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ダイハツ タントカスタム X Limited新車試乗記(第503回)

Daihatsu Tanto Custom X Limited

(0.66L・CVT・147万円)

めくるめく進化を続けるダイハツ軽。
走りと広さと使い勝手をものにして
この先いったいどこへ行く?

2008年03月22日

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キャラクター&開発コンセプト

大ヒットした初代に続く2代目

2003年11月に登場し、大ヒットした軽乗用車タント。その2代目が2007年12月17日に発売された。初代タントは当初、ムーヴより10センチ背を高くした、提案型の異色作といった感じだったが、ふたを開けてみれば月販平均8000台の主力車種に。ダイハツ躍進の大きなアシスト役ともなり、スズキ・パレット(2008年1月)というライバルの登場も促した。

助手席側Bピラーレスとスライドドアを採用

初代同様、主として子育てファミリー層向けの2代目の特徴は、助手席側Bピラーを取り去りながら、助手席側リアをスライドドア化して1480mmという広い開口幅を得たところ。さらに2490mmの超ロングホイールベース、新世代パワートレインへの換装など、まさに全面改良となっている。目標販売台数はタントとタントカスタムを合わせて月間8000台。

■ダイハツ>ニュースリリース>タント発売(2007年12月17日)
http://www.daihatsu.co.jp/wn/071217-1f.htm

価格帯&グレード展開

主力はNAエンジン+4ATもしくはCVT。カスタムにはターボ+CVTも

ラインナップは外観おとなしめでベージュ内装の「タント」が4グレード(108万1500円~140万7000円)、専用外装で黒内装の「タントカスタム」が4グレード(126万円~173万7750円)となる。いずれもエンジンは3気筒NA(自然吸気)が主力で、下位グレードが4AT、上位がCVT。タントカスタムの最上級グレード「RS」のみ3気筒ターボ+CVTというもの。オーディオ(CD・AM/FMラジオ、2スピーカー)は全車標準だ。

今回試乗したタントカスタムは、NAエンジンの上級グレードとなる「Xリミテッド」(147万円)。販売主力の「X」(136万5000円)がベースだが、10万5000円高で変速機を4ATからCVTに換装し、スライドドアを電動化した仕様だ。

パッケージング&スタイル

背が伸びたのには理由がある

言うまでもなく全長と全幅は3395mm×1475mmの軽規格。全高は1750mmで、先代より+25mmとわずかながら「成長」しており、これによって室内高は1355mmと「平均的な身長の小学校3・4年生なら立ったまま着替えやウォークスルーが出来る」(ダイハツ)ものとしている。果たしてそこまで高くする意味があるのか?とも思うが、この分野の先駆者としては、後発のパレット(全高1735mm、室内高1365mm)に負けるわけにもいかず、といったところか。法規的には全高2000mmまでOKだが、まあ一般のドライバー向けとしてはこのあたりが上限か(と現時点では思える)。

10年前のカローラを越えたホイールベース

先代タントの試乗記では、その2440mmのホイールベースを評して「パワーユニットの劇的変換がない限り、軽自動車枠ではほぼ限界の数字だろう」と書いたが、新型では2490mmとあっさり記録を更新。これは1990年代のトヨタ・カローラ(100系、110系)の2465mmを軽く上回るもので、全長3.4メートルのFF車としてはとんでもない長さだ。全高もホイールベースも、一体どこまで伸びるのだろうか。

新旧の違いは、左リアのドアハンドルの位置

スタイリングは先代タントの完全なる正常進化で、特に新旧でそっくりのタントカスタムだと、パッと見では区別がつかない。助手席側リアドアがスライド式かどうかというのがポイントで、要するにドアハンドルがドアの前の方か、後ろの方か、というくらいの違いだ。

なお、子育てファミリー向けのタントに対する、タントカスタムの位置付けは「こだわりを重視する男女」(ダイハツ)向けというものだが、これが何と販売比率(新型の初期受注 ※)では40:60でカスタムの方が多いらしい。先代でカスタムが出た時は違和感を感じたものだが、世の中分からないものだ。

 ※(07年12月17日~08年1月21日、合計約2万4000台)

センターメーター、コラムシフトを踏襲

先代のレイアウトを受け継ぎ、というか、現行ムーヴの骨格がベースというか、いずれにしてもセンターメーターを採用。シフトレバーはムーヴのインパネシフトと差別化してかコラム式で、左右ウォークスルーはしやすい。ちなみにインパネシフトのパレットでも、シフトレバー基部があまり出っ張らないようになっている。

