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ホンダ ザッツ新車試乗記(第209回)

Honda That's

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2002年02月22日

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キャラクター&開発コンセプト

ライフの男性向き商品。“mono”感覚で気軽にチョイスできる軽自動車

ザッツはホンダの定番軽自動車、ライフをベースに「さりげなく使える日常的な身の回りのモノ」をコンセプトに開発された新提案型軽マルチワゴンだ。今までのように小さなボディに何もかも付加させるのではなく、乗ってしっくり馴染むような心地よさが実感できるよう、あえてシンプルなカタチに仕上げられているのが特徴となる。あらゆるモノが世の中にそろっている現在、消費者はデザインやイメージで商品を選ぶようになってきている。そういうユーザーがザッツのターゲットなのだ。「That's」というネーミングには、「あれだ!」と思わず言ってしまうような親しみを持てる存在のクルマになればという気持ちを込めたという。

「モノ」感覚とはいえ、使い勝手やクルマとしての性能はもちろんおざなりにできない。ホンダ独自の新・衝突安全設計ボディによって運転席・助手席ともにJ-NCAP☆☆☆☆レベル(社内測定値)を達成するとともに、全タイプ「優-低排出ガス」を取得している。パワートレーンは、660ccのNAエンジンとそのターボ仕様の2種類で、ミッションはいずれも3速ATが組み合わせられる。駆動方式はNA、ターボ仕様ともFFと4WD。乗車定員は4名だ。

価格帯&グレード展開

グレードはNAとターボの2種類。4WDも選択可能

ザッツには自然吸気モデルとターボモデルがあるが、装備の違いによるグレード分けはない。それぞれ4WDの設定があり、計4タイプでの展開となる。

NAとターボモデルとの違いは後者にEBD(電子制御動力配分システム)付ABS+ブレーキアシスト、155/65R13タイヤが標準装備となるくらい。オートエアコンや電動格納式リモコンドアミラー、アルミホイールなどは両者ともオプションとなる。 価格はNAモデルのザッツが103.4万円(FF)、115.4万円(4WD)。ザッツ・ターボが116.9万円(FF)、128.9万円(4WD)である。

パッケージング&スタイル

“四角いのに丸い”という新しいデザインワークで和みを演出

ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1620mm。ホイールベース2360mm。三菱ekワゴン、ダイハツMAXといった新参モノが軒並み背を低くする傾向にあるのに対して、ザッツはベースのライフよりも15mm高い。ホンダ軽の中にも一台ぐらいは立体駐車場に完全対応したクルマがあってもいいと思うのだが…(これに関しては後述)。

「さりげなく使える日常的なモノ」のように気取らないスタイルを表現したという“ラウンドスクエアデザイン”は、四角いのにあえてエッジを使わずに、すべての角を丸めたというもの(ZIPPOのライターみたい、といえば想像できる?)。後ろから見ると、小型ステップワゴンのようでもあり、小型メルセデスVクラスのようでもある。青白い透明グリルとつながったヘッドライトは今ドキ珍しく、ヨコイチ。個性的でかなり人目を引く。ガソリンスタンドの女の子にも「ホンダの新しい軽ですか! 可愛いですね」と声を掛けられた。

i-Macを思わせるそのスタイリングをさらに引き立たせるボディカラーはモノトーンが7色。そのうちのサテンシルバーには、バンパー・サイドシルをオレンジやピンク、ブルーなどに着色した鮮やかな2トーンカラーがオプションで7色用意されいる(しめてなんと14色!)。携帯電話をイメージしたらしく、アクセサリーを選ぶような感覚で好みの色をチョイスできる! というのが狙いだそう。

このユニークな試みは評価してもいいだろう。でも、このツートン、あまり積極的に“選びたい”という気になれない。これはカッコいいのだろうか??? また何より5万円もの出費というのがツライ。ちょっと高いか…

室内長よりもルーフの前後長にこだわったことで、視覚的な広さを演出

ザッツの“飾らない良さ”というのは、同時に機能美でもある。特に室内は外観以上によく表れている。室内長・幅・高さはそれぞれライフより10mm前後しか大きくなっておらず、ライバル車と総合的に比べてもそれほど優位性があるわけではない。が、ちゃんと広く感じられるのは、”頭回りの広さ感”が追求してあるから。

つまり人が広いと感じやすい頭回りに十分な余裕をとり、また視覚的な広さを徹底的に追求している。例えば乗員の目の位置から天井までの距離を長くとることは、この視覚に訴える広さ追求の代表的ポイント。特に前席ではガラスとルーフの接点が迫っていると「狭い」と感じやすい。ザッツはそれを逆に考えて、広さを演出しているわけだ。

また、ピラーを垂直近くまで立てたスクエアなキャビンにすることに加え、天井のスミの断面を角形状とすることで、横方向の圧迫感を排除。これらの細かい配慮によって、ホンダが言うところの「キャビンMAXパッケージ」が実現されているのだ。 さらにシートアレンジや荷室の使い勝手も注目ポイント。後席の背もたれからびろ~んと出たヒモを引っ張るだけで、9段階リクライニング&フルフォールダウンが可能。もともとの荷室容量は“ライフ+α”といったところだが、後席を畳んだときの荷室長はクラストップの1115mmとなる。

