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日産 ティアナ 350JM新車試乗記(第263回)

NIssan Teana 350JM

(3.5リッター・319万円)



2003年04月05日

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キャラクター&開発コンセプト

セフィーロ(とローレル)の後継

日産の高級セダンといえば、シーマ、セドリック/グロリア、スカイラインと、後輪駆動車がメイン。途中からFF化された(というか北米向けマキシマと統合された)セフィーロは日本では影が薄い存在だった。また、日本を脱出してメジャー入りしたスカイラインの兄弟、ローレルはあえなく生産終了。

そういった事情でぽっかり空いたミドルクラスセダンの穴を埋めるべく、日産の北米向けFF車用「FF-Lプラットフォーム」(FFラージサイズの意)を使って開発したのが、2003年2月3日に発売されたティアナだ。この「FF-Lプラットフォーム」はマキシマやアルティマなど米国向けセダンのほか、SUVの「ムラーノ」など、年間60万台を担う重要なシャシーだ。

いまどきの和風モダンリビング

コンセプトは「洗練された大人のための高級セダン」。最大の特徴は「モダンリビングを思わせる品格あるインテリア」。テーマは「和らぎ」「匠」など、かなり和風。マット仕上げの柾目(真っ直ぐ通った木目)調パネルや、「パールスエード」と呼ぶ滑らかな人工スエードのシートが新しい。

車名「ティアナ(TEANA)」はネイティブアメリカンの言葉で「夜明け」を意味するという。ただし、輸出先は米国ではなく、アジア(中国など)とオセアニア地域。販売目標はグローバルで10万台/年。日本国内は2万5000台/年となる。

価格帯&グレード展開

エンジン3種類で225~319万円

販売メインは3.5リッターV6モデル(284~319万円)と新開発2.3リッターV6モデル(225~252万円)。他に4WDの2.5リッター直4モデル(245~277万円)がある。

パールスエード内装は「230JK M-コレクション」(240万円)から

各モデルは上級「JM」とスタンダード「JK」の2グレード構成。大きな装備差はないが、やはり「350JM」(319万円)と「230JM」(252万円)に装備されるパールスエード内装は欲しい。日産としても、ぜひ乗って欲しいという心意気からだろう、2.3リッターにパールスエードを装備した「230JK M-コレクション」(240万円)なるお買い得版を用意している。HIDランプ(6万円)、インテリジェントキー(5万円)、カーテンエアバッグ(4.5万円)などは全車オプション。

パッケージング&スタイル

VW/アウディっぽいが、アクの強さは一枚上

アウディA6やVWパサートに似た6ライト(窓が片側に3つずつ)、アーチ型ルーフ、ハイデッキの機能的スタイルだが、印象はドイツ系でもなくアメリカっぽくもなく独特。「パーシーブドクオリティ(perceived quality)」(感性品質)にこだわったという外観は不思議な存在感を持つが、カッコいいかどうかは意見が分かれるだろう。米国向けマキシマと大まかな点ではよく似ている。テーマカラーであるファウンテン・ブルーが美しい。光線の加減で大きく色が変化する。

大柄な家族にピッタリ

ボディサイズは全長4770×全幅1765×全高1475mmとローレルとほぼ同じか、少し大きい。全長4920×全幅1780×全高1440mmとかなり大きかったセフィーロに比べると、長さ方向でかなりダウンサイジング。FF車だけに広さは文句なし。特に後席は広大だ。大柄な人でも余裕で足が組めるだろう。トランクは先代セフィーロが540リッター(VDA方式)と巨大だったが、ティアナの506リッターでも十分だ。いちおうゴルフバッグが5つ載るらしい。

白眉はやっぱりインテリア

「和らぎ」「もてなし」「匠(たくみ)」といった和のイメージを元に、モダンリビングを目指したインテリアは、まるでコンセプトカーみたいにデザインコンシャス。シートに張られたパールスエードと呼ばれる新素材がいい。これはアルカンタラやエクセーヌと同じ人工スエードの1種。伸縮性があり、シルクのような触感が特徴。「藍」をイメージした「アガート」(オプション)という色も良い。デザインもソファを意識した。なにせライバルは、イームズとかヤコブセンであるからして。

惜しいのは、表皮とウレタン部が一体の成型シートゆえか、座り心地自体があまり良くないこと。美しさにこだわって丸く反った形のバックレストも、フィット感に個人差があるかもしれない。この点は実際に試乗して確認してみるといいだろう。