普通のタントのベージュ内装に対して、タントカスタムの内装は黒基調。質感はその車両価格の通り、同社が作るパッソ/ブーンあたりより高いのではないか、とすら思える。3眼メーターや2DINナビモニターの視認性もよい。

なお、主力グレードにはキーフリーシステムが標準装備される。ダイハツの従来車同様、クルマから離れると自動的にロック、接近するとアンロックするタイプだ。キーを持ったままクルマの周辺にいるとロックとアンロックを繰り返すのがわずらわしいが、ボタン操作が一切要らない点ではやはり便利といえる。

ダブルエアバッグ標準、5エアバッグは全車にオプション設定

タントは前席フロントのダブルエアバッグを全車標準とし、前席サイド×2と運転席ニー(ひざ)を加えた5エアバッグを全車にオプション設定(16万8000円)する。これに対してスズキのパレットは前席フロント×2、前席サイド×2の計4エアバッグをほぼ全車(エントリーグレードを除く)に標準装備し、さらに後席乗員を守るカーテンエアバッグを設定(最上級グレードのみに標準だが)するという充実ぶり。どっちがどうとは言えないが、誤解を恐れずに言えば、タントは前席(運転席)重視、パレットは後席までカバー、という感じだ。

Bピラーレス&スライドの「ミラクルオープンドア」を採用

もちろん最大の見どころは、左側Bピラーレスとスライドドアによる「ミラクルオープンドア」。90度まで直角に開く助手席ドアと、リアスライドドアを開けた時の1480mmという開口幅は、やはり「これは便利かも!」と期待させるものがある。いわゆる一種の(購入意欲をかき立てる)「飛び道具」としての効果も高い。

言うまでもなく、トヨタのアイシス(2004年9月発売)のミラクルならぬ「パノラマオープンドア」はこれと同様のもの。当然ながらトヨタの技術的ノウハウが、新型タントに生かされたはずだ。助手席ドアとスライドドアは、超高張力パイプ材を使ったBピラー内蔵構造で(ゆえに両社は単に「ピラーレス」と呼ばず「センターピラーレス」と呼ぶ)、側面衝突に耐えるほか、操縦安定性に影響する左右ボディ剛性バランスにも配慮されているようだ。

フローリング仕様で「居間」状態

リアシートはもちろん前後スライドとリクライニングが可能。折り畳んで足元に収納する操作が軽く出来るのはパレットに対する優位点だ。また、助手席シートに前後280mmのロングスライド機構を与えて、助手席を前に寄せた後席重視のレイアウトも可能としている。後席の天井にはオプションでオーバーヘッドコンソールも装着できる。

ユニークなのは、フローリングフロア仕様が「タント」の一部グレードに標準、もしくは他の2WD全車に販売店オプション(取り付け費込みで5万4915円)で装着できること(試乗車は異なる)。ホンダの(3代目)ステップワゴンにあるものの簡易版という感じだが、汚れをあまり気にしなくていいのがメリットだ。試乗していないのであくまで推測だが、反響音で多少うるさくなったり、走行中に物が転がる音が気になる可能性はある。それにしても、アクセサリーカタログの写真で、フローリングのタントに裸足で立っている子供を見ると、ほとんど「ニトリ」のカタログを見ているようだ。

ママチャリは難しいかも

荷室床の地上高は595mmで、全車スペアタイアレスとしたパレット(525mm)より70mmも高い。そのためいくら全高が高くても「一般的な27型の自転車」、すなわちママチャリが積めると堂々とうたったパレットの荷室高(1160mm)に及ばないことは容易に想像できる。ここはスペアタイヤレスという奥の手を使ったパレットに1本取られた形だ。ただし荷室高が1100mm程度あれば、車輪を付けたままスポーツタイプの自転車(ハンドル位置が低い)を積むことは一般的に可能だ。

基本性能&ドライブフィール

ターボ要らずのNA+CVTユニット

試乗したのは、上にも書いたようにNAの3気筒エンジンにCVTを組み合わせた「Xリミテッド」。電動スライドドアも標準で、車重は「X」(4AT)より20kg重い940kgとなる。これはダイハツ・ブーンの1.3リッター車と同等の重さだ。

とはいえ、最新のダイハツNA「KF-VE」型エンジン(58ps、6.6kgm)と、ソニカや現行ムーヴ譲りのCVTは、そんな車重などものともしない。試乗車を借りる際に、「NAです」とはっきり言われなかったら、「さすが低圧ターボ、よく走るなあ」などと感心してしまいそうな、というか、もっと正直に言えば運転しながら 「これってひょっとしてターボ?」と真剣に考えたほどだ。

