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ダイハツ タント X Limited新車試乗記(第297回)

Daihatsu Tanto X Limited

(0.66リッター・4AT・119.8万円)

2003年12月13日

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キャラクター&開発コンセプト

ミニバン型の軽自動車

2003年10月の東京モーターショーで公開され、11月27日に発売されたタントは、ダイハツの新しいミニバン型軽自動車。開発コンセプトを「しあわせ家族空間」とし、メインターゲットに「アクティブキッズファミリー」(遊び盛りの子供のいる家庭という意味だろう)を据えた軽自動車のファミリーカーだ。

車名「Tanto」は、イタリア語で「とても広い、たくさんの」の意。ちなみに日本語で「たんと」は、「たくさん」の意のお婆ちゃん語。ひょっとして語源は一緒か?!

ダイハツ、スズキに迫る

販売目標は月間5000台。今年に入って月平均で1万5000台以上を売るムーヴ、同1万台以上のミラを援護するには、十分な数字だ。実は軽自動車の販売台数で30年間ずっと1位であり続けているスズキに、今年のダイハツは販売台数でかつてないほど肉薄している。タント投入でダイハツ悲願の大逆転があるかも? というところだ。いずれにしてもスズキ(ワゴンR)、ダイハツ(タント)、ホンダ(ライフ)、スバル(R2)と各社のニューフェイスが出揃った、来年の行方が気になる。

価格帯&グレード展開

NAとターボで、99.8~146万円

エンジンは直列3気筒のノンターボ(58ps)もしくはターボ(64ps)。変速機は3ATか4ATとなる。グレードはノンターボ車の「L」(99.8万円)、「X」(113万円)、「X Limited」(119.8万円)、そしてターボ車の「R」(123万円)、「RS」(135万円)。4WD車はそれぞれプラス9~11万円だ。

自然吸気エンジンの4WD車だけ3速ATで、それ以外は4速ATを装備する。ムーヴやミラにあるCVTや5速MTは用意されない。

パッケージング&スタイル

広大なグラスエリア

サイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1725mm。ムーヴより10センチ高く、特にグラスエリアが大きい。一番後ろを除いて全ピラー(窓の間の柱)をブラックアウトし、ガラス面積の広さを強調した処理がユニーク。FF車ながら極端に短いノーズもポイント。いずれにしても、ミニバンタイプでありながら生活感があまりない、おしゃれな雰囲気。

軽自動車最大のホイールベース

2440mmのホイールベースは軽最大で、タイヤは文字通りボディの四隅。パワーユニットの劇的変換がない限り、軽自動車枠ではほぼ限界の数字だろう。ちなみにワゴンRは2360mm、ダイハツ・ムーヴは2390mm、9月に発売されたホンダライフは2420mm。

全高1725mmはムーブよりさらに10センチ近く高く、同社の商用ワンボックス軽自動車、アトレーに迫る。キャブオーバー型(つまりFR)のアトレーに対するメリットは、FFならではの床の低さ(床下にエンジンもドライブシャフトも無い)、「荷物」ではなく「乗員」にとっての広い空間、そして快適性など。

めちゃくちゃルーミー

座った瞬間、誰もが驚く視界の良さと広々感。頭上の余裕は、前回試乗したキューブキュービックに横方向でこそ負けるが、縦方向では勝つ。かと言って、天井が妙に高いスカスカ感はなく、そんなにイビツな空間にはなっていない。

センターメーターのダッシュボードはトレンドに乗って弓なり状に反る。ベージュ系の内装は明るく、アットホームな雰囲気だ。質感は高く、小物入れもそこら中にあって機能的。ステアリング向こう側のダッシュボードはガバッと口を開き、A4サイズの地図を飲み込む。

 

各スイッチの操作性に文句はない、と言いたいところだが、運転席用パワーウインドウスイッチがドアではなく、インパネに付くのは×。慣れないと一発で運転席のウインドウが開けられない。コスト削減の一つだろうが、料金所でアタフタしないためにも運転席ウインドウは誰でもブラインドタッチで操作可能にすべきだ。ムーヴはちゃんとドアに付く。

足が伸ばせる!