脱バーズアイメイプル

もう一つ目を引くのが、つや消しウッド調パネル。柾目(まさめ)という、縦に木目が入ったもので、桐ダンスなど和家具に多く使われる。これはもちろん写真プリントで、コストは安い。が、使い方がとても上手で、いやし感を出すのに成功している。家具や住宅内装では前からある手法だが、クルマにこんな大面積で持ち込んだ点で(ティアナが最初ではないと思うが)画期的。ダッシュボード上部の一見パールスエード張りに見えるソフトな樹脂も珍しい。形状自体もオリジナリティ溢れる。ただし、ナビなどを操作する「8方向独立プッシュスイッチ」はやや煩雑で、ボタンを選ぶのに時間がかかった。

日本車の内装デザインがここから変わる!?

その他、助手席の電動オットマン(JKを除く)がこのクラスでは珍しい。その他、助手席パワーシートや左右独立式エアコンなど、「家族や友人を招き入れたい気持ちにさせる」家、ならぬクルマを狙う。

細かく見てゆくと、クオリティ自体はけして高くはない。しかし、デザイン的にはそうとう吟味した印象を受ける。「コストをかけなくても美しいものを造る」という工業デザインの見本のようなインテリアだ。この点で日産は国内では完全にリードを奪った感がある。他メーカーもこれの真似ではなく、新しいアイディアとデザインで頑張って欲しい。

基本性能&ドライブフィール

世界初の大排気量ベルト式CVT

試乗したのは最上級の「350JM」。おなじみVQ35DEエンジンに、大排気量車として世界初となるベルト式CVT「エクストロニックCVT」を組み合わせたモデルだ。紛らわしいが、これはセド/グロやスカイライン350GT-8の「エクストロイドCVT」と違い、オランダのバンドーネ社製の金属ベルトを使用する。ちなみに2.3リッターV6は4速ATとなる。

ロードノイズが聞こえない

カード式インテリジェントキーの置き場所に困りつつ、エンジンをスタート。とにかく静か。特にロードノイズ(タイヤからボディを伝わって室内に侵入する)の遮断が完璧で、荒れた路面じゃないと無音かと思う。3.5リッター&CVTということで、エンジン回転を上げずに走れることも静かさの一因だ。ただし、回すと他が静かなだけにVQの音がよく聞こえてしまう。

「大人のための、ゆとりある快適な走り」

ティアナのVQ35DEはスカイラインなどに比べて50馬力ダウンの231馬力にデチューン。しかし回せば1500kg前後のボディなど軽々と加速させる。出力特性のせいかそれほど迫力はない。どちらかと言うと発進や高速クルージングでの余裕といった、高級車らしさに貢献する。最大トルクの34.0kgmは2800rpmで発生。発進でアクセルを踏み込むとVDCのオン/オフに関係なく、前輪が軽くスピンする。大排気量FF車だけに、発進や交差点の立ち上がり時にはわずかにトルクステアが感じられた。

CVTとのマッチングは良好。CVTの滑り感やブーンといった唸り音はまったく気にならない。CVTだと加速「感」が感じにくいが、エンジンがトルクフルなだけにそれもない。6速マニュアルモードでの変速もタイムラグなし。いずれにしても一般道なら110km/h付近まで伸びる2速でほぼカバーできるので、シャコシャコやる必要はないが。マニュアルモードでも自動シフトアップあり。

快適だが旦那仕様ではない

乗り心地は悪くないが、ソフト一辺倒ではない。フロント:980kg、リア550kgという重量配分もあり、安定性を確保するためやや固めな感じを受けた。タックインなどFFらしい挙動も出ることは出るが、それらは全てVDC(トラクショントロール&ブレーキLSD)が押さえ込む。VDCの介入の仕方はかなり強力だが、気にはならなかった。試乗車は215/55R17という扁平タイヤを履いていたせいかVDCオフでも危なっかしさはない。その際もブレーキLSD機能は残る。

高速巡航はもちろんお手の物。100km/h巡航は1800回転程度で、しかも2.371から0.439まで無段階で変速比を変えるCVTのおかげで、180km/hまで出しても巡航に移ればなんと3000回転程度しか回らない。