というのも、このCVTがアクセルオフ時に出す「ヒューゥゥゥン」という独特のCVTノイズが、ターボのブローオフバルブの音に似ているから、という事情もある。決して耳ざわりな音ではないが、初めて乗る人には構造的なものである、との説明が必要だろう。全体としてみれば静粛性は高く、動力性能もまったく十分。CVTか4ATかは迷っても、ほとんどの人はターボの必要性を感じないだろう。

シャシーの進化もとどまるところを知らず

見た目どおりの全高/トレッド比なので、絶対的な操縦安定性はそれなりだが、それを差し引けば最新ダイハツ車の例にもれず、シャシーは相変わらず軽の枠をぶち壊さんばかりのしっかりぶり。先代タントのグラグラ感もかなり払拭され、街中を走る限りは、もうほとんど違和感はない。意図的に旋回ブレーキを踏んだり、ダブルレーンチェンジでもしなければ安心感を感じていられる。軽のシャシー性能はほんとにすごいことになってきた。

試乗燃費は13km/L弱

今回は街中を中心に、多少高速道路なども使って約136kmを試乗。完全に満タンかどうか厳密にチェックしていなかったが、返却時に10.8リッターを給油。「少なくとも、12.6km/L」という試乗燃費となった。なお、このNA+CVT車の10・15モード燃費は20.5km/L、ターボ+CVTが19.2km/L、4ATの「X」が18.8km/L、同じく4ATの廉価グレード「L」が最も悪い18.2km/Lとなる(すべてタントカスタムFF車の数値)。

ここがイイ

センターピラーレス、フローリング仕様など

センターピラーレス。後席にチャイルドシートを付けた場合、助手席背面がテーブルになってアクセスのじゃまをしないから、それとあわせてやはり便利なものといえるだろう。ステップワゴンに次いで設定されたフローリングもいい。子供の乗る可能性があるクルマはみんなこれを用意すべきだ。

素晴らしい質感はさすがダイハツ車。スズキも追従しているが、ダイハツの方がやはり現時点では上。センターメーターも、その下のナビ画面も、位置関係は文句なし。軽自動車にしては確かに高価だが、その内容から考えるとほとんどダンピングと言いたくなる安さだ。これ以上、軽自動車を高くするわけにはいかないので、モノが良過ぎる、というのが正しいのかも。

ここがダメ

右リアのヒンジドア、装備の設定

チャイルドシートが必要ない場合、センターピラーレスの便利さを実感できることは少ないと思われる。トヨタのアイシスでもあまり便利という声は聞かれない。やはりそれより、運転席後方のドアをスライド式にすべきだろう。また、電動スライドドアやサイドエアバッグの標準設定をもう少し拡大しないとパレットに負ける。

なくても一向に構わない瞬間燃費計はあるのに、肝心かなめの平均燃費計がないところ。パレットは全車標準だ。メーター誤差がある以上、車載の平均燃費計にも当然誤差は生じるが、経験から言って目安としては十分信用できる。せめて上級グレードか、オプションとしてでもあれば良かった。

チルトステアリング、運転席シートリフター、シートベルトアンカー部の、いわばドラポジ用の高さ調節3点セットが全車「アジャスタブルパック」(1万5750円)としてメーカーオプション扱いであること。決して高いものではないから、やはりこれは標準装備にすべきではなかったか。要望がないとすれば、それは初心者ドライバーが知らずに使いこなせていないだけだろう。

総合評価

「軽はこの形が最もいい」というマジョリティ

先代で不満だったことは、このクルマではことごとく解消されている。つまりスライドドアの採用、助手席背面のテーブル化、操縦安定性や動力性能の不足感を解消というあたりだ。加えてセンターピラーレス化、フローリング仕様の設定、CVT化といった追加改良もあり、完成度がさらに高まっている。先代タントの時に運転席では「金魚鉢の中」のような違和感があると書いたが、新型でもそれに大差はない。が、これはこのパッケージングの副産物として受け入れる(馴れる)しかないのだろう。