室内長も軽最大の2000mm。さらに平らで低いフロアが特徴となる。室内高は1330mmと、小学校の低学年くらいの子供なら立てるサイズだ。

また90度開くドアがムーブ同様、ダイハツの自慢。「乗る時に手が届かないのでそこまでの角度は必要ない」という意見もあるようが、荷物の積み下ろしや乗り降りの介護のことを考えれば、実質的な性能だ。

 

後席は260mmの「超ロングスライド」やリクライニングが可能。一番後ろに下げると平均的な体格ならリムジンに乗った時のように足が伸ばせる。走行中は実はそうした姿勢は楽ではなく、前席と離れて話もしにくいが、自由度が高いことは魅力と言えるだろう。

人が乗れて、荷物も載る

後席が最後端の状態でも荷室はかなり広い。フル乗車で十分スーパーへお買い物に行ける。後席を収納すればワンボックスタイプの軽バンもビックリのスクエアな空間が出現する。折り畳みは簡単で、力も要らない。片手でも難なく出来る。

いいことずくめに見えるが、少し心配なのは後席の座面クッションが薄いこと。ムーヴの半固定(下に沈み込む)の座面と比べると厚みの差は歴然としている。短時間の試乗では思ったほど乗り心地は悪くなかったが、使用頻度によってはチェックしたいポイントだ。

基本性能&ドライブフィール

金魚鉢とはタントのこと

試乗したのはノンターボの最上級グレード「X-Limited」。乗った瞬間から広大なフロントガラスと、外の景色に圧倒される。天地に長いフロントガラスは、まるでバスみたい(運転したことないが)。それも運転席の位置が低い最新式のバス。

とにかく視界の良さは圧倒的で、これまで経験のないもの。見晴らしの良いクルマを指して「金魚鉢みたい」という古い言葉があるが、それはタントのことだ。ホンダ・モビリオもそうとう視界の良いクルマだが、タントはボディが小さいせいかクルマの周囲がさらによく分かる。Aピラーの大きな三角窓も優れもの。交差点を曲がる時に、見たいものがちょうど見える。

傾くことは傾くが…

背が高いので安定性が気になるが、街中を走り回る限り不安定な感じはしない。そこでいつものワインディングも走ってみると、確かにロールは大きく、縦に長いフロントガラスがぐぅーと盛大に傾く。が、グラッと急に傾く感じは見た目ほどではなく、一定のところでちゃんと踏ん張る。背の高いクルマでは緊急回避の時などのリアの安定性が重要だが、かなり無理をしても唐突な挙動は出なかった。14インチの立派なタイヤが踏ん張るせいもある。まあ、この辺は程度問題だが。

電動パワステのフィーリングもいい。各メーカーに共通した印象だが、この1~2年で電動パワステは従来の油圧とフィールの面で遜色ないレベルに進化したと思う。以前のものはクルクルと軽いだけで、直進安定性等でかなり印象を悪くしていた。

狭い道でのストレスは最小限

エンジンは従来のダイハツ車と変わらない自然吸気3気筒エンジン(58ps、6.5kgm)。870kgと車重は軽くないが、街中ではよく走る。低いギア比やオートマの設定でうまくカバーした感じだ。4速ATの変速も滑らか。小回りも効く(最小回転半径は4.5m)。狭い道でのストレスは、クルマと名の付くものの中でミニマムだろう。

気になった点をあえて挙げれば、やはり3気筒独特のノイズや振動。特にアイドリング時のそれがもう少し小さいと「軽自動車ばなれ」感が出ると思う。もちろん「軽自動車なんだからこれで十分」という意見も当然あり得る。おそらくターボ車ではこの辺が一枚上手になるだろう。