10・15モード燃費は9.8km/L。ドライブコンピューターは6.2km/Lと表示した。試乗中の実燃費の印象も、それをほぼ裏付ける印象だった。3.5リッターの1.5トンのセダンとしては悪くない数字だったのは、やはりCVTや低速&燃費重視のエンジンのおかげだろう。

ここがイイ

インテリアの木目の使い方が絶品。ホンダMDXなどは妙にピカピカしたプラスチッキーな木目パネルだったが、ティアナはプリントものとは分からないほど自然。

VQエンジンとCVTの組み合わせは、今まで乗ったCVT車の中でもっとも出来が良かった。一番トルクのある回転を旨く使う変速機がCVT。ということは、低回転域にトルクがたっぷりあれば、そこだけでゆるゆる走れるわけで、高級セダンには理想的な変速機だ。スポーティな走りはスカイライン350GT-8のトロイダル、ジェントルな走りはベルト式と、硬軟両方のCVTを持った日産。この分野では、トヨタがもたつく間にどんどん先行している。

操作性は前述のように慣れがいるものの、慣れてしまえばなかなか使いやすく、有能なカーウィングス付のDVDナビはやはり便利。音声認識も特に学習させなくても十分実用的だった。ただ、電話番号など0を音声入力する場合に、日本語の零(れい)ではだめで、ゼロといわなくてはならないのはどうかと思う。ゼロ戦ではなく零戦なんですけど、ホントは。

ここがダメ

せっかくハードウェアやインテリアの出来がいいのに、エクステリアが日産らしからぬ地味さなのはちょっと残念。セダンとしては実にプレーンなもので、保守層にはうけるとは思うが、4ドアでここまでやれるのか、とうならされることの多い最近の日産デザインの中ではどうにも目立たない。発表から試乗までに少し時間があったが、その間にすっかり存在を忘れていたほど。セダンという存在自体が地味なので、もう少し華を持たせておかないと辛い。

総合評価

発表会でなかなかいいクルマだと思い、その後しばらく忘れていて、試乗してまた「これはいいクルマだ」と再認識。大排気量エンジンとCVTのマッチング、静かな室内、柔らかなくせに軽快にワインディングをとばせる足、独自なインテリア素材とデザインセンス、広い室内、優秀な電子デバイスと、久々にハードウェアとしてはちょっと欲しいクルマだと思った。ただ、このエクステリアデザインと、ティアナという新しい車名ではまだ作りきれていないブランド力が、買うことを躊躇させるのも確か。

日産のTV宣伝も、インテリアに偏りすぎているきらいがあり、このクルマのよさを伝え切れていないと思う(イームズとかヤコブセンとかいっても、どれだけの人が知っているだろうか)。想定ユーザーは50代と思われ、もう少し情緒に訴えかけないと辛いところ。ティアナの場合、日本的な湿っぽい情緒が徹底的に排除されていることは確かで、その分、今の50代ならマークIIよりピンとくるはずだが、買う段階ではもう少し感情移入できる(人に自慢できる)部分がほしい。それは「ティアナっていいクルマだよね」という共同幻想を獲得することだ。

セフィーロはバブルを背景に、ブランド力を浸透させることにまがりなりにも成功した。しかし、セダン冬の時代にあえてセフィーロの名を捨てたのなら、セフィーロより数段よくなったティアナのイメージ作りを徹底してもらいたいものだ。セダンはライフサイクル商品で、中年以降ではRVからの回帰意識が芽生えてきている。ティアナに試乗してみれば、多くの人はRVなんかに乗っているのがバカらしくなるはず。うまく訴求すれば相当なセダン回帰者を獲得できるだろう。ただし、そうすると日産的にはスカイラインセダンのスタンスが微妙になってしまう、というジレンマもあるのだが。

試乗車スペック
日産 ティアナ 350JM
(3.5リッター・319万円)

●形式:UA-PJ31●全長4770mm×全幅1765mm×全高1475mm●ホイールベース:2775mm●車重(車検証記載値):1530kg(F:980+R:550)●エンジン型式:VQ35DE●3498cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●231ps(170kW)/5600rpm、34.0kgm(333Nm)/2800rpm●10・15モード燃費:9.8km/L●使用燃料:プレミアム●タイヤ:215/55R17(ダンロップ SP SPORT 270)●価格:319万円(試乗車:349.5万円 ※オプション:カーウィングス対応TV/DVDナビ 25.5万円、インテリジェントキー&イモビ 5万円など)

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/TEANA/

 
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