しかしここまでよくなっていると、もしパレットがデビューしていなかったら、販売数で軽ナンバーワンに躍り出ることもありえたのではないか。2008年2月の販売台数をみるとタントが約1万6000台、パレットが約7000台だから、両方あわせると同月の首位であるワゴンRの約2万1000台を越えてしまう。タント、もしくはパレット単体でワゴンRを抜くのは無理としても、タントが販売2位のムーヴ(約1万6500台)をいずれ抜く可能性は高いだろう。どうやら「軽自動車はこの形が最もいい」というマジョリティ(多数派による合意)ができあがってきているようだ。その意味で先代タントは、軽自動車の革命児といえる。

「クルマ好きが好むものは売れない」

タントは背を縮めて、カッコよく見せるカスタム手法「チョップトップ」の、いわば逆バージョンでお世辞にもカッコいいとは言えない。しかしこの形で売れてしまうのは、このクルマがまずは実用を重視する軽だからだろう。「スタイリングよりも実用性」で、軽の枠で一番広い室内を得たということで、タントはこの4年で地位を確立し、さらにはトップセールスを狙う位置まで来ている。モーターデイズとしては「クルマ好きが好むものは売れない」という典型的事例の裏付けであるような自虐的な気持ちになってしまう。ワゴンRが出たときには旧車ステップバンの再来と感動したものだが、タントが三菱トッポの再来に見えては感動できるわけはない。やっぱりスタイリングには今も違和感がある。

それでも新型はこのパッケージングでカッコ良さを出すためにがんばったとは思う。ボディサイド下部に、水平のプレスラインを付けて重心を下げた感じは好感が持てるし、特にカスタムでは平たいヘッドライトによって、正面からも重心を下げた感じがよく出ている。フェンダーの張り出しが、さもあるように見えるバンパー形状も巧みだ。ただ根本的にはカッコよくはないし、どこか子供っぽい。

もはや軽ですべてをまかなえる

パッケージングに関しては先代の時にすでに上がりと書いたが、確かにそのようだ。パレットはスペアタイヤレスという飛び道具?でさらにスペースを稼いだが、それをやらなかったタントはスペース的に先代から劇的な進歩は遂げていない。その代わりこちらはピラーレスという飛び道具で訴求してきた。インパクトはすごいが、実際の使い勝手では、運転席後部がスライドドアの方がいいはず。運転席側ピラーレスまでは無理としても、スライドはぜひ欲しかったところだ。ここは開発陣が唯一ミスったと思っているのではないか。

とはいえここまで来てしまうと、やはりパレットで書いたとおり、軽が全部このタイプになってしまうという危惧を感じてしまう。ただそこを前向き?に考えれば、これでちょっとした遠出も十分できるし、クルマに金をかけない(かけられない)時代のファミリーカーとしては、もはや軽が一番、あるいは軽ですべてをまかなえるとも言える。3列シートじゃない以外は、なんの不満もないのではないだろうか。

2台体制への布石


ダイハツ OFC-1(2007 東京モーターショー)

そこでクルマ好きが思いつくのは、以前にも書いたようにこれをファミリーカーにしてアリバイを作り、その代わりに好きなクルマをもう一台買うという手だ。維持費の安い軽ならそれも十分可能だろう。ファミリーカーの主流がミニバンとなって以降、好きなクルマとの2台体制は厳しい時代が続いたが、家族と奥さんに軽のタント(かパレット)、自分にスポーツカーというカーライフも実現できそうだ。

いずれにしても軽自動車としては「これで上がり」ではなく、パレットでも書いたように、ミニカー本来の姿、スタイリッシュな個人向け高効率車も出て来て欲しいものだ。ダイハツはそれに近いものとして現在コペンを発売している点は高く評価したい。となれば期待が膨らむのは2007年の東京モーターショーでタントと共に出ていた「OFC-1(Open Future Concept-1)」か。タントとOFC-1の軽2台体制は、家族持ちのクルマ好き平均的給与生活者にとって、理想のカーライフかもしれない。

試乗車スペック
ダイハツ タントカスタム Xリミテッド
(0.66L・CVT・147万円)

●初年度登録:2007年12月●形式:DBA-L375S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1750mm ●ホイールベース:2490mm ●最小回転半径:4.5m ●車重(車検証記載値):940kg( 570+370 ) ●乗車定員:4名●エンジン型式:KF-VE ● 658cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 58ps(43kW)/ 7200rpm、6.6kgm (65Nm)/ 4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/36L ●10・15モード燃費:20.5km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後トーションビーム ●タイヤ:155/65R14( Falken Sincera )●試乗車価格:-円( 含むオプション:アジャスタブルパック 1万5750円 )●試乗距離:約140km ●試乗日:2008年3月 ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

 
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