気分はまるで在宅勤務のSOHOワーカー

内装は無彩色のクールな感じ。シートはシルバーの光沢感を持たせており、全席に「That's」のオレンジ色タグを付けることで、カジュアル感覚を演出する。ただしこのシート、未来的なテクスチャーながら表面の滑りが良すぎて、フィット感はいまいち。ホールドは可もなく不可もないといったところ。ちなみにステアリングはやや上を向いておりチルトもできないことからポジションがなかなか決まらなかった。あきらめきれず、何度かチルト用のレバーを求めてステアリングコラムの下をむなしく手探りしたのだが。

インパネは外観同様、ホンダらしい遊び心のあるもの。「SOHOスタイル」をコンセプトとしたそれは、シルバーのセンタークラスターがパソコン、メーターが置き時計をモチーフとしている。ちなみにSOHOとは、スモールオフィス・ホームオフィスの略。いわば家庭にある小さな事務所のこと。つまりザッツは都会的なパーソナル感を演出しているわけだ。でもパソコンをモチーフとしているのなら、エアコンパネルはレバー式ではなく、プッシュ式にして欲しかった。

基本性能&ドライブフィール

乗り心地はやや固め。高速走行時の安定性は高い

試乗したのは自然吸気エンジンのFF車(103.4万円)。走り始めてまず思ったのは、サスペンションがやや固めということ。最近試乗したばかりのスズキ アルトラパンが段差などの衝撃をほぼ完璧に吸収するのに対し、That'sは低速だと後輪がはねる感じだ。この辺りはフィットを始めとして、ややハードなサスセッティングを施すホンダ車の流儀に則したものでもあり、一方でザッツが「男の子」向けモデルだからでもあるのだろう。

もちろんスポーツカーのような終始ドタバタする乗り心地ではない。しかし荒れた路面をせいぜい60km/h程度のタウン・スピードで通過する場合には、「グイグイとお腹に来る」と言った形容が一瞬、頭に浮かんだ。

サスペンションが固められているからと言って、ワインディングが得意なわけではない。なにぶん全高が1620mmもあり重心も高い。軽規格改訂以後、広くなったとは言え絶対的には狭いトレッド。それを何とかカバーしようという固めのサスペンションはやや突っ張った感じがする。特に低速コーナーをスムーズに走るのが難しい。電動パワステのフィーリングもこういう状況ではいまいちで、タイヤがどっちを向いてるか正確に把握できない。

というわけで荒れた路面&ワインディングでは印象の良くなかったザッツのサスペンションだが、高速走行時は納得の行くものだった。このセッティングの主眼は直進性や高速コーナーでの安定性だろう。120km/hオーバーでもフラフラすることはなく、安心感も高い。北海道に大規模なテストコースを持つホンダはハイスピードレンジでの安定性を重視する傾向にあるが、それはザッツにも当てはまる。

高回転まで回るエンジンが3速ATの弱点をカバー

乗る前から心配だったのは3速オートマチックだ。スズキやダイハツはすでに4速オートマチック化を大幅に押し進めているが、ホンダはいまだ3速のみ。リアにエンジンを搭載するバモス/アクティバンや最近生産中止が決まったZでは4速オートマ仕様があるが、かつてのトゥディから現在のライフに至るまで、前輪駆動車では3速オートマしか投入していない。 「3速で十分」という意見もあるが、4速オートマのラパンに乗ったあとでは、やはり4速のメリットは大きいと感じた。ホンダが採用に消極的な理由は多分コスト。「仮に車両価格が5万円アップしてまで開発・採用する価値があるか?」「それが実際の販売に本当に結びつくか?」「そもそもシビックにフィット、HR-Vとウチの小型車はことごとくCVT化したんだから、4速化するならいっそCVTに、いやあ、それじゃあさらにコストが上がっちゃうなあ」と言ったジレンマにあるのではないだろうか(開発担当者は4速もCVTも検討中といっていたが)。

そういったわけで「えー、新型なのにまたぁ」の3速ATなのであるが、それを救っているのがホンダならではのよく回るエンジン。このNA/ターボともE07Zという形式名を持つエンジンは、ホンダの現行軽自動車全てに使われているもの。自然吸気の場合、52ps/7200rpm、6.2kgm/4500rpmのパワーと10・15モード19km/リッターの燃費をマークする。圧縮比は10.5と高い。

レブリミットは7500回転からであるがそこまできっちりと気持ちよく回るところはさすがエンジンのホンダ。ザッツにはタコメーターが全車に付いているが、時々その数字を見て「え、こんなに回ってるの?」とびっくりする。2速の守備範囲が広く80km/hオーバーまで2速で引っ張るプログラムであるが、とにかくレブリミット手前までスムーズに回る。苦しげな感じや耳障りなノイズ、振動はほとんどない。くどいようだが「ATが3速でも、うちはエンジンでカバーしてみせるぜ!」というホンダのエンジニアの声が聞こえるようだ。

