル使うだけで走ってしまう。もちろん乗り心地もいい。細かいことを言えば、サスペンションはやや固めでゆったり感はないが、上下動や突き上げが気になることは一切ない。知らなければマーチから派生したシャシーとは到底思えないはず。

高速道路でも上級車要らず

パワーに余裕があることは高速道路を走るとよく分かる。たった1500回転で80km/h巡航している時でも、アクセルをラフに踏むと、思った以上に加速してしまうほど。 100km/h巡航は1900回転。「Sモード」だと最大トルクを発する4400回転手前あたりまで一気に回転を上げて少々やかましいが、エンジンブレーキが欲しい時にはちょうどいい。加速する時はアクセルを踏み込むだけで十分だ。

欧州車風のどっしり感こそないが、直進安定性は十分に高い。試乗した日は電光掲示板に注意が出るほど風の強い日で、横風に対する特性の良さも体感できた。静粛性は4気筒モデルとしては最上の部類で、ロードノイズも風切り音もまったく気にならない。これ以上の静粛性を求めるなら6気筒エンジン搭載車を選ぶしかないだろう。

ここがイイ

プレーンなエクステリアデザインは、まるで目立たないがゆえに好まれるはず。「最近は奇抜なデザインのクルマが増えて」と、お嘆きの中高年層のツボにはまるはずだ。中高年のごく普通のドライバーには性能も広さも十分以上。これで5ナンバーなのだから、昔からのブルユーザーはもちろん、脈々と各社のセダンに乗り続けてきた人にすんなりと気に入ってもらえるだろう。3ナンバー車からの乗り換えも不満なくできるはず。

インテリア、特にシートのデザインは素晴らしい。コストも限られるこのクラスで、思い切った形状にトライし、しかもシートとしての機能も優れている。後席の広さもまた驚異的で「4人が楽々乗れる5ナンバーセダン」としてまったくもって不満がない。

センターコンソールにある巨大な物入れは、ハンドバッグからトートバッグまでを飲み込み、しごく便利。特に女性や熟年層をターゲットにした場合には、強力なセールスポイントとなるだろう。ここにほんのり明るい照明があるのも気が利いているし、これをひっくり返して後席側へ向けると、トレイ兼コンビニ袋フックになるのもなかなかよく考えられている。特にスーパーの買い物袋等は、このフックにかけると後席足下に転がらないため、たいへん具合がいい。助手席シートバック裏にある、ボタンを外せばハンドバッグをも飲み込むポケットも良い工夫。

2個のキーに別々にメモリできるインテリジェントキー連動の自動シート調節、サイドブラインドモニター、よく振れるAFS、さらに試乗車にはなかったもののカーウィングス対応ナビなど、熟年層でも使える電子系の便利装備はたいへんよろしい。

ここがダメ

おとなしいセダンが欲しい人に好まれる外装は、裏を返せばやはり魅力が薄い。グリルデザインは無国籍だし、ヘッドライトの形状も凝りすぎ。クルマ好きには見向きもされないはずだ。やはりどこかクルマ好きにとっても気になるクルマにして欲しかった。

高速巡航性能の高さから言うと、クルーズコントロールが欲しくなる。もちろんレーダークルーズじゃないと意味はないが、そうすると高くて誰も買わないし、という理由から見送られたのだろう。とはいえこういう大衆車にこそインテリジェント装備は欲しい。トヨタはすでに手掛け始めている。オプションでいいから用意すべきだろう。

せっかく広大なトランクなのだから、入れた荷物が転がらないための仕掛けが標準で何か欲しいところ。オプションでは1万円前後でいくつか用意されているが、使い勝手の良さを謳うセダンである以上、こうしたものは標準化すべき。同様に高速道路を頻繁に利用する人の5割以上が使うようになったというETCも、そろそろ標準化してはどうか。ETCに関してはインフラゆえ、当分規格は変わらないと思われる。今のクルマの寿命程度の期間は陳腐化しないはずだから標準装備した方がいい。ポイント制の割引によって付けても損はないとセールスできるのだから。