高速道路ではメーター読みで130km/h近くまで出た。空気抵抗が大きく、重心も高く、横風の影響も受けやすいスタイルなので高速安定性は得意ではない。それでもハンディが大きい割にしっかり走る、と言えるだろう。

ここがイイ

まさに広大といえる室内空間。ワンボックス軽とはまた違う、空間のゆとり感は、これまで体感したことのないもの。運転席の目の前に広い空間がある独自の乗車感覚は、おそらく内外の自動車のどれにもないはずだ。

もちろん後席もやたら広い。シートが大きくスライドするから使い勝手がいい。床が低いだけにワンボックス軽より足下の空間がある分さらに広く感じられ、軽自動車としては究極空間を実現している。制約あるサイズの中でこうした究極を作り出す技術は、伝統芸と言うべきものだろう。

ここがダメ

ではその空間が何か意味があるかというと、ちょっと疑問。室内高は子供が立てるという意味があるし、後席が広いことにもちろん越したことはないが、運転席前の広大な空間に対する不思議な違和感は試乗を終えるまで、結局消し去れなかった。

また、最近の「しっかりした」軽自動車の中で考えると、コーナリングはかなりロール感が大きい。頭上の空間が左右にぐらぐらする感覚はコーナリング時の安心感を削ぐ。もちろん、本来はそんなハードな走り方をするクルマではないのだが。

総合評価

これまた「何じゃこりゃー」状態のクルマ。ほんわか系のタウンカーとしてとらえれば何も罪もない良いクルマなのだが、ここではもう少し考察してみたい。

まずダイハツのラインナップとして考えると、モデル末期のミラジーノを除けば全部トールタイプ。もちろんそれはスペース効率がいいというワゴンR以降の流れだが、主流であるはずのミラですらがトールタイプ。ミラやムーヴよりさらにスペース効率の良さでインパクトを出さねば、ということでタントの登場となったのだろう。開発陣は、それこそ極限まで計算し尽くして、決められたサイズの中で小宇宙を生み出した。頭が下がる思いだし、確かに素晴らしく、初代の軽の思想に近いと思う。

ただ、タウンカーとしての軽であるとすれば、ここまで室内を大きくする意味は果たしてあるのだろうか。初代の軽に比べればミラやムーヴでも十分広く、快適だ。また適度なクルマとの一体感がある。タントの場合だと、バスや商用車に乗っているような感覚があって、クルマとの一体感が少し希薄。また子供との同乗を想定するなら、ライフのように助手席をたたむことで、チャイルドシートを付けた後席へのウォークスルーができた方がいいし、リアはスライドドアの方が使いやすい。

軽のスペース効率争いはタントで勝負がついたという感じだ。パッケージとしては「上がり」。軽の枠ではもうこれ以上のものはできないだろう。ダイハツの技術の勝利だが、トータルバランスは少し崩れているかもしれない。軽の使い方からすれば、それはどうでもいいという類のものだろうが。

なおタントには触媒に自己再生機能を持たせた世界初のインテリジェント触媒が採用されている。軽自動車として初めて、トヨタのG-BOOK対応ナビも用意された。パッケージとしては完成したので、大量に売れる軽こそ、もっとインテリジェント化をすすめた方がいい。軽独自のシビアな価格競争でインテリジェント装備も切磋琢磨されるはずだ。

試乗車スペック
・ダイハツ タント X Limited(0.66リッター・4AT・119.8万円)

●形式:UA-L350S●全長3395mm×全幅1475mm×全高1725mm●ホイールベース:2440mm●車重(車検証記載値):870kg(F:530+R:340)●エンジン型式:EF-VE●659cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●58ps(43kW)/7600rpm、6.5kgm (64Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/36L●10・15モード燃費:18.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:155/65R14( Yokohama Aspec )●価格:119.8万円(試乗車:119.8万円) ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

公式サイトhttp://daihatsu2.adinfo.jp/showroom/lineup/tanto/index.htm

 
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