ちなみに高速道路を走ったのは非常に風が強い日。追い風時にはメーター読みで135km/hをマーク。向かい風時には120km/hがリミットだった。ちなみに100km/h走行時のエンジン回転数は5000rpm/hプラスα。アルト ラパン(54ps/6500rpm、6.4kgm/3500rpmとスペックは負けていない)に比べ車重は40kg程度重く、前面投影面積も大きいザッツであるが、両者の動力性能に大きな違いは感じられなかった。

ただし静粛性は4速オートマチックのアルト・ラパンが間違いなく優れていた。ザッツはスピードが高くなるにつれて3気筒エンジンのハミングが高まり、高速道路や幹線道路では軽自動車に乗っていることを常に意識させられる。ただしロードノイズ、風切り音なども同じようなレベルで高まり、エンジン音だけが突出してノイジーであるというわけではない。

しかし、それでも、4速ATであることに越したことはない。街中で加速を試みるたびに3速から2速にキックダウン、エンジンがうなりを上げるのにはまいった。あー、これで4速だったら、というポテンシャル・ユーザーの声が聞こえてくるし、その声はもうとっくにホンダの内部にも届いてるはずなのだが。

ここがイイ

ホンダの話では、全国の立体駐車場で155vm以下でないと入れないものはわずか9%しかないとのこと。そのためにホンダのクルマは155cmにこだわっていない。実際、室内の広さは前述のとおり。頭の上にはだだっ広い空間が。つい小物入れを作りたくなってしまうのは貧乏性?

内装のセンスはさすがホンダという感じの「無印」系デザイン。プラスチック類をセンス良く見せるワザはホンダならではだろう。

モビリオもそうだったが、最近のホンダ車はフロントウィンドウの四隅の視界が開けている。フロントの視界がやたらいいのだ。Aピラーは太いが運転席から見るとちょうど角度がよくて、視界を妨げない。ダッシュボードも盛り上がっていないから、斜め前の視界がたいへんいいのである。また、リアの窓が全開するのも気に入ったところ。

ここがダメ

リア窓は全開になるが、リアシートはかなりプア。フラットに収めるためにシートバックは短く、クッションも薄い。ヘッドレストも取り外しやすくするためにか、ただ刺してあるだけで、頭の位置に合わせるため引っ張ったら抜けてしまった。というわけで、4人乗りにはあまり適しているとはいえないだろう。

前述のように、ステアリングのチルトはぜひ欲しいし、コラムシフトの節度感ももう少し欲しい。むろん3速ATは残念至極。

総合評価

乗ってすぐ「軽」を感じさせるクルマだ。小型車みたいな軽ではなく軽らしい軽。生い立ちとしても、まさにライフのスキンチェンジといえるが、デザインは相当がんばっており、「日常の足としての軽はこれで十分」「イヤなら小型車をどうぞ」というスタンスなら、これも一つの完成型だろう。今回は何日も試乗したが、毎日の足としては、軽に勝るものなし、と実感した。その意味で、「ハード面はこれでよし、それより、見てくれの良さ、感覚的なおもしろさ」を重視したクルマ作りは、今後のクルマ作りの一つの方法論だろう。そしてハード面では完成しきった50ccバイクを海外で生産するように、このクルマならもはや海外で作ってもいいのかもしれない。

で、少しマーケットの話しをしておくと、軽は今年も伸びて185万台売れるだろうと言う予測がたっている。ホンダはその内、29.5万台を販売目標としており、7.2万台がザッツの目標。ライフは昨年19万台売れているから、今年も同様に売れると合わせて26.2万台、Zは生産中止となってしまったが、バモスとアクティがあるからまぁいけるでしょう、ということになる。これで女の子にはライフ、男の子にはザッツ、ファミリーにはバモス、ビジネスにはアクティという見事な軽ミニバンラインナップが完成。しかしホンダ=ミニバンというムードは一時の三菱=クロカンと同じでは、とちょっと危惧さえ抱いてしまう。

思えばZは革新的な(ベースはアクティだが)クルマだったが、ホンダはそうした革新的なものを作ってはハズし、次に割に当たり前なクルマを作って当てるということの繰り返しに思える。その意味ではザッツは当たり前サイドのクルマであり、成功は間違いないはず。

とはいえ、このザッツに対してホンダには、伝説の軽ミニバン「ステップバン」をついに復活させた、という思いもあるのではないか。ステップバンは商用車ではあったが、「さりげなく使える日常的な身の回りのモノ」というコンセプトは、ホンダの開発当初の意志にかかわらず、確かにあのクルマにはあった。それ引き継いだザッツだが、オジさん層が乗るにはちょっとラブリーな形すぎるかも。色も相当ラブリー(特に2トーンは)。燃費は市街地・高速を半々に270kmほど走ってリッター11.8kmだった。

公式サイト http://www.honda.co.jp/Thats/

 
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