総合評価

エスティマが登場したのが1990年のこと。その頃からミニバンに乗ってきたファミリーの子供達も、すでに免許取得年齢に達し始めている。そこで「もうミニバンはいらなくなった」という中高年は、国産セダンへ回帰し始めている。お金持ちやクルマ好きな人々は輸入車やSUV、スポーツカーとなるのだが、手頃な値段で、安心の国産車がいい、という人々には、特にアリオン/プレミオあたりが狙い目となっているようだ。なにしろこの2台は併せて年間7万台程度を売り、販売ランキングでは10位あたりに位置する隠れた大ベストセラー。セダン需用は、今後さらに高まることが予測される。

シルフィはさすがに新しいだけあって、そんなライバル車と比べて商品力が高い。女性ドライバーを明確にターゲットとするだけあって、財布の紐を握る奥さんを落とすだけの力を持っていると思う。特に自分だけのシートポジション(サイドミラーも同時調整)をメモリーできるインテリジェントキーあたりは、たいへん強力な商品だ。日産が想定しているのは子供が手を離れた40代以上の夫婦で、平日は主に奥さん、休日は旦那さんも乗るパターン。で、特に2リッター車なら旦那も満足できる動力性能を備える。前述のように旦那がクルマ好きでないことが条件だが。

つまり、シルフィは見てくれや性能より、中身で勝負するクルマとなっている。5ナンバーセダンというフツーのクルマに、過剰なデザインや走り、さらにステイタス感を求めても意味がない。デザイン、斬新な使い勝手、IT的な機能までを盛り込んだ意欲作のプリメーラが売れないまま消滅していることが、それを証明している。5ナンバーセダンは、価格に見合った、いや価格以上の上質感を演出してあり、使いやすければそれでいいのだ。シルフィに乗っているのがオシャレとは誰も思わないと思うが、人を乗せたときに広くて快適で、上質な感じを誉められれば、買ったことに十分満足できるはず。その意味では、かなり特化した商品と言えるだろう。そう、シルフィは普通のセダンに特化したクルマだ。

それでいいと思う。気合いが入りまくりの尖ったクルマより、こういうプレーンで使いやすいセダンを求めている人は決して少なくない。団塊の世代あたりはミニバンに乗らないまま子供を育てた人も多く、ミニバン的な昨今のクルマに対して違和感を持っている人も多い。今後、例えば韓国車や、もしかすると中国車もこういう安価でプレーンなセダンを作ってくる(作っている)はずだが、現時点ではシルフィが明らかに一歩抜きん出ている。いや、世界を見渡しても、ハンドバッグをきちんと収められるスペースを持ったセダンなどどこにもない。日産の、いや日本の工業製品の勝利だ。

とはいえ、こういうクルマが作れるのであれば、分別ゴミ箱や、コンパクトな運転席サイドテーブル、洋服用のハンガー、雨傘置き場、助手席ヘッドレストのコンビニフック、携帯充電ができる100V電源、カレンダーなど、当たり前のニーズにきちんと応えたフツーのセダンをさらに開発すべきだろう。特に分別ゴミ箱は今や必需品だし、セダンには濡れた傘を置く場所がないのでその置き場はすぐにでも用意して欲しい(熟年女性は日傘も好き)。ブルーバードが誕生して半世紀近い。今頃やっとハンドバック置き場の必要性に気が付いて作られてたというのは、自動車業界のマーケティングの特殊性を示すものだろう。大衆車がいまだ大衆のニーズを満たしていないのは、日本の工業製品に関する七不思議だ。

試乗車スペック
日産 ブルーバードシルフィ アクシス
(2.0リッター・CVT・241万5000円)

●形式:DBA-KG11●全長4610mm×全幅1695mm×全高1510mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1260kg (F:790+R:470)●乗車定員:5名●エンジン型式:MR20DE●1997cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●133ps (98kW)/5200rpm、19.5kg-m (191Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/52L●10・15モード燃費:16.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)● タイヤ:195/60R16(BRIDGESTONE B250)●試乗車価格:269万8500円(※運転席パワーシート仕様。含むオプション:専用HDDナビゲーションシステム 28万3500円)●試乗距離:125km ●試乗日:2006年1月

公式サイト http://www2.nissan.co.jp/SYLPHY/G11/0512/CONCEPT/main1.html

 
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